3. | 日本政府が関与した重要共同コミュニケ及びその他の外交文書 |
(条約,協定類は除く)
(1) 二国間関係
ニコラエ・チャウシェスク・ルーマニア社会主義共和国大統領は夫人とともに,1975年4月4日から9日まで国賓として日本国を訪問した。ニコラエ・チャウシェスク・ルーマニア社会主義共和国大統領夫妻は,滞在中天皇・皇后両陛下と会見した。
ニコラエ・チャウシェスク・ルーマニア社会主義共和国大統領は三木武夫日本国内閣総理大臣と公式会談を行つた。会談は極めて友好的,建設的かつ親密な雰囲気の中に行われた。会談の同出席者は次のとおりであつた。
日本側 宮澤喜一外務大臣,石川良孝駐ルーマニア大使
ルーマニア側 ゲオルゲ・オプレア副首相,ジョルジェ・マコヴェスク外務大臣,ミハイル・フロレスク化学工業大臣,ヴァシーレ・プンガン大統領顧問およびニクラエ・フィナンツー駐日大使
右会談において日本国内閣総理大臣とルーマニア社会主義共和国大統領は,相互に自国の経済的社会的発展について説明した。また両国関係の現状及び将来の見通し並びに両国が相互に関心を有する主要な国際問題につき有益な意見の交換を行つた。
総理大臣と大統領は,近年多くの分野において両国関係が順調に発展していることに満足の意を表するとともに,特に経済,文化及び科学技術の分野における両国関係の一層の拡大及び多様化の可能性があることを指摘した。
総理大臣と大統領は,両国間の経済貿易関係が引き続き発展していることに満足の意を表明した。双方はまた近年における実業界の交流の増大に満足の意を表するとともに,日本・ルーマニア経済委員会及びルーマニア・日本経済委員会が果たした重要な役割を高く評価し,両国間の経済関係の拡大のために同経済委員会の活動をさらに支持する用意があることを表明した。
両国間の貿易経済関係に関する事項を検討するため,政府の代表者で構成される混合委員会を設立することが合意された。右混合委員会は東京とブカレストで交互に開催される。
総理大臣と大統領は,大統領の日本滞在中に文化交流取極が署名されたことに満足の意を表し,同取極が両国間の文化交流の促進に貢献するであろうとの期待を表明した。
総理大臣と大統領はまた査証料の免除及び査証発給の促進に関する取極が署名されたことに満足の意を表し,同取極が両国間の人的交流の増大に貢献するであろうとの期待を表明した。
総理大臣と大統領は,所得に対する二重課税防止条約締結交渉をまもなく開始することになつたことに満足の意を表し,同条約締結が両国経済貿易関係の発展に貢献するであろうとの期待を表明した。
総理大臣と大統領は,科学技術分野における協力に関する取極が署名されたことを歓迎し,本取極が両国間の本分野における交流の活発化に貢献するであろうとの確信を表明した。
総理大臣と大統領は,国際情勢の現状に関し長時間の意見交換を行つた。総理大臣と大統領は,国際関係における平和と安全という安定した環境を確保するためには国家間の関係を国民的独立と主権,平等な権利,内政不干渉,相互協力及び互恵の原則の厳格な遵守の上に基礎づけねばならないとの確信を強調した。
総理大臣と大統領は,国際問題の解決に武力,又は武力による威嚇を用いることに反対であることを宣明した。
総理大臣と大統領は,すべての国々が,国の大きさ,社会体制,発展の水準に係りなく,人類の共同体が直面する重要な諸問題の解決に,積極的に参加すべきであるとの見解を表明した。
総理大臣と大統領は,世界の永続的平和の確保のためには軍備競争の中止及び有効な国際管理の下での全般的軍縮,なかんずく,核軍縮の達成が必要である旨確認した。核の分野における事態の推移を深く憂慮して,双方はすべての諸国民が核拡散の防止にあらゆる努力を払うべきであると強調した。
この点に関し,総理大臣と大統領はかかる努力において核兵器保有諸国が高度の責任を有する旨を強調した。
総理大臣と大統領は先進諸国と発展途上諸国の間の格差を縮め,かつ究極的にはこれを除去することが,世界の平和と安定にとり特に重要な要因であることに意見の一致をみた。
両者は,低開発状態の一掃及び発展途上諸国の経済的,社会的発展の加速化のために有効な措置をとることが緊要であるとの確信を表明した。
総理大臣と大統領は,協力,平等及び公正に基づいた新しい世界経済秩序の確立の必要性を確認した。
大統領は,欧州の情勢,なかんずく,欧州安全保障協力会議等に見られる緊張緩和の動きについて,またバルカンの情勢について説明を行つた。
総理大臣と大統領はサイプラスの情勢に関し憂慮を表明した。
総理大臣は,極東の情勢に関して説明を行つた。
双方は中東情勢につき憂慮の念を表明するとともに,安全保障理事会決議第242号及び第338号に従つて,1967年戦争の結果として占領されている全地域からイスラエル軍が撤退すること及び同地域のすべての国家の独立,領土保全,主権が保障されることを基礎とし,さらに国際連合憲章に合致したパレスチナ人民の自決権を含む合法的な諸権利が承認されることを基礎として当該地域における公正かつ永続的な平和をできるだけ早急に確立することの必要性を強調した。
インドシナの現情勢につき,総理大臣と大統領は,同地域における永続的平和の確保並びに平和的手段により自己の問題を解決せんとするインドシナ諸人民の権利の遵守を確保するためパリ和平協定の実施については更に着実な努力が必要であることを強調した。
国際平和と安全の維持,並びに経済的,社会的発展の促進について国際連合が有する重要性を考慮しつつ,総理大臣と大統領は,憲章に謳われた諸原則に基づいて,国際協力の手段としての国際連合の有効性を増進せしめるために,より確固たる措置をとる必要があることに合意した。
総理大臣と大統領は,この会談が両国間の友好関係の発展に重要な貢献を行つたことを認めた。
総理大臣と大統領は,同大統領訪日の結果に満足の意を表明し,両国間の協力関係の増進及び国際平和のために,種々のレベルにおける交流を継続することの重要性を強調した。
滞在中ルーマニア社会主義共和国大統領,同夫人及び随員一行は東京,大阪,京都,堺及び横浜を訪れ,経済,社会及び科学の分野における日本国民の発展及びその文化的伝統を親しく見聞した。
ルーマニア社会主義共和国大統領及び同夫人は日本国政府及び国民の暖かい歓迎ともてなしを受けた。
大統領は,経済界の指導的要人とも会談した。会談は,極めて友好的な雰囲気の中で行われた。
ニコラエ・チャウシェスク大統領,同夫人及び随員一行は,日本滞在中に示された暖かい歓迎と厚遇に対し,天皇・皇后両陛下,日本国政府及び国民への深い感謝の念を表明した。
ニコラエ・チャウシェスク・ルーマニア社会主義共和国大統領は,三木武夫日本国内閣総理大臣に対し,ルーマニア社会主義共和国を公式訪問するよう衷心より招待を行つた。総理大臣はこの招待を感謝の念をもつて受諾した。訪問の時期は外交経路を通して取決められる。
東京にて
1975年4月9日
日本国内閣総理大臣 三 木 武 夫 ルーマニア社会主義共和国 大統領 ニコラエ・チャウシェスク |
(1975年6月17日 ソ連側発表)
最近,ソ連邦を含む第三国と日本国との関係を複雑にする目的をもつて日本国に対し影響力を行使しようとする中国指導部の試みは益々明確となりつつある。このことは,現在締結交渉が行われている平和友好条約に,中国指導者も認めるように何よりもソ連邦に対して向けられた条項をあらゆる手段をもつて無理やり挿入せんとする北京の努力に最も赤裸々に表われている。中国指導者のかかる行為は,世界において益々支持を得つつある国際緊張緩和及び平和の強化という傾向に対して反対する自己の対外政策の軌道に,日本国を何らかの形で引き込もうとする彼等の意図を反映している。
モスクワにおいては,このことに関し,以下の考え方を述べることが必要であると考える。
ソ連邦及び日本国は,善隣友好関係の強化が,両国国民の共通の利益に合致するのみならず,極東及び全世界の平和と安定にとつて多大の貢献となることを一再ならず声明した。このことは,特に,1973年10月10日付のソ・日共同声明において定められた。
ソ連邦は,一貫してこの方針を遵守している。ブレジネフ・ソ連邦共産党書記長は,本年2月3日付の三木日本国総理大臣あて書簡において,両国は隣国であり,両国関係は,真の友好,善隣及び互恵的協力の途に沿つて発展することが客観的必要性の求めるところであるということを強調した。
全ての点から判断して,このことは,日本の指導者が一度ならずソ連邦との関係において正にかかる路線をとることに賛意を表明してきているので,日本の指導者の見解ともくい違つていない。特に,三木総理大臣が本年1月14日及び4月18日付の親書において,ソ連邦との間に善隣関係を発展させることは,日本国の最も重要視するところの1つであると述べられたことが想起される。
ソ連政府は,日本国政府が,第三国との関係を発展させるに際し,ソ連邦と日本国との間の関係発展に損害をもたらす可能性のあるような如何なることも行わないことを希望する。われわれの見解によれば,双方は,両国関係が善隣友好の基礎の上に発展することを確保する問題において,日本国及びソ連邦が直面している重大な課題の意義を明瞭に理解しなければならない。
自己の狭い志向に従つてソ日関係の改善に障害を与ようと試みている第三国の如何なる行動に対しても,日本国及びソ連邦の共通の利益のために当然の反撃を加えるべきである。ソ連邦は,正にかかる方針をとつており,隣国たる日本国の同様の姿勢を期待する。
(1975年6月19日 日本側発表)
日本国政府は,これまで累次にわたり明らかにしてきたように,全ての国との間に友好関係を増進し,もつて世界の平和に寄与することを外交の基本としている。このような基本的立場に立脚し,隣国であるソ連邦との間に善隣友好関係を促進することは日本国政府の一貫した政策である。ソ連側は,1973年3月20日付の田中内閣総理大臣あてブレジネフ共産党中央委員会書記長の書簡においても,また1975年2月26日付の三木内閣総理大臣あてブレジネフ共産党中央委員会書記長の書簡においても,日本国政府のこの面における努力を常に理解と支持をもつて迎える旨明確に述べている。
もとより,国家間の関係においてそれぞれの国が他の第三国との間にかかえる問題は同一でないことは自明である。
日本国政府は,現在中国政府との間に,平和友好条約の締結交渉を行つているが,右は1972年9月29日付日中共同声明に基づき,日中間の平和的,友好的な関係を増進することを目的としたものである。日中共同声明は,日中両国間の国交正常化が第三国に対するものではないことを明からにしており,同様に,右条約に臨む日本国政府の立場が第三国に対するものではないことは,前記の日本側の基本的立場からみて疑問の余地がない。
他方,日本国とソ連邦との関係は,1956年の国交正常化以来幅広い分野にわたつて顕著な進展をとげているが,日ソ間には未だに平和条約が締結されていない。
右に関連し,ソ連側声明は,「双方は,両国関係が善隣友好の基礎の上に発展することを確保する問題において,日本国及びソ連邦が直面している重大な課題の意義を明瞭に理解しなければならない」旨述べているが,日本国政府は,まさにこのような認識に立つて,日ソ双方が両国の関係を真に安定した基礎の上に発展させるため,できるだけ早い時期に第2次大戦の時からの未解決の問題を解決して平和条約を締結すべきであると考えており,このためソ連邦政府の積極的な態度を期待するものである。このことは,ひとり日ソ両国民の共通の利益に応えるのみならず,極東ひいては世界平和の増進に貢献するものと確信する。
(ニ) 第7回日加閣僚委員会共同声明 (1975年6月24日 東京において)
1. | 第7回日加閣僚委員会は,1975年6月23日及び24日東京において開催された。 |
2. | 日本側代表は宮澤喜一外務大臣(議長),福田赴夫経済企画庁長官(副総理),大平正芳大蔵大臣,安倍晋太郎農林大臣,河本敏夫通商産業大臣及び奈良靖彦駐カナダ日本国大使であつた。 カナダ側代表は,アラン・J・マッカッケン外務大臣,ジャン・タレティエン内閣予算局長官,ドナルド・S・マクドナルド・エネルギー・鉱山・資源大臣,アラステア・W・ギレスピー通商産業大臣,ユージン・F・ウエラン農業大臣及びロス・キャンベル駐日カナダ大使であつた。 |
3. | 両国閣僚は,緊密かつ実りある両国関係が第6回日加閣僚委員会会合以来着実な発展を遂げ,なかんずく,1974年9月の両国首相の会談が,日加関係の基盤を一層幅広く,かつ,深みのあるものとする重要な契約となつたことに喜びの意を表明するとともに,友好と理解の精神の下に,両国が共通の関心を有する諸問題につき意見を交換した。 |
4. | 両国閣僚は,自由と民主主義に基づく政治経済体制を保持し,また,国際協調の下に世界の平和と繁栄に貢献していくとの共通の目標を有する日加両国が,現在の世界が直面する多岐にわたる新たな諸問題の解決のために両国間の協力及び協議関係を,経済面のみならず政治面においても一層拡充すべきである旨意見の一致をみた。 |
5. | 両国閣僚は,かかる協議の精神の下に,現下の国際情勢,なかんずくインドシナにおける武力紛争の終えん以降のアジア・太平洋地域の情勢について意見を交換した。両国閣僚は,域内各国の経済的,社会的基盤の強化を助けるとの目的を共有し,同地域内のすべての国々の間で安定的かつ建設的な関係のパターンがうち立てられることを期待した。両国閣僚は,地域的協議及び協力がとりわけ東南アジア諸国連合の場において進捗していることに留意した。朝鮮半島の情勢に関し,両国閣僚は,同半島の平和と安定の促進に貢献するために国際連合及びその他の場において一層の協力を行う可能性につき討議した。 |
6. | 両国閣僚は,核実験の継続及び核拡散の危険につき共に深い憂慮の念を示し,これらに関連する事項につき緊密,かつ,頻繁に協議することとしたいとの願望を再び強調した。両国閣僚は,1974年9月両国首相が核兵器保有国になることを排するとの両国政府の決意を確認し,かつ,軍縮,なかんずく核軍縮のためすべての国による献身的な努力が必要であることを再確認したことを想起し,原子力資材及び設備の移転は,受領国における有効な保障措置の下に行われるべきであるとの共通の考えを表明した。 |
7. | 両国閣僚は,長期的かつ広範な視野から,両国の経済情勢及び現在世界経済が直面する諸問題につき意見を交換した。両国閣僚は,国際協力の精神に沿つて,一般経済情勢,通商,国際金融,エネルギー,食糧,一次産品,対開発途上国協力等の諸問題に取り組むことが極めて重要であること,及びこのために日加両国が積極的な国際的役割を果たすべきであることにつき意見の一致をみた。 |
8. | 両国閣僚は,先進諸国において経済の顕著な回復が未だ見られない世界経済の現状について懸念を表明し,世界経済の健全な発展を達成するために,インフレ抑制の推進との調和を図りつつ,生産と雇用の回復を確保する努力の重要性を再確認した。 |
9. | 両国閣僚は,ガットの枠内で現在推進されている多角的貿易交渉が実質的段階に入つたことに満足の意をもつて留意し,1973年9月東京において採択された大臣宣言の目的と原則に従つて交渉を一層進展させるべきことにつき意見の一致をみた。両国閣僚はまた,1974年5月に採択された宣言を更に1年間延長することとした経済開発協力機構の第14回閣僚会議の決定に対する支持を再確認した。 |
10. | 両国閣僚は,国際通貨基金の石油融資制度の拡大,経済協力開発機構の金融支援基金の設立等の具体的成果を挙げるに至つた,世界経済の均衡ある発展を図るために国際社会が金融面で進めてきた協調的努力について喜びの意を表明した。しかしながら,両国閣僚は,多くの開発途上国が依然として経済的困難に直面していることに留意し,これらの国に対する資源の移転を増加するための協議が進められていることを歓迎した。 |
11. | 両国閣僚は,世界のエネルギー情勢の最近の進展につき意見を交換し,国際エネルギー機関の最近の閣僚会議の成果に留意した。両国閣僚は,産油国と消費国との間の対話の再開を促進するためにとられている措置を歓迎し,このための努力を続けるとの決意を表明した。両国閣僚は,消費国間の協力の重要性を認識するとともに,その産油国・消費国の対話との関係に留意した。 |
12. | 両国閣僚は,両国及び世界における農業,漁業及び食糧事情につき討議し,食糧品の市場を安定化し,かつ,食糧生産者を奨励するための措置をとることの重要性につき合意した。この関連で,両国閣僚は,市場へのアクセスの信頼性及びこれらの市場に対する供給の安定の重要性を強調した。 |
13. | 両国閣僚は,一次産品について新たな国際的関心が寄せられていることに留意し,国際的な一次産品貿易の不安定な状態から生産国及び消費国の双方に生じる問題に対する解決策が見出されることを希望する旨表明した。両国閣僚は,一次産品問題の解決策はケース・バイ・ケースの検討を通じてのみ見出されるであろうとの確信を表明するとともに,一次産品貿易の問題は,多くの開発途上国の経済にとつて特に重要であることを認めた。 |
14. | 両国閣僚は,最近の国際経済情勢の変動を通じ,あらためて開発途上国と先進国の間の緊密な相互依存関係が認識されたことに留意し,1975年の経済協力開発機構の閣僚会議において採択された開発途上国との関係に関する宣言を再確認し,世界経済における開発途上国の地位を強化するためにこれらの国に対する国際協力を一層促進することの緊急な必要性を認めた。両国閣僚は,両国がこの目的のために努力を強化することを確認した。 |
15. | 両国閣僚は,両国間の互恵的経済関係の推進が両国経済の健全な発展のためにきわめて重要であることを再確認した。両国閣僚は,田中総理大臣及びトルドー首相が,1974年9月にオタワで開催された会談において,日加間の広範かつ互恵的な経済関係の存在に留意し,両国間の経済面の協力を一層発展させるという問題について討議したことを想起した。両国閣僚は,変動する世界経済情勢の下に,両国間の関係を一層深め,かつ,幅広いものとする大きな可能性が存在することに意見の一致をみた。両国閣僚は,従つて,増大し,かつ,互恵的な経済面の協力にとつて,最も有望な日加両国の経済の分野を明確にするために,両国の政府関係者ができるだけ早く作業を開始すべきことに合意した。両国閣僚は,かかる作業が,製造業部門及びすべての分野にわたる資源部門を対象とすること,また互恵的な投資の拡大,合弁事業を含む社会間のより拡大された提携関係,科学技術交流,供給及び市場アクセスのよりよき保証を与えるような条件等の事項を含むであろうことに合意した。 |
16. | 両国閣僚は,両国政府関係者が昨年9月の日加首脳会談の成果をふまえ,通商に関する日本国とカナダとの間の協定の改訂につき探究を進めていることに満足の意を表明した。両国閣僚は,両国間の経済関係の発展のために一層確固たる法律関係上の基盤をもたらすようなより幅広くかつ広範な協定を作成するべく政府関係者がこの作業を進めるべきであることに意見の一致をみた。 |
17. | 両国閣僚は,両国間の貿易が急速に増大していることに満足の意をもつて留意するとともに,より自由な貿易を推進し,保護主義的動きを抑えるとの決意,及び資源,加工品,製品の輸出を含め,両国間の貿易関係の幅を拡大するとの目的を再確認した。 |
18. | 両国閣僚は,両国の経済における鉱物及びエネルギー資源並びに農林産品の重要性を再確認した。両国閣僚は,6月9日及び10日に東京で開催された日加資源小委員会における意見交換がきわめて有益であつたことに留意するとともに,安定的かつ互恵的な基礎の上にこれらの分野における両国間の関係の一層の発展を図ることに意見の一致をみた。両国閣僚は,農業及び食糧産品の両国の貿易が双方にとつて満足すべき形で行われることの重要性を強調するとともに,食糧及び農業問題に関する政府関係者の協議のための会合が継続されるべきであること及び次回会合が早期に開催されるべきことに合意した。 |
19. | 両国閣僚は,両国間の資本交流の増大が両国間の経済関係をより緊密かつ高度のものとしうることに留意し,両国の外資政策がそのような目的の達成を容易にするような形で運営されるべきであることに意見の一致をみた。 |
