-大洋州地域-
第2節 大 洋 州 地 域
(イ) 内 政
フレーザー首相は,物価抑制の業績と野党の弱体を好機として下院を解散,12月10日総選挙を行つた結果与党である自由党と国民地方党の保守連合が大勝した。また,西豪州(保守連合政権),南豪州(労働党政権),クインズランド州(保守連合政権)で州議会選挙が行われ,それぞれ与党が勝利を収めた。
(ロ) 外 交
76年に引き続きわが国を含む特定地域に対する重点主義を採つた。対米関係はインド洋共同監視,ANZUS体制内での各種協力,ウラン問題をめぐる協議など緊密裡に推移し,ASEAN諸国との関係では8月のクアラ・ルンプールにおける首脳会談を頂点とする一連の接触を通じて豪州・ASEAN間の意思疎通が一層促進された。
南太平洋地域ではパプア・ニューギニア重視策の下で豪開発協力援助総額の約52%に相当する220.9百万豪ドルの援助を行つた一方,その他の島嶼国に対する援助も増加した。
なお,豪州・中国関係は要人の訪豪など引き続き進展したが,対ソ,東欧関係では大きな動きはなかつた。
(ハ) 経済情勢
(a) 概説
政府は76年に引き続き景気拡大策をとる一方物価及び賃金の抑制策をとつたため,77年第4四半期には消費者物価上昇率が76年同期比で9.3%まで下降し,一部民間投資の上昇もみられた。しかし,失業率は6.5%(12月)という未曾有の高率に達し最大の懸案となつた。
(b) 主要経済事項
豪州政府は,5月「製造業白書」を発表し,製造業の強化,育成を図る指針を示したが,国内産業に対する保護主義傾向は依然継続され,自動車,家電及び繊維品などにつき輸入制限措置がとられた。
他方,政府は,国内資源開発に積極姿勢を示し,8月,ウランの開発・輸出を厳格な管理と規制の下に推進する旨,また,北西大陸棚の天然ガスの開発・輸出を進める旨を明らかにした。
なお,76/77年度の豪貿易収支は,輸出114億豪ドル,輸入103億豪ドルと黒字を示し,資本収支でも黒字となつたが,貿易外収支で赤字となつたため,総合収支では4.9億豪ドルの赤字となつた。
(イ) 内 政
施政2年目を迎えたマルドゥーン政府は,議会での絶対多数勢力を背景に安定政権を維持してきたが,物価の昂進,農産品輸出の減退,失業などの経済問題は一層深刻となり政治・社会問題視される程となつた。
なお,9月に200海里経済水域法案が議会を通過し,78年4月1日より施行の予定である。
(ロ) 外 交
NZは対米協調を重視し,11月同首相が訪米した際も米国のアジア・太平洋に対する積極姿勢を歓迎した。
また,アジア及び南太平洋地域をも重視するとの立場もかえず,8月ASEAN首脳との会議に出席するとともに,50百万ドルの対ASEAN諸国援助を表明した。他方,南太平洋諸国に対しては対外援助費の約半分を注ぐなど深い関心を示している。
(ハ) 経済情勢
(a) 概 説
77年のNZ経済は,依然石油危機以来の不況から脱しきれず,政府は,NZ経済の高い貿易依存度に注目して引締め策の継続により国際収支の改善を図つたが,結局76年並みの赤字を示した。物価も15%上昇し,失業者も戦後最高の2万1千人(12月)に達した。
(b) 主要経済事項
政府は経済危機克服のため輸入ライセンス,輸入担保金制度,財政支出及び賃金の抑制など一連の引締め策により物価の抑制に努める一方,10月失業対策として所得税の引下げ,輸出促進優遇措置などを内容とする緊急予算措置を講じた。
77年の貿易収支は,輸出33億8千万NZドル,輸入31億5千9百万NZドルと4年振りに黒字となつたが,貿易外収支が大幅に悪化したため,経常収支で約6億ドル,総合収支で1億3千1百万ドルの赤字をそれぞれ示した。
(イ) 内 政
