3. | 日本政府が関与した重要共同コミュニケびその他の外交文書 |
(条約,協定類は除く)
(1)二国間関係
(イ) 田中総理大臣とエチェベリーア・メキシコ合衆国大統領の共同コミュニケ
(1974年9月15日 於メキシコ市)
田中角栄日本国内閣総理大臣は,ルイス・エチェベリーア・アルバレス・メキシコ大統領の招待により,1974年9月12日より同15日までメキシコを公式訪問した。
大統領と総理大臣との会談は,終始極めて親密かつ率直に行なわれたことが特色であった。
大統領と総理大臣は,両国間の関係を検討するに当たり,1972年のメキシコ大統領の訪日の成果として両国間の協力と交流が高い水準に達したことを確認した。この点に関し,両国首脳は,両国間に現に存在するきずなは一層強化,拡大されねばならないことについて意見の一致を表明した。
大統領と総理大臣は,現在の世界情勢について意見の交換を行ない,最近のメキシコ大統領のラテン・アメリカ及びカリブ諸国訪問に関連して,ラテン・アメリカ及びカリブ諸国の連帯が持つ重要性及びこれら諸国が相携えて世界の平和と繁栄になし得る貢献を強調した。
大統領と総理大臣は,両国が恒久的かつ社会正義を伴う平和の達成のために続けてきた努力を一層強化する必要があることについて意見が一致し,国際連合の事業,特に,国際の平和と安全を強化し維持するために軍備拡張主義をおさえる努力に対するそれぞれの国の支持を再確認した。
大統領は,平和と人類の福祉の達成のためには先進国と開発途上国との間に真の経済的均衡が達せられることが不可欠であることを強調した。この点に関連し,大統領は,今月開催される国際連合総会において,国家間の経済権利義務憲章が採択されることが必要である旨表明した。
総理大臣は,世界のすべての国の協力により,相互利益を伴った人類の調和ある進歩と発展の理想を効果的に追求する発意に対し,深い関心を表明した。
両国首脳は,次期国際連合総会において憲章が上記の線に従い採択されることを希望する点で一致し,そのために努力を払うことにつき合意した。
通商関係に関しては,大統領と総理大臣は,日墨間の通商の発展を満足の意をもって確認するとともに,かかる関係が両国の利益のために一層強化されることが望ましい点について意見の一致をみた。
両国首脳は,特に満足の意をもって日墨両国の官民代表の交流を通じて達成された成果に言及し,またすでに存在するきずなと意思の疎通を強化する目的をもって,かかる交流が促進されることが望ましいことを確認した。
大統領と総理大臣は,メキシコにおいて実施されている投資計画に対する日本の公的及び私的の資金協力を高く評価し,今後資金協力の対象分野を広げることが望ましいことにつき意見の一致を見た。
両国首脳は,投資計画の審査とそれに対する融資が,メキシコについてはナショナル・フィナンシェラ,また日本については輸出入銀行等の機関を通じ行われることが望ましいとし,この意味において,一例として前記の機関を通じて成功裡に実施されている発電及び製鉄の分野における融資案件を指摘した。
大統領と総理大臣は,コリマ州マンサニーリョ港開発のために日本輸出入銀行より供与される借款が近く具体化されることにつき満足の意を表した。
両国首脳は,日本の資本市場及び国際収支の事情が許す限り,メキシコ政府の新規の公債を前記市場において発行することを支持することに意見の一致を見た。
大統領と総理大臣は,両国の企業がメキシコ及び日本の経済の発展のために望ましい部門において,新規の共同投資計画を実施することを期待する旨表明した。また,両国首脳は,両国の企業交流を促進するために,両国の企業の活動に関し適切な支持を与えることについて合意した。
メキシコ及び日本の両国首脳は,文化,教育,科学及び技術の分野において一層交流を促進することについて意見の一致をみた。
大統領と総理大臣は,1971年に開始された日墨研修生・学生等交流計画は相互の理解と協力を通じて,両国民の間の緊密な友好関係を強化することに,また,個々の人材養成計画の目標を達成することに寄与する効果的な手段であることを評価した。よって,両国がこの計画をその目的と優先度とに沿うものとするために行ってきた努力を継続することに合意した。
両国首脳は,日墨学院設立は,両国民の間の相互理解の増進のために画期的重要性を有する計画であるとして,その早期創設を支援する決意を表明した。
同様に,総理大臣は,日本がメキシコにおける日本研究の促進及び日本語の普及の上で従来の協力を継続するであろう旨を述べた。
両国首脳は,日墨技術研修センターの設立が望ましく,そのために日本は可能な範囲で技術協力を行うことについて合意した。
両国首脳は,環境汚染につき,両国が類似の問題をかかえていることにかんがみ,関係機関が科学技術情報を交換すること及びこの問題の専門家を交流することの可能性を検討することについて合意した。
両国首脳は,科学技術協力基本協定を近い将来において締結するため,意見の交換を続けてゆくことが望ましいことを認めた。
総理大臣は,大統領に対し,メキシコ滞在中に総理大臣及び随員一行が受けた友情に満ちた暖いもてなしに対し衷心より感謝の意を表明した。同時に,メキシコの独立記念式典行事に参列し,その機会に日本国民の名においてメキシコ国民に直接祝意を表明することができたことを喜びとするとともに,メキシコ国民及びメキシコ国の繁栄と幸福を心から祈念した。
エチェベリーア大統領は,田中総理大臣がこの国民的行事へ参加されたことに満足の意を表明するとともに,日本国民及び日本国の繁栄と幸福に対するメキシコ国民及びメキシコ国の祈念を重ねて表明した。
(ロ) 田中総理大臣のブラジル連邦共和国公式訪問に際しての日・伯共同発表(仮訳)
(1974年9月17日 於ブラジリア)
1. | 日本国総理大臣田中角栄閣下は,ブラジル連邦共和国大統領エルネスト・ガイゼル 陸軍大将閣下の招待により,ブラジル国を公式訪問した。田中総理大臣は,1974年9月16日から18日まで,ブラジリアに滞在した後,18日から21日までイパチンガ(ミナス・ジェライス),リオ・デ・ジャネイロ及びサンパウロを訪問する予定である。 |
2. | 田中総理大臣のブラジリア滞在中,大統領と総理大臣は率直かつ友好的な雰囲気の中で,二度の会談を行ない両国間に存在する友誼と相互信頼を再確認した。 |
3. |
大統領と総理大臣は相互に関心を有する国際情勢,なかんずく米州及びアジアの情勢に関する広範囲の問題につき検討した。 ガイゼル大統領は米州関係と世界情勢に関するブラジル外交政策の基本方針につき説明したのに対し,総理大臣はブラジルが果たすべきますます重要な役割を高く評価した。 田中総理大臣は日本の外交政策との関連において,アジア及び太平洋地域における情勢と日本の同地域における立場について説明した。大統領は総理大臣に対して,同国の最近の中華人民共和国との外交関係樹立を含めアジア問題に関するブラジル政府の見解について説明した。総理大臣は,この地域におけるブラジルの増大する関心を歓迎する旨述べた。 大統領と総理大臣は諸国家の行動の調和のための基本的な場としての国際連合の重要性を再確認し,両国外交政策の主要目的である平和,開発及び安全保障に対する努力への引き続いての支持を誓約した。 また,両者は現下の国際的緊張緩和,ヨーロッパ情勢の進展,及びアフリカ大陸における非植民地化の進行に関する最近の出来事について意見の交換を行なった。 両者は,国際連合及び国際社会が中東問題を不断の検討の下に置くべきであり,関連あるすべての問題に対し正当な解決が見い出されるべきであるとの確信を再確認した。 |
4. | 大統領と総理大臣は,継続する軍備競争,わけても核兵器競争に対する憂慮を表明し,有効な国際管理の下における全面軍縮に対する努力への両者の支持を重ねて明らかにした。 |
5. | 大統領と総理大臣は国際貿易関係について検討した。両者は1973年9月東京において採択された閣僚宣言に対する両国政府の支持を再確認するとともに,世界貿易の拡大とより一層の自由化を達成し開発途上国の国際貿易に追加的利益を確保するために多国間貿易交渉をさらに促進する必要性が増大していることに同意した。 |
6. | 大統領と総理大臣は二国間貿易が著しく増大し,往復10億ドルを超えたことに満足の意をもって留意するとともに,二国間貿易の一層の増大と多様化を促進するための努力が引続き必要であることを認めた。 |
7. |
大統領は総理大臣に対して外国投資に関するブラジルの政策について説明し,ブラジル経済に対する日本の資本投資はブラジル国家開発計画の枠内において特に歓迎される旨表明した。 大統領と総理大臣はブラジルに対する日本の投資が増大し,引き続き両国に対して利益をもたらすことを期待する旨表明した。 大統領と総理大臣はブラジルの経済開発とアマゾン地域の開発に大きく寄与すると期待されるアマゾン地域の水力発電及びアルミニウム精錬計画について討議し,両者は日本の民間業界とブラジル側当事者との間でその最終段階において年産64万トンに達することが計画されているアルミニウム精錬計画の調査実施のための合弁会社設立につき合意が成立した事実に満足の意を表明した。 さらに,両者は本日リオ・ドーセ社と日伯紙パルプ資源開発会社との間で調印された取極の対象である森林・パルプ開発事業を達成するために両国政府が共同の努力を 行うことについて,同様に満足の意を表明した。本事業は年間300万トンのチップと100万トンのセルローズを生産し,1万5千人に対し直接雇用の機会を創り出すことが見込まれる。 大統領と総理大臣は,ブラジルの農業事業におけるブラジル資本と日本の民間資本との間の一層の提携の可能性を歓迎した。これらの事業はブラジル側の過半数の資本参加を得て農産物の生産,企業化及び商品化に従事し,ブラジル国内市場の需要に優先度を与え,かつ生産の一部は輸出向けに計画される。両国政府はこれらの農業事業に対する適切な支援について検討する予定である。 大統領と総理大臣は,漁業開発のために,日本とブラジルの民間部門が共同の努力を行うことを歓迎した。これに関連し,総理大臣は,ブラジルにおける漁業調査に対する日本の技術的支援の可能性を考慮しつつ,中断されている日伯漁業協定交渉が近い将来再開されることを期待する旨表明した。 |
8. |
大統領と総理大臣は,また,日本とブラジルとの協力の強化,とりわけ科学,技術及び原子力の平和利用の分野における協力を強化することの相互利益についても検討した。 両者は,日本とブラジルとの間の技術協力基本協定の枠内で両国間における専門家及び技術的情報の交換を促進することに合意した。両者は,更に,原子力の平和利用の分野におけるより一層の協力の必要を認め,できる限り早期に両国政府間において事務レベルの協議を開始することにつき合意した。 日本及びブラジル両国政府は,産業汚染規制及びエネルギー消費節約の分野における政府及び民間レベルの技術の交流の可能性についても検討する。 |
9. | 大統領と総理大臣は,自国の経済見通しに関して意見交換を行い,国際的及び国内的問題を勘案しつつ,両国が安定的かつ持続的成長を目標としていく意向であることに留意した。 |
10. | 総理大臣は両国間の文化交流の拡大と友好関係の強化を希望し,日本国政府はサンパウロ大学日本文化研究所を建設するために,同大学に対し資金を贈与する意図であることを表明した。 |
11. | 総理大臣は,ブラジル政府が,1975年沖縄で開催される国際海洋博覧会への正式参加を求めた日本政府の招待を受諾したとの決定を大いなる満足の意をもって確認した。 |
12. | 大統領と総理大臣は両国間関係の全般にわたり再検討を行った結果,両国関係の一層の強化の見通しが存在することに満足の意をもって留意するとともに,両国の利益のためにあらゆる分野において一層の接触の促進を図るとの固い決意を表明した。この目的のため両者は次の要件に基づき日伯閣僚協議会を設立することを決定した。 |
(1) | 本協議会は両国が共通の利益と関心を有する諸問題につき検討することを目的とする。 |
(2) | 本協議会は両国の外務大臣のほか他の閣僚が討議事項に応じ参加する。 |
(3) | 本協議会は相互の協議に基きブラジリア又は東京において開催される。 |
13. | 総理大臣は,大統領に対し,1975年秋の双方にとり都合のよい時期に国賓として訪日されるようにとの招待を重ねて行った。大統領は,この招待を喜んで受諾する旨表明した。 |
14. | 総理大臣はブラジル滞在中に総理大臣および随員一行が受けた友情に満ちた暖かいもてなしに対し,衷心より感謝の意を表明した。 |
(昭和49年9月24日)
1. | 田中角栄日本国総理大臣は,ピエール・エリオット・トルドー・カナダ国首相の招待により,9月23日から26日までの日程で,カナダを訪問中である。田中総理大臣は,オタワ,トロント及びヴアンクーヴアーを歴訪中,1974年9月23日及び24 8,オタワにおいてトルドー首相と会談した。両者の会談はうちとけた友好的な雰囲気のもとで進められた。田中総理大臣は,9月25日にトロントを,9月25日及び26日にヴアンクーヴアーを訪問し,ヴアンクーヴアーにおいては、トルドー首相の名において催される晩餐会に出席する。田中総理大臣は,9月26日カナダの公式訪問を終了し,同 日夕刻日本への帰途につく。 |
2. | 両国首相は,両国間の関係が近年緊密の度合いを深めつつあり,特に経済,貿易面での交流が着実に拡大していることに満足の意を表明した。両者は,日加両国が今後さらに政治,経済,文化,科学技術等多岐にわたる分野で協力関係を育成,拡大し,かつ,充実したものとすべく不断の努力を行い,もって日加関係の基盤を一層幅広く,かつ,深みのあるものとすることに合意した。両者は,かくして日加関係の新時代の幕が開かれることを希望した。 |
3. | 両国首相は,二国間の問題から多数国間の問題及び世界の各地における最近の動向にわたる広範な問題について討議し,今後とも両国政府間で緊密な協議を続けて行くことに合意した。この関連で,両者は,10年以上の歴史をもつ日加閣僚委員会の役割を高く評価し,明年の早い機会に同委員会の次回会合を日本で開催することに合意した。両者は,政府レベル及び他のレベルでの両国間の協議の慣行が確立されつつあることに意を強くし,かかる協議が将来一層大きな役割を果すであろうとの確信を表明した。 |
4. | 両国首相は,多くの政治的経済的な願望及び理念を同じくする先進工業民主主義諸国間の協力関係の進展が近年ますます必要となっていることに留意し,日加両国が諸々の国際機関及び国際会議の場において,世界のあらゆる国の利益のために,先進工業民主主義諸国間の協力関係を一層実りあるものにするよう,今後とも努力を続けてゆくことに合意した。 |
5. | 国際情勢を検討するにあたり,両国首相は,太平洋に面する両国が特別の関心を有するアジア・太平洋地域の情勢に特に注意を払った。両者は,平和と安定を志向する世界の動きの中で,アジア・太平洋地域が,関係諸国間の対話の進展と地域協力の増進により全体として一層安定化の方向に向って行くであろうと信ずる根拠が存在するが,局地的には依然として不安定要因が存続していることに意見の一致をみた。両者は,同地域が直面している諸問題について引続き緊密な協議を行ってゆくことに合意した。 |
6. | 両国首相は,最近のすべての核実験に対し深い憂慮の念を表明し,日加両国はすべての核実験の停止を強力に追求することを再確認した。両者は,核兵器保有国になる ことを排するとの両国政府の決意を確認しつつ,軍縮,なかんずく核軍縮の促進及び核拡散の防止のため,すべての国による献身的な努力が必要であることを再確認した。両者は,かかる分野におけるすべての核保有国の責任を強調した。さらに,両者は,国際的安定と世界平和の推進のために,アメリカ合衆国及びソヴイエト社会主義連邦共和国が軍備管理の分野において一層の進展を達成することを希望した。 |
7. | 両国首相は,最近二ューヨークにおいて日加国連協議が開催されたことを歓迎しつつ,日加両国がそれぞれ国際連合においてとっている立場は大要において類似していることに留意した。両者は,国際連合が国際平和及び国際協力の促進に果しうる重要な役割を認識し,両国が国際連合に関する諸問題につき引続き緊密に協議してゆくことに合意した。 |
8. | 両国首相は,昨年秋以降の新たな情勢の進展により世界経済に重要な変化が起りつつあることを認識し,世界的性格を持った経済問題に対処するために,すべての国が緊密な協力を行うことが緊要であるとの確信を表明した。両者は,特に世界経済の順調な発展に脅威を与えているインフレーションに対処するために,国際的な協調を維持する必要性を再確認した。両者は,このために両国が積極的な貢献を行うとの決意を表明した。両者は,かかる認識に基づき,より良き国際経済関係の確立を目的として,貿易,エネルギー及び国際通貨の分野において多角的枠組みの中で現在進められている作業が成功裡に完了することを重要視していることを再確認した。 |
9. | 両国首相は,両国政府が1973年9月東京において採択された大臣宣言を支持していることを再確認し,なかんずく世界貿易の拡大と一層の自由化及び世界の諸国民の生活水準と福祉の向上を達成することを目的とする多角的貿易交渉の一層の進展をはかる必要性が各国政府にとって増大していることにつき意見の一致をみた。両者は,通貨問題に関し,国際通貨基金の20カ国委員会における討議を検討し,1974年6月に同委員会が採択した国際通貨改革のための漸進的アプローチにつき賛意を表明した。両者は,本年5月の経済協力開発機構閣僚理事会において採択された,加盟各国は昨秋以降の石油価格高騰に伴う困難に対処する目的で,貿易その他経常収支上の取引について一方的制限等の措置をとることを今後1年間回避する旨の宣言に対する支持を再確認した。 |
10. | 両国首相は,現下の世界経済情勢の下で,発展途上国,なかんずく国際収支の問題に起因する深刻な困難に直面している非産油国を援助するために,従来にも増した国際的協力が必要であることに留意した。両者は,これらの国を援助するために両国がとった措置並びにとることを計画している措置を説明した。両者は,食糧及び肥料援助問題が特に重要であることに意見の一致をみ,世界食糧会議が,世界の,なかんずく発展途上国の,食糧供給能力の増大に寄与することを両国とも希望している旨表明した。 |
11. | 日加貿易経済関係は世界の経済事情と密接な関連を有しており,かつ,日加両国の経済的相互依存関係を深めることは両国が変動する世界経済の情勢に対処することをより容易にするとの認識の下に,両国首相は,より自由で互恵的な日加貿易経済関係を促進することの重要性を確認した。両者は,この目的のため,また両国間の関係を一層広く,かつ,深みのあるものとするとの見地から,日加両国があらゆるレベルにおいて頻繁に意見と情報の交換を行うことが両国にとり重要であることを確認するとともに,日加両国間には閣僚委員会に加え,資源小委員会,農業問題に関する会合等の有益な対話の場があることを満足の意をもって留意した。両者は,この関係で,資源小委員会を早期に開催することに合意した。 |
12. | 両国首相は,日加両国間の貿易規模が過去10年間に7倍近くに拡大したことに満足の意をもって留意するとともに,両国間の貿易関係を一層拡大することの重要性につき意見の一致をみた。トルドー首相は,カナダの輸出中原材料の比重が大きいことに言及し,高度の技術を必要とする品目を含む製品の販売の増大に関するカナダの関心を表明した。田中総理大臣は,日本の市場はこれらの製品のために開放されており,従って,一層の努力を行うことにより,カナダから日本へのこれらの製品の輸出を拡大する余地が大きいことを強調した。 |