20. | 両国閣僚は,科学技術の分野での協力が拡大していることの最近の証左及び5月19日から22日まで東京で開催された政府関係者の会合によつて協力関係が一層増進されたことに満足の意を表明した。両国閣僚は,いくつかの科学技術協力計画がすでに実施に移されており,新しい計画の見通しは明るいことに満足の意をもつて留意した。 |
21. | 両国閣僚は,民間航空に関する現状に言及し,両国間の航空関係の互恵的な発展を進めることが必要であることに留意した。 |
22. | 両国閣僚は,近年増大しつつある両国民間のあらゆるレベルでの接触及び交流が両国間のきずなの強化及び多角化に資してきたことに留意し,両国間の知識及び理解の幅を,なかんずく文化交流を通じて広げることが基本的な重要性を有し,あらゆる可能な方途により奨励されるべきであることにつき意見の一致をみた。この関連で,両国閣僚は,1974年9月の両国首相間の共同声明に基づき現在行われている両国間の文化協定締結交渉の進展に留意し,その早期締結を希望した。両国閣僚は,また,1974年9月に両国首相が創設する意向を表明した学術上の関係を促進するための計画が現在活発に進展している事実に満足の意を表明し,同計画が効果的に実施されることを期待した。 |
23. | 両国閣僚は,日加閣僚委員会の第7回会合が,両国指導者間の個人的接触を確立する機会を拡大し,もつて相互理解及び信頼の一層の強化に大きく寄与したことを歓迎した。この関連で,カナダ側閣僚は次回の会合をカナダで開催するとのカナダ政府の招請を行い,日本側閣僚は喜んでこれを受諾した。 |
(1975年8月6日 ワシントンにおいて)
日本国総理大臣とアメリカ合衆国大統領は,日米両国民が民主主義の基本的価値観を分かちあい,相互信頼と協力によつて結ばれていることを認識し,両国は一層開放的で自由な国際社会を築くために引続きあいたずさえて努力することを確認し,次のとおり声明する。
一層安定した平和な世界秩序を実現するためには,イデオロギー,伝統及び発展段階の相違を超えて,すべての国々が国際的行動についての一定の原則をうけいれ,創造的な国際的対話を確立することが必要である。
このような原則には,すべての国家の主権を尊重すること,他国の正当な利益を認めること,国際折衝において相互尊重の態度で臨むこと,平和裡に国家間の相違の解決を求める決意を持つこと,世界における社会的正義と経済的進歩を強く擁護することが含まれなくてはならない。
日米両国は,このような原則を支持し,これを反映した国家間の対話を育成することを約し,多くの分野にわたり共同して努力するにあたつて,協力関係を拡大強化する。日米両国は,アジアにおける公正かつ永続的平和が全世界の平和にとつて緊要であることを認識し,同地域の国々がこのような平和を確固たるものとするために払う努力に対し,あらゆる支援を与える。
国際経済社会関係は,諸国民の繁栄並びにすべての個人及び国家の願望と創造性を促進するものでなければならない。開発途上国と先進国の利益,原材料産出国と消費国の利益は,全体の福祉を増進し,社会的経済的正義へ向かつて一層近づくような形で両立がはかられなければならない。
科学と技術,貿易と通信手段によつて世界は狭くなつており,国家間の相互依存関係が,すべての国民生活と福祉に影響を及ぼすことは今や現実となつている。国際経済機構及び制度は,このような相互依存関係を反映した形で,かつ,経済問題にとりくむにあたり対決よりも協調を促進する形で,機能するものでなければならない。
病いと飢餓に起因する苦悩は,人道的な国際経済社会秩序の実現を妨げる最も深刻な,かつ,悲しむべき要因である。資金,教育,技術の面で力を有する先進国は,このような状態を改善する特別の責任を負つている。こうした苦悩の種が地上から除去される日が一日も早く来るよう,知識,資源及び組織面の技能をあらゆる国々の間で一層効果的に分かちあうことが至上命題となつている。このような努力においても,日米両国は,全面的な貢献を行うものである。
Joint Statement
by Prime Minister Takeo Miki
and President Gerald R. Ford
August 6, 1975
The Prime Minister of Japan and the President of the United States, recognizing that the Japanese and American peoples share fundamental democratic values and are joined together by ties of mutual trust and cooperation, affirm that their two nations will continue to work together to build a more open and free international community, and state as follows:
-A more stable and peaceful world order requires the acceptance by all nations of certain principles of international conduct, and the establishment of a creative international dialogue-transcending differences of ideology, tradition or stages of development.
-Those principles must include respect for the sovereignty of a11 nations, recognition of the legitimate interests of others, attitudes of mutual respect in international dealings, determination to seek the peaceful resolution of differences among nations, and firm commitment to social justice and economic progress around the globe.
-Japan and the United States pledge to support these principles, and to nurture a dialogue among nations which reflects them. They will expand and strengthen their cooperation in many fields of joint endeavor. Recognizing that equitable and durable peace in Asia is essential to that of the entire world, Japan and the United States will extend every support to the efforts of the countries of the region to consolidate such a peace.
-International economic and social relations should promote the prosperity of all peoples and the aspirations and creativity of individuals and nations. The interests of developed as well as developing countries, and of consumers as well as producers of raw materials, must be accommodated in a manner which advances the well-being of all and brings closer the goa1 of social and economic justice.
-In a world made small by science and technology, as well as by trade and communications, interdependence among nations has become a reality affecting the lives and welfare of a11 peoples. International economic institutions and systems must function in a manner reflecting that interdependence and promoting a cooperative rather than a confrontational approach to economic issues.
-The suffering caused by disease and hunger is a most serious and poignant impediment to a humane international economic and socia1 order. The financial, educational and technological resources of developed countries give them a special responsibility for the a11eviation of these conditions. It is imperative that there be an increasingly effective sharing of knowledge, resources and organizational ski11 among a11 countries to hasten the day when these scourges will be eliminated from the earth. In these endeavors also, Japan and the United States will contribute fu11y.
(ヘ) 日米共同新聞発表 (1975年8月6日 ワシントンにおいて)
1. | 三木総理大臣とフォード大統領は,8月5日及び6日の両日ワシントンにおいて会談し,共通の関心を有する種々の問題について包括的な検討を行つた。両首脳の討議は,宮澤外務大臣とキッシンジャー国務長官も参加し,打ちとけた友好的ふん囲気の中で行われた。両者の会談は,充実したものであり,日米両国間の力強く幅広い今日の友好関係を反映するものであつた。 |
2. | 総理大臣と大統領は,フォード大統領の日本訪問の際の1974年11月20日の共同声明に盛られている日米両国間の関係の基礎となる基本的諸原則と共通の諸目的を再確認した。この再確認にあたり,総理大臣と大統領は,日米両国が,基本的価値観と理念を共有しつつも,その国民性や置かれている状況を異にしており,両国は,共同して,こうした相違に根ざす力を活用し,成熟した,互恵的かつ補完的関係を築いてきたことに留意した。両者は,日米両国が,世界の平和と繁栄という共通の目標に向かつて建設的かつ創造的協力を行うことこそ,かかる両国にとつて基本的に重要であることを強調した。両者は,両国政府間において腹蔵のない率直な対話が行われてきたことに満足の意を表しつつ,かかる協議を維持,強化することを約した。この目的のために,外務大臣と国務長官は,共通の関心を有する二国間及び世界一般にわたる問題について,年2回検討を行うこととなる。 |
3. | 総理大臣と大統領は,インドシナにおける武力紛争終息後のアジアにおける諸情勢につき討議した。大統領は,アジアが世界の平和と進歩にとつて重要であることを認めつつ,米国が同地域において積極的かつ建設的役割を引続き果たすこと,及び同地域における米国の条約上の約束を引続き守ることを再確認した。総理大臣と大統領は,多くのアジア諸国が,自らの政治的,経済的及び社会的基盤を強化する努力を行つていることを歓迎した。両者は,日米両国は,このような努力に対し引続き援助と協力を行う用意があることを述べた。両者は,韓国の安全が朝鮮半島における平和の維持にとり緊要であり,また,朝鮮半島における平和の維持は日本を含む東アジアにおける平和と安全にとり必要であることに意見の一致をみた。両者は,かかる平和を維持するために現行の安全保障上の諸取極がもつ重要性に留意した。同時に,両者は,緊張を緩和させ,ひいては平和的統一を達成するために南北間の対話が進捗することを強く希望した。国連における朝鮮問題に関して,両者は,すべての当事者が,現在の休戦を保持する体制を維持することの重要性を認識するようにとの希望を表明した。 |
4. | 総理大臣と大統領は,日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約は,極東の平和と安全の維持に大きく寄与してきているとともに,アジアにおける国際政治の基本的構造の不可欠の要素であり,同条約を引続き維持することは,両国の長期的利益に資するものであるとの確信を表明した。両者は,さらに,米国の核抑止力は,日本の安全に対し重要た寄与を行うものであることを認識した。これに関連して,大統領は,総理大臣に対し,核兵力であれ通常兵力であれ,日本への武力攻撃があつた場合,米国は日本を防衛するという相互協力及び安全保障条約に基づく誓約を引続き守る旨確言した。総理大臣は,日本は同条約に基づく義務を引続き履行していく旨述べた。総理大臣と大統領は,同条約の円滑かつ効果的な運用のために一層密接な協議を行うことが望ましいことを認めた。両者は,両国が協力してとるべき措置につき,両国の関係当局者が安全保障協議委員会の枠内で協議を行うことに意見の一致をみた。 |
5. | 総理大臣と大統領は,共通の関心を有する種々の国際問題につき討議した。大統領は,米国が,戦略兵器制限に関する米国とソ連との間の第2次協定交渉の早期妥結をはかるべく引続き努力することに留意した。総理大臣と大統領は,現在行われている諸努力を通じて,中東における平和的解決に向かいすみやかな進展がみられるよう強い希望を表明した。 |
6. | 総理大臣と大統領は,世界における最近の核拡散の傾向を憂慮し,核拡散防止及び適切な保障措置の発展のための国際的な努力に,日米両国が積極的に参加していくべきであることに意見の一致をみた。両者は,核軍備制限,核兵器非保有国の安全保障及び原子力の平和利用の分野において,あらゆる核兵器保有国が積極的に貢献すべきことを強調した。総理大臣は,日本ができるだけ早い機会に核兵器不拡散条約を批准するための所要の手続きを進める意向を表明した。 |
7. | 総理大臣と大統領は,世界各国間の経済的相互依存関係がますます深まりつつあることにかんがみ,日米両国が,安定し,均衡のとれた世界経済の発展のために特別の責任を共に有していることにつき意見の一致をみた。両者は,両国が,緊密な協議を通じ,世界経済の一般情勢,国際金融,貿易,エネルギー及び先進国と開発途上国との間の協力に関する諸問題を,すべての国の利益になるような形で解決するため努力することに意見の一致をみた。両者は,両国間の貿易・投資関係が,着実に,互恵的な形で拡大しつつあることに満足の意をもつて留意した。 |
8. | 総理大臣と大統領は,世界経済のために自由かつ拡大的な貿易が重要であることを認め,開放的な国際貿易制度の必要性を強調するとともに,日米両国は,現在ジュネーヴにおいて,関税及び貿易に関する一般協定の枠内で進められている多角的貿易交渉東京ラウンドにおいて引続き積極的かつ建設的な役割を果たすことを確認した。 |
9. | 総理大臣と大統領は,世界のエネルギー情勢には依然として不安定な要素が残つていることを認識し,これまで進められてきた消費国間の協力の進展に満足の意を表明した。両者は,この分野及びエネルギー問題に関するそれぞれの国の努力の進展について,日米両国の協力を維持,強化することに意見の一致をみた。両者は,国際エネルギー問題の解決のためには,すべての国による相互理解と協調が基本的に必要であることにつき意見の一致をみ,産油国と消費国との間の調和ある関係の進展が緊要であることに留意した。この関連で,両者は,産油国と消費国との間の対話を再開するために現在とられている措置を歓迎し,両国はこのための協力をより一段と強化し,調整するとの決意を表明した。 |
10. | 総理大臣と大統領は,増大しつつある世界の食糧需要を満たすために適正な供給と分配を確保することが望ましいことに留意し,開発途上国の食糧生産力を増強するための農業開発援助の重要性につき意見の一致をみた。大統領は,更に,国際的に調整された国別穀物備蓄制度の早期確立の必要性に留意した。総理大臣は,輸出国と輸入国の間の互恵的協力を通じて農産物貿易が着実に拡大することの必要性を強調した。総理大臣と大統領は,両国間の互恵的な農産物貿易を維持,拡充することが両国の利益となることを再確認した。 |
11. | 総理大臣と大統領は,開発途上国が,自国の経済発展を促進するため,及び自国民の人間としての願望を満たすために行つている努力を助けることの必要性に留意し,開発援助,一次産品貿易を含む貿易の分野における日米両国間及び開発途上国との間の協力を促進することの重要性について意見の一致をみた。 |
12. | 総理大臣と大統領は,医学,科学及び技術の分野における両国間の現行の協力計画が過去10年間に挙げてきた業績及び日米科学技術協力審査委員会が現在進めている作業を高く評価した。両者は8月5日に外務大臣と国務長官により両国間の環境保護協力のための新しい協定が署名されたことに満足の意を表明した。両者は,さらに,文化・教育面の交流を通ずる相互理解の増進が,日米両国民間の友好関係の強化にとつて基本的な重要性を有することを認識した。この関連で,総理大臣は,日本が,国際交流基金を通ずるものをはじめとし,日本研究の促進等これまで行つてきた事業に加えて,今後とも前記の交流を拡大していくとの意向を表明した。大統領は,総理大臣の意向表明を歓迎するとともに,日本との文化・教育面の交流の一層の促進のためにより多くの資金を向けるよう努力を続けるとの意向を表明した。 |
13. | 総理大臣は,米国民が明年独立二百年祭を祝うことこ対して,日本国民を代表し心からの祝意を伝達した。大統領は,かかる祝意に対して総理大臣に感謝し,米国民の深甚なる謝意を表明した。 |
Japan-U. S. Joint Announcement
to the Press
August 6, 1975
1. Prime Minister Miki and President Ford met in Washington August 5 and 6 for a comprehensive review of various subjects of mutual interest. The discussions between the two leaders, in which Minister for Foreign Affairs Miyazawa and Secretary of State Kissinger participated, were conducted in an informal and cordial atmosphere. Their meetings were productive and reflected the strength and breadth of the existing friendship between Japan and the United States.
