―国連の行政財政問題―

 

第6節 国連の行政財政問題

 

 1 国連の活動が拡大するにつれ,その基盤となる国連の行政および財政について,多くの問題が生じているが,わが国としても,国連外交を有効に進めていくうえから,このような国連の管理運営問題にも積極的に参画することが要請されている。

 2 国連の通常予算の規模は,74年に約2億7千万ドルであるが,73年末で約8700万ドルの財政赤字をかかえている。これは,ソ連等一部諸国がかつてスエズおよびコンゴにおける国連の平和維持活動の経費,ならびに通常予算の一部項目に対する分担金の支払いを拒否してきていること,さらに,中国代表権交代以前の1,660万ドルにのぼる台湾の通常予算に対する滞納金が存在することに起因しており,極めて根の深い政治問題であつて,ここ10年来,各種の努力が行われてきたが,いまだ解決に至つていない。

 わが国は,国連協力の一環として,本年1月,国連財政赤字補てんのため,1千万ドルの特別拠出を行つた。72年の第27回国連総会で,事務総長から,一挙に包括的な解決をはかり得ないとしても,とりあえず,拠出し得る国から資金を集めて各国からの拠出に対する呼び水的効果を期待したいとの構想が提示され,これに基づいて,

 (1) 赤字解消のための自発的拠出を受入れるための特別勘定を設立する

 (2) 各国に自発的拠出を要請する

 (3) 事務総長に対し,加盟国と協議の上,拠出確保のための方策を検討するよう要請するとの決議が総会において採択された。この決議に応じ,ワルトハイム事務総長は,第27回総会終了後直ちに米国,ソ連をはじめとして,各国に対する拠出の働きかけを開始した。わが国の今回の1千万ドルの拠出は,各国の拠出を引き出す呼び水として,率先して拠出して欲しいとの事務 総長の要請に応えたものである。

 3 第28回国連総会で,わが国の74-76年度の国連の通常予算に対する分担率は7.15%に上昇し,(71-73年度は5.40%)フランス,英国を抜き,米国(25.00%),ソ連(12.97%)の両安保理常任理事国に次いで第3位とな つた。

 4 国連職員の人件費が,国連通常予算総額の約75%を占めていること,通貨調整・インフレーションに現行の給与制度が十分に対応し得ないこと,国連職員の事務能率が低いという意見があること等の事情を背景として,人事制度の改善は,国連にとつて緊急に解決をせまられている課題である。国際人事委員会(ICSC)は,国連および各専門機関事務局職員約3万5千名の人事問題について強力な権限を有する機関として,原則として74年1月から設立されることが第27回国連総会で決定された。しかし,第28回総会で,委員会の構成・権限等に関し各国の見解が分れたため,第29回総会で検討を重ねることとなり,委員会の発足は事実上1年延期されることになつた。

 5 国連事務局職員については,なるべく広い地理的基礎に基づいて採用するという原則があるが,日本人職員数は,長年その望ましいとされる範囲を大幅に下回つていた。73年の国連事務総長報告によれば,邦人職員は76人(加盟国中第5位)となり,望ましい範囲(74~103人)の下限をわずかに上回ることとなつた。しかし,74年以後のわが国分担率の増大に伴い,日本人職員数の望ましい範囲も増加すること,専門機関の邦人職員は未だ少ないこと,幹部級の職員が相変らず極端に少ないこと等,種々の問題が残されており,わが国の国際機関をめぐる外交を効果的に進めていくためにも,日本人職員の派遣を促進する施策を引続き積極的に進める必要がある。

 6 また,第28回総会で国連機構の行政・財政問題に関する中枢的機関である行政財政問題諮問委員会(ACABQ)委員にわが国の高橋党大使が当選した。これは,今後,わが国が国連機構の行財政のあり方について,より積極的に参画し得る手がかりを得たことになる。

 

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