13. | 両国首相は,民間航空関係を互恵的に拡大することが必要であることに留意した。両者は,また,両国政府の科学技術使節団の相互訪問を通じ,科学技術の分野における両国間の協力関係が一層拡大しつつあることに留意し,今後もかかる分野においてさらに両国にとって利益になる形で交流を拡大する余地が大きいことを強調した。 |
14. | 両国首相は,世界経済において鉱物・エネルギー資源及び農林産品が引続き重要であることを認めた。トルドー首相は,カナダ政府の原材料の加工度向上政策を説明し,カナダは加工品及び製品の輸出を増大することに関心を持っていることについて敷衍した。田中総理大臣は,日本の産業構造の発展に関する同国の見解及びその対外経済政策を説明した。両国首相は,従って両国にとって利益となる形で経済関係の緊密化をはかるために,この分野において引続き協力する余地が大きいことに合意した。 |
15. | 両国首相は,それぞれの国の外資政策及び両国間の資本の流れが相互にとって利益になる形で促進されるような環境を両国が保証しうる方法について討議した。トルドー首相は,カナダはカナダ国民が相当の利益を享受するような外国投資を引続き歓迎することを強調した。 |
16. | 両国首相は,西部カナダにおけるタールサンドの開発の可能性について討議し、両国政府がこの問題について緊密な連絡を維持すべきことに合意した。 |
17. | 両国首相は,通商に関する日本国とカナダとの間の協定がすでに20年以上にわたり施行されてきていることに留意し、両国間の経済関係を一層促進するために、同協定改訂の可能性を積極的に探究することに合意した。 |
18. | 両国首相は,原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とカナダ政府との間の協定の枠組みの中で,原子力の分野における両国間の協力を一層促進することに合意した。 |
19. | 両国首相は,主として漁業問題に焦点をあてて第三次国連海洋法会議(カラカス会期)の結果について協議した。両者は,今後とも海洋法問題につき緊密な協議を続けてゆくことに合意した。 |
20. | 両国首相は,相互理解を促進するために,すべてのレベルにおいて両国間の意思疎通を拡大し,かつ,実り多いものとする努力を行うことが重要であることに合意した。田中総理大臣及びトルドー首相は,かかる目的に向かって払う努力の一環として,学術上の関係を促進するためそれぞれ約100万ドルから成る相互に同等,かつ,補完的な計画を創設する意向を表明した。前記金額は,主としてカナダにおける日本研究及び日本におけるカナダ研究の発展のために使用される。両者は,日加両国間の文化交流を一層拡大するために両国間に文化協定を締結することが望ましいことに合意し,このため適当な時期に交渉を開始することについて意見の一致をみた。 |
21. | 田中総理大臣は,トルドー首相に対し日本国政府よりの訪日招待を伝達し,トルドー首相は,右招待を喜んで受諾した。両国首相は,日加閣僚委員会の次回会合及びその後のトルドー首相の訪日を通じて,日加関係の一層の発展を求める気運がますます高まって行くことを期待した。 |
(74年10月31日,ウェリントンにおいて)
1. | 田中角栄日本国総理大臣は,ニュー・ジーランド政府の賓客として1974年10月28日から31日までの日程でニュー・ジーランドを公式訪問中である。ウェリントンにおいて,田中総理大臣は,10月29日及び30日,W.E.ローリング,ニュー・ジーランド首相と会談し,また,同総理大臣のために催された公式午餐会に出席した。田中総理大臣は,10月30日にネピアを訪問し,多くのニュー・ジーランド産業界及び実業界の指導者と会うほか,日本・ニュー・ジーランド産業協力の実例の一つであるパルプ製紙工場を視察する予定である。田中総理大臣はその後ロトルアを訪問し,10月31日オークランドから出発する。 |
2. |
両国首相は,緊密かつ実りある関係が日本とニュー・ジーランドとの間に発展して来たことに喜びの念を表明した。 両者の会談は,両国関係のあらゆる分野において明白に表われている友好と理解の精神の下に行われた。 両者は,近年あらゆるレベルでの対話が両国関係の強化及び多角化に役立ってきたことを満足の意をもって留意した。 両者は,共通の関心分野において,協力及び協議関係のためのあらゆる機会を作り出すとの決意を再確認した。 |
3. | 両国首相は,両国にとって直接関心のある2国間事項を含め,相互に関心のある広範囲な問題について意見を交換した。両者は,アジア・太平洋地域の平和と発展に影響をおよぼす諸問題に特に注意を払った。両者は,この地域に未だに不安定及び不確定要因が存在することに留意し,全ての関係諸国間の協議の継続的な進展により,情勢が改善されるであろうことに合意した。両国首相は,この地域の一部において既に確立されている協力の慣行を歓迎した。両者は,東南アジア開発閣僚会議において達成されている進展に満足の意をもって留意した。両者は,また,東南アジア諸国連合及び南太平洋フォーラムの加盟国によってなされた進展を歓迎した。 |
4. |
両国首相は,軍縮,特に核軍縮に関する両国の深い掛り合いを想起した。両国首相は,核の分野における最近の動きに対し,深い憂慮の念を表明した。両国首相は,すべての核実験に対する反対を再確認するとともに,核兵器保有国にならないとの両国政府の決意を確認した。 両国首相は,具体的な軍縮措置の必要性が従来にもまして緊急となっていることに合意した。両者は,核実験のテンポが早まっていることに対して深甚なる憂慮の念を表明し,完全に包括的な核実験禁止の目的を達成する条約の早期締結のために両国政府が努力する旨述べた。両者は,核実験が,全世界の環境を汚染し,人類及び資源を不当な危険にさらすような方法で継続されていることに憂慮の念を表明した。両者は,厳格かつ国際的に広く受け入れられる保障措置を含むその他の国際的措置が,核兵器及びその他の核爆発装置の一層の拡散を阻止するために早急にとられるべきことを希望した。この点に関連して,両者は,核兵器国の特別な責任を強調した。 |
5. | 両国首相は,また,世界経済の現状について検討し,これが,異常な緊張状態に置かれていることに留意した。両国首相は,世界的性格をもった経済問題に対処するための国際的な協力行動を支持することを表明した。両者は,より良き国際経済関係の確立を目的として,貿易,エネルギー及び国際通貨の分野において多角的枠組みの中で現在進められている討議を成功裡に完了させることを重要視していることを再確認した。 |
6. | 2国間経済問題に関し,両国首相は,特に関心のある産品の貿易を一層促進する方策に特に注意を払った。両者は,両国間の年間貿易のレベルが5億ニュー・ジーランド・ドルに達していることに留意するとともに,相互に利益となる貿易の機会が一層拡大することを期待した。ローリング首相は,二ュー・ジーランドの農産物に対する日本市場の重要性を強調した。最近の牛肉貿易の中断はニュー・ジーランドにおいて懸念を生じさせたが,長期的には,農産物貿易増加の見通しは有望である。両国首相は,その他の分野と同様に貿易の分野においても,相互信頼と継続性の基礎に立った成熟した長期的な関係を樹立することが,両国の利益にかなうものであることに同意した。 |
7. | 経済関係の全般的な方向及び発展につき継続的な検討を行うとともに,相互の関心事項に関して時宜を得た情報を提供するために,両国首相は,より定期的な,かつ,高いレベルでの協議が価値あるものであることに合意した。 |
8. | 両国首相は,本年10月東京において開催された第1回日本・ニュー・ジーランド経済人会議の成果を歓迎するとともに,同会議における率直かつ友好的な意見交換が,両国間のより緊密な関係の発展に資するであろうことに留意した。 |
9. | 両国首相は,民間航空に関する問題について意見を交換した。両者は,両国の航空企業の間で既に行われた直通の航空業務の開始についての討議に留意して,この分野における一層の協力が両国関係を強化するために有益であることを考慮した。 |
10. | 両国首相は,政府及び公的なレベルにおける接触が,両国間のきずなを強化してきたことに満足の意をもって留意した。両者は,文化及び教育の分野におけるより緊密な交流が,一層深い相互理解の発展にさらに資するものであり,また,かかる交流が奨励されるべきであるとの確信を再確認した。よって,両者は,両国間の交流,例えば,教員,学者,学生及び公演団体等の交流を一層促進するために,両国政府が,資金を分担する文化及び教育の分野の「交流計画」を創設する意向を表明した。 |
11. | 両国首相は,科学技術の分野において頻繁な交流がおこなわれていることに満足の意を表明した。両国首相は,このような交流を促進することの価値を認識するとともに,漁業調査の分野における協力を促進することに合意した。 |
12. | 田中総理大臣は,ローリング首相に対し,近い将来訪日するようにとの日本国政府の招待を行った。ローリング首相は,右招待を喜んで受諾した。 |
13. | 田中総理大臣は,ニュー・ジーランド滞在中に田中総理大臣およびその一行に寄せられた暖かい歓迎ともてなしに対し,衷心より感謝の意を表明した。 |
(ホ) 木村外務大臣のガーナ公式訪問の終了に際しての日・ガ共同声明(仮訳)
(74年11月1日 於アクラ)
1. | 木村俊夫日本国外務大臣は,10月31日から11月1日までガーナを公式訪問した。 |
2. | 同大臣は,夫人,有田外務審議官その他の日本政府の官吏を同伴した。 |
3. | 同大臣は,国家元首である国家救済評議会議長イグナティウス・クトゥ・アチャンポン大佐を表敬訪問した。 |
4. | 同大臣は,外務大臣クワメ・バー中佐と相互に関心を有する広範囲にわたる問題について会談した。会談は暖かく,親密で,かつ友好的な雰囲気の裡に行われた。 |
5. | 木村大臣とバー大臣は,両国間の関係を満足の意をもって話合い,この関係を拡大,強化するよう更に努力することに合意した。 |
6. | 両大臣は,ギニア・ビサオ共和国の独立と国連加盟及びモザンビークにおける暫定政府の樹立を歓迎した。両大臣は,アフリカにおける非自治地域に対し,早期の独立をもたらし,かつ,南部アフリカその他の地域に存在するアパルトヘイトと人種差別を可及的速やかに撤廃するために一層の努力が,アフリカ諸国及び日本を含む他の諸国によって払われるべきであることに意見の一致を見た。 |
7. | 両大臣は,国際紛争解決の平和的手段に対する信念を再確認し,かつ,世界の平和と安全を推進する国連の努力に対する支持を表明した。 |
8. | 木村大臣は,ガーナ滞在中,同大臣夫人及び随員一行が受けた友情に満ちた暖かいもてなしに対し、衷心より感謝の意を表明した。 |
9. | 同大臣は,友好のしるしとして,また,両国間のより緊密な協力への共通の願いをこめて,日本政府に代って,アチャンポン国家救済評議会議長御夫妻を,後日決定される時期に訪日するよう招待した。また,同大臣は,バー外務大臣夫妻を招待した。招待は招待が行われた同じ精神において受諾された。 |
(74年11月2日,キャンベラにおいて)
1. |
田中角栄日本国総理大臣は,オーストラリア政府の招待により,1974年10月31日から11月6日までの日程でオーストラリアを公式訪問中である。キャンベラにおいて,田中総理大臣は,ウイットラム・オーストラリア首相及び他の閣僚と会談した。 田中総理大臣は,シドニー及びパース並びに西オーストラリア州の北西部を訪問する予定である。 |
2. | 両国首相は,緊密な友情と親善の精神のもとで両国間に幅広い交流が発展して来たことに満足の意を表明した。両者は,日本とオーストラリアが両国の協力関係を深め,かつ,多様化するための努力を一層強化すべきであることに合意した。 |
3. | 両国首相は,国際連合憲章の原則に基づいて,世界の平和,安全及び進歩を促進し,国際関係の処理における法の支配を強化するとの両者の約束を再確認した。両者は,とくに,国際関係における力の脅威または行使が認め難いこと,及び国際紛争の平和的解決の必要性に留意した。 |
4. | 両国首相は,アジア・太平洋地域の動向について検討した。両者は,過去2,3年の間この地域において,平和と進歩の発展の見通しが改善されてきたが,依然としていくつかの不安定要因が存続していることに意見の一致を見た。両者は,この地域の諸国の必要と利益に沿って地域協力を促進するとともに,全ての国が相互の利益と目的に対して一層理解を深めるよう努力することに合意した。両者は,一層大きな地域協力を達成するうえで東南アジア開発閣僚会議及び南太平洋フォーラムのような機構の活動を歓迎した。 |
5. |
両国首相は,また,インドシナ情勢についても意見を交換した。両者は,この地域の人々の社会的及び経済的安寧を促進するために,この地域における平和の完全な確立及び関係当事者によるヴィエトナムに関するパリ協定の完全な実施が緊急に必要であることに合意した。 両国首相は,カンボディアにおける戦争の継続を憂慮し,関係当事者に対し,平和的交渉を通じて紛争の早期終結を探究するよう要請した。 |
6. | 両国首相は,北東アジアの動向についての討議において,両者が朝鮮半島の平和の維持を重視していることを再確認するとともに,南北の対話がこの地域の緊張緩和を目的として一層促進されるべきであるとの希望を表明した。 |
7. | 両国首相は,また,インド洋における情勢について意見交換を行った。両者は,インド洋が平和地帯であるべきであるとの考え方に対する支持を表明した。 |
8. | 両国首相は,全ての核実験に対する反対を再確認し,核の分野における最近の動向が核不拡散体制におよぼしている影響に対して深甚なる憂慮の念を表明した。両国首相は,核兵器保有国にならないとの両国政府の決意を確認した。両国首相は,全ての国が効果的な国際管理の下における軍縮,とくに核軍縮を促進し,また,核拡散を防止するため,献身的な努力をすべきであるとの確信を再確認した。この点に関連して,両国首相は,そのような努力に対する核兵器国の重い責任を強調した。両者は,核兵器国によって軍備管理の分野において一層の進展がもたらされることを希望した。両者は,現存する核不拡散体制を維持・強化し,また,包括的核実験禁止をもたらすために,国際連合において協力することに合意した。 |
9. | 両国首相は,最近の世界経済情勢に深い注意を払い,インフレーション,原材料供給,食糧及びエネルギーのような問題に対処するために,すべての国が緊密な協力を行うことが肝要であるとの確信を表明した。両者は,これらの問題に関する建設的かつ適切な解決を確保するために,日本及びオーストラリアが2国間で,また多国間の場においてこのような協力を強化すべきことに合意した。 |
10. | 両国首相は,これからの時期が困難なものであることを認識し,本年5月の経済協力開発機構閣僚理事会において加盟国政府によって採択された宣言の精神に基づき,貿易その他の経常収支上の取引における一方的制限のような措置を回避するとの決意を再確認した。 |
11. |
両国首相は,より良き国際経済関係の確立を目的として,貿易及び国際通貨の分野において,多角的枠組みの中で現在進められている作業が成功裡に完了することを重要視していることを再確認した。 両者は,昨年9月,東京で行われた閣僚会議において開始されたガットの多角的貿易交渉に,オーストラリアと日本が全面的に参加するとの意図を確認した。両者は,現在の国際経済情勢の下においては,この交渉を推進することが,従来にも増して重要であると考え,実質交渉の早期開始の必要性を強調した。通貨問題に関して,両国首相は,これに関連した複雑な問題の解決のために,国際通貨基金,世界銀行,その他のフォーラムの枠内においてとられている処置に留意した。 |
12. | 両国首相は,現在の国際経済情勢の下において,発展途上国が直面している特別な問題についての懸念を表明した。両者は,特に,非産油発展途上国が直面している深刻な困難にも鑑み,すべての国がこれらの問題につき緊急に,かつ同情的に考慮することが必要であることに言及した。両国首相は,この観点から,農業開発の分野における援助が重要であり,また,世界の食糧供給問題に関して建設的な態度をとるために,世界食糧会議のようなフォーラムが必要であることに合意した。 |
13. | 両国首相は,両国間の緊密な経済上の相互依存性を認識し,両国間の貿易関係を一層強化し,発展させるため協力することに合意した。両国首相は,貿易及び関連問題に関して,近年あらゆるレベルで行われてきた意見交換が極めて有意義であったことを満足の意をもって留意し,そのような対話が継続し,強化されるべきことに合意した。両国首相は,貿易条件の改善及び両国間貿易における安定性を一層高めることの重要性について意見交換を行った。両者はまた,牛肉,羊毛,砂糖及び自動車の貿易を含む現在特に重要となっている多くの問題について意見交換を行った。 |
14. |
両国首相は,鉱物・エネルギー資源貿易及び最近のエネルギー情勢の影響について討議し,2国間においても,また多角的枠組みの中においても,この分野における協力を継続することが必要であることを確認した。両者は,また,この分野における動向に関する両国間の意見及び情報の継続的交換についても満足の意をもって留意した。 田中総理大臣は,日本が鉄鋼生産用及び発電用としてオーストラリアの石炭を益々必要とすること,並びに石炭及び核原料による発電の増大計画に関する日本の意向を説明した。 ウィットラム首相は,オーストラリアがエネルギー供給において最大限の協力を保証すること及びオーストラリアが日本の需要に応じるため石炭生産を漸進的に拡大する意向であることを再確認した。 両国首相は,石炭液化研究の分野において,専門家の相互訪問及び技術情報の交換を通じて協力を開始することに合意した。 田中総理大臣は,オーストラリアが1976年から1986年までの間に,既契約分の9,000ショート・トンのウランを日本に供給すること,および日本に対するさらに多くの供給の可能性があることを確認したことに対し謝意を表明した。同首相は,また,日本は1986年から2,000年にかけて,さらに多くのウランなオーストラリアから輸入することが必要となろうと述べた。ウィットラム首相は,日本のこれらの需要に応じることを考慮する用意がある旨答えた。 田中総理大臣は,ウラン濃縮に関して既になされたオーストラリアの提案に答えて,日本は,オーストラリアにおけるウラン濃縮を原則として好ましいと考えるものであり,その可能性の研究につきオーストラリアと協力する旨述べた。田中総理大臣は,この研究は,資本,第三国からの適当な技術の選定その他の関連事項に及ぶであろうと述べた。 ウィットラム首相は,オーストラリアにおけるウラン濃縮に対する日本の増大する需要に応ずる用意がある旨表明した。 両国首相は,共同研究が実行可能なかぎり早期に開始されるべきことに合意した。 |
15. | 両国首相は,外資に関して討議し,それぞれの政策の下において,両国間の資本の流れを継続する上で相互協力の余地が大きいことに合意した。 |
16. | 両国首相は,両国間の永続する友好関係の堅固な基礎となるべき相互理解と信頼を増進するために,日本国及びオーストラリアが,それぞれの国民が相互により良く知り合い,またそれぞれの国の相手国にとっての重要性をより深く理解する機会を増大することが不可欠であることに合意した。 |