2. The Prime Minister and the President reaffirmed the basic principles and common purposes underlying relations between Japan and the United States as set forth in the Joint Communique of November 20, 1974, on the occasion of the President's visit to Japan. In so doing, the Prime Minister and the President noted that Japan and the United States, while sharing basic values and ideals, differ in their national characteristics and the circumstances in which they are placed; and yet the two nations, acting together, have drawn upon the strengths inherent in such diversity to bui1d a mature, mutually beneficial and complementary relationship. They emphasized the fundamental importance in that relationship of constructive and creative cooperation between the two countries toward shared goals of world peace and prosperity. Expressing satisfaction with the open and frank dialogue which has developed between the two Governments, they pledged to maintain and strengthen this consultation. To this end, the Minister for Foreign Affairs and the Secretary of State wi11 review twice a year bilateral and global matters of common concern.
3. The Prime Minister and the President discussed developments in Asia following the end of armed conflict in Indochina. The President, recognizing the importance of Asia for world peace and progress, reaffirmed that the United States would continue to play an active and positive role in that region and would continue to uphold its treaty commitments there. The Prime Minister and the President welcomed the efforts being made by many nations in Asia to strengthen their political, economic and social bases. They stated that Japan and the United States were prepared to continue to extend assistance and cooperation in support of these efforts. They agreed that the security of the Republic of Korea is essential to the maintenance of peace on the Korean Peninsula, which in turn is necessary for the peace and security in East Asia, including Japan. They noted the importance of the existing security arrangements for maintaining and preserving that peace. At the same time they strongly expressed the hope that dialogue between the South and North would proceed in order to ease tensions and eventua11y to achieve peaceful unification. In connection with the Korean question in the United Nations, they expressed the hope that all concerned would recognize the importance of maintaining a structure which would preserve the armistice now in effect.
4. The Prime Minister and the President expressed their conviction that the Treaty of Mutual Cooperation and Security between Japan and the United States has greatly contributed to the maintenance of peace and security in the Far East and is an indispensable element of the basic international political structure in Asia, and that the continued maintenance of the Treaty serves the long-term interests of both countries. Further, they recognized that the US nuclear deterrent is an important contributor to the security of Japan. In this connection, the President reassured the Prime Minister that the United States would continue to abide by its defense commitment to Japan under the Treaty of Mutual Cooperation and Security in the event of armed attack against Japan, whether by nuclear or conventional forces. The Prime Minister stated that Japan would continue to carry out its obligations under the Treaty. The Prime Minister and the President recognized the desirability of sti11 closer consultations for the smooth and effective implementation of the Treaty. They agreed that the authorities concerned of the two countries would conduct consultations within the framework of the Security Consultative Committee on measures to be taken in cooperation by the two countries.
5. The Prime Minister and the President discussed various international issues of common concern, The President noted that the United States would continue to seek an early conclusion to negotiations of the second agreement between the United States and the Soviet Union on the limitation of strategic arms. The Prime Minister and the President expressed their strong hope that prompt progress be made through current efforts toward a peaceful settlement in the Middle East.
6. The Prime Minister and the President expressed their concern over the recent trend toward nuclear proliferation in the world, andagreed that Japan and the United States should participate positively in international efforts for the prevention of nuclear proliferation and the development of adequate safeguards. They emphasized that a11 nuclear-weapon states should contribute constructively in the areas of nuclear arms 1imitation, the security of nonnuclear weapon states and the use of nuclear energy for peaceful purposes. The Prime Minister expressed his intention to proceed with the necessary steps to bring about Japan's ratification of the nuclear nonproliferation treaty at the earliest possible opportunity.
7. In light of the increasing economic interdependence of the nations of the world, the Prime Minister and the President agreed that Japan and the United States share a special responsibility toward the development of a stable and balanced world economy. They agreed that the two countries would work in close consultation toward the resolution in a manner beneficial to all nations of problems relating to the general condition of the world economy, internatlonal finance, trade, energy, and cooperation between developed and developing nations. They noted with satisfaction that trade and investment relations between the two countries are expanding in a steady and mutually beneficial manner.
8. 0bserving the importance of free and expanding trade to the world economy, the Prime Minister and the President emphasized the need for an open international trading system and affirmed that Japan and the United States would continue to play a positive and constructive role in the Tokyo Round of multilateral trade negotiations currently underway in Geneva within the framework of the General Agreement on Tariffs and Trade.
9. Recognizing that there remain elements of instability in the world energy situation, the Prime Minister and the President expressed their satisfaction with the progress thus far achieved in cooperation among consumer nations. They agreed to maintain and strengthen cooperation between Japan and the United States in this field and in the development of their respective national energy efforts. Agreeing that mutual understanding and cooperation among all nations is fundamental to the solution of the international energy problem, they noted the urgent need for the development of harmonious relatlons between oi1 producing and consuming nations.In this connection, they welcomed steps now being taken to resume the dialogue between oil producer and consumer nations, and expressed their determination that the two countries should further strengthen and coordinate their cooperative efforts for that purpose.
10. Noting the desirability of establishing adequate supply and distribution to meet the world's growing demand for food, the Prime Minister and the President agreed upon the importance of cooperation in agricultural development assistance to promote food production capabi1ities of developing countries. The President further noted the need for the early establishment of an internationa11y coordinated system of nationally-held grain reserves. The Prime Minister stressed the need for a steady expansion of trade in agricultural products through cooperation between exporting and importing countries to their mutual benefit. The Prime Minister and the President reaffirmed the interest of the two countries in maintaining and strengthening the mutually beneficial agricultural trade between them.
11. Noting the need to assist the efforts of the developing countries to promote their own economic development and to meet the human aspirations of their peoples, the Prime Minister and the President agreed upon the importance of increased cooperation, both between Japan and the United States and with the developing countries, in such areas as development assistance and trade, including that of primary commodities.
