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英国における対日認識の動向を把握するため,外務省は昭和42年の第1回以来,43年,44年,45年にギャラップ社に委託して世論調査を実施しているが,今回(第5回)は本年3月上旬に16才以上の英国市民1,990名を対象として北アイルランドを除く英国全土においてギャラップ社による対日世論調査を行なつた。設問は,一部新しいものを取入れたが,大体従来と同じであり,英国民の対日認識のすう勢を知ることができる。調査の結果は,英国の対日認識が改善しつつあり,また,わが国を英国の友邦とみなす英国人がふえつつあることを示しているが,同時に疑念を持つ向きも依然として存在することが明らかになつている。以下,主として在英大使館からの報告に基づき,その概要を紹介する。
I 概 観
調査事項および調査結果概要は次の通りである。(調査結果の詳細はIIのとおり)
1. 調査事項
(1) 対日イメージ
(2) 日本に対する信頼度
(3) 対日信頼および不信の理由
(4) アジアにおける日本の役割
(5) アジアにおける日本の役割を肯定,否定する理由
(6) 日本の政治制度に対する認識
(7) 日本製品に対する一般的評価
(8) 日本に対する期待
(9) 日本に関する情報源
(10) 貿易問題等が日英関係に与える影響
2. 調査結果の概要
(1) 日本という言葉を聞いて最初に浮かぶイメージとして,経済関係活動を挙げた者が37%で最も多く,事項別では「日本製品の優秀さ」と「廉価」がともに12%で最も多く,「第2次大戦」(11%)「高い生活水準」(8%)が続いている。
(2) 「日本は英国の友邦である」とする者が前回(昭和45年3月)より6%増加して37%となり,「友邦でない」とする者と同率に達し,対日信頼感は全般的にみて向上しつつあると見られる。今回の調査では,若年層の対日信頼感が益々向上すると共に,従来否定的であつた北部イングランドおよびスコットランド両地方の対日信頼感が,かなり改善されているのが目立つた。
対日信頼・不信の理由としては,肯定的理由の分布にほとんど変化はないが,否定的理由では「日本人は信頼できない」「東洋人は信頼できない」が減少し,旧敵国でありその後も変つていない」が増加して第1位となつた。
(3) アジアにおける日本の役割については「役割を演ずると思う」が減少し,「思わない」が増加している。またアジアにおける日本の役割増大を肯定する者,否定する者が共に約5%ずつ増えた。
肯定の理由として,日本の経済力を挙げる者が前回より増えて16%で最も多く,否定的理由としては,前回同様,不安定性および経済的進出を挙げる者が比較的多い。
(4) 日本の政治制度に対する認識は民主制とする者が減少して31%となり,共産制とする者が増加して13%となつた他,分からないとする者も若干増えている。
(5) 日本製品を「優秀」と認める考は前回の2倍以上の12%になり,「良い」とする者を加えると44%に達し,日本製品の優秀さに対する認識は前回に比較して大幅に向上した。
(6) 今後の日本に対する期待については,「世界平和維持のための積極的貢献」が54%で1位を占め,次いで発展途上国援助増大,日英間貿易・投資促進,ECとの協調が20%前後,防衛力強化は4%となつている。
(7) 日本に関する情報源としては,新聞・雑誌が58%で第1位・次いでBBCテレビの42%,ITVテレビ(民間)の32%となつているが,ラジオ・テレビを合計すると85%となり,新聞・雑誌その他の出版物の合計71%を上廻る。また,学校を挙げた者が倍増(11%)していることが注目される。
(8) 貿易問題等が全般的日英関係に与える影響については,「かなり重大」とみる者が26%で最も多く,「さして重大でない」21%,「非常に―重大」9%,「全然重大でない」8%となつている。
II 調査結果の内容
1. 対日イメージ
(設問) 日本という言葉を聞いて何を想起するか。
(回答) (ビジネス・製品) 大量生産 5%
日本製品の優秀さ 12%
造 船 1%
廉 価 12%
各種製品 7%
(対外関係) 第2次大戦 11%
原爆戦争 4%
(日本人・生活) 近代生活,東洋と西洋との混淆 2%
勤 勉 4%
冷酷・非人道的 1%
芸者・着物 3%
皮膚の色 4%
信頼できない 2%
人口過密 3%
高い生活水準 8%
(文化) いけ花 1%
その他 18%
分からない 14%
本設問においては,昭和42年(1967年)(第1回)調査の時と同様回答者の純粋な反応をみるため,何らのヒントも与えず,回答をそのまま記載・集計したものである。昭和42年調査では複数の回答(平均3つ)を記載したのに対し,今回は平均1つの回答を集計したので,各項目の数字をそのまま比較することはできないが,種類別(上記左側カッコ内)集計の比率を比較すれば大よそ次の通りである。(下記カッコ内は種類別回答そのままの集計)