17. | 両国首相は,日本国政府とオーストラリア政府との間の文化協定の署名を歓迎するとともに,同協定が両国間の一層の文化交流の拡大と相互理解の促進のための有効な枠組みとして役立つであろうとの共通の期待を表明した。 |
18. |
文化協定に規定された幅広い分野の活動の実施を確保する必要性が認識され,両国首相は,そのような活動を奨励するためにそれぞれ約百万オーストラリア・ドルに上る相互に同等の支出を行うとの両国政府の意向を表明した。 両者は,また,両国民間のより広範囲な関係を促進するため,それぞれの国及び両国間で必要とされる措置に関して更に協議すべきことに合意した。 |
19. | 両国首相は,科学技術の分野における協力の拡大に対して共通の希望を表明した。両者は相互に関心を有する分野における科学関係の情報の交換及び人物の交流の増大が相互に有益であることを考慮した。 |
20. | 両国首相は,両国間に存在する利害の共通性,友好関係及び相互依存性を秩序ある形に表現することとなる友好・協力条約(奈良条約)の締結に向かって進展が見られたことを満足の意をもって留意した。 |
21. |
両国首相は,日豪閣僚委員会を重視していることを再確認するとともに,同委員会が,両国間の相互理解と信頼の発展のため,将来においてより大きな役割を果すであろうとの両者の確信を表明した。 両者は,1975年前半に,キャンベラにおいて閣僚委員会の第3回会議を開催することを期待した。 |
22. | 田中総理大臣は,オーストラリア訪問に際して田中総理大臣及びその一行に寄せられた友情と丁重なもてなしについて,オーストラリア政府及び国民に対し深い感謝の意を表明した。 |
(ト) 木村俊夫日本国外務大臣のザイール共和国公式訪問終了に際しての新聞発表(仮訳)
(74年11月5日 於キンシャサ)
ザイール共和国の公式招待により,木村俊夫日本国外務大臣は,夫人を同伴し1974年11月3日から5日までザイールを訪問した。
木村大臣には,また有田圭輔外務審議官,中村輝彦中近東アフリカ局長,菊地清明経済協力局参事官その他の随員が同行した。
滞在中,木村大臣は,11月4日ザイール共和国のモブツ・セセ・セコ・クク・ンベンドウ・ワ・ザ・バンガ大統領に表敬し,また, MPR党本部,N′SELE大統領農園,MALUKU製鉄所,及び宇宙通信中継所を訪問した。
木村大臣は,11月3日ウンバ・ディ・ルテテ政治局員兼外務・国際協力大臣と長時間にわたる会談を行った。
外務大臣及び外務・国際協力大臣は,現下の国際情勢について意見の交換を行い,なかんずく,アフリカの完全な非植民地化及び南部アフリカ情勢に関する諸問題並びに両国が共通の関心を有するその他の諸問題をとりあげた。
ザイール側は,日本側に対してザイール共和国の外交及び内政の指導的方針,特に,真正性追求の政策,1973年11月30日ザイールによってとられたザイール化の諸措置,ザイールの経済的独立を確立し,植民地時代の残滓を払拭した対等な協力を促進するための措置を説明した。日本側は,かかる政策が適合したものであることを評価した。
双方は,真正性追求の政策と,近代日本の大きな躍進の基礎である明治時代に日本によって行われた政策との間に類似したものがあることを認識した。
両大臣は,両国が経済面で補完性のあることを認識し,パートナー間の平等と互恵の原則に基づいた協力を樹立するため、貿易を拡大することに合意した。
モブツ大統領の卓越した指導下に経済的独立の強化に努めているザイールは,協力に関し正義と公正を基礎にした新アフリカ政策を画定するための,日本の産業界及び政府の努力を高く評価する。
この会談は,極めて友好的な雰囲気の裡に行われ,相互理解を深め,且つ両国間の協力を増大することに大きく寄与した。
双方は,今回の訪問が,1971年に行われた国賓としてのモブツ・セセ・セコ大統領の日本公式訪問,並びに1973年11月,当時のヌグーザ・カルル・イ・ボンド外務・国際協力大臣の公式訪問によって増進された両国の友好関係を再確認し,且つ一層強化したことを欣快とするものである。
双方は,両国間でのあらゆるレベルでの代表団の交換が,両国民の間の理解を深め,友情を強化し,また,あらゆる分野における協力を促進するものとなることを確信するものである。
木村大臣は,ウンバ・ディ・ルテテ,ザイール国政治局員兼外務・国際協力大臣及び夫人に対し,日本を訪問するよう招待した。この招待は,喜んで受け入れられた。この訪問の態様は,外交ルートを通じて追って決定される。
木村大臣は,国民革命運動の創始者であり党首であるモブツ・セセ・セコ,ザイール共和国大統領,ウンバ・ディ・ルテテ政治局員兼外務・国際協力大臣及び夫人,ザイール政府並びにMPR党の下にあるザイール国民に対し,木村大臣夫妻並びに代表団全員がザイール共和国滞在中に受けた暖かい歓迎に対して深甚なる謝意を表明した。
(チ) 田中総理大臣のビルマ訪問に際しての日本・ビルマ共同新聞発表(仮訳)
(74年11月8日,ラングーンにおいて)
1. | 日本国総理大臣田中角栄閣下は,ビルマ連邦社会主義共和国大統領ウ・ネ・ウィン閣下の招待により,1974年11月6日から8日まで,ビルマを公式訪問した。 |
2. | 田中総理大臣は,11月6日,ウ・ネ・ウィン大統領を訪問し,また,その翌日,ウ・セィン・ウィン首相を訪問した。日本側とビルマ側との間の会談は,両国間に存在する友誼と相互理解の関係を反映し,誠実で友好的な雰囲気により特色づけられた。 |
3. | ビルマ側指導者との会談において,田中総理大臣は,東南アジア諸国との間に,同地域のすべての国が平和と繁栄を分かち合うよう良き隣人の関係を促進し,強化することが望ましいことを強調した。 |
4. | 田中総理大臣は,また,日本がビルマ及びその他の東南アジア諸国との関係において,各国の自立の意志と願望を尊重し,各国の発展に貢献し,経済的自立への努力を支持することを基本原則としていることを確認した。ビルマ側はこれらの基本原則を歓迎した。 |
5. |
両国の指導者は,日本とビルマとの間の友好の絆が相互の尊敬と協力と互恵の原則に基づき,強化されて来たことに満足の意を表明した。 双方は,両国間の現在の関係が互恵であり,この関係を一層緊密化する可能性が存し,双方がこの目標に向かって努力すべきであることに合意した。この関連において,双方は,両国間の経済協力の分野における着実な進展について,満足の意を表明した。 |
6. | 双方は,共通の関心を有する現下の国際情勢なかんずくアジアの情勢について意見を交換した。双方は永続的平和の達成にとって好ましい条件が,東南アジアにおいて創り出されるべきであるとの希望を表明した。この関連において,双方は,国家間の関係の一つの基礎として国際連合憲章に規定された基本原則を遵守することを再確認した。 |
7. |
日本国とビルマ連邦社会主義共和国は,先進及び開発途上のすべての国が,対立と抗争のない国際社会を招来するために,現在の国際的な経済及び政治問題を解決すべく協力をおこなっている傾向を歓迎した。 双方は,これらの問題を効果的に解決するため,すべての国が実際的な解決を見出すよう一致共同して努力すべきであることに合意をみた。 |
8. | 双方は,ヴィエトナム平和に関するパリ協定並びにラオスにおける連立政権に関する協定の締結を歓迎し,関係者によるこれら諸協定の忠実な遵守及び実施がインドシナにおける安定的かつ永続的な平和の確立のために不可欠であることに合意した。 |
9. |
田中総理大臣は,ビルマ連邦社会主義共和国政府及び国民が経済開発と社会発展のために,たゆまざる努力を続けていることに敬意を表するとともに,その成功を祈念した。 田中総理大臣は,日本国政府がこれらの努力を支援するために引き続きできる限り協力する旨述べた。 |
10. | 田中総理大臣は,ビルマにおいて成功裡に実施された憲法上の改革に関してビルマ側に祝意を述べるとともに,ビルマの将来の進歩と繁栄を祈念した。 |
11. | 双方は,今回の田中総理大臣のビルマ訪問が成功し,両国の友好と協力関係を一層強化することに大きく寄与したことに満足の意を表明した。双方は,今回訪問が双方の個人的接触を新たにする機会をもたらしたことを歓迎し,今後ともかかる接触を維持し,かつ,強化したい旨希望した。 |
12. | 田中総理大臣は,ビルマ滞在中に田中総理大臣及び随員一行が受けた友情に満ちた暖かいもてなしに対し感謝の意を表明した。 |
(74年11月9日 カイロにおいて)
1. |
木村俊夫日本国外相夫妻は,イスマイル・ファハミ・エジプト・アラブ共和国外相夫妻の招待により,11月7日より9日までエジプト・アラブ共和国を訪問した。 木村外相は,エジプト・アラブ共和国滞在中,アヌワール・エル・サダト大統領に謁見し,アブデル・アジズ・モハメッド・ヒガージ首相を表敬訪問し,また,ファハミ外相と会談した。 |
2. | 両国外相は,国際情勢及び日本とエジプト・アラブ共和国が共通の関心を有する諸問題について意見を交換した。 |
3. |
両国外相は,安保理決議第242号の早急,かつ,全面的実施による公正,かつ,永続的平和が中東に実現されることが世界平和にとって緊要であることにつき合意した。 これに関連して,ファハミ外相は,中東に公正,かつ,永続的な平和をもたらすためには,イスラエル兵力が1967年戦争の全占領地から完全に撤退すること及びパレスチナ人民の民族的権利が完全に回復されることが不可欠であるとするエジプト・アラブ共和国政府の立場を説明した。 また,同外相は,中東問題の平和的解決を引続き探求するとのエジプト・アラブ共和国政府の固い決意を表明した。 木村外相は,かかるエジプトの立場に対し理解を表明し,1973年11月22日に発表した声明に述べられている日本国政府の次の諸原則を再確認した。 |
(1) | 武力による領土の獲得及び占領の許されざること。 |
(2) | 1967年戦争の全占領地からのイスラエル兵力の撤退が行なわれること。 |
(3) | 域内のすべての国の領土の保全と安全が尊重されねばならず,このための保障措置がとられるべきこと。 |
(4) | 中東における公正,かつ,永続的平和の実現に当ってパレスチナ人民の国連憲章に基づく正当な権利が承認され,尊重されること。 木村外相は,日本国政府が中東に公正,かつ,永続的平和を達成するためのサダト大統領のたゆまぬ努力に対し,深く敬意を表し,かかる努力ができるだけ近い将来に実を結ぶことを希望する旨述べた。 |
4. |
両国外相は,両国間の経済関係を強化するための方策を討議した。ファハミ外相は,エジプト・アラブ共和国政府の経済自由化及び復興政策の概要を説明し,両国間の経済,技術協力関係及び貿易関係が将来一層拡大することを希望した。これに対し,木村外相は,ファハミ外相の希望に同感の意を表する旨述べるとともに,日本国政府は両国間の貿易及びエジプト・アラブ共和国における日本の投資の拡大を促進するための具体的方策を検討し、可能なところからそれを実施する意向である旨述べた。 両国外相は,投資の奨励及び相互保証に関する協定を締結するため両国政府間の話し合いを開始することにつき合意した。 |
5. | 両国外相は,日本,エジプト・アラブ共和国の伝統的な友好関係が最近更に発展したことに満足の意を表明し、今後,政治面経済面にとどまらず,文化面及びその他の面において,両国間の友好関係を一層拡大していくことが必要であることにつき合意した。 |
6. | 両国外相は,今回の会談が極めて有意議であったことを確認し,今後両国政府間,特に両国外相間での接触を通じて,より緊密な協議を行うことが望ましいとの合意に達した。これに関連し,両国外相は,両国の外相を長とする合同委員会を設置する可能性を検討することにつき合意した。 |
7. |
両国外相は,最近両国の政府及び民間の要人の往来が増える傾向にあることに満足の意を表明した。これに関連して,木村外相は,アヌワール・エル・サダト大統領に対する以前よりの日本国政府の招待を再確認した。 ファハミ外相は,サダト大統領夫妻による訪日招待の受諾を確認するとともに,訪日が近い将来実現することを希望する旨述べた。 |
8. | 木村外相は,エジプト・アラブ共和国滞在中,木村外相夫妻及び一行に対し与えられたてい重,かつ,暖かい歓待に対し,心からの感謝の意を表明し,ファハミ外相夫妻が木村外相の賓客として日本を訪問するよう招待した。ファハミ外相は,この招待を心からの感謝の念をもって受諾した。訪日の時期は外交チャンネルを通じて決定される。 |
(昭和49年11月20日 東京において)
I
アメリカ合衆国のフォード大統領は,日本国政府の招待により11月18日から22日までの日程で,日本を公式訪問した。フォード大統領は,11月19日皇居で天皇,皇后両陛下と会見した。
II
田中総理大臣とフォード大統領は,11月19日及び20日に行われた会談において日米両国間の将来の関係の基礎となる次のような共通の目的について意見の一致をみた。
1. | 日本と米国は,多くの政治的及び経済的利害を共にする太平洋国家として,平等の原則に立脚した緊密,かつ,互恵的な関係を発展させてきた。両国間の友好と協力は,個人の自由と基本的人権を尊重する政治体制及び創造性のための機会と国民の福祉を確保する可能性を高める市場経済体制を維持していく共通の決意に立脚している。 |
2. |
日本と米国は,国際連合憲章の崇高な目的と原則を反映した平和の維持と安定的な国際秩序の育成を念願しつつ,アジア・太平洋地域において,最もかかわりのある当事者間での諸懸案の平和的な解決を容易にし,国際緊張を緩和し,開発途上国の持続的,かつ,秩序ある成長をうながし,また,同地域の諸国間の建設的な関係を助長するような条件の醸成を引続き促進する。 日米両国は,それぞれ,自らの責任と能力に照らしてこの課題に貢献する。両国は,相互協力及び安全保障条約の下での日米間の協力関係は,アジアにおける国際情勢の進展の中にあって,重要な,かつ,永続する要素を構成しており,また,同地域での平和と安定を促進する上で効果的,かつ,有意義な役割を引続き果して行くものと考える。 |
3. | 日本と米国は,すべての国が,一層の軍備制限及び軍備縮減措置,特に核軍備の管理を進めるため,また,平和目的の核エネルギーの一層の利用を容易にしつつ,核兵器その他の核爆発装置の一層の拡散を防止するために,真剣な努力を払う必要があると考える。両国は,かかる努力においてあらゆる核兵器保有国が高度の責任を有することを強調し,核の脅威から核兵器非保有国を守ることが重要であると考える。 |
4. | 日本と米国は,両国の相互依存関係が著しく広範な分野にわたること及び国際社会が直面する新しい諸問題に対して協調して対処する必要があることを認識する。両国は,社会体制を異にする諸国との対話と交流を通じて世界における一層の緊張緩和を助長すべく着実な努力を重ねつつ,先進工業民主主義諸国間の緊密な協力を促進するための努力を強化する。 |
5. | すべての国の間で深まりつつある相互依存関係と現在の世界的な経済困難にかんがみ,国際間の経済面での協力の強化がますます重要になりつつある。日本と米国は,主要な経済問題の解決のために両国の人的,物的能力を建設的に活用することが必要であると考える。開放され調和のとれた世界経済体制を築くことは,国際の平和と繁栄のために不可欠であり,両国にとっての基本的な目標である。日本と米国は,この目的のため,両国間の緊密な経済貿易関係を今後とも発展させるとともに,関税及びその他の貿易障害を軽減させるための交渉を通じて世界貿易の継続した拡大を確保し,安定し均衡のとれた国際金融秩序を創設するための国際的な努力に建設的に参加する。両国は,他国の経済に好ましくない影響を与えるような行動は差控えるという両国の国際的な誓約を引続き遵守する。 |
6. | 日本と米国は,世界の資源のより効率的,かつ,合理的な利用と分配が必要であると考える。両国は,エネルギーの妥当な価格での安定的な供給の重要性を認識し,それぞれの経済に適した方法で,エネルギー供給を拡大し,かつ,分散し,新しいエネルギー源を開発し,限りある燃料の利用にあたり節約を進めることに努める。両国は,消費国間の協力を進めることを重要視し,他の諸国と協調して生産国との間の調和のとれた関係を求めて行く意向である。両国は,経済及び金融上の危機を事前に回避し,創造性と共通の進歩という新しい時代をもたらすため,一層の国際協力の努力が必要であることに合意する。両国は,世界食糧問題の緊急性及び安定的な食糧供給の確保のための国際的枠組の必要性を認識し,農業の分野での開発途上国に対する援助を強化し、農産物の供給状況を改善し,適切な食糧備蓄水準を確保するための方途を探求するための多数国間の努力に建設的に参加する。両国は,食糧生産国と消費国の間の協力が,食糧不足の状態に対処するために必要であると考える。 |
7. | 世界の人々の福祉のためには,開発途上国の技術的及び経済的能力の着実な改善がすべての国にとって共通の関心事でなければならない。日本と米国は,開発途上国,なかんずく重要な天然資源を持たない諸国に対する援助の重要性を認識し,個別に並びに他の伝統的援助国及び新たに援助能力を持つに至った諸国の参加と支持を得て,これらの開発途上国が堅実かつ秩序ある成長を達成するよう努力するのにつれ,援助及び貿易を通ずる協力の計画を維持拡大させる。 |
8. | 日本と米国は,自然環境を保全し,また,宇宙,海洋等新しい開発分野を開くよう努力するのに応じて,人類に共通な幾多の新しい課題に直面している。両国は,広く他の諸国と協力して,現代社会の必要に応え,生活の質を向上し,また,より均衡のとれた経済成長を達成するための努力を行うに際し,科学,技術及び環境保全等の分野での研究を促進し,情報の交換を助長する。 |
9. | 日本と米国は,両国の永続する友好関係が国民生活の各層各面での両国民間の相互理解の不断の発展と意思疎通の強化に立脚してきたことと考える。したがって,両国は,このような理解を涵養し,その増大に資するような文化及び教育交流を一層発展させるよう努力する。 |
10. | 日本と米国は,友好と相互信頼の精神をもって相互に十分に通報し合い,また二国間の争点となり得るような問題及び両国が共通の関心をもつ緊急の世界的問題についての率直,かつ,時宜を得た協議を行うという慣行を強めていく決意である。 |
11. | 日米両国間の友好協力関係は,人間活動の様々な分野で多年にわたり成長し,深みを増してきている。両国は,これらの多様な関係は,全体として,両国それぞれの外交政策が立脚する主要な礎をなすとともに,安定した国際政治経済関係を支える不可欠の要素となっていることを再確認する。 |
III
現職のアメリカ合衆国大統領による初めての日本国訪問は,両国間の親善の歴史に新たな一頁を加えるものである。
Joint Communique
between President Gerald R.Ford
and Prime Minister Kakuei Tanaka
November 20,1974
I
President Ford of the United States of America paid an official visit to Japan between November 18 and 22 at the invitation of the Government of Japan.President Ford met Their Majesties the Emperor and Empress of Japan at the Imperial Palace on November 19.
