―安全保障理事会―

 

第2節 安全保障理事会

 

1.中 東 問 題

 

 73年10月6日第4次中東戦争が勃発し,10月8日,9日,11日,12日と安 保理が開催されたが,アラブ諸国とイスラエル間の非難の応酬に終始した。しかし,10月16日イスラエル軍がスエズ運河西岸地帯に進出する新しい局面の展開があつたため,急遽ソ連の招請によつて訪ソしたキッシンジャー米国務長官とソ連首脳の間で即時現状停戦の合意がなされた結果,22日開かれた安保理は決議238を採択して,当事国に即時停戦を要請するとともに,当事国に対して安保理決議242(1967)の全面実施および和平交渉の開始を呼びかけた。このあと10月23日安保理は決議339をもつて上記即時停戦決定を確認し,ついで10月25日決議340および10月27日341を採択して,とりあえず6 カ月間中東国連緊急軍(United Nations Emergency Force)の設立を決定した(活動期間の延長可能)。この緊急軍は総兵力約7千名で,安保理常任理事国を除く13カ国で構成されることとなつた(予算は当初6カ月間3千万米ドルである)。74年3月15日現在6,814名の兵力がスエズ地域に駐留している。

 この緊急軍の経費は,国連全加盟国によつて分担されることとなり(第28回総会決議3101),わが国は74年1月分担率7.15%にあたる214万5千米ドルを払込んだが,さらに事務総長からの要請に応えて自発的拠出金1億円(約33万3千ドル)を同時に拠出した。

 このほか安保理は73年中に(イ)中東問題の全般的レヴュー,(ロ)イスラエルによるベイルートのパレスチナ・ゲリラ本部襲撃事件,(ハ)イスラエルによるレバノン旅客機強制着陸事件を審議した。(イ)については,非同盟決議案(イスラエルの占領継続に対する遺憾の意表明,パレスチナ人の権利と願望に対する尊重,など)が7月26日米国の拒否権行軍によりほうむりさられた。(ロ)については4月21日安保理は全ゆる暴力とイスラエルの攻撃を非難する決議332を採択し,また(ハ)については8月15日イスラエル政府を非難する決議337を採択した。

 

2.アフリカ問題

 

(1) 南ローデシア問題

国連は,65年英国から一方的に独立したスミス政権を終熄させる目的で安保理決議にもとづき対南ローデシア経済制裁を行なつているが,十分な効果をあげていない。 73年5月安保理はこの問題をとりあげ,制裁強化に関する各種措置を勧告する安保理制裁委員会第2次特別報告を承認し,各国に対し同報告中の各種制裁強化措置履行を勧告する決議を採択した。同安保理では制裁を部分的に南アおよびポルトガル領に拡大する趣旨の決議案も提出されたが,英米の拒否権行使により否決された。わが国はスミス政権を認めず,制裁決議に従い南ローデシアとの輸出入を停止している(本問題の経過については第1節3(3)南ローデシア問題の脚注1参照)。

(2) ナミビア問題

国連事務総長は安保=理決議にもとづき,72年よりナミビア人自治達成について,関係者と接触してきたが,73年に入りこの接触を中止すべしとの意見がアフリカ諸国を中心に強まり,ナミビア理事会,第28回総会などが 相ついで接触打切りを安保理に要請する決議を採択するに至つた(本問題の経過およびわが国の態度については第1節3(4)ナミビア問題および同脚注2参照)。このような状況の中で73年12月本件第3次事務総長報告審議のための安保理が開催されたが,結局事務総長の努力は評価するとしながら,事務総長による関係当事者との接触を中止するとの決議を全会一致で採択した。

 

3.そ  の  他

 

 3月15日から21日まで,パナマにおいて2度目の安保理本部外会合(第1回は1972年1月のアフリカ安保理)が開催された。同安保理は,1903年条約によりパナマ運河および運河地帯上の永久支配権を有する米国に対し,同条約の廃棄,パナマの主権回復を要求するパナマが国際世論を喚起する意図の下に招請したものであるが,米国の3回目の拒否権行使によりパナマ側の提出した決議案は否決された。

 また,6月21日,22日の両日,ドイツ民主共和国およびドイツ連邦共和国の,また,7月17,18日には同月10日英国より独立したバハマ連邦の国連加盟問題を審議し,いずれについても総会に対して加盟承認を勧告する決議が採択された。

 9月17,18の両日キューバの要請により開かれた安保理は,チリ政変に伴いキューバ側が各種の被害を受けた問題を審議したが,各国がそれぞれの立場から発言を行なつたのみで,何らの決議案も提出されないままに終つた。

 サイプラス国連軍については,6月15日と12月14日の2回安保理が開かれ,ともにサイプラス国連平和維持軍の駐留を半年延長するとの決議を採択した。

 

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