-科学技術問題-
第6節 科学技術問題
(1) 最近の宇宙開発は,通信,放送,気象衛星などを中心とする実用衛星に重点が置かれるようになつてきた。また,米・ソ以外の国でも,両国の援助をえて(又は西欧・日本のように独自に)活発に開発が進められており,宇宙開発の国際的かつ急速な進展には顕著なものがある。
(2) 国連宇宙空間平和利用委員会(加盟国数47)は,72年以来の懸案である「月条約案」の審議を引き続き行つたが,月の天然資源の帰属,管理方法などをめぐつてソ連とラテン・アメリカ諸国などが対立し,合意が得られなかつた。他方,「直接テレビ放送衛星の利用に関する原則」に関しては,基本的対立点である受信国の「事前の同意」の要否について「国家間の協議と取極」と題する妥協案が作成されたが合意に至らなかった。更に,衛星による地球の探査(リモート・センシング)に関しては,技術,組織,財政及び法律の各側面からの検討が行われたが,探査データの配布の自由につき南北対立があり,未だ妥協は得られていない。第32回総会は,以上の諸問題の検討の継続を内容とする宇宙オムニバミス決議を採択した。
(1) 61年の南極条約原署名12カ国は,同地域での共通の利害関係事項について協議し,必要な措置を勧告するために,2年ごとに南極条約協議会議を開催している。従来の会議が南極地域の環境保全,科学調査のための国際協力を主要問題としていたのに対し,最近では鉱物,生物資源問題に強い関心が示されるに至つた。
(2) 77年9月に開催された第9回協議会議には,上記12カ国に加えポーランドが初めて参加し,鉱物,生物資源の保存・開発問題が集中的に討議された。鉱物資源については,この探査・開発が行われた場合の南極地域の環境に及ぼす影響並びに探査・開発がいかなる制度の下で行われるべきかについて引き続き研究することになっている。
また,「おきあみ」を中心とする生物資源の保存・利用問題については,78年中にこのための条約を採択することとなり,条約案を準備する特別協議会議を78年2月にキャンベラで開催することになつている。