II
In discussions held on November 19 and 20,President Ford and Prime Minister Tanaka agreed on the following common purposes underlying future relations between the United States and Japan.
1. The United States and Japan,Pacific nations sharing many political and economic interests,have developed a close and mutually beneficial relationship based on the principle of equality. Their friendship and cooperation are founded upon a common determination to maintain political systems respecting individual freedom and fundamental human rights as well as market economies which enhance the scope for creativity and the prospect of assuring the well-being of their peoples.
2. Dedicatedto the maintenance of peace and the evolution of a stable international order reflecting the high purposes and principles of the Charter of the United Nations,the United States and Japan will continue to encourage the development of conditions in the Asia-Pacific area which will facilitate peaceful settlement of outstanding issues by the parties most concerned,reduce international tensions,promote the sustained and orderly growth of developing countries,and encourage constructive relationships among countries in the area.Each country will contribute to this task in the light of its own responsibilities and capabilities. Both countries recognize that cooperative relations between the United States and Japan under the Treaty of Mutual Cooperation and Security constitute an important and durable element in the evolution of the international situation in Asia and willcontinue to play an effective and meaningful role in promoting peace and stability in that area.
3. The United States and Japan recognize the need for dedicated efforts by all countries to pursue additional arms limitation and arms reduction measures,in particular controls over nuclear armaments,and to prevent the further spread of nuclear weapons or other nuclear explosive devices while facilitating the expanded use of nuclear energy for peaceful purposes. Both countries underline the high responsibility of all nuclear-weapon states in such efforts, and note the importance of protecting non-nuclear-weapon states against nuclear threats.
4. The United States and Japan recognize the remarkable range of their interdependence and the need for coordinated responses to new problems confronting the international community. They will intensify efforts to promote close cooperation among industrialized democracies while striving steadily to encourage a further relaxation of tensions in the world through dialogue and exchanges with countries of different social systems.
5. In view of the growing interdependence of all countries and present global cconomic difficulties, it is becoming increasingly important to strengthen international economic cooperation. The United States and Japan recognize the necessity of the constructive use of their human and material resources to bring about solutions to major economic problems. The establishment of an open and harmonious world economic system is indispensable for international peace and prosperity and a primary go, of both nations.The United States and Japan will,to this end,continue to promote close economic and trade relations between the two countries and participate constructively in international efforts to ensure a continuing expansion of world trade through negotiations to reduce tariff and other trade distortions and to create a stable and balanced international monetary order.Both countries will remain committed to their international pledges to avoid actions which adversely affect the economies of other nations.
6. The United States and Japan recognize the need for a more efficient and rational utilization and distribution of world resources. Realizing the importance of stable supplies of energy at reasonable prices,they will seek, in a manner suitable to their economies,to expand and diversify energy supplies,develop new energy sources,and conserve on the use of scarce fuels.They both attach great importance to enhancing cooperation among consuming countries and they intend,in concert with other nations,to pursue harmonious relations with producing nations.Both countries agree that further international cooperative efforts are necessary to forestall an economic and financial crisis and to lead to a new era of creativity and common progress.Recognizing the urgency of the world food problem and the need for an international framework to ensure stable food supplies,the United States and Japan will participate constructively in multilateral efforts to seek ways to strengthen assistance to developing countries in the field of agriculture, to improve the supply situation of agricultural products,and to assure an adequate level of food reserves.They recognize the need for cooperation among food producers and consumers to deal with shortage situations.
7. For the well-being of the peoples of the world,a steady improvement in the technological and economic capabilities of developing countries must be a matter of common concern to all nations. In recognition of the importance of assisting developing countries, particularly those without significant naturalresources,the United States and Japan will,individually and with the participation and support of other traditional aid-donors and those newly able to assist,maintain and expand programs of cooperation through assistance and trade as those nations seek to achieve sound and orderly growth.
8. The United States and Japan face many new challenges common to mankind as they endeavor to preserve the naturalenvironment and to open new areas for exploration such as space and the oceans.In broad cooperation with other countries,they will promote research and facilitate the exchange of information in such fields as science, technology and environmental protection, in an effort to meet the needs of modern society,improve the quality of life and attain more balanced economic growth.
9. The United States and Japan recognize that their durable friendship has been based upon the continued development of mutual understanding and enhanced communication between their peoples,at many levels and in many aspects of their lives.They will seek therefore to expand further cultural and educational interchange which fosters and serves to increase such understanding.
10.In the spirit of friendship and mutual trust,the United States and Japan are determined to keep each other fully informed and to strengthen the practice of frank and timely consultations on potentialbilateral issues and pressing global problems of common concern.
11.Friendly and cooperative relations between the United States and Japan have grown and deepened over the years in many diverse fields of human endeavor.Both countries reaffirm that these varied relationships,in their totality, constitute major foundation stones on which the two countries base their respective foreign policies and form an indispensable element supporting stable internationalpolitical and economic relations.
III
This first visit to Japan by an incumbent President of the United States of America will add a new page to the history of amity between the two countries.
(1974年12月11日 於東京)
1. | アズィーズ・アーメド・パキスタン回教共和国外務兼国防大臣閣下は,日本国政府の招待により,1974年12月6日から11日まで日本を公式訪問した。アーメド外務兼国防大臣には,イジャーズ・アーマド・ナイク商務次官,アフターブ・アーマド・カーン経済次官,サリーム・ザマーン外務省東アジア局長が同行した。 |
2. | 滞日中,アーメド外務大臣閣下は1974年12月9日宮中において天皇陛下に謁見を賜わった。 |
3. | アーメド外務大臣は,12月10日,三木総理大臣閣下を表敬訪問し,ズルフィカル・アリ・ブットー・パキスタン首相閣下からの挨拶の言葉を伝達した。 |
4. | アーメド外務大臣は,12月7日木村俊夫外務大臣,12月10日宮澤喜一外務大臣、12月7日宇野宗佑防衛庁長官とそれぞれ会談するとともに,その他の日本国政府指導者とも会談し,両国に関心のある問題に関し,丁重かつ友好的な雰囲気の許で,有益な意見の交換を行った。 |
5. |
アーメド外務大臣は,国際政治情勢につき,日本国外務大臣と詳細に亘り会談を行った。両大臣は最近の緊張緩和の徴候を歓迎し,かかる動きが更に進展するようにとの希望を表明した。 しかしながら,両大臣は核の分野における最近の事態の進展に対し懸念を表明するとともに,両大臣は,両国が核拡散防止を重視していることを再確認した。 両大臣はまた国際経済の現状につき話合いを行い,特に現在の国際経済情勢の下で,発展途上国が直面している諸問題に関し懸念を表明した。 |
6. |
アーメド外務大臣は,アジアにおける平和の維持及び経済発展の促進のために払われている日本国政府の努力を歓迎した。 日本国外務大臣は,シムラ協定に基づき,南アジア亜大陸情勢の正常化が進行していることを歓迎するとともに,インド・パキスタン問題の平和的解決のためにさらに努力が続けられるようにとの希望を表明した。 |
7. | 両大臣は,日パ両国間の問題を検討した。両大臣は日パ両国間に存在している友好関係に満足の意をもって注目するとともに,種々の分野での協力の拡大の方策につき討議した。日本国外務大臣は,パキスタンが経済開発および社会的発展のために払っている努力に対し協力を続けるとの日本国政府の意向を再確認した。アーメド外務大臣は,パキスタンが経済発展のために払っている努力に対する日本よりの協力につき,パキスタン政府の深甚なる謝意を表明した。 |