12. The Prime Minister and the President expressed appreciation for the achievements recorded during the past decade by existing bilateral cooperative programs in the fields of medicine, science, and technology and for the work under way in the panel for the review of Japan-US scientific and technological cooperation. They declared their satisfaction at the signing on August 5 by the Minister for Foreign Affairs and the Secretary of State of a new agreement between the two countries for cooperation in environmental protection. They recognized further that the promotion of mutual understanding through cultural and educational exchange is of basic importance to the strengthening of friendly relations between the Japanese and American peoples. In this regard, the Prime Minister expressed his intention of continuing to expand such exchange in addition to the promotion of Japanese studies in the United States and other projects thus far carried out by Japan, notably through the Japan Foundation. Welcoming the Prime Minister's statement, the President expressed his intention to continue his efforts to make expanded resources available for further promoting cultural and educational exchange with Japan.
13. The Prime Minister conveyed on behalf of the people of Japan sincere congratulations to the people of the United States as they celebrate the 200th anniversary of their independence in the coming year. The President thanked the Prime Minister for these sentiments and expressed the deepest appreciation of the American people.
(ト) 第8回日韓定期閣僚会議共同コミュニケ(1975年9月15日 ソウルにおいて)
1. |
第8回日韓定期閣僚会議は,1975年9月15日ソウルにおいて開催された。 会議には,日本側からは,福田赳夫副総理兼経済企画庁長官,宮澤喜一外務大臣,安倍晋太郎農林大臣,河本敏夫通商産業大臣が西山昭駐韓大使とともに出席し,大蔵大臣に代わり吉田太郎一大蔵省財務官が出席した。 韓国側からは,南悳祐副総理兼経済企画院長官,金東祚外務部長官,鄭韶水農水産部長官,張禮準商工部長官が金永善駐日大使とともに出常し,財務部長官に代わり南相晋財務部次官が出席した。 |
2. |
会議は,次の事項を議題として採択し,討議した。 (1) 両国関係一般および国際情勢 (2) 両国の経済情勢 (3) 日韓経済関係 (イ) 貿易 (ロ) 経済協力 |
3. |
両国の閣僚は,現下の国際情勢一般およびアジア情勢について隔意なき意見を交換した。 両国の閣僚は,日韓両国の善隣,友好,協力関係がアジアの平和と安定に大きく貢献するとの認識を共にした。 両国の閣僚は,この地域における緊張緩和を促進し,平和を維持するため,両国が引き続き国連その他の国際的な場を通じて緊密に協力していくべきであることを再確認した。 |
4. | 韓国側閣僚は,朝鮮半島の緊張緩和と平和定着,更に平和的統一の達成のために,1970年以来一連の政策的努力を根気強く行つてきたこと,特に今年7月4日南北対話の無条件再開を促したことを説明し,今後とも忍耐と誠意をもつて南北対話の速やかなる再開のための努力を継続することを表明した。 日本側閣僚は,このような韓国政府と国民の努力を高く評価し,朝鮮半島の緊張緩和と平和のために南北対話が速やかに再開され,統一が平和的な方法で達成されることを強く希望した。 |
5. | 両国の閣僚は,最近の日韓関係について検討し,意見を交換した。 両国の閣僚は,その間両国間において困難な問題が発生したが,日韓双方の努力により両国間の友好関係が引き続き維持されてきたことを認め,両国の発展と繁栄が密接な関係にあることにてらし,広く国民的基盤に立脚した善隣友好関係を発展させるよう今後とも政治,経済のみならず学術,文化等を含むあらゆる分野において,交流と協力を更に一層密接に行うことについて意見の一致をみた。 韓国側は,在日韓国人の福祉増進に関連した諸問題に関し,日本政府の格別な配慮を要望し,これに対し日本側は,好意的に検討することを約束した。 また,両国の閣僚は,1974年1月30日に両国政府間で署名された日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の北部の境界画定に関する協定および日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の南部の共同開発に関する協定が,できる限り速やかに発効することが望ましいとの希望を表明した。 |
6. | 両国の閣僚は,両国の経済情勢に関して検討した。 日本側は,日本政府が物価安定の定着を図りつつ,景気を着実に回復させていくことを最重要の課題として諸般の施策をとつていることを強調し,現在策定中の新経済計画において内外の新たな情勢変化に応じ,適切な成長,物価の安定,国際収支の均衡を維持し,国民福祉の充実と国際協調の推進を図る新たな方途を検討している旨説明した。 韓国側は,韓国の第3次経済開発5カ年計画の推進経過およびこれを完成するための諸努力について言及し,特に1973年下半期以後の石油問題等による外部要因からの衝撃を除去するための1974年初め以来実施した一連の経済施策について説明した。 また,韓国側は,第3次経済開発5カ年計画の成果を土台とした第4次経済開発5カ年計画については,成長,衡平,能率の基本理念に基づき,経済成長の自立構造を構築し,社会開発の拡大および社会的衡平を増進し,国民経済の能率向上と技術革新を期することに重点をおくと述べた。 |
7. | 両国の閣僚は,最近の国際的不況により世界貿易が停滞傾向にあることに対し,懸念を表明した。 両国の閣僚は,日韓貿易の拡大均衡の必要性に留意し,今後の貿易関係の健全な発展を達成するため,相互に積極的な努力を傾注することにつき意見が一致した。また,両国の閣僚は,本年中に開催することが合意されている第12回日韓貿易会議で両国貿易の拡大について率直な意見の交換が行われることを希望する旨表明した。
|
8. |
両国の閣僚は,両国間の経済協力に関して意見を交換した。 両国の閣僚は,過去10年間両国間の経済協力が拡大し,韓国の総対外経済協力のうち相当な部分を占めるにいたり,全般的な両国関係の増進に大きく寄与していることに満足の意を表し,両国の善隣友好および経済関係の強化に貢献するよう両国間経済協力が今後も行われることが望ましいことについて意見の一致をみた。 両国の閣僚は,第3次経済開発5カ年計画の現状に関し,特に最近の国際経済情勢が同計画に与えている影響につき留意し,同計画の事業に対する政府ベースの協力に関し,引き続き農業開発をはじめとする経済,社会基盤施設の整備拡充に関する具体的案件に対し,政府間実務者レベルの協議を通じ所要の検討を行つた上適切な案件につき協力が行われることに意見の一致をみた。 両国の閣僚は,先般開催された国際復興開発銀行主催の対韓国協議グループ会議において,韓国が,1970年代後半期間中に所要の経済成長を達成するためには,民間ベースの資金とあわせ引き続き長期低利の借款を含む外資を必要とすることが留意されたことに注目しつつ,今後韓国の第4次経済開発5カ年計画事業のうち政府ベースの協力を必要とする案件については,同計画が成立した後,政府間実務者レベルの協議を通じ検討の上適切な案件につき具体化していくことに意見の一致をみた。 両国の閣僚は,両国間の科学,技術協力がこれまで順調に進行してきたことに留意し,今後もこの分野の協力を充実していくことに意見の一致をみた。 |
9. | 両国の閣僚は,両国間の民間経済交流の発展が両国国民の善隣友好および共同利益の増進に寄与しており,今後ともこの分野の交流が一層増大されることが望ましいことに意見の一致をみた。 |
10. |
両国の閣僚は,今回の会議が終始友好的な雰囲気の中で運営され,両国の相互理解と友好協力関係の増進のために極めて有益であつたことに対し満足の意を表明した。 また,両国の閣僚は,第9回日韓定期閣僚会議を東京で開催すること,およびその細目は今後外交経路を通じて決定することに合意した。 日本側閣僚は,このたびの第8回日韓定期閣僚会議にあたり韓国政府と同国民から示された歓迎に対し,深甚な謝意を表明した。 |
(チ) 日ソ共同発表 (1976年1月13日 東京において)
ア・ア・グロムイコ・ソ連邦共産党中央委員会政治局員兼外務大臣は,日本国政府の招待により1976年1月9日から13日まで日本国を公式訪問した。
ア・ア・グロムイコ外務大臣は,天皇陛下から謁見を賜わつた。
ア・ア・グロムイコ外務大臣は,三木武夫日本国総理大臣と会見した。
宮澤喜一日本国外務大臣とア・ア・グロムイコ外務大臣との間で,平和条約の締結に関する交渉が継続された。
定期協議において,日ソ間の諸問題及び双方が関心を有する若干の国際問題について意見交換が行われた。
双方は,近年における日ソ関係の発展に対し満足の意を表明し,1973年10月10日付の日ソ共同声明において定められた基本的諸原則を確認した。双方は,今後とも日ソ関係の発展に努力する旨の意向を表明した。
平和条約締結交渉において,双方は,田中総理大臣のソ連邦訪問に際して採択された1973年10月10日付日ソ共同声明の当該部分,すなわち,「双方は,第2次大戦の時からの未解決の諸問題を解決して平和条約を締結することが両国間の真の善隣友好関係の確立に寄与することを認識し,平和条約の内容に関する諸問題について交渉した。双方は,1974年の適当な時期に両国間で平和条約の締結交渉を継続することに合意した。」との規定に基づき,平和条約の内容に関する諸問題について交渉した。双方は,同条約を早期に締結するため交渉を継続することに合意した。
双方は,日本国とソ連邦との間の貿易・経済協力が円滑に発展していることを指摘し,互恵平等に基づくその一層の拡大を促進するとの意向を表明した。
両大臣は,1972年1月27日付の日本国とソ連邦との間の文化交流に関する交換公文の有効期間の延長に関する書簡を交換した。両大臣は,両国間の文化交流を更に一層円滑に発展させるため,文化協定締結に関する交渉を開始することに合意した。
ア・ア・グロムイコ外務大臣は,宮澤喜一外務大臣に対し,平和条約の締結に関する交渉の継続及び定期協議のため,1976年にソ連邦を公式訪問するよう招待した。この招待は,謝意をもつて受諾された。訪問の具体的時期は追つて合意される。
双方は,ア・ア・グロムイコ外務大臣の日本国訪問の際に行われた交渉及び会談が友好的雰囲気の下に行われ,双方にとり有益であつたことを指摘した。
(リ) オスマン・モロッコ首相の訪日に際しての日本・モロッコ共同コミュニケ(仮訳)
(1976年2月20日 東京において)
1. | アハメッド・オスマン・モロッコ王国首相は,日本政府の招待により,夫人ララ・ヌズハ殿下を同伴し,1976年2月15日から20日まで,日本国を公式に訪問した。同首相夫妻にはハッサン・ゼムーリ観光・住宅・都市計画・環境相並びにモハメッド・ベルカイヤット及びアブデルカメル・レライエ両行政長官をはじめとするモロッコ政府関係者が随員として同行した。 |
2. | オスマン首相夫妻は,2月16日,皇居において,天皇・皇后両陛下に謁見し,両陛下から午餐を賜つた。 |
3. | オスマン首相は,日本滞在中,三木総理大臣と極めて友好的な会談を行つた。両国首相は,両国が共通の関心を有する諸問題につき,有益な意見交換を行つた。 |
4. | 両国首相は,中東情勢を検討し,同地域における最近の状況の進展を十分勘案して,公正,かつ,永続的な平和が一日も早く達成されることについての希望を表明した。オスマン首相は,中東紛争の解決の方法についてのモロッコ政府の立場を説明した。三木総理大臣は,安保理決議242号が完全,かつ,すみやかに履行されるべきこと,及びパレスチナ人の国連憲章に基づく正当な権利が尊重されるべきことについての日本政府の立場を再確認した。オスマン首相は,日本が中東問題に関し,深い理解を有していることを認識し,これに満足の意を表明した。 |
5. | 両国首相は,地中海地域の情勢を検討し,同地域の諸国民の発展と繁栄のためには,同地域の平和と安定が前提条件であることにつき,意見の一致をみた。 |
6. | 両国首相は,両国間の関係について検討を行い,両国がきわめて友好的な協力関係にあることに満足の意を示すとともに,かかる友好的な協力関係にあることに満足の意を示すとともに,かかる友好関係は,今後一層促進されるべきであることについて意見の一致をみた。この関連で,両国首相は,2月17日,日本国から,モロッコ王国に対し,モロッコの国有鉄道に関する計画の実施のために供与される円借款についての交換公文が署名されたことは,両国間の益々促進される友好・協力関係のしるしであるとして,同慶の意を表した。両国首相は,両国間の経済関係を拡大することについての強い希望を有し,種々の協力分野について検討した。かかる協力を強化するための具体的な方策を探究し,このための今後の接触についての取り運び方を討議するため,随行のモロッコ側高官は,日本側の政府関係者と有益な会談を行つた。 |
7. | オスマン首相は,日本滞在中,主要経済団体の関係者を含め日本の各界指導者と友好的,かつ,有益な懇談を行つた。 また,オスマン首相は,新たに設立された日本・モロッコ友好協会の会員と懇談する機会を得,この有意義な企画に対し喜びと満足の意を表明した。オスマン首相は,日本とモロッコの友好関係の強化及び一層の拡大のために,同協会がたゆまず払つている格段の努力につき,ハッサン二世国王陛下の政府が如何に高く評価しているかを強調した。 同首相一行は,また,京都を訪れ,日本の伝統的文化に親しく接する機会を得た。 |
8. | オスマン首相夫妻は,日本政府及び国民より暖かい歓迎及びもてなしを受けた。オスマン首相は,日本滞在中に同首相夫妻及び随員一行が受けた友情に満ちた厚遇に対し,感謝の意を表明した。 |
9. | オスマン首相は,三木総理大臣夫妻に対し,モロッコ王国を公式訪問するよう招待を行つた。三木総理大臣は,この招待を感謝の念をもつて受諾した。訪問の時期は,外交経路を通じ取決められる。 |
10. | オスマン首相の今回の訪問は,日本・モロッコ両国間にすでに存在する相互理解と友好関係の促進に著しく貢献した。 |
(ヌ) フセイン国王訪日に際しての日本・ジョルダン共同コミュニケ(仮訳)
(1976年3月16日 東京において)
1. | ジョルダン・ハシェミット王国フセイン一世国王陛下及び王妃アーリア陛下は,日本国の国賓として1976年3月10日から16日まで日本国を訪問された。両陛下には,アーリア内親王殿下,バスマ王妹殿下,ザイド・リファーイ首相夫妻,ラード・ビン・ザイド殿下,タイルーム・ダゲスター二閣下,ラジャーイ・ムアシェル商工大臣をはじめとするジョルダン・ハシェミット王国の王室及び政府関係者が同行した。 |
2. | 国王・王妃両陛下は3月10日,皇居において暖かい歓迎を受け,天皇・皇后両陛下と極めて友好的かつ誠意にあふれた雰囲気のうちに話合いを行われた。国王・王妃両陛下は,東京及びその近郊の産業施設を視察されるとともに,日本の各界の代表的指導者と会見され,日本の経済及び社会の実情を親しく見聞された。また,国王・王妃両陛下は,滞日中,京都を訪問され,日本の歴史的文化財を視察され,日本の伝統的文化に親しく接する機会を得られた。 |
3. | 国王陛下は,2回にわたり三木総理大臣と会談され,現下の国際情勢及び両国関係の一層の発展の可能性を含め,相互に関心のある諸問題について有益な意見の交換を行われた。両会談にはジョルダン側は,リファーイ首相ほかが,また,日本側は宮澤外務大臣ほかが同席した。 国王陛下及び三木総理大臣は,相互に両国の基本的外交政策を説明し,現在の国際情勢の下では,すべての国家が相互依存の関係にたつているとの認識を踏まえ,世界平和を推進し,かつ,国際協力を発展させるために両国が相互に協力を続けるべきことに合意した。 |
4. | 三木総理大臣は,アジアの情勢に関して説明を行い,国王陛下はアジアの平和と安定のために果たしている日本の役割を高く評価された。国王陛下及び三木総理大臣は,アジア情勢の安定が世界の平和と発展のために緊要であるとの確信を強調した。 |
5. |
国王陛下は,中東情勢に関し,現在の行き詰まりが世界の平和に及ぼすべき脅威を含めて説明を行われた。国王陛下及び三木総理大臣は,中東問題が世界の平和に対し有する重要性を認識し,中東地域に一日もはやく公正かつ永続的な和平が達成されることに対する希望を表明した。 国王陛下と三木総理大臣は,この目的のためには,安保理決議242号に従い,1967年戦争の全占領地からのイスラエル兵力の撤退が行われ,また,域内のすべての国の領土の保全と安全が尊重されなければならないこと,さらに,パレスチナ人の民族的権利が国連憲章に基づき承認・尊重されることが必要であることについて意見の一致をみた。 国王陛下は,日本国政府が中東問題について深い理解を有していることを評価し,これに満足の意を表明した。三木総理大臣は,フセイン国王陛下の指導の下に,ジョルダン・ハシェミット王国が国家建設において目覚しい進歩をとげ,また,中東地域の安定と発展のために大きく貢献していることを高く評価した。 |
6. | 国王陛下及び三木総理大臣は,両国関係が,小坂日本国政府特使のジョルダン訪問及びハッサン皇太子殿下の訪日を契機に,近年,緊密の度を増していることに満足の意を表明した。国王陛下及び三木総理大臣は,経済,貿易,技術,科学及び文化の分野における協力を更に促進することの重要性に留意した。国王陛下は,1976年から1980年にわたるジョルダンの経済社会開発計画に対する日本の資金及び技術協力についての願望を表明された。三木総理大臣は,日本政府はこの願望,特にワディ・アラブ・ダム灌漑計画に対する資金協力の要請については,日本の農業開発調査団により実施可能性が確認されれば慎重な検討を行う考えである旨を表明した。 |
7. | 国王陛下は,滞日中,両陛下及び随員一行に示された暖かい歓迎と厚遇に対し,日本国の天皇・皇后両陛下,政府及び国民への深い感謝の意を表明された。 |
8. | 国王・王妃両陛下の訪日は,日本国とジョルダン・ハシェミット王国の友好関係の促進に大いに貢献した。 |
(2) 多数国間関係
(1975年5月27日 パリにおいて)
国際エネルギー機関の閣僚理事会はベルギー王国外務大臣レナート・ヴァン・エルスランド氏の司会のもとに1975年5月27日パリで開催された。
1. |
閣僚は,近年の出来事が世界経済にとつて恒常かつ安定的エネルギー供給の重要性を明確としたことに留意した。発展段階のいかんにかかわらず,全ての国が世界経済の制度下で,パートナーとみなすことができるよう,現下の経済問題の解決は全ての国の相互依存,相互扶助および責任分担の原則を基礎としなければならない。全ての国の継続的な経済社会発展は,安定かつ衡平の条件下での世界経済の成長に基づくものでなければならない。 閣僚は,エネルギーとの関連問題である限り,機関がこれら諸目的の達成のために貢献すべきとの決意を明らかにした。 |
2. | 閣僚は,1974年11月15日に機関が設置された以降の世界のエネルギー事情の進展を検討した。閣僚は,機関の将来の作業のための,また国際エネルギー計画の完全実施のための指針と優先度を決定し,また産油国および石油消費国間の多角的協力関係の発展のために働くことの義務を再確認した。 |
