-資金協力-
第2節 資 金 協 力
政府開発援助のうち資金協力,すなわち二国間無償資金協力,二国間政府貸付,ならびに国際機関に対する出資・拠出等の三つのそれぞれに関する73年の実績(DACべース : 72年は1ドル=308円,73年は1ドル=272.84円の換算レートを使用)は以下のとおりである。
(1) 二国間無償資金協力
73年は1億6,285万ドル(444億円)であったが,これは前年実績1億3,500万ドル(416億円)に比べ20.6%(ドル・べースの対前年伸び率,以下同様)の増加となっている。その内訳としては,準賠償およびKR援助が減少したが,賠償,一般の無償資金協力,その他の無償資金協力は増加した。
賠償は,現在フィリピンに対するもののみとなっており,6,692万ドル(183億円)が支出されたが,これは前年の実績3,462万ドル(107億円)に比べ93.3%の増加となっている。フィリピンに対する賠償支払いは,76年7月で終結する予定である。
準賠償も謂わば終戦処理上の義務的支払いで,経済協力協定に基づきビルマ,韓国,ミクロネシアに対して4,228万ドル(115億円)が支出されたが,前年実績6,002万ドル(185億円)に比べ29.6%の減少となっている。準賠償も77年には全部が終結する予定である。
KR援助は,国際小麦協定の中の食糧援助規約に基づき67年以降,毎会計年度約1,430万ドル相当の水および農業物資の援助を行なっているが,73年にはインドネシア,バングラデシュ・カンボディア・ネパール・アフガニスタン,ニカラグア,マダガスカルの7カ国に対して822万ドル(22億円相当)の援助が供与された。前年実績の1,291万ドル(40億円)に比べると36.3%の減となっているが,これは援助米(外国産米)の調達が遅れ,支出が74年にずれ込んだためで,73会計年度実績としては約1,430万ドル相当の援助が行われることとなる見込である。
一般の無償資金協力としては,カンボディアのプレクトノット計画および為替支持基金(ESF),ヴィエトナムのダニム・ダム修復,ラオスの外国為替操作基金(FEOF)ならびにタイのアジア工科大学院校舎建設に対する出金1,235万ドル(34億円),経済開発等援助費(二国間の無償プロジェクト援助)よりの無償援助として韓国の金烏工業高校,ヴィエトナムの孤児職業訓練所およびチョーライ病院,ラオスの難民村建設およびヴィエンチャン上水道,カンボディアの難民住宅およびバス供与,インドネシアの通信施設,フィリピンの洪水警報システム,タイのキング・モンクート工科 大学に対して,1,144万ドル(31億円),インドシナ地域の難民救済のための特別支出として,国際赤十字インドシナ救援活動グループ(IOG)に対する拠出金367万ドル(10億円),海外の災害等を救援するための経費としてサハラ以南の旱ばつ見舞,パキスタン,バングラデシュの難民輸送,エジプトの負傷兵救援,パキスタンの洪水被害救済に対し国連等を通じ333万ドル(9億円)の合計3,079万ドル(84億円)が支出された。
経済開発等援助費による援助は,戦後処理的な贈与と別個の純然たる無償援助として69会計年度に5億5千万円の予算をもつて始められたものであるが,74会計年度予算では約170億円と毎年ほぼ倍増のべースで急速な拡大を示している。
その他の無償資金協力としては,バングラデシュの復興のための特別援助1,353万ドル(37億円),ニカラグア,モンゴル,スーダンに対する緊急援助41万ドル(1億円)がいずれも予備費から支出された他,中南米移住地への援助70万ドル(2億円)の支出がある。
(2) 二国間政府貸付
73年の二国間政府貸付実績(支出納額べース)は政府開発援助の約54%にあたる5億4,510万ドル(1,487億円)であり,前年実績3億717万ドル(946億円)に比べ77.5%の大幅増加となつた。
二国間政府貸付のうち,新たな資金貸付である直接借款は,海外経済協力基金を通ずるもの3億96万ドル(821億自),日本輸出入銀行を通ずるもの8,368万ドル(228億円),あわせて3億8,464万ドル(1,049億円)と前年実績2億6,553万ドル(818億円)に比べ44.9%の大幅な増加を示した。
借款受入国は前年と比ベアフリカ地域5カ国,中南米地域2カ国の計7カ国がふえて計28カ国(うちアジア地域15カ国)とアジア以外の地域に対する協力が拡大されており,直接借款におけるアジア以外の地域の占める比も前年の4%から18%へと急増している。
政府貸付条件(債務救済を除く)についても,改善努力がなされており,73年の平均貸付条件は前年の金利4.13%,償還期間20.4年,据置期問6.2年から,3.55%,24.3年,7.7年と大幅に緩和された他,アンタイイングについても,ビルマおよびインドネシアの石油開発借款,タイの第2次円借款のうちのプロジェクト部分のアンタイ化を行うとともに,スリ・ランカの第8次円借款,インドネシアの73年分円借款,フィリピンのプロジェクト借款について「開発途上国アンタイイング」をするなどその積極的拡大を行つた。
