-国際連合の諸活動に対する協力-
第3節 国際連合の諸活動に対する協力
国際連合の主要目的は,国際の平和と安全の維持,諸国民の福祉向上及びそのための国際協力の促進である。51の原加盟国で発足した国連は,今日では149の加盟国を擁する最も普遍的な国際機構に発展してきた。同時に国連は,その過程を通じて,発足当初意図されたものとは異なるかたちで発展してきている。このことは,例えば,いわゆる「平和維持活動」が憲章の明文規定によることなく発達をみ,中東やサイプラスで紛争の再発及び拡大の防止に役立つていることや,国際問題としての南北問題が重要性を増し,経済社会分野での国連の果たすべき役割が飛躍的に高まつたことなどにみられる。これは,国連が世界の政治,経済,社会の現実を端的に反映し,発展し,そして行動しうる生きた機関であるということにほかならない。主権国家により構成される国連が何をなしうるかは,加盟国の意思と協力によるところが大きいが,発足直後の国連が理想化された時期,1国の思いのままにならぬことから生ずる国連に対する不満と幻滅の時期を経て,国連の限界を見極めたうえで,可能な限り活用せんとの空気が近年加盟国間に醸成されつつあるともいいうる。このことは,最近の国連総会審議が実務的となりつつあることにもうかがわれる。
今日の国連は,ILOなどの専門機関を始めとする関連諸機関とともに,国連組織と称される有機体を形成している。この国連組織は,その構成国数の飛躍的増加と諸国間の相互依存関係の深化,扱う問題の複雑多様化などにより,平和と安全の維持,軍縮,貿易,援助,社会,人権,労働,婦人の地位向上,人口,文化,教育,環境,科学・技術,原子力,新海洋秩序の模索,運輸・通信その他各種行財政面における協力など,広範な分野で国際協力のための極めて有益な枠組を提供するに至つている。
(1) わが国の基本的態度
平和主義と国際協調を国是とし,国際社会の平和と発展を希求するわが国は,56年の加盟以来一貫して国連の目的と活動に積極的支持を与えてきている。他方,わが国の国際的地位の向上に伴い,国連内においてもわが国の国力に見合つたより大きな貢献を要望する声が高まつてきている。かかる要望を十分認識しつつ,前述の諸分野における国際協力の推進を目的とする国連の諸活動に積極的に参加,協力することは,わが外交の基本政策の一つである。
(2) 77年におけるわが国の国連活動
このような基本政策に基づき,わが国は,77年において活発な国連外交を展開したが,その主要なものは次のとおりである。
(イ) 国連は,多数国間外交推進の重要な場であり,自国の立場を表明し,広く国際世論の理解を得る格好の場である。
第32回国連総会に出席した鳩山外務大臣(当時)は,一般討論演説において,わが国が平和外交に徹し,開発途上国の経済社会開発に積極的に協力していく方針であることを強調した。
(ロ) 各国の外交最高責任者が一堂に会する国連総会は,ハイ・レベルでの意見交換,理解促進の貴重な機会である。わが国代表は,国連総会の機会に米,ソ,中を始めとする多くの国の外交担当者との会談を通じ,2国間関係,国連外交などにつき,わが国の主張に対する理解を求め,意見交換を行つた。
(ハ) 諸国間の相互依存関係の深化に伴い,各国の協力なしには実効的解決が期待できない問題が増加しつつある。例えば,南北問題についても,普遍的な国際機構たる国連は,諸国間協力の格好な枠組を提供している。
わが国は,経済社会開発分野の中枢機関ともいうべき経済社会理事会の一員として活躍してきたが,再選され,通算6期目の任期を80年末まで勤めることとなつた。このほか,国連環境計画理事会,国連工業開発機構の工業開発理事会,世界食糧理事会などのメンバー国に選出された。
(ニ) わが国は,国際社会が直面する諸問題に国連が時宜を得て有効に対処しうるよう貢献している。
日航機とルフトハンザ機のハイジャック事件を契機に,わが国は,関心を有する諸国とともに,「国際民間航空の安全」問題に関する総会議題の追加と決議のコンセンサス採択に尽力した。
また,人質行為防止国際条約を起草する委員会のメンバー国として作業に積極的に参加した。
(ホ) わが国は,これまで国連の機能強化,基盤強化にも努めてきている。
この方面では,わが国は,「憲章及び国連の役割強化特別委員会」,及び国連の経済社会分野における機構改革問題を扱う「機構改革委員会」にメンバー国として参加した。また,国連活動の財政的基盤を成す各加盟国の国連通常予算分担率改訂問題でも,合理的な基準再検討を訴えた。その結果,米ソに次ぐ第3位の負担国であるわが国の分担率は,78年及び79年の両年は8.64%となり,国連加盟以来増加の一途たどつてきたわが国の分担率は初めて引き下げられた(77年は8.66%であつた)。
また,わが国は,国連諸機関の構成問題を取り上げた。これは,わが国の属するアジア・グループがその構成国数に比較して各種委員会で割り当てられる議席数が少ないことに起因するものであり,わが国の問題提起は大きな反響を呼んだ。