3. | 閣僚は,石油消費を削減し,不足時に石油供給を融通するための緊急制度が確立したことに留意し,これを承認した。この緊急制度は必要ある場合には短時間で発動しうるものであり,将来いかなる石油供給困難が生じてもその経済効果を相当低めるであろう。閣僚は,緊急制度の効果を確保するために緊急備蓄の重要性に留意するとともに,緊急備蓄を90日相当分に引き上げる期日につき理事会が1975年7月1日までに決定を行うものであろうことに留意した。 |
4. | 閣僚は,石油の国際貿易に対する理解を深め,またその透明度を高めることを確保するためには,石油市場についての情報収集と分析が重要であることに留意した。閣僚は石油市場に関する情報制度を早急に完成し,検討することに合意した。 |
5. | 閣僚は,世界経済の利益のため世界の有限のエネルギー資源の使用をより効率化し,エネルギー源を多角化し,また,輸入石油への依存度を低減することによつて機関の全般的目標を達成することを目途として,1975年7月1日までにエネルギーに関する長期協力計画の作成実施を開始する決意を確認した。閣僚は,長期計画の協力が衡平かつ効果的であるためには,加盟国の特殊な経済的社会的条件を正当に勘案すべきことに合意した。 この計画は,参加国の共同努力から生ずる負担と利益とが参加国間で衡平に分配されたものであり,また,このようなバランスをとることを目途とした政策は立法および憲法上の制約の範囲内で実施されるべきことを保証したものであるべきである。閣僚は更に節約,エネルギー生産およびエネルギー分野の研究開発の面での参加各国それぞれの全般的努力および実行につき機関内で定期的に検討されるべきことを強調した。 |
6. | 閣僚は,特に1975年についてのグループ全体としての節約目標の採択により,節約の分野で進歩のあつたことに満足の意をもつて留意した。 閣僚は,機関の作業が活発に継続されるべきことに合意するとともに,機関のエネルギー節約目的の達成を確保するため,参加国政府がその努力を強化する必要性のあることに合意した。 閣僚は,次の優先作業を決定した。 -1976年,77年についてのグループとしての節約目標 -1980年,85年についての中期目標の設定,および 一節約計画の効果を強めるための国別レヴュー強化 |
7. |
閣僚は,既に理事会で採択された決定(なかんずく一般措置および特定措置により投資を増加し,促進し,保護するための義務を含む。)通り,代替エネルギー源の開発促進のために調整された協力計画の詳細な検討を行う必要性につき合意した。 閣僚は,機関が原子力分野での協力を拡大する可能性につき速やかに検討を行うべきことに合意した。すべての分野におけるこの協力は,安全と環境条件に正当な考慮を払いつつ,この重要な代替エネルギー源の開発を確保することに向けられる。なかんずく,安全と廃棄物処理の問題に対応するための核燃料と技術の利用が討議されなければならない。 前記の決定に基づき,閣僚は,IEP協定に規定される研究開発分野,なかんずく,石炭および核問題での協力計画の確立の重要性を強調した。この関連で閣僚は,エネルギー研究開発分野で機関が既に成しとげた進歩を一層進めることに合意した。閣僚は,この分野で生産的な結果をうむためには具体的な国際協力を進める努力の維持が必要であることを決意した。この目的を支持して,閣僚は,研究・開発に携わる高級官吏の出席をえて,研究・開発計画の作成を完了するために理事会特別会合が1975年秋に開催されるべきことに合意した。 |
8. |
閣僚は,開発途上国,先進国のいかんにかかわらず,産油国と石油消費国間の関係について検討した。右を念頭におきつつ,閣僚は,開発途上国のエネルギーに直接関連していない重要かつ逼迫した問題を認識し政治的決意をもつて合理的期間内にこれら諸問題に取り組むことに決意した。閣僚は5月28日および29日のOECD閣僚理事会が開発問題および食料を含む商品問題を討議することを提案していることに留意するとともにこれら諸問題の解決策を目途に効果ある行動のためのステップがとられるであろうことにつき希望を表明した。機関それ自体としては,エネルギーに関連する限りその権能の範囲内で開発途上国の問題の解決に資するすべてのことを行うものである。 閣僚は,1975年4月7日から16日までパリで開催された準備会合は,産油国と石油消費国との間により緊密な関係を樹立する方途について十分かつ真剣な討議を行うための機会を与えたことに留意した。閣僚は,相互に適当と考える時期と方法により討議を続行する用意があることを宣言するとともに,対話を継続しかつ新たな進展をもたらすようなイニシアティヴを促進する共通の意欲を有していることを確認した。 閣僚は,対話の追求のためにとりうる方法につき意見を交換し,利害関係国との二国間接触を継続することに合意した。閣僚は,各々の理事会代表に対し,これらの問題を緊急を要する事項としてとりあげること,およびすべての関係国の利益に対応した正式な審議が可及的速やかに開催されることを確保するため各々の努力を調整すること,ならびに対話が継続されるべき方法を検討することを指示した。 |
9. | 閣僚は,これまで機関内で遂行されてきた作業は,エネルギー分野で遭遇した困難に対処するために重要な貢献となつてきたことに同意した。閣僚は,加盟国間の結束の重要性を強調するとともにこの分野での協力的努力を強化し,また,可能な限り広汎なものとすることの必要性を強調した。機関は,その機能を通じて,世界経済全体の一層の進展にとり不可欠な重要性をもつエネルギーの需要状況全般の改善のためエネルギー協力計画を更に推し進め続けるであろう。 |
(1975年5月28日 パリにおいて)
1. | 1975年5月28日パリで会合したOECD諸国政府の閣僚は,開発途上国との関係を討議し,現在の情勢下では,最も広汎な国際協力の措置が必要であることにつき,意見の一致をみた。 |
2. | 閣僚は,多くの開発途上国が自国の経済社会開発に大きな進歩を遂げたが,その多数の国は十分に進歩しておらず,多くは未だ極めて厳しい貧困の問題に直面していることを考慮した。 |
3. | 開発途上国の経済発展の促進に自国がなした貢献を想起しつつ,閣僚は,開発途上国がその国民の生活条件を改善し,及び進歩しかつ拡大しつつある世界経済の利益により多くあずからんとする努力に対し開発途上国との協力を強化することを決意した。 |
4. | 世界経済の相互依存という事実にかんがみ,閣僚は,進歩は全ての関係国,先進国及び同様に開発途上国の間の広い支持を得た実際的な方法によつて最も良くなし得ることができることを確信した。 |
5. | 閣僚は,世界経済における開発途上国の地位を強化することを目的とした政策を検討することを決意し,開発途上国との間で関連する諸問題,特に食糧生産,エネルギー,一次産品,及びMSACに対する開発援助に重点をおいて討議する意向を表明した。 |
6. | このため閣僚は,国際経済関係のより均衡のとれたかつ衡平な構造に向かつて真の進歩を遂げるため,あらゆる適当な場,特に来たる第7回国連特別総会及びフランス共和国大統領によつて示唆されたラインに沿つたより限定された場において,開発途上国との対話を求めていくとの固い決意を表明した。 |
(1975年5月29日 パリにおいて)
1. |
OECD閣僚理事会は,5月28日ジェームス・キャラハン英国外務大臣閣下を議長とし,5月29日デニス・ヒーリー英国大蔵大臣閣下を議長として開催された。 (経済情勢) |
2. | 閣僚は,OECD加盟国政府の政策が需要と雇用との回復をもたらし,かつこの回復は,平均的インフレ率の一層の低下と組み合わせられたものとなるであろうとの自信を表明した。閣僚は,これらの目標を達成することを決意し,かつ政策の時宜を得た調整を行うことにより,もし必要となれば回復の支持を確保し,まつ回復が一旦緒についた場合,これが超過需要圧力とインフレ傾向のみられる新たな期間へと悪化しないことを確保することを決意した。閣僚は,OECD諸国全体の経常勘定における国際収支の大幅な赤字は最近減少したものの,ここ何年かは存続すると見込まれることに留意した。また閣僚は,経済政策が,維持可能な資本移動のパターンと一層両立し得る,より不均衡でない経常勘定ポジションの配分をOECD諸国間で確保するようなものであることを確実にすることの重要性を強調した。かかる政築をとれば,閣僚は,二国聞及び多数国間の公的取極による支えにより現存のまた将来の赤字の補填は,秩序ある形で引続き行われ得ると確信した。この点に関し,閣僚は,OECD金融支援基金設立協定の早期批准の実現のためにとられつつある措置を歓迎した。 |
3. | 閣僚は,ごく近い将来にかかわる政策決定は,構造変化に関する予見し得る中期及びより長期の諸問題並びにそれらを解決するための広汎な戦略と関連づけられたものでなければならぬことを強調した。閣僚は,OECDが変化しつつある状況の下で持続的経済成長の見通しの再評価及びかかる成長の制約,特にインフレから生ずる制約についての再評価を進めかつ促進すべきであることにつき合意した。閣僚は,本作業に依拠しつつ国際的に著名な多数の経済学者が政策課題を検討し,かつ勧告を行うよう要請されるべきであるとの米国政府の行つた提案に関心をもつて留意した。またより広汎かつ長期的コンテストにおいて,閣僚は,日本政府によつて提起された,開発途上国社会の発展と調和した先進工業社会の将来の発展の研究についての提案に関心をもつて留意した。 (貿易) |
4. | 閣僚* は,1974年5月30日に採択された,貿易及びその他経常取引に関する新たな制限並びに輸出及び経常的貿易外輸出の人為的促進に訴えることを回避する旨のOECD加盟国政府の決意を表明した宣言を更に1年間延長することを決定した。本宣言を更新するに当たり,閣僚は,現下の情勢では経済面での高度の協力が要求されていることを強調した。OECD加盟国の国際収支の状況に著しい差異があつたことに留意しつつ,閣僚は,一部の加盟国でとられた経済措置を歓迎し,また現下の世界経済の状況下においては,インフレと闘うのみならず同時に高水準の雇用及び世界貿易の拡大の維持を目指す経済政策を遂行することが依然として最も重要であることを再確認した。かかる政策が実施されるべき方法については加盟国のそれぞれの事情が勘案されなければならない。 |
5. | 閣僚は,国際競争における輸出信用条件の重要性にかんがみれば,この点における一般的性格の取極が,できるだけ多くのOECDの先進工業国の間で合意さるべきであることにつき合意した。 これは国際協力における重要な進歩となろう。閣僚はまた,為替レートの動向につき適当な機関において密接な協議を継続する必要性につき合意した。閣僚は,開発途上にある加盟国の問題が過去1年問いくつかの点においてより深刻になり,OECD内において特別の注意をもつて考慮されるに値するものであることに留意した。 |
6. | 閣僚は,世界経済の一層の発展のために,自由かつ拡大的な貿易が最も重要であり,このため目下進行中の多角的貿易交渉の成功のために,共同して作業を行うことを再確認した。 (エネルギー) |
7. |
閣僚は,エネルギーの分野における協力を継続・促進することの重要性を強調した。 5月27日の国際エネルギー機関閣僚会議議長たるべきベルギー国外務大臣レナート・ヴァン・エルスランド氏の報告は,同機関において作業が進捗しており,かつエネルギーに関する協力に対し新たなはずみが与えられた旨述べている。 |
8. | 閣僚は,世界エネルギー市場における衡平かつ安定的条件の確保のためには産出国と消費国との協力の強化が必要である旨合意した。 (一次産品) |
9. | 閣僚は,衡平かつ採算の合う価格での一次産品の十分な供給が,世界経済にとつて不可欠であることを強調した。閣僚は,生産国にとつての市場アクセスの確保及び消費国にとつての供給保証の重要性と共に,特に一次産品市場における過度の変動の回避との関連において,先進国であると開発途上国であるとを問わず,生産国と消費国との間の相互依存関係及び共通の利益を認識した。これらの問題は,一次産品問題のその他の側面とともに,開発途上国が経済発展を促進するために,自国の天然資源を最大限に活用する際の特別の関心事である。 |
10. |
一次産品分野における開発途上国の関心に応えるに際して,産品間で,又は産品のグループ間で事情が大きく異なること,および実際的取極を作成する際このことが考慮に入れられなければならないことを認識しつつ,閣僚は,特に以下のことをめざす,一次産品問題に対するより積極的かつ広汎な基礎によつたアプローチの必要性につき合意した。 -市場の不安定性を減少させ,生産と消費のよりよい均衡を促進すること,適当な場合には商品協定によることを含む。 -一次産品の生産に十分な水準の投資を確保すること。 -一次産品の販路と現地加工度を改善し増大すること。 さらに,閣僚は開発途上国の生産国の輸出所得安定化のための国際的メカニズムの改善を考慮する用意があることを示した。 |
11. | 閣僚は,穀物に関する種々の国際的討議において進捗がなされる必要性を強調した。この関連において,閣僚は,本年予想されている農作物の豊作が基本的食糧,特に穀物の備蓄の積戻しを開始し,かつ世界食糧安全保障の増大を確保する機会を提供することに留意した。閣僚は又,開発途上国における食糧増産に必要な努力に貢献する用意があることを繰返した。 |
12. |
閣僚は,これらの問題が,生産国と消費国との間の協力を基礎とする具体的な解決に到達することを目的として,すべての適当な国際機構において積極的に追求されるべきことにつき合意した。閣僚は,一次産品政策の一般的側面と特定産品に関する特定の措置の双方に関する加盟国の態度をさらに発展させるためのOECD内におけるハイレベルグループの設立を歓迎した。 (開発途上国との関係) |
13. | 閣僚は開発途上国との関係に関するOECD宣言(本コミュニケに附属)を採択した。閣僚はさらに,選定された実質的問題に関し新規の及びその他のいかなる建設的なアプローチがとりうるかを識別しかつ個々の問題に関し作業を行つている他の機関における交渉に対し支持及び新たなはずみを与えるために加盟国と開発途上国との経済関係につきOECDにおいてレビューすることにつき合意した。閣僚は,この目的のために創設されたアドホック・ハイレベルグループに対し同グループの作業を可及的速やかに開始しかつ1975年7月末以前に予備的進捗状況報告を提出するよう要請した。 |
14. | 閣僚は,先進国と開発途上国との間の対話を継続する必要性につき合意した。閣僚は,エネルギー及び石油問題と並んでその他に食糧を含む一次産品,開発問題,及びMSA諸国の重大な困難の如き問題がありそしてこれらはすべての関係諸国が協力して一層精力的に取り組まれなければならないであろうということを認識した。かかる方向で,引き続き努力を行つていくことの必要性は,OECD閣僚会議を通じて繰り返し取り上げられた主題であつた。閣僚は,今回の審議が本年4月にパリで開始された対話の早期再開の基礎を与えたこととなるであろうとの希望を表明した。 |
(1975年5月30日 ジュネーヴにおいて)
前文
核兵器の不拡散に関する条約の規定に従い,同条約の前文の目的の実現及び同条約の規定の遵守を確保するように同条約の運用を検討するため,1975年5月にジーネーヴにおいて会合した同条約の締約国は,
条約の目的が引き続き重要性を有していることを認識し,
条約への普遍的な参加が得られれば,国際的平和が著しく強化され,すべての国の安全が高められるとの信念を確認し,
この目的を達成するためには,条約の実施にあたり,すべての締約国の間の,すなわち核兵器及び非核兵核国の間の,相互の責任と義務の受諾可能な均衡をはかることが重要であることを固く確信し,
核戦争の危険が人類の存続にとり依然として重大な脅威であることを認識し,
核兵器その他の核爆発装置のより一層の拡散の防止が核戦争を回避する諸努力の中で依然重要な要素であること,並びにこの目的は,核軍備競争の停止に向つてのより急速な進展により並びに厳重かつ効果的な国際管理のもとにおける全面的かつ完全な軍備縮小に関する条約に従つて諸国の軍備から核兵器を除去すべき現存の核兵器を制限及び削減することにより一層促進されるであろうことを確信し,
締約国が核兵器のすべての実験的爆発の永久的停止の達成を求めるとの決意を表明したことを想起し,
諸国間の緊張緩和傾向が核軍備競争の停止に向つてのより顕著な進展を容易にする好ましい環境をつくり出していることを考慮し,
原子力が,特に,変わりつつある経済環境のもとで,発電の分野で及び先進国と開発途上国間の経済的,技術的格差の漸進的除去に貢献する上で果たしうる重要な役割に注目し,
原子力の平和的応用の加速的な拡大及び発展が,効果的な保障措置がとられない限り,核爆発能力のより一層の拡散を促進するであろうことを認識し,
平和的な原子力活動に対する国際原子力機関(IAEA)の保障措置の適用及び改善における十分な協力が引き続き必要であることを認識し,
すべての締約国が平和的目的のための原子力の応用を一層発展させるため可能な最大限度まで科学的情報を交換することに参加し,及び単独で又は他の国と協力してその応用の一層の発展に貢献する権利を有することを想起し,
核技術の平和的応用の利益(核兵器国が核爆発装置の開発から得ることができるすべての技術上の副産物を含む)が,平和的目的のため,すべての締約国に提供されるべきであるという原則を再確認し,
すべての締約国が条約の目的を達成するための具体的なかつ効果的措置をとるよう努力する義務があることを認識して,
以下のとおり宣言する。
目的
締約国は,核兵器のより一層の拡散を回避するという強い共通の関心を再確認する。締約国は,条約に対する強い支持,条約の諸原則及び諸目的に対する変りない確信,並びに条約の規定を十分かつより効果的に履行すべき約束を再確認する。
締約国は,以下の国際的努力において条約の果たす重要な役割を再確認する。
○核兵器のより一層の拡散を防止する。
○核軍備競争の停止を達成し,核軍備の縮小の方向で効果的な措置をとる。
○適切な保障措置の下での原子力の平和的利用における協力を促進する。
第1条及び第2条の再検討
会議による検討の結果,条約の第1条及び第2条により締約国に課せられた義務が,すべての締約国により忠実に遵守されてきていることを確認する。会議は,これらの規定を引き続き厳守することが,核兵器のより一層の拡散を回避するという共通の目的達成のうえで依然肝要であると確信する。
第3条の再検討
会議は,条約第3条1に基づくIAEAの検認活動が,各国の主権を尊重し,かつ締約国の経済的,科学的又は技術的発展又は平和的な原子力活動における国際協力を妨げていないことに注目する。会議は,このような状態が維持されることを強く要請する。会議は,第3条1に基づく保障措置が,すべての締約国が等しく利益を得るように,差別なしに今後とも実施されることを極めて重要と考える。
会議は,締約国の義務及び第3条1に基づくIAEA保障措置の適用を容易にするためのIAEAとの協力の双方の観点から核物質の計量管理制度の重要性に注目する。会議は,平和的な原子力活動を行つているすべての国に対し,実効的な計量管理制度を設立,維持することを希望し,またIAEAが各国のかかる努力を支援する態勢にあることを歓迎する。
会議は,実効的なIAEA保障措置への強力な支持を表明する。かかる観点から会議は,一方において非締約国たる非核兵器国と締結する保障措置協定が適切な有効期間を有し,いかなる核爆発装置への転用をも排除し,さらに再輸出に際して,保障措置を引き続き適用するための適切な条項を含んでいることを確保しつつ,IAEA保障措置の標準化及びその適用の普遍性をめざす努力を強化することを勧告する。
会議は,とりわけ最適の費用対効果を確保するために保障措置技術,機器,情報処理及び実施の改善に一層の配慮とより十分な支持を与えるよう勧告する。会議は,IAEA事務局長による常設保障措置実施詰問グループの設立を満足をもつて注目する。
会議は,締約国で未だにIAEAとの間で保障措置協定を締結していない国ができるだけ早急にこれを締結することの必要性を強調する。
条約第3条2の実施に関し,会議は,核物質又は設備を供給する数多くの国が非締約国たる非核兵器国に対するある品目の輸出の際に必要とするIAEA保障措置のための一定の最小限の標準的要件を採択したことに注目する(IAEA資料INFCIRC/209とその追加)。会議は,上記標準的要件に含まれている核兵器その他の核爆発装置への不転用の約束についての,これらの国によつて定められた条件を重視する。
