第6節 国連の行政財政問題

 

 国連は,その財政面よりみて,特に9割以上を占める経済・社会活動を年々拡大しており,それに伴つて行政及び財政について多くの問題が生じてきている。わが国としても,国連外交を有効に進めていくうえから,国連の諸活動の企画・実施・管理及び評価面に,従来にもまして,積極的に参画していく必要がある。

 国連の74-75年度通常予算の規模は,当初約5億4千万ドルであつたが,その後の世界的インフレとドルの実質的切下げ及び新規事業(第6回特別総会,国際婦人年世界会議,多国籍企業に関する新機構等)に約6千6百万ドルの追加経費が必要となり,同年改定予算は総額約6億6百万ドルとなつた。なお,国連の財政状態は,わが国の1千万ドルとアラブ首長国連邦の1百万ドルの特別拠出があつたにもかかわらず,基本的には前年に比較して改善されていない。

 第29回国連総会で,専門職以上の国連職員の給与を,実収入の低下等を背景として,6%引上げる問題が審議され,アメリカ,ソ連等の諸国が,財政負担の増加等の理由から強く反対したが(わが国は賛成),結局75年1月からベース・アップが,実施されることとなつた。また,国連システム(専門機関を含む)の人事制度を統一的に運営すること等を目的として,75年1月より国際人事委員会(ICSC)が設置されることになり,わが国の萩原徹外務省顧問が,そのメンバー(15名により構成)に選ばれたが,この委員会は,国連職員の給与をはじめとする人事制度全般にわたつて根本的検討を加え,改善を行うことが期待されている。

 国連事務局職員の採用については,地理的配分を考慮することになつているところ,日本人職員数は,74年の国連事務総長報告によれば,74名(加盟国中第5位)であるが,わが国の職員数の望ましい範囲(108~151人)をかなり下回つているほか,特に幹部職員が3名と非常に少ないことが指摘される。この事態を解決するためには,長期的な観点に立つて,日本人職員の派遣を促進する施策(国際公務員制度のPR,語学研修等)を効果的に進める必要がある。

 また,第29回総会で国連機構の行政・財政問題に関する中枢的機関である行政財政問題諮問委員会(ACABQ)委員に,わが国の明石康国連代表部参事官が当選した。これにより,わが国は引続き国連機構全般の行財政のあり方について積極的に参画し得ることとなつた。

 

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