8. | アーメド外務大臣は,同大臣およびその一行の日本滞在中に与えられた丁重な歓迎と暖かいもてなしについて,日本国政府および同国国民に対し深い感謝の意を表明した。 |
9. | アーメド外務大臣は,日本国外務大臣に対し,パキスタン訪問の招待を衷心より行った。日本国外務大臣はこの招待を深甚なる感謝の意をもって受諾した。 |
(75年1月18日 於モスクワ)
宮澤喜一日本国外務大臣は,ソ連邦政府の招待により,1975年1月15日から17日までソヴィエト連邦を公式訪問した。
宮澤喜一外務大臣は,エヌ・ヴエ・ポドゴルヌイ・ソ連邦共産党中央委員会政治局員兼ソ連邦最高会議幹部会議長と会見した。
宮澤喜一外務大臣とア・ア・グロムイコ・ソ連邦共産党中央委員会政治局員兼外務大臣との間において,1973年10月にモスクワで達成された合意に基づき日ソ平和条約の締結に関する交渉が継続され,また,日ソ間の諸問題及び双方が関心を有する若干の国際問題についても有益な意見の交換が行われた。
双方は,日ソ関係が近年順調に進展してきたことに満足の意を表明し,特に,1973年10月の田中角栄日本国総理大臣のソ連邦訪問以来,両国間の交流が各種の分野において一層進展したことを指摘した。
双方は,また,日本国とソ連邦の間の貿易・経済協力の発展に対し満足の意を表明した。
平和条約締結交渉において,双方は,1973年10月10日付日・ソ共同声明の当該部分に表明されている合意に基づく諸問題を討議した。
双方は,両国関係を恒久的な安定した基礎の上に発展させるためには平和条約を早期に締結することが望ましいと考える。双方は,この問題について引き続き交渉を行うことに合意した。
双方は,両国の最高首脳者の間に間断なき対話を維持することが,両国関係の一層の発展に大きく貢献することを強調した。
宮澤喜一日本国外務大臣は,日本国政府の名において日本国を公式訪問するようにとのア・ア・グロムイコ・ソ連邦外務大臣に対する招待を確認した。ア・ア・グロムイコ・ソ連邦外務大臣は,招待に対し感謝の意を表明した。1975年に訪問を実現子ることにつき合意が達成された。訪問の正確な日取りは合意によって決められるものとする。
双方は,宮澤喜一日本国外務大臣のソ連邦訪問の際に行われた会談及び交渉が有益であり,友好的かつ率直な雰囲気の下に行われたことを満足をもって指摘した。双方は,これらの会談及び交渉が日本国とソヴイエト連邦との間の善隣関係の一層の発展を促進するであろうとの確信を表明した。
(2)多数国間関係
(74年5月1日第6回国連特別総会において採択)
総会は「新国際経済秩序樹立に関する宣言」を採択する。われわれ国連メンバーは,初めて「原材料と開発」の諸問題を検討するために国連特別総会を招集し,国際社会が直面している最も重要な経済問題を考察した。そして人類の経済発展と社会進歩を促進させるための国連憲章の精神,目的,および原則を考慮しつつ,新国際経済秩序の樹立のための作業を緊急に行うとのわれわれの共同の決定を厳粛に宣言する。この秩序とは,不平等を是正し,現存する不正義を除去していくためにあるいかなる経済社会機構とかかわりなく,すべての国家間の公正,主権の平等,相互依存,共通の関心および協力に基礎をおき,先進国と開発途上国間の拡大しつつある格差を除去し,現在および未来の世代のために平和でかつ正義にのっとった経済社会発展を堅実に促進させることを確実ならしむるものである。
1. | 最近数10年間におこった最も偉大かつ重大な出来事は,非常に多くの国民および国家が外国の植民地支配から独立し,彼らが自由な国民の社会のメンバーになることが可能となったことである。技術の進歩もまた,ここ30年間にあらゆる分野の経済活動において促進され,全国民の福祉の改善のために確固とした力を与えた。しかしながら外国の植民地支配,占領,人種差別,アパルトヘイトおよび新植民地主義の残滓は,いろいろな形で開発途上国とそれらの残滓のもとにあるあらゆる国民の完全な解放と発展とに対する最大の障害であることに変わりはない。技術進歩の利益は国際社会のあらゆるメンバー国に対し,公平には行きわたっていない。世界人口の70%を占めている開発途上国は世界の全体の収入の30%しか得ていない。現存する国際経済秩序のもとでは公平かつバランスのとれた国際社会の発展を実現することが不可能であることが証明された。先進国と開発途上国間の格差は,大部分の開発途上国がまだ独立国としては存在していなかった時に形成され,不公平を固定化する機構の中にあってさらに拡大していくであろう。 |
2. | 現存の国際経済秩序は,国際的な政治経済関係の中におこりつつある諸発展との間に直接的な矛盾を生じている。1970年以降,世界経済は,開発途上国が一般的に外的な経済的衝撃に対して弱かったため,特にそれら諸国に深刻な影響を与えた一連の重大な危機を経験した。世界の力関係における,これら逆行することのない変化は,国際社会に関するすべての決定の形成と適用の過程に,開発途上国の行動的で完全かつ平等な参加を必要としている。 |
3. | これらの結果のすべては,国際社会のすべてのメンバー国の相互依存の現実を浮かび上がらせてきた。現在進行している事象は,先進国と開発途上国の諸利益がもはや独立しては存在しえなくなっていること,先進国の繁栄と開発途上国の成長,発展の間には密接な相互連関があること,および国際社会全体としての繁栄は,その構成員の繁栄に依存しているという諸事実にするどい焦点をあてた。発展のための国際協力は,すべての国の目的であり共通の義務である。すなわち現在および将来の世代の政治的,経済的,社会的福祉は,主権の平等と現存する不平等の除去の基礎の上にたって,国際社会の全メンバー間の協力によるところがさらにいっそう大きい。 |
4. | 新国際経済秩序は,次の諸原則を完全に尊重することを,その基礎とする。 |
(a) | 諸国家の主権の平等,全国民の自決,力による領土取得の不承認,領土の不可分および他国の内政不干渉。 |
(b) | 公平を基礎とする国際社会の全メンバー諸国の広範な協力。これにより世界に広がっている不平等は一掃され繁栄がすべての国民に保証される。 |
(c) | 全国家が共通の関心を有している世界的な経済問題を解決するための全国家間の平等の基礎の上にたった完全かつ効果的な参加。この場合,すべての開発途上国の開発が促進されることが保証される必要性を考慮に入れねばならず,また他の開発途上国の利益を無視することなく,開発途上国中,特に遅れた諸国(MSAC),内陸諸国,島嗅諸国のみならず,経済危機や天災によって最も重大な被害を被った開発途上国に対する特別措置の採択に特別の注意を払うものとする。 |
(d) | いかなる国といえども,自国の発展のために最も妥当と考えられる経済社会システムを採用し,その結果いかなる種類の差別をも甘受しない権利を有する。 |
(e) | あらゆる国の天然資源と全経済活動に対する完全な恒久主権。その天然資源を保護するため,いずれの国も国有化および所有権を,その国民に移転する権利を含み,天然資源に対する効果的な管理および自国の状況にふさわしい手段によりその開発を行う権利を有する。この権利は国家の完全なる恒久主権にほかならない。いかなる国家もこの不可譲な権利の自由かつ完全な行使を妨げる経済的政治的,その他いかなる形の強制もうけることはない。 |
(f) | 外国政府による植民地支配,およびアパルトヘイトのもとにあるすべての国家,領土およびその国民は,それらの国家,領土および国民の天然資源およびその他の資源の開発,枯渇および破損の回復,さらに完全な補償を受ける権利を有する。 |
(g) | 多国籍企業が,受入れ国の完全な主権のもとに活動するため,受入れ国の国民経済の利益となる措置をとることによる同企業活動の規制および監視。 |
(h) | 開発途上国および植民地的な人種支配および外国の占領下にある地域の国民の解放の実現と天然資源および経済活動の効果的な管理を行う権利。 |
(i) | 開発途上国および外国の占領,人種差別,アパルトヘイトのもとにある国民および領域に対する援助の拡大,これら開発途上国や,そのような状況にある国民や領域は,今まで外国の主権行使のもとに従属し,あらゆる種類の便益を外国に与え,あらゆる形の新植民地主義に従うように強制され,経済的政治的,その他いろいろな措置に悩まされてきた。しかし,それらは今まで外国の管理下にあり,現在もその管理下にあるそれら自身の天然資源および経済活動に対する有効な管理を樹立するよう努力してきた。 |
(j) | 開発途上国の不満足な交易条件の持続的改善と世界経済の拡大をもたらすことを目的とする,同諸国によって輸出されている原材料,一次産品,製品,半製品の価格と同諸国によって輸入されている原材料,一次産品,製品,資本材,その他装置との間の公正かつ平等な関係。 |
(k) | 全国際社会による,いかなる政治的軍事的な条件からも自由な開発途上国に対する活発な援助の拡大。 |
(l) | 改革された国際通貨機構の主たる目的の一つは開発途上国の発展の促進と資金の同諸国に対する適切な流れであることの保証。 |
(m) | 合成代替品との競争に直面している天然資源の競争力の改善。 |
(n) | 可能な場合に限り,国際経済協力の全分野における開発途上国のための特恵的かつ非互恵的取扱い。 |
(o) | 開発途上国に対し資金の移転に対する有利な条件を与えることの保証。 |
(p) | 開発途上国の経済にとってふさわしい形と手続きによって,同諸国の利益となるような技術移転と土着の技術の創造の双方を促進するため,同諸国に近代的な科学および技術の成果に対するアクセスを与えること。 |
(q) | あらゆる国にとっての食糧品を含む天然資源の乱用に終止符をうつことの必要性。 |
(r) | 開発途上国にとって,開発のためにその全資源を集中させることの必要性。 |
(s) | 主として特恵的なベースにもとづく個別的集合的活動をつうじての開発途上国間の相互的な経済上,貿易上,財政上および技術的協力の強化。 |
(t) | 生産者同盟が,国際協力の枠のなかでその目的を追求しつつ,なかでも世界経済の持続的な成長と,開発途上国の促進されつつある発展に役立つために果たす役割の促進。 |
5. | 第2次開発のための10年の国際開発戦略の満場一致での採択は,正当かつ平等な基礎の上にたつ国際経済協力促進のための重要な一歩であった。同戦略の枠の中において,国際社会によって引きうけられた義務と約束の履行の促進,特に開発途上国の不可避的な発展の必要性は,本宣言の目的の実現に重大な貢献をすることとなろう。 |
6. | 普遍的な機関である国連は広く国際的経済協力の目的を取扱い,あらゆる諸国の利益を平等に取扱うことが可能になるべきである。国連は新国際経済秩序の樹立に,さらに大きな役割を果たさねばならない。諸国家の経済上の権利義務憲章は,この点で重大な貢献をするであろうし,同憲章の準備のために,本宣言がさらに刺激を与えることになろう。国連の全メンバー諸国はそれゆえ,本宣言の履行を保証するため最大限の努力をすることを要請される。本宣言は全人類がその尊厳に値する生活に到達するためのより良き条件を創造するための主たる保証の一つとなるものである。 |
7. | 新しい国際経済秩序樹立のための本宣言は,全人類と全国家の間の経済関係のもつとも重大な基礎の一つとなるものである。 |
(74年5月30日)
1. | OECD閣僚理事会は,1974年5月29日および30日,パリにおいて,アントニオ・ジョリティ議長の司会のもとに開催された。閣僚は,現下の国際経済問題に鑑み,この意見交換の機会を歓迎し,OECDにおける協力がこれらの問題の解決のため果し得る建設的な役割を強調した。 問 題 |
2. |
閣僚は,その解決のためには国内政策の一層の国際的調整を必要とする顕著な三つの主要問題を明らかにした。 -蔓延しているインフレ問題は,すでに深刻な度合に達していたが,石油価格の急激な上昇により悪化している。インフレ対策は,深刻な失業問題が回避されるよう慎重に選択されなければならない。 -殆んどのOECD諸国にとって,国際決済の状況は石油価格の上昇によって,著しく変化し,経常収支が大巾な赤字に転じている。 -世界で最も貧困な国々を含む一部の開発途上国は,悲惨なまでに悪化した経済及び資金状況に直面している。 対 応 |
3. | 各国政府は,これらすべての諸問題に共同してかつ時を同じくして取組むことを決意しており,閣僚はこの目的のために一連の一貫性のある諸措置を策定するとの決意を強調した。ことに個々の国の国内均衡および対外均衡上の問題については,当該問題を国境を越えて移転させるにとどまるような行動によっては受入れ可能な解決が見出せないと認識している。 |
4. |
インフレと雇用 閣僚は,全てのOECD諸国において現在のインフレ昂進度が,経済および社会の発展に脅威となっていることを認識している。従って,各国政府は,価格上昇の度合を軽減することに高い優先度をおいている。 閣僚は,経済活動を満足すべき水準に維持し,雇用問題を一国から他の国に移転するような政策を回避する。しかし,閣僚は,OECD域内で超過需要が出現するのを回避するために現在十分な注意が必要であること,また財政・金融政策はこの目的に沿って講じられなければならないことに合意した。閣僚は,また,供給を増大し,インフレ見込み気運を減少するための他のより選別的な措置を可能な場合には講じる必要性を強調した。 また閣僚は,OECDが他の国際機関における作業に留意しつつ生産国及び消費国の双方にとって正当な価格で適正な供給を有する一次産品市場の一層の安定につながる政策を見究めるべきであるということに合意した。 |
5. |
貿易および国際決済政策 OECD諸国にとり新たな国際収支状況に適応することの必要性は特に国際的に取組まれるべき問題である。各国政府は経常収支ポジション低下の規模と存続期間を限定するためにあらゆる適切な行動をとる決意がある。しかし,各国はここ近い数年においては悪化は石油価格が上昇するため甘受されなければならないことを認める。 また,閣僚は,適正な調整政策の実施にもかかわらず残り続ける対外的赤字を補てんするための資金調達は,一部の加盟国にとっては困難な問題となることを認識した。 |
6. | かかる状況において,閣僚は,自国の競争上の地位改善のための相互に矛盾する政策がとりわけ危険なものであることを意識し,国際経済関係に有害な影響をもつような新たな一方的な行動を防止する必要性につき合意した。閣僚は,現下の状況への総体的な対応の一環として別添の宣言を発表した。この宣言は向う1年間,この宣言の目的に反するような貿易又は他の経常取引に対する新たな制限および輸出並びに貿易外取引上の受取りの人為的促進に訴えることを回避するとの各国政府の決意を表明している。 |
7. | この宣言は,同時に前記の赤字に対する資金調達を容易にするため全面的に協力することについての政府間の合意およびこの面で必要とされ得る適当な取極を検討する用意があることを表明している。 |
8. |
さらに閣僚は,GATTの枠内での多角的貿易交渉に対する支持を再確認し,かかる交渉は優先度のある事項としてみなされるべきである旨を力説した。 閣僚は,貿易を自由化するためのこれらの新たな努力を行うことの現下の状況における重要性を強調した。 |
9. | 閣僚は,国際投資及び多国籍企業にかかわる諸問題についての協力を促進するためのOECDにおける作業の強化を歓迎した。 |
10. |
開発協力 閣僚は,開発援助委員会(DAC)の加盟国及び一部のその他のOECD加盟国が,開発途上国の経済的・社会的な発展を一層促進することを目的として,政府開発援助の額を維持し,拡大するためたゆまぬ努力を行うことに留意した。 |
11. | 閣僚は,石油およびその他の不可欠な輸入品の価格上昇により最も深刻な影響を受けている低所得開発途上国の深刻な経済問題に対し特に関心を表明した。これら諸国の必要とする特別援助の見込み額についてはまだ一般的に合意をみていないが,閣僚は,かかる必要額はその規模において1975年末までに30億ないし40億ドルに達するかも知れないと指摘する一部国際機関の予備的研究に留意した。 |
12. | DAC加盟国及び一部のその他のOECD加盟国の閣僚は,原材料と開発に関する第6回国連特別総会のフォロ-・アップに建設的に貢献する必要性を認識し,最も深刻に影響を受けている開発途上国が必要とする特別の救済に対し,二国間及び適当な国際機関の枠組みにおいて,適当な方法により貢献すべくあらゆる努力を行う旨合意した。DACは,その加盟国により現在行われている救済努力の進捗とその他さらに適当とされうる措置を検討する。閣僚は,そのような貢献を行いうる立場にある世界のすべての国が最も深刻な影響を受けている開発途上国の特別救済に対し貢献を行う責務がある旨あらためて強調した。 |
13. | 閣僚は,緊急な必要のある開発途上国への肥料の輸出が従前の水準に維持されるようあらゆる可能な限りの努力が払われるべきこと,また資金及び技術援助により,開発途上国における肥料増産に対し勧奨が行われるべきことに合意した。 |
14. |
エネルギー 閣僚は,世界エネルギー市場における最近の事態のなりゆきについて討議した。閣僚は,OECD諸国全体の経済的,社会的福祉ならびに世界経済全体に対する深刻な打撃を回避するためには強力な協力的努力が必要である旨合意した。閣僚は,エネルギー問題において国際協力を強化し,かつ,この分野でのOECDの能力を強化する意向を強調した。 |
15. | 閣僚は,OECDによって準備されているエネルギーとそれに関連する政策の長期的アセスメントに関する作業が促進され,その結果は遅くとも1974年10月には各国政府の手に渡ることに留意した。閣僚は,環境の状態に対し不当に悪影響を与えることなくエネルギー供給を確保する必要性を強調した。 |
16. | 閣僚は,エネルギーの保全と需要の抑制,伝統的エネルギー源開発の促進,緊急時及び厳しい不足時における石油供給の割当及びエネルギー研究開発の分野ですでに進められているOECDの作業の重要性を強調した。これらの問題に関する作業は,早期の政策的決定を可能ならしめるために促進されている。 |
(74年5月30日)
OECD加盟国政府は*,石油価格の上昇が,他の諸要因とも相俟って,加盟国の当面する経済問題,とくにインフレ問題を悪化するとともに,新たな構造問題を引起していることおよびこれが国際収支構造に未曽有の変化をもたらし,とくに加盟国全体としての経常収支の悪化をもたらしていることを考慮し,全加盟国は,程度の差はあれ,このような事態の進展により影響を受けていることを考慮し,次のとおり合意する。
加盟国並びに多くの開発途上国が当面している上記諸問題の性格と規模は,経済,貿易,金融,通貨,投資および開発政策の分野において広範な協力的行動を必要としていること。
国際収支の赤字決済のための資金調達は一部の加盟国において困難な問題となること,したがって加盟国はかかる資金調達を容易にするため十分協力を行い,この面で必要とされるような適当な取極につき検討する用意があること。
