第5節 行政財政問題

 

(1) 国連は経済・社会活動及び平和維持活動を軸として年々その規模を拡大しつつあるが,それに伴つて行政・財政面,特に予算と人事問題を中心に多くの問題が生じてきている。わが国としても国連外交を有効に進めていくうえから,これら行政・財政問題についても更に積極的に取り組んでいく必要がある。

(2) 75年の第30回総会で承認された76~77年度国連通常予算額は約7億4,600万ドルであつたが,第31回総会では,その後の新規事業等に対する追加経費として約3,800万ドルが承認され,この結果改訂予算は約7億8,400万ドルとなつた。なお国連予算額は過去10年間に約3倍となつている。

(3) また,第31回総会では分担金委員会により勧告された77~79年の3年間にわたる国連経費分担率案が審議された。国連分担率は,主として各国の国民所得比較を算定の基礎として分担金委員会が案を作成し,総会に勧告することとなつているが,今回の勧告によればOPEC諸国が2倍から4倍となる一方,わが国(7.15%→8.66%),西独(7.10%→7.74%)を除く西欧主要国(英国,フランス,イタリア,カナダ等)及びソ連が軒並み引き下げられることとされた。

 これに対して審議当初,OPEC諸国が強硬に分担金委員会の勧告に反対し,一部途上国もこれに同調した。わが国も分担率策定基準について,その公平性を期すべしとの立場から,これら諸国とともに分担金委員会の勧告に反対した。一方,ほとんどの西側諸国とソ連圏及び一部途上国が賛成に回り,議論は一時紛糾したが,結局,上記勧告を77年1年のみ適用し,77年に再度検討を行うべしとの決議を採択して終了した。

 なお,わが国の77年の分担率は8.66%,分担金額は約2,900万ドルとなつたが,わが国の国連分担金額は国連予算額の増大と,分担率の増加に伴い,過去10年間に約7倍の大幅増加となつている。

(4) 職員問題では,国際人事委員会(ICSC)が専門職以上の職員の給与に関する最終報告書を第31回総会に提出し,それに基づき基本給,地域調整給,諸手当の改正が行われた。この改正は基本的にはベース・アップを目的としたものではなく,給与要素の組替えを主眼としたものであるが,生計費指数の高い地域に勤務する独身職員に対しては,同一地域に勤務する有扶養家族者との関係で相対的に若干の優遇措置となつている。

(5) 国連事務局職員の採用については地理的配分を考慮することとなつているところ,日本人職員数は,76年の国連事務総長報告によれば,70名(加盟国中第5位)であるが,わが国の職員の望ましい範囲(117~162人とされている)をかなり下回つているほか,特に幹部職員が3名と非常に少ないことが指摘される。また,わが国の分担率が8.66%と引き上げられたことにより,わが国の職員数の望ましい範囲も137~186人となることが予想される。

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