8月に独立後初の総選挙が行われ,パング党,人民進歩党を中核とする与党連合が圧勝した。新政権の当面の課題として地方自治制度の整備と経済,社会開発のための国家支出4カ年計画の作成がある。
(ロ) 外 交
PNGは,何れの国にも偏しないとの普遍主義を標榜し,12月末までにわが国を含む40カ国と外交関係を樹立している。
また,PNGは,南太平洋で主導的立場に立つこと,1月ソマレ首相のインドネシア訪問にみられるとおり南太平洋諸国とASEAN諸国との懸け橋となることを志向している。
(ハ) 経済情勢
(a) 概 説
経済活動は77年前半は活発であつたが,後半に至り主要輸出産品であるココア,コーヒーの国際価格が下落したため低調に推移した。また,一部民間設備投資の増加もあつたが何れも新旧設備の交替程度にとどまつた。
(b) 主要経済事項
76年に引き続き内需抑制と通貨の対外価値を維持する政策(キナの対豪ドル2.03%切上げ)をとつて物価上昇率を76年度並みの5%前後に抑え,賃金を物価上昇率に連動する制度を導入するなど経済運営の安定化に努めた。
他方,国際収支では,76/77年度で輸出が517百万キナ,輸入393百万キナと貿易収支は124百万キナの黒字を示し,77年9月期の外貨準備高は375百万キナとなり,76年同期に比し倍増した。
(イ) 3月フィジーで総選挙が行われ野党が僅少差で勝利したが,首班指名をめぐり政局混迷が生じ,総督の大権発動により少数党に転落したカミセセ・マラ前首相が再び首相に就任した。その後9月に再度総選挙が行われ,マラ首相の率いる少数与党が大勝し,政権は安定化した。
(ロ) 11月ナウルで総選挙が行われ,ドウイヨゴ大統領が再任された。
(ハ) 8月ポート・モレスビーで第8回南太平洋フォーラム会議が開かれ,域内諸国が78年3月末までにできるだけ200海里水域を設定すること及び南太平洋漁業機関の設立が合意され,これを受けて11月フィジーにおいて同漁業機関の設立準備会議が開催された。
(ニ) その他,ギルバート諸島が1月自治制に移行したほか,78年7月7日にソロモン諸島が,また,トゥヴァルが10月にそれぞれ独立の予定。
1月には東京で第4回目豪閣僚委員会が開催されたほか,8月にはクアラ・ルンプールで福田総理大臣とフレーザー首相との間に首脳会談が行われた。8月,日豪友好協力基本条約が発効した。
77年には牛肉及び砂糖をめぐつて貿易上の問題が生じた。牛肉について
は,年間輸入枠設定など輸入の安定化をめぐり協議が行われ,相互理解が深められたが合意をみるには至らなかつた。他方,砂糖については,民間当事者間に74年締結の日豪砂糖長期契約の価格改定交渉が2月開始された。交渉は難行したが,11月に至り期間,数量,価格などにつき新たな合意が成立した。
貿易面におけるNZの対日期待感は英国のEC加盟以来強まりつつあつたところ,マルドゥーン首相は,2月,酪農品,牛肉,木材などの対日アクセスを本邦漁船のNZ沖操業継続問題と関連づけた「総合的経済関係」を展開し,わが国に対し,対日アクセス改善を求めた。右要請は8月クアラ・ルンプールにおける日・NZ首脳会談でも繰り返し述べられ,更に10月トールボイズ副首相来日の際も話し合われたが合意に至らず,その結果NZ側は対日漁業交渉に応じないとの態度をとつている。
日・PNG関係は増進されつつあり,1月エア・ニューギニーが鹿児島乗入れを開始した。また,12月にはソマレ首相がわが国を公式訪問し,その際わが国はPNGの経済開発計画である国家公共支出計画に対し1,300万ないし1,500万米ドル相当の借款供与を約束した。
同地域諸国は経済・社会開発計画推進のためわが国に大きな期待を寄せている。わが国は同地域への経済・技術協力に積極的に対処しており,77年には特にトンガと西サモアに対してそれぞれ4億及び1.5億円の水産無償援助を実施した。