-国際投資問題-

 

第4節 国際投資問題

1. 概   況

わが国の海外直接投資は72年度以降件数,金額共に大幅に増加し,77年3月末現在における許可累積額は194億5百万ドルである。

地域別の内訳は次のとおりである。

(数字は77年3月末許可累積額(百万ドル),( )内は構成比(%))

また,国別で見た場合には主な投資国は次表のとおりである。

業種別にみると,製造業(構成比31%),鉱業(同27%),商業(同14%)が主要なものとなっている。

77年度にはいると国際経済の先行不安などの理由から民間企業の投資態度が慎重になり,77年4~12月の投資実績は19億400万ドル(前年同期比26%減)と鈍化した。四半期別の動向をみても4~6月6億1,400万ドル(同7%減)・7~9月6億5,800万ドル(同42%減),10~12月6億3,200万ドル(同19%減)と各四半期とも前年同期を下回った。

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2. わが国の対応

わが国としては,国連及びOECDの場で行われている多国籍企業問題にする討議に,円滑な国際経済の運営を確保するとの観点から以下のように対処してきている。

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(1) OECDにおける多国籍企業問題の検討

76年の閣僚理事会において「国際投資及び多国籍企業に関する宣言」及びその付属書としての「多国籍企業の行動指針」(その概要については「わが外交の近況」昭和52年版参照)が採択されて以来,OECD国際投資・多国籍企業(IME)委員会は,「宣言」及び「行動指針」の実施状況をフォローすることを中心に活動を進めている。これまでに加盟国及びTUAC(労働組合諮問委員会)によって種々のケースが同「行動指針」の下で問題となるものとしてIME委員会に提起された。IME委員会は,裁判所ではないという立場で,これらケースについて有権的判断を示すことを目的とせずに検討を進めているが,この過程における討議・結論は実質的に79年に予定されている「宣言」及び「行動指針」のレビューの準備作業の一環をなしている。また,現在国連においても多国籍企業のコード作りが進められているが,OECDはこれに対し先進国間の意見調整の場を提供しており,会計基準の国際的調整,同コードの内容の検討などに関して討議を行っている。

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(2) 国連における多国籍企業問題の検討

(イ) 多国籍企業行動規範の作成

多国籍企業問題の総合的な検討のため74年12月,国連多国籍企業委員会が設立され,さらに多国籍企業に関する行動規範の作成のための作業部会が設立された。本作業部会は,77年1月及び4月に会合を開き,行動規範の概略とその注釈を議長案の形で作成した。今後,右作業部会は更に2回(78年2月及び3月)会合し,第4回多国籍企業委員会(78年5月)に行動規範の草案を提出することとなっている。

(ロ) 腐敗行為問題

76年8月,多国籍企業などによる腐敗行為問題の検討のためのアド・ホック作業部会が国連経済社会理事会のもとに設立された。本作業部会は,これまで4回(76年11月,77年1~2月,3~4月及び6月)開催され,不正支払防止のための国際協定の範囲と内容が中心に検討された。第63回経済社会理事会(77年7~8月開催)は,国際協定の範囲と内容に関するテキストを含む作業部会の報告書を検討した後,今後,作業部会のメンバーシップを拡大した上で,本件国際協定の作成作業を進めていくことを決定した。

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