会議は,以下の諸点につき強く要請する。
(A) | すべての可能な方法で,保障措置に関連する共通の輸出要件を強化すべきこと,特に非締約国たる輸入国におけるすべての平和的な原子力活動に保障措置を適用することによつて強化すべきこと。 |
(B) | かかる共通要件は,すべての供給国及び受領国が受け入れられるかぎり最も広汎な措置とすること。 |
(C) |
すべての締約国は,積極的にこれらの目的に向つて努力すべきこと。 会議は,以下の諸点に注目する。 |
(A) | 第3条2に基づき必要とされる保障措置は輸入国のすべての平和的な原子力活動に適用されるべきであるとの多数の締約国の熟練された見解。 |
(B) |
(1) 非締約国たる非核兵器国に対し了知しうる形で移転された科学的及び技術的情報の使用によつて処理,使用又は生産された核物質に関する保障措置の共通要件を作ることが望ましいとの示唆。 (2) 保障措置のこの側面が更に検討されうるとの希望。 |
会議は,1975年以降適当な時期にIAEA理事会が行うIAEA保障措置の財政に関する取極の再検討の際には開発途上国の困難な財政状況を十分念頭におくべきことを勧告する。会議は,更にその際,関係締約国が,保障措置経費負担に占める開発途上国の割合を適当な限度に制限する措置を探究するように勧告する。
会議は,保障措置査察員に関して,とりわけ,「できる限り広い地理的基礎によつて職員を募集することの重要性に対して,妥当な考慮を払うものとする。」と規定するIAEA憲章第7条DをIAEAが遵守することが,極めて重要であると考える。また,会議は,保障措置の訓練はすべての地域の者が受けることのできるものとするよう勧告する。
会議は,核物質が常に効果的に防護されるべきことを確信して,核物質の効果的防護の統一的かつ最小限の水準を確保する観点から,使用,貯蔵及び輸送中の核物質の盗難防護措置(フィジカル・プロテクション)のための締約国の責任に関する原則を含む具体的な勧告の作成をIAEAにおいて継続するための行動がとられるよう強く要請する。
会議は,平和的な原子力活動に携わるすべての国に対し(1)核物質のこのような防護を確保するために必要と思われる国際協定及び国際取極な締結すること,また(2)各国各々の盗難防護措置制度の枠内でIAEAの勧告をできるだけ早急にかつ効果的に適用することを要請する。
第4条の再検討
会議は,第4条1の枠内で,条約のいかなる規定も無差別にかつ第1条及び第2条の規定に従つて平和的目的のための原子力の研究,生産及び利用を発展させることについてのすべての締約国の奪い得ない権利に影響を及ぼすものと解してはならないことを再確認する。
会議は,第4条2の枠内で,原子力の平和的利用のため設備,資材並びに科学的及び技術的情報を可能な最大限度まで交換することを容易にするとのすべての締約国の約束及びかかる交換に参加するすべての締約国の権利を再確認し,その目標のためになされた努力を歓迎する。条約が原子力の平和的利用における国際協力を拡大するための有用な枠組であることに注目しつつ,会議は,この基盤の上で,かつ条約に従つて,核技術の平和的応用の利益がすべての締約国に提供されるべきであるということを確保するために一層の努力が必要であることを確信する。
会議は,条約の目的及び保障措置の要件に合致した形で,核物質,設備及び最新の開発を含む技術をできる限り完全に交換することの必要性が今後とも存在することを認める。会議は,締約国は,可能なときは,単独又は他の国もしくは国際機関と共同して,世界の開発途上にある地域の必要に妥当な考慮を払つて,平和的目的のための原子力の応用,特に締約国である非核兵器国の領域における応用の一層の発展に貢献することに協力するとの約束を再確認する。会議は,第4条2に関連して開発途上国の増大する必要を認識して,この分野において,開発途上国に対し,二国間及びIAEA,UNDP等の多数国間のチャンネルを通じた援助を継続し,増大させることが必要であると考える。
会議は,条約第4条をできる限り完全に実施するためには,締約先進国が締約開発途上国における原子力の平和的利用に対し特別の援助を提供するため,必要な措置をとること,拠出を行うこと及び計画を策定することにつき可能な限り速や加こ検討しなければならないと考える。
会議は,平和的な原子力施設の継続的な運転に関連する協力を含め,原子力の平和利用のための装置,資材,サービス及び科学的,技術的情報の提供,有利なまたは池の適切な金融上の取極並びに原子力分野における技術援助の提供を決定する際には,締約国は,受領国が条約に参加しているか否かに重点をおかなければならないことを勧告する。
会議は,この点に関連して,締約開発途上国の増大する必要に応えるための何らかの特定の措置には,二国間または信託基金及び贈与を管理するIAEAの組織のような多数国間のチャンネルを通じるより多くの補足的な自発的援助を含みうることを勧告する。
会議は,更に締約国は,可能なときは,締約開発途上国がIAEAに提出した「技術的に健全な」技術援助要請であつて,IAEAが自己の資金源でまかなうことができないもの並びにIAEAに非加盟国である締約開発途上国によつてなされた「技術的に健全な」技術援助要請に対し,できる限り応えるよう勧告する。
会議は,地域的又は多数国核燃料サイクルセンターが,原子力発電計画を開始又は拡張しつつある多くの国の必要を安全かつ経済的に満足させる有利な方法でありうると同時に盗難防護措置(フィジカル・プロテクション)及びIAEA保障措置の適用を容易にし,条約の目標に寄与しうろことを認める。
会議は,この分野におけるIAEAの研究を歓迎し,研究を可能な限り迅速に行い,かつ,継続することを勧告する。会議は,かかる研究は,諸問題中,特にそのプロジェクトと関連して処理される必要がある複雑な実際上及び組織上の困難を確認することを含むべきであると考える。
会議は,すべての締約国に,可能なときは,就中,化学再処理工場,プルトニウム燃料製造工場,廃棄物処理装置及び使用済燃料長期貯蔵のような施設の建設及び運転に関する経済性の資料を適宜IAEAに提供すること及び特定の地域における地域的核燃料サイクルセンターの設立に関するフィジビリティー・スタディをIAEAが行うことを可能にするよう援助することによりこのような研究に協力するよう強く要請する。
会議は,このような研究が積極的な結論を導き,地域的又は多数国核燃料サイクルセンターの設置が計画される場合には,締約国は可能ならば,この計画の策定と実現に協力し援助を提供することを希望する。
第5条の再検討
会議は,核爆発のあらゆる平和的応用から生ずることのある利益が締約国たる非核兵器国に第5条の規定及びその他の適用される国際的な義務に従い提供されることを確保するために適切な措置をとるとの締約国の義務を再確認する。これに関連して,会議は,また,かかるサービスは,締約国たる非核兵器国に無差別の原則に基づいて提供されること並びに使用される核爆発装置についてその非核兵器国の負担する費用ができる限り低額であり,かつ,研究及び開発のためのいかなる費用をも含まないことを再確認する。
会議は,かかる潜在的利益が条約の規定に従い第5条で要求されている適当な国際的監視及び適当な国際的手続に従い,また,その他の適用される国際的義務に従つて核兵器により提供される核爆発サービスを通じて,非締約国たる非核兵器国に提供されうることに注目する。会議は,平和目的の核爆発の潜在的利益の享受が核爆発能力のいかなる拡散にもつながるものであつてはならないことが枢要と考える。
会議は,IAEAが,それを通じて核爆発の平和的応用から生ずることのある利益をすべての非核兵器国に提供する,条約第5条に言及されている,適切な国際機関であると考える。従つて,会議はIAEAが条約第5条に規定されている特別の国際協定の構造と内容に含まれている重要な法律的問題を確認し,検討する作業を促進し,また,その構造と内容に関する検討を開始すること,またかかる作業は,軍縮委員会及び国連総会の見解を考慮に入れ,かかる作業に参加することを希望するIAEA非加盟国たる締約国の参加を可能にすることを強く要請する。
会議は平和目的の核爆発の技術はいまだ開発と研究の段階にあること,並びに今後更に調査検討を必要とする多数くの相互に関連した国際的法制面及びその他の側面があることに注目する。
会議は,IAEAで行われてきたこの分野における作業を評価し,国連総会決議3261D(XXIX)に従つて,かかる作業が継続されることを期待する。会議は,IAEAが核爆発の平和的応用のためのサービス提供に関連した事項において中心的役割を果たすべきことを強調する。会議は,IAEAがその権限の範囲内でこの問題の検討を拡大し核爆発の平和的応用の具体的適用のすべての側面及び関連事項を包含すべきであると信ずる。この目的のために,会議は,IAEAに対し政府間の協議が行われ,かつ,この分野におけるIAEAの活動に助言を与えることのできるような適切な機関を設立するよう強く要請する。
会議は,軍縮委員会が国連総会決議3261D(XXIX)に従いIAEAの見解を適切に考慮して核爆発の平和的応用の軍備管理面での意味あいについて検討することに大きな重要性を付する。
会議は,第30回国連総会が国連決議3261D(XXIX)に基づく報告を受領し,核爆発の平和的応用の実施に関係する問題を各国が討議する機会を提供するであろうことに注目する。会議は,更に第30回国連紀会における討議の結果はIAEA及び軍縮委員会が本問題を更に検討していく上で考慮するために提供されるであろうことに注目する。
第6条の再検討
会議は,すべての締約国が次の事項に関する効果的な措置につき,誠実に交渉を行うことを約束した条約第6条の規定を想起する。
・核軍備競争の早期の停止
・核軍備の縮小
・厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的かつ完全な軍帰縮小に関する条約会議は,条約の第6条の履行に貢献する措置として,最近の数年間に具体化されかつ締結された軍備の制限及び縮小に関する諸合意を歓迎するとともに,軍備競争,特に核軍備競争が依然として減じていないことに重大な懸念を表明する。
従つて,会議は,条約の第6条の早期かつ効果的な履行を達成するため,条約の各締約国,特に核兵器国による絶え間ない,断固とした努力を強く要請する。
会議は,1963年の部分的核実験禁止条約の前文において表明され,かつ核兵器不拡散条約の前文において繰返し表明された核兵器のすべての実験的爆発の永久的停止を達成するとの決意を確認する。会議は,すべての核兵器実験を禁止する条約の締結が核軍備競争を停止する最も重要な措置の1つであるとの見解を表明する。会議は,締約国である核兵器国が率先してこの問題についての技術的かつ政治的諸困難に早期に解決するようにとの希望を表明する。会議は,効果的な包括的核実験禁止条約の締結についての合意に達するためこれらの締約国である核兵器国があらゆる努力を行うことを訴える。会議の代表団の多くは,この目的のため,締約国たる核兵器国が,あらゆる国に開放され,実効性を確保するための適当な規定を含む,特定の期間参加国があらゆる核兵器実験を停止するとの協定を,できるだけ速やかに締結すべきであり,かつその上ですべての核兵器実験の普遍的かつ永久的禁止を達成する機会に照してそのような協定の内容を再検討すべきであるとの願望を表明した。一方,会議は,地下核兵器実験の制限に関する条約の署名国たる核兵器国に対し,地下核兵器実験の回数を最小に制限するよう要請する。会議は,かかる措置がすべての核兵器の実験的爆発を永久に禁止する条約を締結するための交渉への特別の価値を有する誘因となると信ずる。
会議は,戦略兵器の制限に関する交渉に参加している核兵器国に対し,1974年11月にそれらの国の首脳によつて大筋が決められた新協定をできるだけ速やかに締結するために努力するよう訴える。会議は,かかる協定の締結に続き核兵器システムの一層の制限及び顕著な削減に関する次の交渉ができる限り速やかに開始されることを期待する。
会議は,軍縮委員会が,初期の進展にもかかわらず,最近は条約の第6条の目的を進めるための新しい実質的措置についての合意に達することができなかつたことに注目する。従つて締約国である軍縮委員会のすべての構成国,特に核兵器国に対し,軍縮委員会の議題に関するすべての問題について効果的な軍縮についての合意を達成するため努力を倍加するよう強く要請する。
会議は,すべての締約国が,国際連合,軍縮委員会及びこれらの国が参加している他の交渉を通じて,厳重かつ効果的な国際管理の下における全面的かつ完全な軍備縮小の目標に貢献する軍備の制限及び軍備縮小についての合意の締結に向つて決意をもつて作業するようにとの希望を表明する。
会議は,軍縮が万人の関心事項であり,軍漏競争と軍備縮小の分野における情勢についてすべての国の政府および国民に対して情報を提供することは第6条の目的達成上大きな重要性を持つものであるとの見解を表明する。従つて会議は,世界の与論及びすべての国の政府に対して第6条の規定の実現のために達成された進展状況を正しく知らせるため軍縮問題に関する情報の収集,編纂,流布についての現存する機能を改善する方途につき国連が考慮するよう要請する。
第7条の再検討及び非核兵器国の安全保障
会議は,すべての国が,その独立,領土保全及び主権を確保する必要のあることを認識し,核兵器の取得を放棄した締約国である非核兵器国の安全保障を確保しかつ強化することの特別の重要性を強調する。会議は,締約国が安全保障の面においてそれぞれ異なる状況におかれており,従つて,これらの国の安全についての懸念に応えるような種々の適当な手段を講じることが必要であることを認める。
会議は,核兵器の放棄を相互に確め合う最良の方法として,また,相互の安全保障を強化する効果的な方法の一つとして,非核兵器国が条約に参加する重要性を強調する。
会議は,締約国である非核兵器国の安全を確保するため,核兵器の使用を伴う侵略行為の犠牲またはそのような侵略の威嚇の対象となつた締約国である非核兵器国に対し,国連憲章に従い,直ちに援助を提供し又は支持する旨表明した寄託国の宣言(同宣言は,国連安保理事決議255(1968)により歓迎された)を尊重するとの寄託国の変りない決意に注目する。
会議は,条約第7条の規定に留意し,当該地帯の直接関係国の発意に基づき,またそれらの国の間に合意のある国際的に認められた非核兵器地帯の設置は,核兵器の拡散を防止する効果的な方法の1つであり,それらの直接関係国の安全保障に大きく貢献しうるものであると考える。会議は,このような非核兵器地帯の設置に向つてとられた措置を歓迎する。
会議は,非核兵器地帯設置のためのいかなる取極も,その最大限の効果を発揮するためには,核兵器国の協力が必要であることを認識する。会議においては,核兵器国が,これらの地域的取極の規定により完全に拘束されることになる国に対し,適当な方法により,安全保障の面で拘束力のある保証を与えるよう多くの代表により強く要請された。
また会議においては,特に締約国である核兵器国がすべての締約国である非核兵器国の安全保障を確保するため断固とした努力を払うよう強く要請された。この目的のため会議は,核兵器国であるか,非核兵器国であるかを問わず,すべての国に対し,国連憲章に従つて,国際関係において核兵器を伴うものであれ,非核兵器を伴うものであれ,武力による威嚇または武力の行使を慎しむよう強く要請する。更に会議は,すべての締約国とりわけ核兵器国が,締約国である非核兵器国の安全保障を強化すべく効果的な措置をとるとともにこの会議において表明された諸見解を考慮に入れつつ,すべての適当なフォーラムにおいてその目的のため実際的なあらゆる方法の検討を促進する責任を有することを強調する。
第8条の再検討
会議は,国連加盟国である締約国に対し,国際連合事務総長が下記の項目を,第31回国連総会の仮議題に含めるよう要請することを慫慂する。「核兵器の不拡散に関する条約の締約国の第1回再検討会議の結論の実施」
会議に参加した締約国は,寄託国政府に対し,条約の運用を検討するための第2回会議が1980年に開かれるよう提案する。
従つて,会議は,国連加盟国である締約国に対し,国際連合事務総長が,下記の項目を第33回国連総会の仮議題に含めるよう要請することを慫慂する。「核兵器の不拡散に関する条約の締約国の第1回再検討会議の結論の実施と第2回再検討会議の準備委員会の設立」
第9条の再検討
条約発効後の過去5カ年間は,条約が国際的に広く受諾されたことを示した。会議は,より広汎な参加の達成に向つての最近の進展を歓迎する。同時に,会議は条約が現在なお普遍的な参加を達成していないことに懸念の意をもつて注目する。従つて,会議は,条約に参加しない国ができるだけ早期にこの条約に参加するようにとの希望を表明する。
(1975年11月17日 ランブイエにおいて)
フランス,ドイツ連邦共和国,イタリア,日本国,グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国及びアメリカ合衆国の元首及び首相は,1975年11月15日から17日までランブイエ城に集い,次のとおり宣言することに合意した。
1. | われわれは,この3日間に世界の経済情勢,われわれの国々に共通する経済の諸問題,これらの人間的,社会的及び政治的意味あい,ならびにこれらの問題を解決するための諸構想について,十分かつ実り多き意見の交換を行つた。 |
2. | われわれがここに集うこととなつたのは,共通の信念と責任とを分かち合つているからである。われわれは,各々個人の自由と社会の進歩に奉仕する開放的かつ民主的な社会の政府に責任を有する。そして,われわれがこれに成功することは,あらゆる地域の民主主義社会を強化し,かつ,これらの社会にとり真に緊要である。われわれは,それぞれ,主要工業経済の繁栄を確保する責任を有する。われわれの経済の成長と安定は,工業世界全体及び開発途上国の繁栄を助長することとなる。 |
3. | ますます相互依存が深まりつつある世界において,この宣言に述べられている諸目的の達成を確保するために,われわれは,われわれの十分な役割を果たすとともに,経済の発展段階,資源賦存度及び政治的,社会的制度の差異を越え,すべての国々の間の一層緊密な国際協力と建設的対話のためのわれわれの努力を強化する意図を有する。 |
4. | 先進工業民主主義諸国は,失業の増大,インフレの継続及び重大なエネルギー問題を克服する決意を有する。今回の会合の目的は,われわれの進捗状況を検討し,将来克服すべき諸問題をより明確に確認し,かつ,われわれが今後辿るべき進路を設定することであつた。 |
5. | 最も緊要な課題は,われわれの経済の回復を確保し,失業がもたらす人的資源の浪費を減少せしめることである。経済の回復を確固たるものとするにあたり,その成功を脅かすこととなる追加的インフレ圧力の発生を回避することが肝要である。目的とすべきは,着実かつ持続的な成長である。かくして,消費者及び企業家の自信が回復されることとなる。 |
6. | われわれは,われわれの現在の政策が両立し,かつ,相補うものであり,回復が進行しつつあることを確信する。しかしながら,われわれは,政策の遂行にあたり,警戒を怠ることなく,また,時宜に応じ対処する必要性を認める。われわれは,回復の挫折を許容しない。われわれは,インフレの再燃を容認しない。 |
7. | われわれの関心は,また,世界貿易,通貨問題及びエネルギーを含む原材料の分野における新たな努力の必要性に集中した。 |
8. | 国内的回復及び経済の拡大の進行に伴い,われわれは,世界貿易の量的増大の回復に努力しなければならない。その増大と価格安定は,開放された貿易体制の維持により促進されることとなる。保護主義再燃の圧力が強まりつつある現在,主要貿易国は,OECDブレッジの諸原則に対するコミットメントを確認することが緊要であり,また,他国の犠牲において自国の問題の解決をはかり得るような措置に訴えることは,それが経済,社会及び政治の分野において有害な結果をもたらすものであり,回避することが緊要である。すべての諸国,なかんずく国際収支において強い立場にある諸国及び経常収支上の赤字国は,互恵的世界貿易の拡大のための政策を推進する責任を有する。 |
