-国際金融・通貨問題-
第3節 国際金融・通貨問題
(イ) 73年の石油危機以降のOPEC諸国の巨額な国際収支黒字の累積を背景とする世界的な国際収支不均衡問題は,77年においても解消されず(77年の OPECの経常収支は400億ドルの黒字,出所,OECD EconomicOutlook22),また,先進国(同,320億ドルの赤字)内部における黒字,赤字国の2分化の問題も依然解消されていない。他方非産油開発途上国(同,225億ドルの赤字)の債務累積は引き続き,全体として大幅なものとなつたが,その深刻度は,債務国の国内経済のパーフォーマンスによりかなり異なっていることが注目される。
(ロ) 前述の国際収支不均衡問題解決のため一方で経常収支赤字分担論などが台頭するとともに,ファイナンスの重要性が強く認識され,IMFを中心として対応策が講じられている。すなわち,76年3月に総務会により承認された第6次増資(注)に加えて,77年8月にはウイッテフェーソ構想の名で知られる補完的融資制度の設置が決定された。同融資制度は,IMFの通常の引出しだけでは賄えないような大幅かつ長期にわたる国際収支困難に直面している国に対して補完的な融資を行わんとするもので,先進工業国及びOPEC諸国からの貸付金を資金とし,総枠約100億ドルに上る予定である。このほかIMFの第7次増資についても78年春までに検討を完了することになっている。
(ハ) 国際通貨制度改革の一環として76年4月にIMF総務会により承認されたIMF協定第2次改正は,加盟国の5分の3(80カ国)で総投票権数の5分の4を有するものの受諾により発効することになっているが,78年2月初現在で,69・79%の投票権シェアを占める77カ国が受諾している(わが国は,76年6月に受諾)。
(イ) 77年の国際通貨情勢は,各国の国際収支動向を背景にして波乱含みで推移した。米ドルは,米国国際収支の大幅赤字を背景に軟化傾向を見せ,特に9月末以降,円,マルクをはじめとする主要通貨に対して大幅に下落し,さらに年末には主要通貨の対ドルレートはのきなみ既往最高値を記録し,ドル全面安の様相を呈した。一方,英ポンド,仏フラン,伊リラは,引締政策の効果などもあり貿易収支が改善に向かっていることから76年の大幅下落とは様変りに年初来安定的に推移した。スネーク(EC共同フロート)は西独と北欧3国の経済較差,マルク高傾向などを主因に緊張が高まり,77年中北欧通貨の切下げ(4月,8月)スウェーデン・クローネの離脱(8月)と調整が行われたが年末から78年初にかけて再度緊張が高まっている。
(ロ) 円レートは,わが国国際収支の大幅な黒字,米国の大幅赤字を背景として年初来堅調に推移し,9月末以降は特に急上昇を見せ12月15日には1ドル=238.00円を記録した。年末の対ドル円レートは240.00円でこれは年初来22.0%,スミソニアンレート比28.3%の上昇にあたる。
(ハ) このような情勢を背景として,米国は,12月21日ドル価値維持に関し,カーター大統領の声明を発表するとともに,78年1月4日には市場への介入を強化する旨の財務省と連邦準備制度理事会の共同声明を発表し,また1月6日には主として為替面への配慮を理由として公定歩合を引上げた。
(1) わが国としては前述の国際収支調整過程におけるIMFの役割を特に重視しており,その第6次増資に賛成投票を行ったほか,補完的融資制度に対しても9億SDR(全体の約10.5%)の貸付けをコミットしている。
(2) 主要通貨の安定が図られることは世界経済の健全な発展にとって不可欠であり,特に基軸通貨たるドルの信認維持は単に米国のみならず各国にとって主要関心事である。わが国としても従来より国際通貨安定のため各国との協力を推進している。
(注) 加盟国の割当額を全体で292億SDRから390億SDRに増加するもので,IMF協定第2次改正の発効を俟って発効する。