現下の状況に対処するため,一加盟国または複数の加盟国が,一方的に貿易上のあるいは他の経常収支上の措置をとることは他の諸国における問題を悪化させ,もしこれが一般化されれば,意図に反する結果をもたらすものとなり,世界経済を後退させる影響をもつであろうこと。
各国は,輸入国として及び輸出国としての両面で貿易の通常の流れが阻害されるのを回避する責任を有していること。
したがって,緊急な問題として,かつ通貨および貿易交渉の結果に予断を与えることなく,国際経済関係に有害な影響をもつような,新らたな一方的な行動を防止することを目的とした共同の約束を行う必要があること。
上記にかんがみ,向う1年間の期間について次のとおり決意を宣言する。
(A) | 本宣言の目的に反するような一般的な又は特定の性質を有する輸入制限のための一方的な措置に訴え,または他の経常取引について同様の措置に訴えることを回避する。 |
(B) | 輸出又は他の経常取引を人為的に促進する措置を回避する。また就中輸出信用に対する公的支持における破壊的な競争を差控え,ごく近い将来このための適当な協力的な行動をとることを目指す。 |
(C) | 本宣言の目的に反するような輸出制限を回避する。 |
(D) | 本宣言の妥当な実施を確保するため,OECDの枠内の一般的協議制度を十分活用して互いに協議する。 |
(E) | 加盟国の国際的義務に従い,かつ開発途上国の特別の必要に然るべく留意して,この宣言を実施する。 |
(74年6月13日 ワシントンにおいて)
1. |
国際通貨制度の改革及び関連事項に関する委員会(20カ国委員会)は,第6回かつ最終回の会合を1974年6月12日,13日にワシントンにて,アリ・ワルダナ インドネシア蔵相を議長として開催した。 ヨハネス・ウイッテフェーンIMF専務理事が同会合に参加し,また,ガマニ・コレアUNCTAD事務局長,フレデリック・ボワイエ・ドラ・ジロデイーEEC通貨局長,ルネ・ラールBIS総支配人,エミール,ヴアン・レネップOECD事務総長,オリヴアー・ロングGATT事務局長及びデニス・リケット世銀副総裁の各氏もこれに出席した。 |
2. | 委員会は国際通貨制度改革の作業を終了し,当面の行動計画を合意し,かつ,現下の国際通貨情勢に由来する主要な諸問題を審議した。 |
3. | 当面の行動計画は以下のとおりである。 |
(a) | 授権された範囲内で決定権限を有する執行委員会を,協定改正により設立するまでの間,勧告的役割を果たす暫定委員会を設立すること。 |
(b) | 調整過程について緊密な国際的協議と監視を行うためにIMFの手続を強化すること。 |
(c) | 変動為替相場運営に関するガイドラインを設けること。 |
(d) | 石油輸入価格の上昇による当初の衝撃に加盟国が対処することを援助するためのファシリティ(信用措置)をIMF内に設けること。 |
(e) | 国際収支上の正当性がIMFによって認められない限り,国際収支上の目的で貿易その他の経常取引に関する措置を導入したり強化したりしないことを各国が自発的に誓約するための規定を設けること。 |
(f) | 国際流動性の管理に関するIMF手続を改善すること。 |
(g) | 改革について合意された目標に照らし,IMFにおいて金に関する取決めを国際的に更に検討すること。 |
(h) | 通貨のバスケットに基づくSDRの価値決定の方式及び当初5%のSDR金利を経過期間中採用すること。 |
(i) | 発展途上国がより長期の国際収支融資を受けられるようIMFの拡大信用供与措置を早期に立案し,採用すること。 |
(j) | 理事会による協定改正案の準備と平行して,開発援助とSDR配分との間にリンクを設定することの可能性と実施方式につき,暫定委員会が改めて考慮すること。 |
(k) | 発展途上国への実物資源の移転に関する幅広い問題の検討を進め実施手段を勧告するため,IMFと世銀の合同の大臣レベルの委員会を設立すること。 |
(l) | 暫定委員会に更に検討させ,場合によっては総務会に対し適当な時期に勧告できるようにするため,理事会が協定改正案を準備すること。
これらの諸措置は,このコミュニケに別添されるステートメントに詳細に説明されている。 |
4. |
委員達は多くの国におけるインフレーションの昂進に重大な懸念を表明した。委員達は深刻な社会上経済上かつ財政上の諸問題を避けるため,インフレーションと闘うより強力な行動が緊急に必要であることにつき合意した。委員達は通貨に関する国際取決めがこの問題を抑込むことに役立ち得るものの,インフレーションを回避する主な責任は各国政府にあることを認識した。委員達はこの目的のため適切な財政,金融及びその他の政策をとる決意を確認した。 討議の中で委員達はGATTの枠組の中での多国間通商交渉が優先度の高い事項とみなされるべきことを強調した。 |
5. |
委員会は,インフレーション,エネルギー情勢及びその他の不安定な状況の結果,多くの国がファイナンスを必要とする大幅な経常収支赤字を経験しつつあることに留意した。委員会は民間金融市場の円満な機能を害することなく適切な金融手段を確保すること,及び単に問題を他国へ移転させるだけの調整措置がとられる危険を避けるために継続的な協力が必要であること,を認識した。 最も深刻な影響を受けた発展途上国の切迫した困難に対して特別の注意が払われた。このため委員達は利用可能な資源を持つすべての国と開発金融諸機関とに対し,これらの国々へ緩い条件での金融的援助を増大させるため,あらゆる努力を払うよう強く要請した。 |
6. |
国際通貨制度改革の作業を終了するにあたり,委員達は本作業に関する最終報告を改革の概要とともに総務会に送付することを合意した。 これらの書類は間もなく公表される。 |
(74年11月14日)
1. |
OECDの環境委員会は,1974年11月13日,14日の両日大臣レベルで会合した。 会議は議長としてハーレム・ブリュトランド(ノールウエー)環境大臣を選出し,副議長として毛利環境庁長官,キャス(オーストラリア)環境国土保全大臣,グテイエレス・カノ(スペイン)開発計画大臣がそれぞれ選出された。 |
2. | 諸大臣は,各国政府を代表し,OECD環境委員会設立より4年後の今日変化する社会・経済状況の下で人間環境及び生活の質を保護・改善するため努力するとの決意を再確認する環境政策に関する宣言を採択した。この重要な宣言は就中, 「生産物の量のみならず,生活の質にかかわるすべての要素を考慮に入れた」経済成長に対する新たなアプローチを促進するとのOECD加盟諸国の決意を表明している。 |
3. |
環境政策は今後とも精力的に押し進められるべしとの点につき,一般的な意見の一致をみた。環境問題は,予見しうる将来において各国政府にとって,主要な挑戦であり,各国の政策の調整及び一致した国際的行動が,要請されているとの点で合意をみた。 諸大臣は,現下の経済・エネルギー情勢の影響により環境政策の緊要性が後退するようなことがあってはならないとの見解を表明した。 |
4. | 諸大臣は,加盟諸国が直面している主要な環境問題の経済的・技術的側面の分析,一般的に合意された政策ガイドラインの形成及び共通の関心がある問題に対する国際的解決への貢献において,過去4年間OECDが達成した顕著な成果に注目した。 |
5. | 本会合の主要なテーマであった今後10年間における環境政策に焦点をあて,また,ストックホルムの人間環境会議の結果をさらに行動に移すことの必要性に留意して,諸大臣は,以下の諸点がきわめて重要であることを強調した。 |
(i) | 継続的な人口増加が有限な天然資源に与えると思われる重圧に留意しつつ人口増加の挑戦に対応すること。 |
(ii) | 環境政策が世界の食糧増産努力と注意深く統合されるよう確保すること。 |
(iii) | エネルギーと環境政策が相互に補強しうることに留意して,エネルギー供給を含む天然資源の節約,再利用もしくはより合理的な利用を達成するためのたゆまぬ努力をなすこと。 |
(iv) | あらゆる形態の汚染によってひきおこされる短期的及び長期的被害に対し,可能な限り予防的措置によって人類及び自然を保護すること。 |
(v) | 環境改善のための政策に関連する意思決定過程に実情を知る国民の参加を促進するために国民が当該政策の具体的な利益を十分に認識するよう確保すること。 |
(vi) | 継続的な研究・開発及び有効なアセスメント手法の適用によって,人間行動が環境に与える影響が十分に理解されるよう確保すること。 |
(vii) | より適切な土地利用計画や他の関連施策の実施により,とくに都市及び都市周辺居住地における人間環境の改善を図ること。 |
6. |
諸大臣は,更に,今後10年間における種々の問題は,国際協力,特にOECDを通じての国際協力の一層の強化によってのみ解決できるものであるとの点につき合意した。 この点に関し,諸大臣は次の諸点を強調した。 |
(i) | 上記の目的を達成するために加盟国においてとられ,または,提案された行動を共同で検討することの必要性。 |
(ii) | 環境政策の調和を図るため,かつかかる政策が国際貿易や投資に対し与えるおそれのある制限的な効果やゆがみを避けるためにOECD内部において,継続的に作業を行うことの重要性。 |
(iii) | 本来,国際的である越境汚染あるいは共有環境資源の管理等の環境問題の解決等の追求に参加するとの決意。 |
(iv) | 深まりゆく国家間の相互依存に留意しつつ,共通な環境問題の解決のために発展途上国との協力を強化する必要性。 |
7. |
国際協力を必要としているより緊急な諸問題については,諸大臣は,OECD加盟国に対する勧告という形で行われる10の行動計画を採択した。 行動計画の諸テキストは公表されるが,その項目は,以下のとおりである。 |
(i) | 化学物質が環境に与える潜在的影響の評価。 |
(ii) | 重要な公共及び民間事業の環境への影響の分析。 |
(iii) | 騒音の防止及び緩和。 |
(iv) | 交通制限と低費用による都市環境の改善。 |
(v) | 大気汚染規制の強化措置。 |
(vi) | 水の富栄養化防止。 |
(vii) | 特定水質汚濁物質の規制方法。 |
(viii) | エネルギーと環境。 |
(ix) | 汚染者負担原則の実施。 |
(x) | 越境汚染に関する諸原則。 |
8. | 諸大臣は主要な諸分野においてOECDの活動に対してのみならず加盟国の諸政策の指針となり,または政策を強化することとなるこれらの勧告の重要性を強調し,さらにこれらの勧告が出来るだけ早い機会に実施に移される必要があることを指摘した。 |
(昭和49年11月16日 マニラで採択)
1. | 第9回東南アジア開発閣僚会議は,1974年11月14日より16日までマニラで開催された。閣僚レベルの会議に先立ち,高級官吏会合が1974年10月9日より11日までマニラで開催された。 |
2. | 従来より会議に参加して来た12カ国,即ち,豪州,ビルマ,インドネシア共和国,日本,カンボディア共和国,ラオス王国,マレイシア,ニュー・ジーランド,フィリピン共和国,シンガポール共和国,タイ及びヴイエトナム共和国の全ての代表が列席した。 |
3. | 会議には,豪州のドナルド・ロバート・ウィルシー外務大臣,ビルマのウ・ニョー・トウン駐フィリピン特命全権大使,インドネシアのJ・B・スマルリン行政管理担当国務大臣兼開発企画庁副長官,日本の木村俊夫外務大臣,カンボディア共和国のリー・チンリー駐フィリピン特命全権大使,ラオス王国のティアントーン・チャンタラシー外務副大臣,マレイシアのテンク・アーマット・リタディーン外務担当大臣,ニュー・ジーランドのT・M・マクィガン保健大臣,フィリピン共和国のセサール・E・ヴイラタ大蔵大臣,シンガポール共和国のオン・パン・ブン労働大臣,タイのチャルン・パン・イサランクン・ナ・アユタヤ外務大臣,ヴイトナム共和国のヴオンヴアン・バック外務大臣が首席代表として出席した。 |
4. | 会議には,また,オブザーバーとして井上四郎アジア開発銀行総裁,L・S・ソディ東南アジア家族人口計画政府間調整委員会事務局長,アポン・スリブヒブハット東南アジア漁業開発センター事務局長,吉川重蔵東南アジア貿易・投資・観光促進センター事務局長,アルフェド・T・カガワン東南アジア運輸通信開発局運輸経済局次長及びドナルド・R・バーグストウロム国連開発計画駐在代表が出席した。 |
5. |
会議は,フェルディナンド・E・マルコス・フィリピン大統領により開会され,同大統領はフィリピン政府及び国民を代表してすべての代表及びオブザーバーに対しあたたかい歓迎の意を表明した。 大統領は,世界のすべての国がエネルギーの高いコスト,きびしいインフレ圧力及び悪化しつつある食糧不足に特色付けられる世界的規模の経済危機によって影響を受けたと述べた。大統領は,国際経済秩序の不安定が,国際関係の伝統的な構造を急激に変えたことを指摘した。すべての国がその開発において後退を蒙むったが,開発途上諸国が世界的な経済危機により最も影響を受けた。 大統領は,世界の諸国の救済の方策は利己心のない相互依存の増大,相互利益のための協力及び調和の精神に基づく先進国諸国と開発途上諸国の密接な協力に求められることを強調した。進歩と開発を加速する一方,共通の脅威に対処することを可能にする実際的な方策が工夫さるべきである。閣僚会議は,東南アジア開発途上諸国の開発目標達成を援助する使命を負っていることにかんがみ,大統領は会議が国家的開発計画にはつきりしたつながりを持ち,かつ地域の開発途上諸国の自立強化に寄与するプロジェクトを推進すべきことを示唆した。 大統領は,更に,会議が貿易,限られた原材料の供給,地域の資源の適正な活用と開発,ならびに人口管理,都市化,農業生産,投資及び技術移転の如き社会経済開発を促進,奨励する他の開発を指向した開発分野に関連する諸問題について協調的行動をとることを示唆した。 大統領は,この地域の開発に関する考えを交換するための協議の場としての会議の有益性を確認した。大統領は更に設立後9カ年の間に会議が地域協力の柱となったことを述べた。 |
6. | 第6回国連特別総会で採択され,もし実施される場合には国際経済秩序の不公平及び脆弱性を是正し得ることのあるべき新経済秩序確立のための宣言及びこれに付随する行動計画について会議の注意が喚起された。 |
7. | 会議は,世界全体,特に東南アジアをとらえている深刻な経済問題すなわち急激なインフレ,エネルギー危機,食糧不足,景気後退の傾向及び国際収支の困難に留意した。 |
8. | 会議は,これらの経済問題は諸国間の相互依存を強調することとなったものであり,また,開発途上諸国及び先進諸国の間の更に大きな協力を要求するものであることに合意した。従って会議は真に国際的な問題に対処するためには地域の諸国の間におけるより密接な協議と協力を通ずるより大きな調和の精神が必要であることに留意した。 |
9. | 会議は,これらの厳しい経済的諸困難は貿易を抑圧し,開発途上諸国の経済に悪影響を与える恐れのある制限的措置を先進国にとらせるような結果をもたらし得ることに重大な懸念を表明した。 |
10. | 開発途上諸国の貿易を拡大する必要性を認識し,会議は,先進諸国の一般特恵制度が一層改善され,世界貿易における開発途上国のシェアの実質的増加及びこれら諸国の外貨収入の増加が計られるよう示唆した。会議は更に関税及び非関税障壁の除去による市場アクセスの条件改善及び交易条件の改善がなされるよう,また開発途上諸国の産品の価格の安定が計られるよう示唆した。 |
11. | 会議は,来たるべき多角的貿易交渉について注意を喚起し,本交渉が東京宣言の原則及び目的に従い一層の貿易自由化をもたらすよう希望を表明した。会議は,先進諸国に対し多角的貿易交渉において開発途上諸国の発展の必要性を考慮するよう求めた。 |
12. | インドシナ諸国の特別の問題と必要については,会議は,戦禍で荒廃したこの地域に対する更に積極的な貢献を行うことを考慮するよう求められた。会議は,これら諸国が自足を達成するために払っている努力及び同地域の共通の事業への貢献を歓迎した。会議は,また,これら諸国の復興と再建のためのより幅広いかつ大きな国際的援助を要請した。 |
13. | 会議は,ヴイエトナム共和国代表の発言に注目した。会議は,更に,この地域において自足を達成し,同地域の共通の事業に貢献し得る試みとしてインフレを抑制し失業率を低下せしめ国内生産を増加し,また民間投資を奨励するために大胆なイニシアティヴがとられていることに注目した。 |
14. | 会議は,また,カンボディア共和国及びラオス王国における諸問題に関するこれら諸国の代表の発言に注目した。 |
15. | 会議は,豪州の特恵関税スキーム及び市場援助部局の設立によって開発途上諸国から豪州への輸出を増加させるための努力,1974-75年予算における開発援助計画が全体として31%増加し,341百万豪州ドルに達していること,開発途上諸国に対する豪州の民間投資を勧奨する諸スキームの導入及び資源と原材料の問題に豪州が払っている配慮の如き豪州のこの地域に対する援助に感謝をもって注目した。 |
16. | 会議は,拡大された開発援助計画を維持するためのニュー・ジーランドの断固とした努力を感謝をもって注目した。会議は,ニュー・ジーランドの1974-75年の援助予算が4,400万NZドルに増加したこと及び今後2年間に更に実質的増加が見込まれることを喜びをもって知った。会議は,また,1974年より77年の間ニュー・ジーランドの東南アジア諸国に対する二国間プロジェクト援助の配分が885万NZドルより64%増加して1,450万NZドルに増大するであろうとのニュー・ジーランドの発表を歓迎した。 |
17. | 会議は,1973年に日本によって達成された開発途上諸国への経済協力の目覚しい拡大と改善,特に国民総生産の1.42%に達した資金の流れ総量の増加,10億ドルを越えた政府開発援助量及び援助条件の顕著な改善を歓迎した。二国間政府開発援助に占める東南アジアの割合は53.8%であった。 |
18. | 会議は,日本国政府がこの地域の諸国との良き隣人関係の促進強化のためにこれら諸国のそれぞれの自主性を尊重し,相互理解を一層増進させることを外交の基本方針として再確認したことに注目した。会議は,日本がエネルギー問題による多くの困難に直面しているのにもかかわらず,政府開発援助の拡充を中心として開発途上諸国の開発努力に対する協力を能う限り進める意図を表明したことを感謝をもって注目した。 |
19. | 会議は,また,貿易自由化及び一般特恵制度改善を含む種々の措置を通じ,開発途上諸国特に東南アジアの開発途上国との貿易を拡大するため引続き努力する旨の日本国政府の確たる意図に注目した。 |
20. |
会議は,東南アジア漁業開発センター(SEAFDEC)事務局長による昨年の第8回閣僚会議以降の同センターの活動と運営において達成された進捗に関する報告に感謝をもって注目した。 会議は,また,SEAFDECの資金を増大するための外部よりの拠出金の獲得と同プロジェクトへの参加国増大に関する事務局長の提案に注目した。会議は,SEAFDECに対するニュー・ジーランド及び豪州の28,000NZドル及び20,000豪州ドルの拠出の決定を歓迎した。 |