9. | われわれは,多角的貿易交渉が促進されるべきであると信じる。この交渉は,東京宣言にもられている諸原則に従つて,一部の分野における関税撤廃をも含む大幅な関税引下げ,農産品貿易の相当な拡大及び非関税措置の軽減を目的とすべきである。この交渉は,最大限の貿易自由化を達成することを目的とすべきである。われわれは,1977年中にこの交渉を完了するとの目標を提案する。 |
10. |
われわれは,緊張緩和の進展及び世界経済の成長の重要な一要素として,われわれと社会主義諸国との経済関係の秩序ある実り多き増進を期待する。 われわれは,また,現在進められている輸出信用に関する交渉を早期に完結するための努力を強化する。 |
11. | 通貨問題に関し,われわれは,より一層の安定のために作業を進める意図を確認する。この作業は,世界経済の基調を成す経済・金融上の諸条件のより一層の安定を回復する努力をも含んでいる。同時に,われわれの通貨当局は,為替相場の無秩序な市場状態またはその乱高下に対処すべく行動するであろう。われわれは,国際通貨制度の改革を通じて安定をもたらす必要に関し,他の多くの国の要請により,合衆国とフランスの見解に歩み寄りがみられたことを歓迎する。この歩み寄りは,IMFを連じ,同暫定委員会のジャマイカでの次期会合における国際通貨改革の諸懸案に関する合意を助長することとなろう。 |
12. | 開発途上国と先進工業世界との間の協調的関係及び相互理解の改善は,それぞれの繁栄の基盤をなす。われわれの経済の持続的成長は,開発途上国の成長のために必要であり,また,開発途上国の成長は,われわれの経済の健全性に大きく貢献するものである。 開発諸途上国の現在の大幅な経常収支赤字は,これらの諸国のみならず世界全体にとつて重大な問題である。この問題は,幾多の相互補完的な方途によつて対処されなければならない。いくつかの国際的会議における最近の諸提案は,既に先進国と開発途上国との間の話合いの雰囲気を改善した。しかし,開発途上諸国を助けるために,速やかな実際的行動が必要とされている。従つて,われわれは,開発途上諸国の輸出所得の安定化のための国際的諸取極及びこれら諸国の赤字補填を支援する措置を緊急に改善するにあたり,IMFその他適当な国際的場においてわれわれの役割を果たすものである。この関連において,最貧開発途上国に重点が置かれるべきである。 |
13. |
世界経済の成長は,エネルギー源の増大する供給可能性に明らかに結びついている。われわれは,われわれの経済の成長のために必要なエネルギー源を確保する決意である。われわれの共通の利益は,節約と代替エネルギー源の開発を通じ,われわれの輸入エネルギーに対する依存度を軽減するために,引続き協力することを必要としている。 これらの諸施策及び産油国と消費国との間の双方の長期的利益に応えるための国際協力を通じて,われわれは,世界エネルギー市場におけるより均衡のとれた条件と調和のとれた着実な発展を確保するために努力を惜しまない。 |
14. | われわれは,12月16日に予定されている国際経済協力会議の開催を歓迎する。われわれは,すべての関係国の利益が擁護され,かつ増進されることを確保するとの積極的考えに立つてこの対話をとり進める。われわれは,先進工業国も開発途上国も,世界経済の将来の成功と,その基礎となる協力的政治関係に共に重大な利害を有していると確信する。 |
15. | われわれは,既存の制度の枠組み及びすべての関係国際機関において,これらのすべての問題についての協力を強化する意図を有する。 |
Declaration of Ramboui11et
The heads of the States and Governments of France, Federal Republic of Germany, Italy, Japan, the United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland and the United States of America met in the Chateau de Rambouillet from 15th to 17th of November, 1975 and agreed to declare as fo11ows:
1. In these three days we held a searching and productive exchange of views on the world economic situation,on economic problems common to our countries, on their human, social and politica1 implication, and on plans for resolving them.
2. We came together because of shared beliefs and shared responsibilities. We are each responsible for the government of an open, democratic society, dedicated to individua1 liberty and social advancement.
Our success will strengthen, indeed, is essential to democratic societies everywhere.
We are each responsible for assuring the prosperity of a major industrial economy. The growth and stability of our economies wi11 help the entire industrial world and developing countries to prosper.
3. To assure in a world of growing interdependence the success of the objectives set out in this declaration, we intend to play our own fu11 part and strengthen our efforts for closer international cooperation and constructive dialogue among all countries, transcending differences in stages of economic development, degrees of resource endowment and political and scoial systems.
4. The industrial democracies are determined to overcome high unemployment, continuing inflation and serious energy problems.
The purpose of our meeting was to review our progress, identify more clearly the problems that we must overcome in the future, and to set a course that we wi11 fo11ow in the period ahead.
5. The most urgent task is to assure the recovery of our economies and to reduce the waste of human resources involved in unemployment. In consolidating the recovery, it is essential to avoid unleashing additiona1 inflationary forces which would threaten its success. The objective must be growth that is steady and lasting. In this way, consumer and business confidence wi11 be restored.
6. We are confident that our present policies are compatible and complementary and that recovery is under way. Nevertheless, we recognize the need for vigilance and adaptability in our policies. We will not allow the recovery to falter. We will not accept another outburst of inflation.
7. We also concentrated on the need for new efforts in the areas of world trade, monetary matters and raw materials, including energy.
8. As domestic recovery and economic expansion proceed, we must seek to restore growth in the volume of world trade. Growth and price stability will be fostered by maintenance of an open trading system. In a period where pressures are developing for a return to protectionism, it is essential for the main trading nations to confirm their commitment to the principles of the OECD Pledge and to avoid resorting to measures by which they could try to solve their problems at the expense of others, with damaging consequences in the economic, social and political fields.
There is a responsibi1ity on a11 countries, especia11y those with strong balance of payments positions and on those with current deficits to pursue policies which will permit the expansion of world trade to their mutual advantage.
9. We believe that the Multilateral Trade Negotiations should be accelerated. In accordance with the principles laid down in the Tokyo Declaration, they should aim at substantial tariff cuts, even eliminating tariffs in some areas, at significantly expanding agricultural trade and at reducing non-tariff measures. They should aim at achieving the maximum possible level of trade liberalization therefrom. We proposed as our goal completion of the negotiations in 1977.
10. We look to an orderly and fruitful increase in our economic relations with socialist countries as an important element in progress in detente, and in world economic growth.
We will also intensify our efforts to achieve a prompt conclusion of the negotiations now under way concerning export credits.
11. With regard to monetary problems, we affirm our intention to work for greater stability. This involves efforts to restore greater stabi1ity in underlying economic and financial conditions in the world economy. At the same time, our monetary authorities will act to counter disorderly market conditions, or erratic fluctuations, in exchange rates. We welcome the rapprochement, reached at the request of many other countries, between the views of the U.S. and France on the need for stability that the reform of the international monetary system must promote.
This rapprochement will facilitate agreement through the IMF at the next session of the Interim Committee in Jamaica on the outstanding issues of international monetary reform.
12. Our cooperative relationship and improved understanding between the developing nations and the industrial world is fundamental to the prosperity of each.
Sustained growth in our ecomomies is necessary to growth in developing countries and their growth contribute significantly to health in our own economies.
The present large deficits in the current accounts of the developing countries represent a critical problem for them and also for the rest of the world. This must be dealt with in a number of complementary ways.
Recent proposals in severa1 international meetings have already improved the atmosphere of the discussion between developed and developing countries. But early practical action is needed to assist the developing countries. Accordingly, we will play our part through the IMF and other appropriate international fora, in making urgent improvements in international arrangemments for the stabilization of the export earing of developing countries and in measures to assist them in financing their deficits.
In this context, priority should be given to the poorest developing countries.
13. World economic growth is clearly linked to the increasing availability of energy sources. We are determined to secure for our economies the energy sources needed for their growth. Our common interests require that we continue to cooperate in order to reduce our dependence on imported energy through conservation and the development of alternative sources.
Through these measures as well as international cooperation between producer and consumer countries responding to the long term interest of both, we shall spare no effort in order to ensure more balanced conditions and a harmonious and steady development in the world energy market.
14. We welcome the convening of the Conference on International Economic Cooperation scheduled for December 16. We will conduct this dialogue in a positive spirit to assure that the interests of all concerned are protected and advanced. We believe that industrialized and developing countries alike have a critical stake in the future success of the world economy and in the cooperative political relationships on which it must be based.
15. We intend to intensify our cooperation on all these problems in the framework of existing institutions as well as in all the relevent international organizations.