国内産米の延払い輸出も統計上直接借款に含められているが,73年は韓国,インドネシア,バングラデシュ,フィリピンの4カ国に対し9,704万ドル(265億円)が供与され,前年実績2,250万ドル(69億円)に比べ実に4倍以上の大幅増加となつた。これは前年は約束未実行分が多かつたことによるもので,71年実績と比べるとむしろ約17%の減となつている。米の延払い輸出は,それに充当されている余剰米の処理がほぼ終了したことから74年以降は急減する見通しである。
二国間政府貸付には,直接借款の他債務の返済に困つている国を救うための債務救済があり,73年の実績(純額べース)は6,858万ドル(187億円)と前年実績2,371万ドル(73億円)に比べ約3倍となつたが,このような大幅増となつたのは,最近の援助受入国における急速な債務の累積から,その救済の必要性が強まつたことによる。
債務救済は日本輸出入銀行を通じて行なわれるが,その内訳のうち民間の焦げつき債権の政府による肩代りである再融資はブラジルおよびインドネシアに対して供与されたが,600万ドル(16億円)の受取超過となつた。一方返済期問の到来した債務の支払いを延ばす債権繰延べはインドおよびパキスタンに対する7,458万ドル(203億円)である。
この他対韓国請求権による返済分が516万ドル(14億円)ある。
(3) 国際機関に対する出資・拠出等
73年実績は2億4,579万ドル(671億円)で前年の1億3,328万ドル(410億円)に比し84.4%の大幅な増加をみたが,その結果政府開発援助に占める割合は,前年の22%から24%に増大した。
国際機関に対する出資・拠出等のうち,国連機関およびその他の国際機関に対する贈与は2,259万ドル(62億円)で前年の1,653万ドル(51億円)に比べ36.7%増となつた。うち,国連関係機関に対する贈与は2,130万ドル(58億円)と前年比37.5%増を示したが,これは(イ)国連開発計画(UNDP)に対する拠出金が前年の800万ドル(24億円)から1,123万ドル(31億円)と40.4%増加したこと,(ロ)世界食糧計画(WFP)に対しても前年の71万ドル(2億円)から127万ドル(3億円)と78.9%,人口活動基金(UNFPA)に対して前年の200万ドル(6億円)から245万ドル(7億円)と22.5%のそれぞれ拠出増を行なつたこと等による。その他,アジア生産性機構(APO),東南アジア漁業開発センター(SEAFDEC)等の国際機関贈与も129万ドル(4億円)と,前年の105万ドル(3億円)に比べ22.9%増となつた。
国際開発金融機関に対する出資も前年の1億623万ドル(327億円)から2億1,407万ドル(584億円)へ101.5%の大幅増加となつた。これはアジア開発銀行(ADB)に対して出資金4,794万ドル(131億円),同銀行の多目的基金に対する拠出金1億43万ドル(274億円),技術援助基金に対する拠出金194万ドル(5億円)の合計1億5,031万ドル(410億円)が払い込まれたほか,第二世銀(IDA)に対する増資払い込み5,837万ドル(159億円),アフリカ開発基金(ADF)に対する拠出539万ドル(15億円)である。
この他国際開発金融機関に対する借款として米州開発銀行(IDB)に対して913万ドル(25億円)の借款が供与されている。(前年実績1,039万ド ル(32億円))
「その他政府資金協力」は政府開発援助以外の政府資金による経済協力で,わが国においては延払い輸出や直接投資に対する日本輸出入銀行,海外経済協力基金等からの融資部分および日本銀行,日本輸出入銀行による国際機関に対する貸付・債券取得が含まれる。
73年の実績(支出純額べース)は11億7,887万ドル(3,216億円)であり,前年実績の8億5,640万ドル(2,638億円)に比して37.7%の増加であつた。これは輸出信用が前年の2億6,629万ドルより4.6%減の2億5,397万ドルにとどまつたものの直接投資金融が5億6,984万ドルと前年の2億6,473万ドルに比べ115%の大幅増であり,さらに国際機関に対する融資等において日銀による世銀(IBRD)等への貸付および債券購入が3億5,506万ドルと前年より9.1%ふえた結果である。
「民間べース協力」は純然たる民間資金による経済協力であるが,形態としてはその他政府資金協力とほぼ同じで,輸出信用,直接投資,証券投資・対外貸付け,国際機関に対する融資等のほか,民間非営利団体による贈与も計上される。
わが国の経済協力の大宗をなす民間ベース協力は,年々着実な伸びを示してきたが,73年においては,36億5,432万ドル(9,970億円)と72年の12億5,790万ドル(3,874億円)に比べ約3倍の伸びを示している。これは,直接投資ならびに証券投資および対外貸付がそれぞれ前年に比べ6.4倍ならびに2.8倍の大幅増となつたことによるものである。