-中南米地域-

 

第4節 中 南 米 地 域

1. 中南米地域の内州情勢

(1) 内政・経済情勢

77年の中南米地域の内政においては,76年に引き続いて軍部による支配が大多数の国において顕著であつたものの,その中のいくつかの諸国が民政移管の計画を表明し,また,経済運営の方式として,経済の合理性をより尊重する傾向が一層定着しつつある。

経済面では,76年からのコーヒー,大豆,小麦等農産品輸出の続伸等を背景に,多くの国で比較的高い成長率を記録し,特にアルゼンティン,メキシコなどの経済回復が目立っている。一方,ペルーなどは極度の不振から依然として脱却しえないでいる。インフレは,ブラジルを始め多くの諸国で依然として高水準にあり,アルゼンティン,チリは緩和傾向にある。

主要国の77年の経済情勢は次のとおりである。

(イ) アルゼンティン

就任2年目を迎えたヴィデラ政権は,統制経済から自由経済への転換を進め,国際収支の改善に著しい成果を収めたが,インフレの収束はいまだ十分ではなかつた(77年160%)。

(ロ) ブラジル

インフレを抑制するため,政府は財政支出の削減など厳しい緊縮政策をとり,インフレ率はようやく40%を割り,また貿易収支も好転した。

(ハ) メキシコ

ポルティーリョ新大統領は,前政権下の工業化促進による高度経済成長政策のひずみからの経済の立て直しに努力し,石油資源をも有効に利用しつつ,それなりの成果を収めた。

(ニ) コロンビア

76年に引き続くコーヒー輸出の好調による豊富な外貨収入を背景に,積極的に国内経済開発を推進する傍ら,インフレの抑制に努めた。

(ホ) チ   リ

国際収支は非伝統輸出産品(農牧,水産産品など)の伸長などにより76年に引き続いて順調に推移し,また,インフレの大幅な改善など経済全般に堅実な回復がみられた。

(ヘ) ヴェネズエラ

77年も,76年同様かなり高い成長率を達成したが,5カ年計画実施の遅れ,インフレ再昂進の徴候が出始めた。

(ト) ペ ル ー

ペルー経済は,77年も,国際収支の逆調,財政赤字,インフレなどの諸困難に直面し続け,政府は財政緊縮,輸入抑制策を講じたが十分な成果を収めるには至らなかつた。

(チ) キューバ

76年に引き続き,経済は依然として厳しい状況にあるが,社会主義制度化の整備作業は着実に進展した。

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(2) 外   交

77年の中南米諸国の外交は,米国の人権政策をめぐつて大きく揺れ動いた。カーター政権は,就任早々,人権の侵害が行われている国には,軍事・経済援助を行わない政策を打ち出したが,同政策に対し,ブラジル,アルゼンティン,ウルグアイ,グァテマラ,エル・サルヴァドルは,強く反発し,米国からの軍事・経済援助を拒否,ブラジルは,また米・伯軍事援助協定を廃棄するに至つた。しかしながら,その後開催された第7回米州機構総会(6月,於グレナダ)ではメキシコ,ヴェネズエラ,ジャマイカなどが米国の人権政策を擁護してチリ,ウルグァイなどを非難したこともあり,米国の人権政策をめぐる問題が,米国と中南米全体との間の対決の原因とはならなかつた。

米国とパナマは,64年以降断続的に行つて来たパナマ運河交渉を,77年,ようやく妥結させ,99年末に運河の管理,運営,維持の権利をパナマへ返還することなどを内容とする新条約に署名した。

メキシコは,ポルティーリョ大統領が米国を訪問し,前政権時代にやや悪化した対米関係の改善に努めた。

ブラジルは,アマゾン河流域諸国の協力を図ることを目的としたアマゾン同盟の設立に積極的な動きを示した。

米国とキューバとの関係は,漁業協定の締結をはじめ,相互に利益代表部を設置して外交官の交換を行うなどの進展を見せた。

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2. わが国と中南米諸国との関係

(1) 貿易関係(別表参照)

77年,わが国と中南米諸国との貿易関係に一つの変化が現われた。わが国の総輸出に占める対中南米輸出のシェアは,74年をピークとして漸減傾向にあつたが,77年には微量ではあるが上昇に転じ(7.8%),また,輸入のシェアも,60年代後半以降漸減傾向にあつたが,これも77年には上昇に転じた(4.3%)。しかし,わが国と中南米地域全体との貿易では,わが国の輸出超過が77年においても続いた。

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(2) 経済協力関係

(イ) 日伯大型経済協力案件

76年のガイゼル・ブラジル大統領訪日の際,両国間で実質的合意に達した日伯大型経済協力諸案件のなかには,その後の世界的経済困難の影響を受けて,履行が予定より遅れを余儀なくされた諸プロジェクトもあるが,他方,両国関係者の努力によつてかなりの進捗をみせたプロジェクトもある。

(ロ) グァテマラとの技術協力協定の締結

77年3月,日本とグァテマラとの間に技術協力協定が署名された。同協定は,わが国がグァテマラに対し専門家派遣,機材供与などの各種技術協力を行い,他方,グァテマラ側は,わが国専門家に対し,所得税,関税免除などの諸措置をとることを主な内容としている。

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(3) 漁業協力

(イ) アルゼンティンとの漁業協力

中南米海域は,豊富な未開発漁業資源を有しているが,なかんずくアルゼンティンのパタゴニア沖は未開発の上に非常に有望な漁場であるといわれており,わが国は,アルゼンティンとの協力のもとに,同漁場での試験操業を行うこととなつた。

(ロ) その他の中南米諸国との漁業協力ないし漁業協議

77年,わが国はペルー,エクアドル,メキシコ及びガイアナとの間で,わが方漁民の安全操業の確保,入漁料などについて協議を行うとともに,関連の経済・技術協力についても意見を交換した。

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(4) 文化交流

わが国と中南米諸国との文化交流のあり方を探究する目的で,わが国は,77年3月メキシコ,ペルー,アルゼンティン及びブラジルに文化交流調査チームを派遣した(また,12月には中南米諸国からも多数の参加者を招いて文化交流に関するシンポジウムを開催した)。

<要人往来>

<貿 易>

<民間投資>

<経済協力(政府開発援助)>

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