(1975年12月19日 パリにおいて)
1. | 国際経済協力会議は,12月16日から19日まで,閣僚レベルで,パリで会合した。会議には次の27の会議構成国の代表が参加した。(アルジェリア,アルゼンチン,オーストラリア,ブラジル,カメルーン,カナダ,欧州共同体,エジプト,インド,インドネシア,イラン,イラク,ジャマイカ,日本,メキシコ,ナイジェリア,パキスタン,ペルー,サウディ・アラビア,スペイン,スウェーデン,スイス,米国,ヴェネズエラ,ユーゴースラヴィア,ザイール,ザンビア)会議に出席した閣僚は国連事務総長の臨席を歓迎した。 |
2. | 会議の作業はヴァレリー・ジスカール・デスタン・フランス共和国大統領閣下により開始された。 |
3. | カナダの外務大臣たるアラン・J・マッカッケン閣下及びヴェネズエラの国務大臣たるマヌエル・ペレス・ゲレロ博士が,共同議長として,会議を主宰した。 |
4. | 会議に出席した閣僚は,国際経済情勢に関し,見解を述べた。閣僚は,その指摘した問題を解決しうる方法につき示唆を行つた。MSAC諸国の窮状に注意が向けられた。閣僚は,国際経済協力会議が,これらの問題をとりあげ,また,全ての国と国民の利益のために国際的経済協力を進めるための独得の機会を提供することを認めた。 |
5. | 会議は集中的な国際的対話を開始することを決定した。このため会議は,むこう1年間定期的に会合する(エネルギー,一次産品,開発及び金融問題に関する)4委員会を設置した。 4委員会は,いずれも開発途上国を代表する10ヵ国及び工業国を代表する5ヵ国の15ヵ国により構成することが合意された。 |
6. | 委員会は1976年2月11日に作業を開始する。4委員会の作業の準備は,他の会議参加国とも協議ののち,会議及び4委員会の共同議長の会合でレビューされる。この会合は,会議により承認されている第2回準備会合最終宣言第10~14項に含まれている一般的方向づけの枠組のなかで,1976年1月26日に開催される。 |
7. | 会議は,各委員会には次の諸国が構成国として参加すべきことに合意した。 エネルギー:アルジェリア,ブラジル,カナダ,EC,エジプト,インド,イラン,イラク,ジャマイカ,日本,サウディ・アラビア,スイス,米国,ヴェネズエラ,ザイール。 一次産品:アルゼンティン,オーストラリア,カメルーン,EC,インドネシア,日本,メキシコ,ナイジェリア,ペルー,スペイン,米国,ヴェネズエラ,ユーゴースラヴィア,ザイール,ザンビア。 開発: アルジェリア,アルゼンティン,カメルーン,カナダ,EC,インド,ジャマイカ,日本,ナイジェリア,パキスタン,ペルー,スウェーデン,米国,ユーゴースラヴィア,ザイール。 金融: ブラジル,EC,エジプト,イント,インドネシア,イラン,イラク,日本,メキシコ,パキスタン,サウディ・アラビア,スウェーデン,スイス,米国,ザンビア。 各委員会の共同議長国は次のとおりである。 エネルギー: サウディ・アラビア及び米国 一次産品: 日本及びペルー 開発: アルジェリア及び欧州共同体 金融: 欧州共同体及びイラン 必要に応じ,会議及び各委員会の共同議長国の合同会合を開くことができる。 |
8. | 会議構成国であつて自己が所属していない委員会の作業をフォローすることを希望する国は,発言権を有しないオーディターとしての代表1名を任命する権利を有すべきことが合意された。 |
9. | 会議は,検討されるべき問題に直接の関心を有する幾つかの機能的政府間機関がそれらの問題の検討に有用な貢献を行いうると判断した。従つて,会議はこれらの機関(国連事務局,OPEC,IEA,UNCTAD,OECD,FAO,GATT,UNDP,UNIDO,IMF,IBRD,SELA)に対し,恒常的に関連委員会において代表を派遣するよう招請した。これらの機関のオブザーバーは発言権を有するが投票権を有せず,従つて,コンセンサスの形成には参加しない。さらに,各委員会は適当な機能的政府機関に対し,アド・ホックなオブザーバーとして,特定問題の検討に参加するよう招請することができる。 |
10. | 会議は,両共同議長の提案に基づき,事務的及び技術的機能に限定された国際的事務局を設置することを決定した。会議はベルナール・ギルトン氏を事務局の長に指名し,その組織及び運営手続に関する計画を承認した。事務局の設置及び会議の会合によつて生ずる経費は,会議によつて合意された方式に基づいて会議の構成国が負担する。 |
11. | 4委員会はパリで会合することが合意された。各委員会のその後の会合は当該委員会の共同議長により召集される。 |
12. | この閣僚会議より少なくとも6ヵ月経過した後1回ないし数回の政府事務レベル会合を開催することができる。閣僚会議は約12ヵ月後に再び閣僚レベルで会合することに合意した。 |
13. | 会議は,準備会合が勧告したコンセンサスの原則に基づく手続規則を採択した。この規則によれば決定及び勧告の採択は,議長が,いかなる構成国の代表団も反対しなかつたことを確認したうえで行われる。会議の公用語及び作業用語は,英語,アラビア語,スペイン語及びフランス語である。手続規則は会議のすべての機関に適用される。 |
14. | 会議は,「国際経済協力会議」と題する国連総会決議(決議3575(XXX))に留意し,第31回国連総会に報告書を提出することに合意した。 |
15. | 会議構成国は,ジスカール・デスタン大統領に対し,ここに開始された対話を実現するために同大統領がとつた行動につき,特別の敬意を表するとともに,フランス政府に対し,同政府の好遇並びに同政府が閣僚会議を成功させるため払つた努力及び果たした責務につき,深甚なる謝意を表明した。 |
(1975年12月19日 パリにおいて)
1. | 一般借入れ取極(GAB)に参加する10カ国の大臣及び中央銀行総裁は,W. F. デュッセンバーグ・オランダ蔵相を議長として1975年12月19日にパリで会合した。会議には,また,H. J. ウィッテフェーン国際通貨基金専務理事が参加したほか,F. ルートウィラー・スイス国立銀行総裁,E. ヴァン・レネップOECD事務総長,R. ラール国際決済銀行総支配人及びF. X. オルトリEC委員長の代理としてU. モスカ氏が出席した。 |
2. |
R. オッソラ蔵相代理会議議長より蔵相代理の予備的討議に関する報告を聴取した後,大臣及び総裁は,次のとおり合意した。 (為替相場制度) |
3. | 大臣及び総裁は,米国及びフランスの大臣が提案したIMF協定第4条の諸改正案につき検討した。大臣及び総裁は,これらの提案に同意し,ジャマイカでの暫定委員会会合において支持することとした。大臣及び総裁は,IMF理事会が次週これらの改正案を検討することとなつている旨のIMF専務理事の発言に留意した。 |
4. |
大臣及び総裁は,為替相場の動向及びその基礎的要因についての協議手続を強化すべきである旨の米仏提案を討議した。大臣及び総裁は,中央銀行が相互間の協議を深めかつ拡大する過程にあることに留意し,この協議が為替相場の乱高下を防止するにあたつて重要な貢献をするであろうと考えた。大臣及び総裁は,蔵相及び蔵相代理間の協議手続の組織化が実際的な基礎の上に立つて行われるべきことにつき合意した。大臣及び総裁は,また,IMF専務理事と密接な協議を維持することについても合意した。 (金に関する取極) |
5. | 大臣及び総裁は,1975年8月318の暫定委員会のプレス・コミュニケ第6項で言及されている金に関する取極中の各種の要素が同時に実施さる必要があることにつき合意した。 |
6. |
改正されたIMF協定には,IMF加盟国は,その準備資産に関する政策を国際流動性に対するより良い国際的監視を推進し,特別引出権を国際通貨制度における中心的な準備資産とするという目的に合致させるようにするため,IMF及び他の加盟国と協力することを約束する旨の規定が含まれるべきである。 (開発途上国との関係) |
7. | 大臣は,IMF加盟国,特に発展途上国がIMF資金を一層利用する必要性に関する諸問題について討議した。大臣は,これらの問題につきジャマイカでの暫定委員会会合の前にさらに検討することに合意した。これに関連し,大臣及び総裁は,IMF理事会が補償融資制度の重要な自由化を行うとの合意に達したことに満足の意をもつて留意した。大臣及び総裁は,また,低所得国の利益のために信託基金を設置する緊急の必要性があるとの合意を確認した。 |
(チ) 国際通貨制度に関するIMF総務会暫定委員会コミーニケ(仮訳)
(1976年1月8日 キングストンにおいて)
1. | 国際通貨基金総務会の暫定委員会は,1976年1月7日及び8日,ジャマイカのキングストンにおいて,カナダのジョン・ターナー氏の後任として委員会により選出されたウィリー・ド・クレルベルギー大蔵大臣を議長として,第5回会合を開いた。H. ヨハネス・ウィッテフェーンIMF専務理事がこの会合に参加した。この委員会の討議には以下のオブザーバーが出席した。アンリー・コナン・ベディエ世銀・IMF合同開発委員会議長,UNCTAD事務局長の代理としてのG. D. アルセニス氏,ウイルヘルム・ハーフェルカンプEC委員会副委員長,マハジョーブ・A. ハサネインOPEC経済局長,ルネ・ラールBIS総支配人,エミール・ヴァン・レネップOECD事務総長,F. ルートウイラー・スイス国立銀行総裁,オリビエ・ロングGATT事務局長,及びロバートS. マクナマラ世銀総裁。 |
2. | 委員会は,割当額の第6次一般的検討なこ関する理事会報告に含まれている勧告及び承認を得るため総務会に提出される個別の加盟国の割当額の増加に関する決議案を了承した。これに関連して,委員会は,基金の保有する各通貨が基金の政策に従つて基金の操作及び取引において利用可能とすべきであるという見解を再確認した。このための適切な規定がIMFの協定改正案に盛り込まれることとなろう。協定改正の発効前の期間において委員会のこの見解を実行に移すため,この決議の採択の日の後6カ月以内に,各加盟国は,IMFがその政策に従つて当該国通貨を操作及び取引に利用することに関し,IMFの満足しうる取極を行うべきであるということが合意された。ただし,理事会は,この取極が行われるべき期限を延長することができる。 |
3. | 委員会は,その第4回会合において到達したIMF保有金の一部の処分に関する合意を実施する問題を検討した。1975年8月31日こ委員会により発表されたプレス・コミュニケの6.に掲げる取極の同時履行を遅滞なく開始するため行動を起こすべきことが合意された。IMFによる金の売却は,4年の期間にわたり適切な計画に従つて公開の競争により行われるべきである。この競売においては国際決済銀行が入札しうろことが了解された。 |
4. | 世界経済の現状及び見通しに関する討議において,委員会は,1974年から1975年にかけての深刻な国際的景気後退からの回復が工業世界の多くの国で現在進んでいることに留意した。しかし,現在の失業率及びインフレーション率は,いずれも依然として受け入れがたいほど高い。委員会は,工業国,特に相対的に国際収支ポジションの強い国々に,インフレーションとの戦いは続けつつも,今後十分かつ持続的な景気拡大率を保証するような政策をとることを呼びかけた。 委員会は,一次産品産出国,特に一次産品産出開発途上国の対外ポジションの悪化に対して特別の関心を示した。1975年においては,開発途上国は,全体的にみて,再び,大幅な経常収支の赤字並びに多額の対外借入れ及び近年インフレーションによつてすでに侵蝕されている対外準備の利用によるファイナンスという様相を呈した。本年についても大幅な経常赤字が予測されているところ,委員会は,多くの開発途上国が1976年に適当な輸入量を維持し,かつ,調整のための適切な政策をとりうるか否かは,IMFから十分な信用を受けられるか否かにかかつていると感じた。 |
5. | 委員会は,輸出変動補償融資制度を拡大する最近の理事会決定を歓迎した。この新たな決定に基づき,IMFは,1966年の決定の下では加盟国の割当額の50%であつたのに対し,75%まで引き出しを認める用意があることとなる。いずれか1年の引出額の最大限度は,割当額の25%から50%に引き上げられる。さらに,この決定は,IMFが輸出の落ち込む初期の段階で,この制度に基づく援助を与えることを可能とするものである。 |
6. | 委員会は,IMF資金の利用に関するIMFの政策の検討及び低所得の加盟国の利益のための信託基金に関する理事会の報告に留意した。委員会は,これらに関する問題を検討した後,次のような結論に到達した。 |
(a) | 信託基金を遅滞なく設置するために必要な措置がとられるべきことが合意された。この資金は,IMF保有金の売却益から得られ,これは,各国の自発的な拠出によつて補強されるものとする。委員会がその第4回会合において到達した合意に従つて売却に供することができる金の量は,4年間にわたつて処分されるべきことが合意された。信託基金の資金は,1人当たりの所得が低い加盟国に対し国際収支上の援助を譲与的条件で与えるために使用されるものとする。利用資格のある加盟国は,当初は,1973年における1人当たりの所得が300SDRを超えない国とする。 |
(b) | さらに,協定の改正が発効する期日までの間,各クレジット・トランシュが45%拡大されるべきことが合意された。これは,クレジット・トランシュによる資金利用可能額が,割当額の100%から145%にまで拡大されることを意味し,例外的な状況の下では,さらに援助が与えられる可能性を伴うものである。各トランシュについての現行の各種の利用条件は,変更されない。もし,加盟国の必要からみて,この間題につき再検討することが適当であることが明らかとなつた場合には,IMFは,IMF資金の利用に関する問題を将来さらに検討することとなろう。 |
7. | 委員会は,協定改正に関する理事会の報告に留意し,懸案の諸問題の解決に向かつて進展がみられたことを歓迎し,また,理事会が協定の大幅な改正を達成するために行つた厖大かつ好結果の作業について,理事会の努力を多とした。委員会は,特に,為替相場という重要な問題に関する規定につき達せられた合意を歓迎し,この点に関しては,為替相場取極に関する制度を設定する協定第4条の新たな規定を承認した。新制度は,安定という目標を認識するとともに,これをその基調を成している経済・金融上の諸要因のより大きな安定の実現と関連づけるものである。委員会は,理事会により指針を与えるよう要請されていた残余の諸問題を検討し,次のとおり合意した。 |
(a) | 改正協定には,IMFの加盟国が,準備資産に関するその政策を,国際流動性に対するよりよい国際的監視を促進し,かつ,特別引出権を国際通貨制度における中心的準備資産とするという目的に合致させるために,IMF及び他の加盟国と協力することを約束するというような規定を含めるべきである。 |
(b) | 改正協定には,次のような授権規定を含むものとする。すなわち,IMFは,前記3に掲げる取極に従い5,000万オンスが分配された後に残されている金のいかなる部分をも売却することかでき,また,その利益を(1)IMFの通常の操作及び取引において直ちに使用するため,IMFの一般資金を補強するために使用すること,又は,(2)困難な状況にある開発途上加盟国が特別の条件で利用することができる国際収支上の援助を行うために使用することができるものとする。IMFは,このような売却を行う際には,その利益の一部を割当額に基づいて開発途上加盟国に分配し,また,これらの国に対し,金を現在の公定価格で直接に売却することにより同様の分配を行う権限をもつものとする。このような分配に関するいかなる決定も,総投票権数の85%の多数により行われなければならない。IMFのこれらの権限は,IMFが別個の授権規定に基づき,前記の5,000万オンスの処分の後に残されている金のいかなる部分をも現在の割当額に基づきかつ現在の公定価格によりすべての加盟国に売り戻すことができるという権限に追加されるものである。 |
(c) | IMF保有金の売却による利益をIMFの通常の操作及び取引に使用することについてのIMFの決定は,総投票権数の70%の多数により行われるものとし,また,その利益をその他の操作及び取引に使用することについての決定は,総投票権数の85%の多数により行われるものとする。 |
(d) | 理事会は,改正協定に基づいて要求されることとなる特別多数のうち政治的性格の妥協を反映しない取引上の決定に関するものの件数をできれば削減することに配慮しつつ,協定改正案に関する作業の最終段階において,このような取引上の決定に関する多数について検討を加えることを促がされた。この検討は,数週間以内に完了されなければならず,包括的な協定改正案の完成を遅滞させてはならない。 |
(e) | 改正協定に基づくSDRの評価方法に関する決定の採択に必要な多数は,総投票権数の70%とする。ただし,評価の原則にかかわる変更又は原則の基本的な変更を含む決定については,総投票権数の85%の多数で採択されるものとする。 |
(f) | 理事会は,代替勘定の問題についての検討を,包括的な協定改正案の完成を遅滞させることなく,継続すべきである。 |
(g) | 特別引出勘定の参加国が特別引出権医有額を復元する義務に関しては,改正協定においてIMFが,復元に関する規則をいつでも検討することができること及び総投票権数の70%の多数により,この規則を採択し,修正し,又は廃止する権限を有すべきことが合意された。 |
8. | 委員会は,理事会に協定改正に関する作業を,委員会によつて与えられた指針に照らして,完了するよう要請した。委員会は,理事会が承認を求めるため,数週間以内に,包括的な協定改正案を報告とともに総務会に提出できるであろうことを期待する。 |