―はしがき―

 

第2章 経済協力の現況

 

第1節 は し が き

 

1.概 観

 

 1954年10月のコロンボ計画加入を契機として,わが国の政府べース経済協力は開始されたが,その後賠償,円借款,無償資金協力等各種の方式を加えながら,順調な国力の伸長を背景として経済協力の規模は拡大の一途を辿つている。72年の経済協力の総額は,米国の75億7,400万ドルには遠く及ばないが,27億2,540万ドルであつた。さらに73年には直接投資等の飛躍的な伸びにより一挙に58億4,420万ドルヘと倍増を果した(他国の実績は未詳)。DAC 諸国中におけるわが国の地位は71年以来米国に次ぐものであり,いうならば,量に関する限り国力相応のレベルに到達しているということができる。ただし,その質的内容を仔細にみると,別項に述べるごとく,一貫して輸出信用,直接投資等民間主導の協力が大宗を占め,経済協力の中で最も援助的性格の強い政府開発援助の占める比率は69年以降年々低下している。

 

2.機構整備への動き

 

 近年におけるわが国経済力の充実に伴い,国際社会におけるわが国の役割の重要性は著しく増大し,開発途上国の経済社会開発に対する援助要請も益々増大しつつある。他方,民間活動を主軸にわが国経済協力の量が一応の水準に達した現在,相手国の広い各層から真に感謝される経済協力の推進の必要性が,政府開発援助の質の改善という新たな課題となつて登場している。さらに,わが国自体にとつても,最近石油その他の資源確保の問題が死活の問題となり,この意味からも開発途上国との長期的友好関係の維持,促進が不可欠の要件となつている。

 かかる内外の難問に機動的に対処するには,現在の経済協力機構では不十分なことは,従来からしばしば指摘されていたところであり,政府は経済協力事業全体の渋滞を招いている諸々の隘路を打開するため,近く無任所国務大臣を新たに設けるほか,国際協力事業団を設立し,民間の協力を得て経済協力事業の実施を強化することとしている。

 無任所国務大臣は総理大臣の特命による経済技術協力などの推進の任に当らせるもので,そのための内閣法の改正法案は第72国会に上程された。また,国際協力事業団は,従来政府べースの技術協力を一元的に実施して来た海外技術協力事業団および移住事業を通じて国際協力に貢献して来た海外移住事業団を統合し,これを母体として,従来の経済技術協力実施体制においては必ずしも十分に行ない得なかつた政府べース協力と民間べース協力の連携の強化,あるいは資金協力と技術協力との一体的な結びつきを確保するための体制の強化を図るものであり,同事業団の設立に必要な法案も第72国会に提出された。新事業団は上記2事業団の業務を引き継ぐほか,開発途上地域等の社会の開発ならびに農林業および鉱工業の開発に協力するための新たな業務を行ない,資金と技術の一体的な結びつきを図り,もつて国際協力体制の整備強化を図ろうとするものである。

 

経済協力の形態別推移
政府開発援助の形態別推移

 

 以下第2節に73年(暦年)におけるわが国の経済協力実績を,「資金協力」,「技術協力」,「国際機関を通ずる経済協力」に分けて概述する。

 なお,OECDの下部機構であるDAC(開発援助委員会)には,わが国をはじめ17の先進諸国およびEECが加盟しており,その経済協力に関する統計は国際的に最も権威のあるものとされているが,同統計の分類は,経済協力を先進国から開発途上国に対する資金の流れという観点からとらえ,これを大きく「政府開発援助」,「その他政府資金の流れ」,「民間資金の流れ」の3つのカテゴリーに分けている。

 わが国の経済協力の内容を上記DAC統計に準じて分類すればおおむね次のとおりとなる。

〔政府開発援助〕

(あ) 二国間無償資金協力

イ 賠償,準賠償

ロ KR援助

ハ 一般の無償資金協カ

ニ その他の無償資金協力

(い) 二国間政府貸付

(う) 技術協力

(え) 国際機関に対する出資,拠出等

〔その他政府資金協力〕

(あ) 輸出信用

(い) 直接投資金融等

(う) 国際機関に対する融資等

〔民間べース協力〕

(あ) 輸出信用

(い) 直接投資

(う) 証券投資・対外貸付け

(え) 国際機関に対する融資等

(お) 非営利団体による贈与

 

 

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