第3節 青年海外協力隊事業
青年海外協力隊事業は,開発途上諸国からの要請に応じ,これらの諸国の経済的,社会的開発のために必要な技術又は技能を身につけた青年を派遣し,相手国の人々と生活と労働をともにして,開発のための実践的な活動に従事せしめることを目的としている。
この事業は,65年に当時の海外技術協力事業団の一部局として青年海外協力隊事務局が設置されて発足した。その後74年8月国際協力事業団が発足するに伴い同事業団がこの事業の実施を承継することになつた。本事業は技術協力の一環としての性格をもつとともに,奉仕の精神から海外協力活動を志望する青年に海外交流の場を提供し,その主体的活動を支援するという青年教育の視点をあわせ持つ意味で,第2節で述べられた他の技術協力とは性格を異にしている。
協力隊員の派遣は,わが国政府と相手国政府との間で隊員の取扱いその他について規定する派遣に関する基本取極に基づいて行われている。75年度においては,ホンデュラスとの間に基本取極が締結されたことにより,派遣取極締結国は21カ国となつた。(そのうちカンボディアとウガンダの2カ国には現在派遣を行つていない。)
75年度においては,あらたにテュニジア,ホンデュラスへの派遣が実現したことを含めて16カ国へ216名(シニア隊員を含む)の隊員が派遣され,同年度末現在,19カ国へ499名の隊員を派遣中である。これにより65年以来派遣された隊員数は20カ国,合計2,035名(うち女性隊員257名)となつた。この実績を地域別にみると,アジア地域(7カ国)57.5%,アフリカ地域(5カ国)31.9%,中近東地域(3カ国)6.2%,中南米地域(3カ国)3.4%,オセアニア地域(2カ国)1.0%の順となつている。業種別では,農林水産41.4%,教育16.6%,交通々信13.3%,土木建設13.3%,鉱工業5.5%の順になつている。
本事業実施体制の面では,派遣に係わる種々の制度が軌道に乗り,定着化しつつある。すなわち,協力隊の現職参加体制の一層整備の一環とし73年に導入された所属先補塡制度に加えて,75年度からは間接経費補塡制度が新設された。なお,75年度末現在で派遣中の隊員の31%が所属先より有給休職措置をとつたうえで派遣されている。