21. |
会議は,東南アジア運輸通信開発局(SEATAC)の進展及び同局の同地域全体にわたる開発に対する重要な役割を満足をもって注目した。 会議は,また,SEATACをして地域の海運業におけるより大きな役割を果たさせるようとの提案に注目した。 会議は,同プロジェクトに対する豪州,ニュー ・ジーランド及び日本の援助ならびにADB,UNDP等の国際機関及びUSANDによる継続せる支持を感謝をもって注目した。会議は,SEATACに対するニュー・ジーランド及び豪州それぞれ55,000NZドル及び20,000豪州ドルの拠出の決定を歓迎した。 |
22. |
会議は,東南アジア貿易・投資・観光促進センター(SEAPCENTRE)のプロジェクトの進展に満足をもって注目した。 会議は,地域の開発途上国の貿易投資及び観光産業のニーズに,より効果的に資するため本センターの活動を継続的に拡大すべきことに合意した。 会議は,更に,本センターを日本と本センターの開発途上参加諸国との間の貿易投資及び観光の事項に関する情報センター及びクリアリング・ハウスにすべきであるとのフィリピンの提案に注目した。 会議は,豪州が同国内における貿易促進及び展示センターを設置しつつあることに注目した。会議は,更に,開発途上参加諸国の利益となる関係分野において本センターと協力する旨の豪州の表明した意図に注目した。 |
23. |
会議は,第8回閣僚会議共同コミュニケ第22項に従い,1974年10月1日より3日まで東京において開催された東南アジア農業開発専門家会合の報告に満足をもって注目した。会議は,この会合における討議が東南アジアにおける農業開発にかかわる問題を明らかにし,これ等の問題の可能な解決方法を探究するための意見交換を容易にする上で非常に有益であったことを認めた。 会議は,東南アジアにおける農業開発問題を討議することを目的とし,必要に応じ参加政府間の協議を通じて更に会合を開催すべきであるとする専門家会合の勧告に満足の意をもって留意した。 会議は,国際イネ研究所の研究分野における貢献と米の高収量種子の多くの国における必要を満す役割に注目した。会議は,同研究所に研究活動を推進することが可能となるよう追加的な財政支持を与える必要性を認めた。 |
24. |
会議は,アジア租税行政及び調査に関する研究グループの報告に満足をもって留意した。会議は,本研究グループが地域の諸国の租税制度を改善する方法について意見と情報の交換の場として,その活動を継続することを認めるべきであるとの提案への支持を表明した。 会議は,本研究グループ第5回会合を主催とするとのタイ国政府の配慮ある申し出に謝意を表明した。会議は,租税行政及び調査のためのアジア・センター設立に関するフィリピン提案が第4回SGATAR会合より一時的に撤回されたことに注目した。 会議は更に,租税行政分野における訓練に関する豪州の援助申し出,及び租税行政にかかわるそれぞれの経験及び情報交換を行うための豪州による参加国高級租税官吏の招待についても留意した。 |
25. |
会議は,東南アジア家族人口計画政府間調整委員会(IGCC)のプロジェクト進展にかかわる報告に感謝をもって注目した。 会議は,特に,世界人口年である本年において人口問題に取り組む必要性を認めた。 会議は,IGCCが家族計画問題を詳細にわたり論議しおいたが故に,保健,地域社会開発,移住及び人間環境の他の側面との関連で人口を扱うとの全総合的開発手法に向うべきであると提案した。 |
26. |
会議は,日本国政府が東南アジア医療保健機構(SEAMHO)の設立に必要な準備を行うため,これまでにとってきたイニシアティヴに謝意を表明した。会議は,SEAMHO設立のため更に必要となる措置をとるかどうかは参加国の広範囲にわたる支持にかかつているという日本政府の見解に注目した。 会議は,カンボディア,ラオス,フィリピン,シンガポール及びヴイエトナム共和国がSEAMHOに参加する用意があることに注目した。 更に会議は,インドネシア及びマレイシアの同機構には参加出来ないことならびにタイ及びビルマがSEAMHOの設立について立場を未だ策定する立場にないことに注目した。 |
27. |
会議は,ヴイエトナム共和国政府が東南アジア工科大学プロジェクトについてのフィジビリティ調査を終了し,去る9月サイゴンにおいて国際専門家会合を主催したことにつき同政府に対し謝意を表明した。会議は,また,ヴイエトナム共和国政府が同大学の設立委員会を設立するための措置をとること及び同大学の設立協定を起草することにおいて責を担う用意があることに注目した。 会議は,本プロジェクトは特にインドシナ諸国における工学卒業生に対する需要に応ずることが出来るため有望であることを考察した。 会議は,本プロジェクトの実施特にその財政面につき参加国間で更に協議することに同意した。 |
28. |
会議は,閣僚会議の役割と範囲について検討し,この会議を地域の経済開発のためにより有効な手だてとするために,参加国間でより定期的な協議が行われるべきであることに合意した。この目的を達成するために会議における提案及び作業をモニターし,地域プロジェクトの報告を検討し,かつ各会議の準備作業を行うため参加国の高級官吏がより頻繁に会合することとなろう。 会議は,高級官吏の第1回会合を,1975年の初めにバンコクで開催することに合意した。高級官吏会合は,年間を通じてその活動を閣僚会議に報告するであろう。 |
29. | 会議は,第10回閣僚会議を,1975年10月または11月のいずれかの時期に主催するとのシンガポール政府の配慮ある申し出を感謝をもって受諾した。 |
30. | 会議は,代表及びオブザーバーに与えられた接遇と会議のためになされた取り計らいについてフィリピン政府及び国民に対し感謝の意を表明した。 |
(12月12日 第29回国連総会採択)
前 文
国連総会は,
国連の基本目的,特に,国際の平和と安全の維持,国家間の友好関係の発展,及び経済的及び社会的分野における国際問題解決のための国際協力の達成を再確認し,
これらの分野での国際協力を強化する必要性を確認し,
更に開発のための国際協力の必要を再確認し,経済的及び社会的体制の相違を問わず,すべての国の間における公正,主権平等,相互依存,共通利益及び協力の基礎の上にたって,新国際経済秩序の樹立を促進することが本憲章の基本目的であることを宣言し,
次に述べる諸事項のための条件の創出に寄与することを熱望し,
(a) | すべての国におけるより広い繁栄とすべての国民のためのより高い生活水準の達成 |
(b) | 国際社会全般によるすべての国,特に開発途上国の経済的及び社会的進歩の促進 |
(c) | 本憲章の条項を進んで実施しようとするすべての平和愛好国のための互恵及び衡平な利益を基礎として,政治,経済,社会的体制を問わない経済,通商,科学及び技術分野における協力の助長 |
(d) | 開発途上国の経済発展の過程における主たる障害の克服 |
(e) | 開発途上国,先進国間の経済格差を縮小するための開発途上国の経済成長の促進 |
(f) | 環境の保護,維持及び質の高度化 |
次の諸事項を通じ公正及び衡平な経済社会秩序を樹立及び維持する必要に留意し,
(a) | より合理的かつ衡平な国際経済関係の達成,及び世界経済における構造的変革の助長 |
(b) | すべての国家間の貿易の一層の拡大及び経済協力の強化を可能にする諸条件の創出 |
(c) | 開発途上国の経済的独立の強化 |
(d) | 開発途上国の発展段階に関する合意された差異及びその特別の必要性を考慮に入れての国際経済関係の樹立及び促進 |
各国の主権平等を厳格に尊重しかつ国際社会全般の協力を通じ,とくに開発途上国における開発のための集団経済安全保障を促進することを決意し,
国際経済問題に関する統一的考慮及び協調的行動に基づく真の国家間協力が,世界のすべての地域の公正かつ合理的開発を達成するとの国際社会の共通の願望を充足するために不可欠であることを考慮し,
社会経済制度の相異を問わず,すべての国家間の通常の経済関係の処理及びすべての国民の利益のための平和の強化の手段としての国際経済協力の機構強化のみならず,すべての国民の諸権利を十分に尊重するための適当な条件を確保する重要性を強調し,
すべての国家の主権平等,相互的かつ衡平な利益及びすべての国の諸利益の密接な相互関係に基づいて国際経済関係に関する制度を発展させる必要を確信し,
各国の開発のための責任は,第一義的に当該国に存するも,それに附随する効果的国際協力は各国自身の開発目標を完全に達成するための本質的な要素であることを再度強調し,
国際経済関係の実質的な改善を促進するための緊急な必要をかたく確信し,
この諸国家間の経済権利義務憲章を厳粛に採択する。
第1章
国際経済関係の基礎
諸国家間の経済,政治及びその他の諸関係は,就中次の諸原則により規律される。
(a)諸国家の主権,領土保全及び政治的独立
(b)すべての国家の主権平等
(c)不侵略
(d)不干渉
(e)相互的かつ衡平な利益
(f)平和共存
(g)諸国民の平等な権利及び自決権
(h)紛争の平和的解決
(i)武力によってもたらされ,国家からその通常の発展に必要な自然の手段をうばう不正の除去
(j)国際的義務の誠実な履行
(k)人権と基本的諸自由の尊重
(l)覇権及び勢力圏追求を試みないこと
(m)国際的な社会正義の促進
(n)開発のための国際協力
(o)上記諸原則の範囲内における内陸国の海への及び海からの自由なアクセス
第2章
経済的権利及び義務
第1条 |
〔経済社会体制を自由に選択する権利〕 いかなる国家も,どのような形であれ,外部からの干渉,強制及び脅迫を受けることなく,その国民の意志に従い,その政治的,社会的及び文化的のみならず経済的体制を選択する主権的かつ不可譲の権利を有する。 |
第2条 | 〔天然資源の恒久主権,民間投資,多国籍企業〕 |
第1項; | いかなる国家も,そのすべての富,天然資源及び経済活動に対し,それらを所有,使用及び処分することを含む完全な恒久主権を有し,かつそれを自由に行使する権利を有する。 |
第2項; | いかなる国家も次の権利を有する。 |
(a) | 自国の法令に基づき,また自国の国家的目的と政策の優先順位に従い,自国の国家管轄権及び範囲内で,外国投資を規制し,それに対し権限を行使すること。いかなる国家も外国投資に対し特権的待遇を与えることを強制されない。 |
(b) | 自国の国家管轄権及び範囲内で,多国籍企業の活動を規制,監督し,また右活動がその国家の法令及び規則を遵守し,かつ自国の経済社会政策に合致することを確保するための措置をとること。多国籍企業は受け入れ国の内政に干渉してはならない。いかなる国家も,その主権を十分に尊重しつつ,本項に定める権利を行使するにあたっては,他の国家と協力すべきである。 |
(c) | 外国人資産を国有化し,収用し,又はその所有権を移転すること。但し,その場合には,自国の適切な法令及び自国が適当と認めるすべての事情を考慮して,妥当な補償を支払わねばならない。補償問題で紛争が生じた場合はいつでも,その紛争は,国有化した国の国内法にもとづき,かつその法廷において解決されなければならない。但し,すべての関係国が諸国家間の主権平等の基礎の上にたち,かつ手段の選択の自由の原則に従い,他の平和的手段を追求することにつき自由にかつ相互間で合意した場合はこの限りではない。 |
第3条 |
〔共有天然資源〕 二つもしくはそれ以上の数の国家により共有されている天然資源の開発にあたっては,いかなる国も,他の国家の正当な利益を害することなく,同資源の最適な利用を実現するために,情報及び事前協議システムに基づく協力を行わなければならない。 |
第4条 |
〔貿易上の無差別原則〕 いかなる国家も,政治的,経済的及び社会的体制の相違を問わず,国際貿易及びその他の経済協力を行う権利を有する。いかなる国家もそのような差異のみに基づくいかなる種類の差別をも課せられることはない。いかなる国家も国際貿易及びその他の経済協力を遂行する上で,自由に,外国との経済関係の組織形態を選択し,かつその国際的義務及び国際経済協力の必要に従った二国間もしくは多国間協定に入るものとする。 |
第5条 |
〔生産者カルテル〕 全ての国家は,開発のための安定した資金手当を充足して,それぞれの国民経済を発展させるために,また,世界経済の着実な成長促進を助長するとの,なかんずく開発途上国の開発を加速するとの目的を遂行するために,一次産品生産国機構に参画する権利を有する。これに対応してすべての国家は,かかる権利を制限する経済的,政治的措置をとることを慎むことによりこの権利を尊重する義務を有する。 |
第6条 |
〔商品協定,供給保証〕 適当な場合には特に取極及び,長期多角的商品協定の締結等により,また生産国及び消費国の利益を勘案しつつ,国際商品貿易の発展に寄与することはすべての国家の義務である。すべての国家は,安定し採算のとれる衡平な価格で交易されるすべての商品の規則正しい流れとアクセスを促進し,とくに開発途上国の利益を勘案した世界経済の衡平な発展に資する責任を分つものである。 |
第7条 |
〔国内資源の動員〕 いかなる国家も,自国民の経済的,社会的,文化的発展を促進する第一義的責任を有する。このため,いかなる国も,その開発の手段と目標を選択し,その資源を十分に動員かつ利用し,進歩的な経済的,社会的改革を実施し,自国民をして開発の段階および利益に十分参加せしめることを確保する権利と責任を有する。すべての国家は,個別かつ集団的に,かかる動員と利用を妨げる障害を除去するため協力する義務を有する。 |
第8条 |
〔公正な国際経済関係〕 諸国家はより合理的かつ衡平な国際経済関係を促進するため,及びすべての国家とくに開発途上国の必要と利益に調和した均衡のとれた世界経済における構造的変革を助長するために協力すべきであり,このための適当な措置をとるべきである。 |
第9条 |
〔開発途上国の開発に対する協力〕 すべての国家は,経済,社会,文化,科学,技術の諸分野において,世界全体とくに開発途上国の経済的,社会的進歩の促進のため協力する責任を有する。 |
第10条 |
〔国際経済決定過程への参加〕 すべての国家は,法律上平等であり,国際社会の平等な構成員として,世界的な経済,財政及び金融上の諸問題の解決,とりわけ現行及び発展中の規則に従いつつ,適当な国際機関を通じての解決のための国際的な決定過程に十分かつ効果的に参加し,それから生ずる利益を衡平に共有する権利を有する。 |
第11条 |
〔国際経済機関の効率改善〕 すべての国家は,すべての国家特に開発途上国の一般的な経済発展を活発化させる諸措置を実施するために,諸国際機関の効率を強化し,それを継続的に改善するよう協力すべきであり,従って,適当な場合には,すべての国家は国際経済協力の変化する必要に対し上記諸措置を適応するよう協力すべきである。 |
第12条 | 〔地域協力機構〕 |
第1項; | 諸国家は,当事国の合意に従い,経済的,社会的進展のために小地域的,地域的及び地域間協力に参加する権利を有する。このような協力を行うすべての国家は,その属している諸グループの政策が,憲章の諸条項に適応し,それが外向的であり,かつその国際的義務及び国際的経済協力の必要に合致し,かつ第三国特に開発途上国の正当な利益を充分尊重するよう確保する義務を有する。 |
第2項; | 関係諸国が本憲章の範囲内の諸事項に関し,ある一定の権限を移譲し又は移譲できるグループの場合には,本憲章の諸条項は,上記諸事項に関し当該グループの構成員としての諸国家の責任に従い,当該グループにも適用されねばならない。 |
上記諸国は,当該グループが本憲章の諸条項を遵守するように協力しなければならない。
第13条 | 〔科学技術の移転〕 |
第1項; | いかなる国家も,その経済的,社会的発展促進のため科学技術の進歩,発展からの恩恵を受ける権利を有する。 |
第2項; | すべでの国家は,とりわけ技術の所有者,供給者及び受益者の権利義務を含むすべての正当な利益に適切な配慮を払いつつ,国際的科学技術協力,及び技術移転を促進すべきである。特に,すべての国家は,開発途上国の経済及び必要に見合った形式と手続に従い,開発途上国の利益のために,開発途上国の近代科学技術の成果へのアクセス,技術移転及び,開発途上国個有の技術の創造を容易ならしめるべきである。 |
第3項; | 従って,先進国は,開発途上国の経済を拡大し変革するため,その科学及び技術的基盤の樹立,強化,発展,及びその科学研究と技術活動のために,開発途上国と協力すべきである。 |
第4項; | すべでの国家は,開発途上国の利益を充分考慮し,国際的に受諾された技術移転のための指針乃至規則を更に発展させるために検討するよう協力すべきである。 |
第14条 |
〔世界貿易における公平なシェア〕 いかなる国家も,世界貿易の確実かつ一層の拡大及び自由化,及びすべての国民とくに開発途上国の国民の福祉と生活水準の改善を促進するために協力する義務を有する。従って,すべての国家は,とりわけ貿易障害の漸進的な撤廃及び世界貿易を律するための国際的な枠組の改善の方向で協力すべきであり,これらの諸目的のために協調的な努力が開発途上国の特別な貿易問題を考慮しつつ,すべての国の貿易問題を衡平な方法によって解決するために,払わねばならない。これとの関連において,諸国家は開発途上国の外貨収入の実質的な増大,その輸出の多様化,開発途上国の開発の必要を考慮し,その貿易成長率の上昇,世界貿易の拡大にこれら諸国が参加する可能性の改善,及びこの貿易拡大から生ずる利益分配にあたり,開発途上国にとってより有利なバランスを達成できるよう可能な最大限において,開発途上国の関心産品の市場進出条件の実質的改善及び適当な場合にはいつも一次産品の安定的な衡平なかつ採算のとれる価格を達成するための諸措置を通じ,開発途上国の国際貿易における追加的利益の確保を目ざした諸措置をとるものとする。 |
第15条 |
〔軍縮による余剰資源を開発に向ける義務〕 すべての国家は,有効な国際的管理の下に一般的かつ完全な軍縮を促進し,開発途上国の開発の必要のための追加的手段として,有効な軍縮措置により解放された資源の相当部分を配分しつつ,同資源を諸国家の経済・社会開発に利用する義務を有する。 |
第16条 | 〔植民地主義,アパルトヘイト〕 |
第1項; | 開発のための前提条件として,すべての国家は植民地主義,アパルトヘイト,人種差別,新植民地主義,あらゆる形態の対外侵略,占領,支配,及びこれから生ずる経済的・社会的結果を,個別的及び,集団的に排除する権利及び義務を有する。このような強制的な政策を遂行する国家は,その影響を受けた諸国,地域,及び国民に対して,これら諸国,地域,及び国民が有する天然資源,その他の資源の搾取・涸渇及び損害に対する返還及び十分な補償を行う経済的責任を有する。これら諸国,地域,及び国民への援助を拡大することはすべての国家の義務である。 |
