-その他の外交機関の活動-

 

第7章 その他の外交機関の活動

 

第1節 外交体制の整備充実

 

1.予  算

 

 昭和49年度外務省予算は,総額1,250億71万円で,前年度予算1,102億3,142万円と比較し,147億6,929万円増と13.4%の伸率を示し(前年度当初予算と比較すると36.2%増),これが一般会計国家総予算額に占める割合は0.73%となつた(前年度は0.64%)。

 かかる予算の背景にある国際情勢および対応策についての認識は次の通りである。

 近年国際情勢は,ますます多極化多様化の様相を強めている。

 わが国としては,日米の緊密な友好関係,中ソ両国との善隣関係,アジアにおける緊張緩和定着化,欧州諸国とのより密接な対話を推進するとともに,新国際ラウンドおよび資源・環境問題等をめぐる国際協力の促進,開発途上国に対する援助の拡充,また,広報文化活動の拡大等の努力を強化する必要がある。これらを通じわが国の国際的地位にふさわしい責任を果しつつ,わが国民の福祉と繁栄のために望ましい国際環境の実現を目指すことが昭和49年度におけるわが国外交の緊要な課題と考えられ,かかる外交の要請に応えるため,経済協力の拡充強化,国際機関の活動に対する協力の強化,新国際ラウンドをめぐる国際協力の推進,広報文化活動の強化,在外邦人の生活環境の整備および外交要員の充実,通信連絡体制の飛躍的強化を含む外交実施体制を拡充・整備することを重点事項とし,必要な予算の確保に努めた。

 

 

2.機構・定員

 

(1)機構については,在外公館新設3館(在アラブ首長国連邦大使館,在ジョルダン大使館,在ポート・モレスビー総領事館)兼勤駐在2カ所(ハイティ,カタル各2名)および出張駐在2カ所(ペナン,ダバオ各1名),また,本省関係については,経済局資源課設置(経済統合課振替)および中近東アフリカ局書記官1名を新設した。

(2)定員関係については,定員100名増(計画削減45名のため純増55名),内本省14名,在外86名(新設に伴う増員12,既設公館増強53,研修員10,各省アタッシェ11)の増強を行うことになつた。

 

3.研修制度の実施状況

 

 外務省における職員研修の制度は,職員が在外公館に勤務して外交事務に従事するため必要な外交上の基本的心得および在外公館の事務に必要な知識を習得させ,かつ,わが国内事情,日本文化などについての一般的知識を深めさせることを目的としている。

 73年度に行なつた主な研修は次のとおりである。

(イ) 外務公務員採用上級試験合格職員に対しては,入省後人事院・総理府主催の国家公務員合同初任研修に参加せしめた後研修所における3ヵ月間の国内研修に参加せしめ,次いで,本省各局課において1年間の実務経験を終了せしめたのち,海外における2~3年間の研修に派遣した。

(ロ) 外務公務員採用中級試験合格職員については,入省後研修所における3ヵ月間の研修に参加せしめ,次いで,本省各局課における1年間の実務経験を経たのち海外における1年間の語学研修に派遣した。

なお,外務省語学研修員試験合格職員についても前記中級職員と同様の国内研修および実務経験を終了せしめた後海外における2~3年間の語学研修を受けさせるため,それぞれの研修語の国に派遣した。

(ハ) 外務省に出向のうえ在外公館に配置予定の他省庁職員70名に対し研修所において期間5ヵ月の赴任前研修を実施した。

(ニ) 国連等国際機関派遣予定の他省庁職員20名に対し研修所において期間5ヵ月の語学研修を実施した。

(ホ) 在外公館に勤務する職員の夫人が直接,間接に果す役割の重要性にかんがみ,在外勤務予定者の夫人に対しその在勤中の夫人の役割を十分認識せしめることを主眼とした「夫人研修」および「夫人語学研修」を実施することとしているが,73年度においては,前者については98名が,また後者については30名が研修を終了した。現在まで夫人研修終了者は486名,夫人語学研修終了者は107名に達している。

(ヘ) なお,以上のほか各省庁主催の研修あるいはEROPA外交官研修等外国諸団体主催の研修にも少数であるが職員を派遣している。

 

4.在外公館査察の実施

 

 外交関係の事務が適正に実施されているかどうかは,内閣,国会,会計検査院などによつて常時管理が行なわれているが,外務省においても大臣官房を中心として自ら外交関係事務の管理を十分行なうとともにとくに在外公館については,随時外交問題に造詣の深い有識者を査察使として派遣し,在外公館の管理運営のみならず,事務処理状況の全般にわたり査察を実施している。

 1973年度においては中南米地域ならびにアフリカ地域に高橋前駐スペイン大使を査察使として派遣し,これら地域の在外公館の査察を実施した。

 

第2節 外交問題に関する記録の整理・ 刊行および閲覧

 

 外交交渉上,あらゆる先例を迅速に参照することが必要であり,その可否は時に重大な結果をもたらす。他方,外交記録はそのまま国際政治史の重要史料でもある。従つて外務省は発足以来外交記録の整理保存に努め,さらに昭和11年以来,閲覧に便利なように,明治元年から逐年の重要記録を編纂して「日本外交文書」と題して印刷刊行しており,昭和48年度に大正10年分第1冊の刊行を終えて,刊行総数は127巻に達した。近く大正時代と併行して昭和時代の刊行準備に入る予定である。

 なお,内外研究者等のため,東京都港区麻布台1-5-3に外務省外交史料館があり,主要外交文書の1部の展示,昭和20年の終戦以前の外交記録の閲覧サーヴィス,「日本外交文書」の編纂等を行なつている。

 

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