第2項; | いかなる国家も,武力によって占領された地域の解放の障害となるような投資を促進あるいは助長する権利を有しない。 |
第17条 |
〔開発のための国際協力〕 開発のための国際的協力は,すべての国の共通の目的であり義務である。いかなる国家も,開発途上国の必要と諸目的に従い,諸国家の主権平等を厳守し,かつその主権を侵害するいかなる条件にも拘束されることなく,開発途上国に有利な外的条件を付与し,また積極的な援助を拡大していくことにより,その経済,社会発展を促進するために協力すべきである。 |
第18条 |
〔特恵の拡大〕 先進国は,権限を有する国際機関の枠内において本件に関して採択された関連合意,及び関連決定に従い,開発途上国に対し一般非互恵的かつ無差別的特恵関税制度を供与,改善及び拡大すべきである。先進国は,開発途上国の貿易及び開発の必要をみたすため,可能かつ適当な分野において,特別かつより有利な待遇を与えることのできる方法で,その他の差別的優遇措置を採択することに真剣な考慮を払うべきである。国際経済関係を処理する上で,先進国は,一般特恵及び開発途上国に有利なその他の一般的に合意された異なった措置を与えたことにより促進されるような開発途上国の国民経済の発展に否定的な効果を与える措置をとることを避けるために努力すべきである。 |
第19条 |
〔全分野への特恵拡大〕 開発途上国の経済成長を促進し,先進国と開発途上国間の経済格差を縮小するために,可能な場合には先進国は,国際経済協力の分野において,開発途上国に対し,一般特恵的,非互恵的かつ無差別的待遇を与えるべきである。 |
第20条 |
〔開発途上国と社会主義諸国間の貿易拡大〕 開発途上国は,その全般的な貿易増大の努力を行うにあたり,先進市場経済諸国に対し通常供与しているものよりも不利でない貿易上の条件を供与することにより,社会主義諸国との貿易拡大の可能性に妥当な注意を払うべきである。 |
第21条 |
〔開発途上国間特恵〕 開発途上国は,相互間の貿易拡大を促進する努力をすべきであり,その目的のために,一般的な貿易の自由化及び拡大の障害にならないことを条件として適用可能な現行及び形成中の国際協定の規定及び手続に従い,かつ先進国に当該特恵を供与することを義務付けられることなく,他の開発途上国に貿易上の特恵を与えることが出来る。 |
第22条 | 〔資金援助〕 |
第1項; | すべての国家は,開発途上国の経済的及び社会的発展を促進するための努力を補強するために,関係諸国によって約束された義務及びコミットメントを考慮しつつ,すべての資金源からの開発途上国への実物資源の純移転を拡大,促進することにより,一般的に認識され,相互間で合意された開発途上国の開発の必要と諸目的に応ずるべきである。 |
第2項; | これとの関連で,前記の諸目的に従い,かつ本分野において約束されたすべての義務及びコミットメントを考慮しつつ,開発途上国に対し政府資金源よりの資金援助の純額を増加し,かつその条件を改善することを先進国の努力とすべきである。 |
第3項; | 開発援助資金の移転には,経済技術援助を含むべきである。 |
第23条 |
〔開発途上国間協力〕 開発途上国自身の資源を一層効果的に動員するために,開発途上国は経済社会開発を促進するために経済協力を強化し相互貿易を拡大すべきである。すべての国家,特に先進国は,自国が加盟しており,かつ権限を有する諸国際機関を通じるとともに,個別にも,適切かつ効果的な支援と協力を行うべきである。 |
第24条 |
〔第三国への配慮〕 すべての国家は,他国の利益を考慮に入れつつ相互の経済関係を処理する義務を有する。特に,すべての国家は開発途上国の利益を阻害することを避けるべきである。 |
第25条 |
〔後発開発途上国,内陸国,島国〕 世界経済の発展を促進するために,国際社会,特に先進国は,後発開発途上国,開発途上内陸国及び開発途上島嶼国がその特有の困難を克服し,もってその経済社会開発に貢献するのを援助するために,それらの国々の特有の諸問題に特別な配慮を払うべきである。 |
第26条 |
〔最恵国待遇〕 すべての国家は,政治的・経済的・社会的・文化的体制の相違を問わず寛容と平和のうちに共存し,異なる経済的・社会的体制を有する国家間の貿易を容易にする義務を有する。 国際貿易は,互恵かつ衡平な利益及び最恵国待遇の交換に基づき,開発途上国に有利な一般的,無差別的かつ非互恵的な特恵を阻害することなく行われるべきである。 |
第27条 | 〔貿易外取引〕 |
第1項; | いかなる国家も,世界の貿易外取引の利益を十分享受し,かかる取引の拡大に関与する権利を有する。 |
第2項; | 効率性,相互かつ衡平な利率,世界経済の一層の拡大の基礎の上にたった貿易外取引はすべての国家の共通の目標である。世界的な貿易外取引の分野における開発途上国の役割は,上記の諸目的及び開発途上国の特別な必要性を特に配慮しつつ,高められ強化されるべきである。 |
第3項; | すべての国家は,各々の開発途上国の潜在力及び必要に従いかつ上記の諸目的に沿って,貿易外取引から得られる外貨獲得能力を向上させる開発途上国の努力に協力すべきである。 |
第28条 |
〔価格インデクゼーション〕 すべての国家は,生産国にとって採算がとれ生産国と消費国にとり衡平な方法で,開発途上国にとって正当かつ衡平な交易条件を促進するために開発途上国の輸入品価格に対しての輸出品価格の調整を達成するために協力する義務を有する。 |
第3章
世界共同体の共同責任
第29条 |
〔海底資源開発〕 国家管轄権の範囲をこえる海底,海床及びその下層土は,その地域の資源と同様に,人類の共有財産である。1970年12月17日に第25回国連総会で採択された決議第2749号の原則に基づき,すべての国家は,当該地域の探査及びその資源の開発が平和目的のためにのみ行われ,かつ,そこから得られる利益が開発途上国の特別な利益と必要性を考慮に入れつつすべての国家により衡平に分配されるよう確保しなければならない。当該地域及びその資源に適用される国際的な制度及びその規定を実施する適当な国際的機構は一般的に合意され普遍的性格を有する国際条約によって樹立されなければならない。 |
第30条 |
〔環境保全〕 現在及び将来にわたる世代のために環境を保護,保存し改善することは,すべての国家の責任である。すべての国家は,かかる責任に従って自国の環境及び開発政策の樹立のため努力しなければならない。すべての国家の環境政策は,開発途上国の現在及び将来にわたる開発の潜在力を高めるべきであり,それを損なうべきでない。すべての国家は,自国の管轄,管理下における活動が,他国の又は国家管轄権の範囲外の地域の環境に損害を与えないよう確保する責任を有する。すべての国家は,環境の分野における国際的規範及び規則を発展させるために努力すべきである。 |
第4章
終 章
第31条 |
〔相互依存〕 すべての国家は,先進国の福祉と開発途上国の成長及び開発との間の密接な相互関係,及び国際社会全体の繁栄はその構成員の繁栄に依存していることを正当に考慮に入れつつ,世界経済のバランスのとれた拡大に貢献する義務を有する。 |
第32条 |
〔強制措置〕 いかなる国家も,主権を行使するにあたって,他国の主権的権利の行使を従属せしめるために,経済的,政治的もしくはその他のいかなる態様の強制措置を使用し,もしくはその使用を奨励してはならない。 |
第33条 | 〔憲章の解釈〕 |
第1項; | 本憲章のいかなる条項も,国際連合憲章の規定もしくはそれに従って取られる行動を棄損し又は害するものと解してはならない。 |
第2項; | 本憲章の諸規定の解釈及び適用に当っては,各々の規定が相互に関連しており,そのいずれも他の規定との脈絡において解釈されるべきである。 |
第34条 |
〔レビュー〕 国家間の経済権利義務憲章に関する議題は,第30回国連総会及びそれ以後5会期ごとの総会に掲上されなければならない。かかる方法によって,進捗状況及び必要となる規定の改善及び追加を含む本憲章の履行状況の検討が系統的かつ包括的に行われ,また適当な方策が勧告されることが望ましい。かかる検討においては,すべての経済的,社会的,法律的及び本憲章によってたっている諸原則及びその目的に関連する他の要素の動向を考慮に入れるべきである。 |
(1975年1月14日及び16日 於ワシントン)
1. |
一般借入取決め (GAB)に参加している10カ国の大蔵大臣及び中央銀行総裁は,1975年1月14日及び16日ワシントンにおいて,日本の大平正芳大蔵大臣を議長として会合した。 この会議には,またH.J.ウィツテフェーンIMF専務理事,F.ルートウィラースイス国立銀行総裁,E.ヴアン・レネツプOECD事務総長,R.ラールBIS総支配人,W.ハーフェルカンプEEC副委員長も出席した。 |
2. |
大蔵大臣代理会議のリナルド・オッソラ議長の報告を聞いた後,各大蔵大臣と中央銀行総裁は,OECD全メンバーが参加可能である連帯のための基金,すなわち新しい金融支援取決めを出来る限り早い時期に2年の期間をもって設立すべきことについて合意した。 各参加国はその債務引受け限度,借入れ限度及び投票権の比重を決定する基礎となる割当額を有する。 割当額の配分は主としてGNPと貿易量に基づいて行われる。 全参加国の割当額の総額は約250億ドルとなる。 |
3. |
この取決めの目的は,参加国がエネルギー節約と増産を促進する協調政策を含む適切な国内的,国際的経済政策を追求していく決意を支援することにある。 この取決めを,最後のよりどころとして用いられるべきセーフティーネットとすることが合意された。 この新取決めの下で借入れを希望する参加国は,深刻な国際収支困難に直面しており,自国の対外準備や他の経路を通じて得られる資金を最大限かつ適切に利用していることが要求される。この取決めを通じて与えられるすべての貸出しには,適切な経済政策をとるという条件が付されるものとする。 また全参加国は,その割当額に比例して,そして割当額の限度まで,この取決めの下での貸出しに対する債務不履行の危険を共同して負担することが合意された。 |
4. |
参加国による貸付の要求に対して,他の参加各国は,割当額までの貸付の場合は3分の2の多数決をもって,貸付の許可及びその期間と条件に関し,また国際収支上の理由によっていかなる国が貸付に際して直接拠出を要求されるべきでないかに関し,決定を行う。割当額を超えかつ割当額の200パーセントまでの貸付の許可には特別多数による決定を要し,更に200%以上は全会一致の決定を要する。 もし一国もしくはそれ以上の参加国が貸付に際し拠出することを要求されない場合,貸付の承認に関する(上記)要件は,拠出する加盟国に関して同様に満たされることを要する。 |
5. | (貸付けのための)資金調達の方法を決定するために更に一層の作業が必要である。かかる方式には直接拠出及び/又は資本市場における共同借入れが含まれるであろう。また新取決めの完全な設立まで,中央銀行間の信用取決めを通ずる暫定的資金調達も行うこともできよう。 |
6. |
各大蔵大臣と中央銀行総裁は,上記の諸原則に沿って,合意草案を準備するために,関心を有するすべてのOECD加盟国の代表を以って構成するOECD特別作業部会の即時設立を勧告することに同意した。 各大蔵大臣及び中央銀行総裁の意見では,この作業は1975年2月末にOECD理事会が採択できるような期間内に終了されるべきである。 |
(1975年1月16日 於ワシントン)
1. | IMF暫定委員会は,1975年1月15日及び16日ワシントンにおいて第2回会合を開いた。ジョン・N・ターナー カナダ大蔵大臣が議長を務めた。会議には,H.ヨハン・ウィッテフェーンIMF専務理事が出席した。このコミュニケのパラグラフ2,3及び4で言及されている諸問題の討議には,オブザーバーとしてアンリ・コナン・ベディエ世銀IMF開発委員会議長,G.コレアUNCTAD事務局長,ウィルヘルム・ハーフェルカンプEC副委員長,マージョーブ・A.ハサナンOPEC経済局長,ルネ・ラールBIS総支配人,エミール・ヴアン・レネツプOECD事務総長,オリヴイエ・ロングGATT事務局長,ロバート・マクナマラ世銀総裁が出席した。 |
2. |
委員会は世界経済の見通しと,これを背景として国際的調整過程について討議した。 現在の景気停滞状態の根深さと存続期間について重大な懸念が表明された。 インフレ克服の努力を続けつつ,景気浮揚策を追求すべきことが,特に比較的強い国際収支状況にある国に対して強く要請された。主要石油輸出諸国と他のすべての諸国との間ばかりでなく,後者に属する諸国の中でも,特に工業国と一次産品生産国との間に,非常に大規模な不均衡が引き続き存在していることが看取された。また,主要石油輸出国以外の開発途上国に関して,1975年に予想される約300億ドルにのぼる膨大な全体の経常収支赤字を埋めるに十分なファイナンスが確保できないのではないかとの憂慮も表明された。 |
3. |
委員会は,オイル・ファシリティーを拡大して1975年も継続すべきことに合意した。委員会は,専務理事に対し,IMF加盟主要石油輸出国及び強い対外準備及び国際収支状況にある他の加盟国と,オイル・ファシリティーに対する融資を目的としたこれら諸国による貸付けに関してできる限り速やかに協議を行うよう強く要請した。委員会はこの目的のために求めるべき貸付資金の総額を,50億SDRとすることに合意した。また1974年に交渉がまとまった貸付資金の未使用分を1975年に使用できるものとすることが合意された。委員会は,現在の世界経済情勢に内在する不確定性にかんがみ,国際社会の最善の利益のために,今後必要となるいかなる措置をもとり得るようにオイル・ファシリティーの運用を常時見直すことが必要であるとの合意に達した。また,困難に直面している加盟国の必要を満たすためにIMFの通常の保有通貨の利用度を高めることが適切と思われるので,今後何カ月かの間に,IMFの政策,慣行及び資産の再検討を行うことが有益であることが了解された。 |
4. |
委員会は,最も深刻な影響を受けた発展途上諸国の救済のために思いきった措置をとるべき必要性を強調した。 委員会は,オイル・ファシリティーに関連して,石油輸出国,工業諸国,及び場合によれば拠出能力をもつその他加盟国,からの適切な拠出による特別勘定が設置されるべき旨,並びに最も深刻な影響をうけた加盟国がオイル・ファシリティーのもとで負うべき利子負担を軽減するようにIMFがこの勘定を管理すべき旨の専務理事の勧告を全面的に支持した。 |
5. |
委員会は,現在行われている,加盟国割当額の第6次一般的見直しに関連する諸問題を検討し,協定の適切な改正により現在の割当総額を32.5%増加し,390億SDRに拡大すべきことを合意した。 次回の割当額の一般的見直しまでの期間を5年から3年に短縮することが了解された。委員会はまた,増資後のIMFにおいて,主要石油輸出国のグループとしてのシェアーが倍増され,その割当額が大幅に増加されるべきこと,及び他のすべての発展途上国のシェアーの合計を現在の水準より低下させるべきでないことにつき合意した。割当額増加の重要な目的が基金の流動性の増強にあることから,IMFが保有するすべての通貨がIMFの政策に応じて使用可能となるような取決めが作られるべきであるとの点に,委員会の見解の一致があった。委員会は理事会に対し,前記了解を基礎として割当額を検討し,個々の加盟国の割当額の増加について,できる限り速やかに具体的な勧告を行うことを要請した。 |
6. | 委員会はIMF協定の改正問題を検討した。委員会は,理事会に対し,本問題についての作業の継続,及び以下の問題について改正案をできる限り速やかに委員会の討議に付するために提出するよう要請することに合意した。 |
(a) | 適切な時期に暫定委員会を常設執行委員会(Permanent Council)に改組し,同委員会の各メンバーが,自身が代表する諸国の投票権を分離して行使することができるようにすること。執行委員会は,総務会によって付与された権限の範囲内で決定権限を持つ。 |
(b) | 一般勘定規定を改善すること。これには以下の諸点が含まれる。 |
(i) | IMFへの出資・買戻し等の際に要求されている加盟国の金による支払い義務の廃止,及び理事会が検討することになっている支払手段の決定。 |
(ii) | IMFが業務に際してその保有するすべての資金をすべての加盟国にとって満足のいく歯止めを講じつつ使用できるよう確保する取決め。 |
(c) | SDRを国際通貨体制の主要な準備資産にする目的を推進する方向で,SDRの性格を改善すること。 |
(d) | 「改革の概要」に則り,また適切な規則とIMFの監視に従い,安定的かつ調整可能な平価及び特別の状況下における通貨のフロートのための規定を作成すること。 |
委員会は,また,SDR配分と開発融資とのリンクの設定に必要な改正についても討議したが,この間題に関しては依然として見解の相違が存在している。本問題の積極的検討を続けること,しかし同時に開発途上国への実物資源の移転を増加させる他の方策についても検討することが合意された。
7. | 委員会はまた,輸出変動に対する補償融資及び一次産品価格の安定に関するIMFのファシリティーの改善の検討と,一次産品の国際的緩衝在庫に対するIMFによる直接的援助を可能とするような協定改正の可能性の検討を理事会に要請することに合意した。 |
8. |
金に関する将来の取決めについても集中的な討議が行われた。 委員会は,SDRに対して国際通貨体制のなかでの中心的な地位を賦与する措置が,できる限り速やかにとられるべきであるとの点を再確認した。 金の公定価格の廃止と,加盟国によるIMFへの金の払い込み義務の削除に関して一般的な合意があった。金に関する諸改正が包括的に合意される方向へ進むことについて多くの進歩があった。それらの諸改正の中には,公定価格の廃止,及び国際通貨制度における金の役割が徐々に縮小されることを確実ならしめる目的で各国通貨当局間に結ばれる特別の取決めの下で,各国通貨当局が金取引を行う自由が含まれている。理事会が全加盟国の利害を考慮して一層の検討を行った後完全な合意に近い将来到達し,上記6項及び7項で述べられた改正案のパッケージとこれらの改正案が組合わせられるようになることが期待されている。 |
9. | 委員会は,1975年6月の前半に,パリで再び会合することに合意した。 |
(ヌ) 産油国・消費国準備会議への参加について外務省情報文化局長談話
(昭和50年3月22日)
先般,フランス共和国政府は,4月7日よりパリで開催される産油国・消費国会議の準備会議にわが国を招請したい旨の3月4日付三木総理宛ディスカール・デスタン大統領親書を送付してきた。
わが国は,世界のエネルギー問題の解決のためには産油国・消費国間の対話が不可欠のものであるとの判断から,従来より対話の早期実現に努力し,既に昨年11月14日,仏大統領の産油国・消費国会議に関する提案についても原則的に賛同する旨回答した次第であり,この立場は現在も変わっていない。
わが国としては,かかる立場より,本日吉野外務審議官よりスリエ在京フランス臨時代理大使に対し,右準備会議に参加する旨回答した。