今 回 昭和42年
ビジネス・製品 47%(37%) 26%(68%)
日本人・生活 33%(27%) 24%(63%)
対外関係 19%(15%) 21%(55%)
文化 1%( 1%) 13%(36%)
国土・気候 0%( 0%) 16%(42%)
100%(80%) 100%(264%)
3位までの順位は昭和42年調査と変つておらず,日本という言葉を聞いて「ビジネス・製品」を想起する者が約半数に近く,次いで全体の1/3が「日本人・生活」を想起している。ビジネス・製品(37%)のうち,「日本製品の優秀さ」および「廉価」を挙げたものがともに12%で最も多く,次いで「第2次大戦」を想起した者が11%(「原爆戦争」を加えれば15%),「高い生活水準」が8%となつている。
詳細にみると,「日本製品の優秀さ」(平均12%)を多く挙げたのは21~29才および30~49才年令層(それぞれ17%および15%),「日本は英国の信頼できる友邦である」としたグループ(21%)であり,「第2次大戦」(平均11%)を多く想起したのは50才以上の年令層(16%)および中部イングランド,ウエールズ住民(14%)であつた。(逆に16~20才および21~29才年令層ではそれぞれ6%・4%と低い。)
また,21~49才年令層,非筋肉労働者,南イングランド住民および「日本は英国の信頼できる友邦である」と答えたグループでは,約40%が「ビジネス・製品」を想起している(平均は35%)。
2. 日本に対する信頼度
(設問) 日本は英国の友邦であるか。
今 回 前 回 前々回
(昭和45年) (昭和44年)
(回答) 友邦である。 37% 31% 29%
(内訳)
信頼し得る友邦である。 19% 16% 15%
友邦であるが信頼し得ない。 16% 14% 11%
信頼し得るかどうか分からない。 2% 1% 3%
友邦でない。 37% 36% 38%
(内訳)
友邦ではないが,英国に対し中立的 16% 16% 15%
である。
英国に対し敵対的である。 16% 14% 17%
中立的か敵対的か分からない。 5% 6% 6%
分からない。 26% 33% 33%
わが国に対する信頼度の調査は1969年,1970年に続き,今回も全く同じ質問を行なつた。従つて前回調査と3年の間隔はあるが,数年間の対日信頼度の比較ができる。
(1) まず,「日本は英国の友邦である」と答えた者は,前々回の29%,前回の31%から,今回は37%に増えており,平均毎年2%の割で「友邦である」との認識は増大したことになる。しかし,その内訳を見ると,「信頼し得る友邦である」と答えた者が19%に増えた(前回は16%)が,同時に「友邦ではあるが信頼し得ない」と答えた者も16%に増えている(前回14%)。
(2) 一方,「友邦でない」と答えた者は,前々回(38%)・前回(36%)の中間37%を示し,前々回,前回とも「友邦でない」との回答が「友邦である」との回答より多かつたのに対し,今回はじめて同じパーセントになつた。その内訳を見ると,「英国に対し中立的である」とする者は16%で前回と変わらず「英国に対し敵対的である」とする者も同じく16%で前回(14%)よりやや増えたが前々回(17%)には至つておらず,わが国に対し信頼感をもたない者の割合は,ここ数年余り変化を示していない。
(3) しかしながら,「友邦かどうか分からない」との回答は,前々回,前回とも33%を示したのに対し,今回は26%に減少し,減少分(7%)のほとんどが「友邦である」の方にまわつたことが看取されるので,英国民の対日信頼度は全般的にみて向上しつつあると見ることができる。
(4) 回答を,性別,年令別,職業別および地域別に分析すれば次の通りである。
左の内訳 左の内訳
友邦 信頼でき 友邦だが 非友邦 中立 敵対
る友邦 信頼でき 的
(%) (%) ぬ (%) (%) (%) (%)
全国平均 37 19 16 37 16 16
(イ) 性 別
男 性 43 24 17 38 19 15
女 性 31 14 15 37 14 17
(ロ) 年令別
16~20 才 48 28 19 21 10 9
21~29 才 51 27 22 24 11 9
30~49 才 41 19 19 33 15 15
50~64 才 24 13 10 52 24 23
65 才以上 23 11 9 50 19 23
(ハ) 職業別
筋肉労働者 34 18 13 40 16 18
非筋肉労働者 41 19 20 33 16 13
(ニ) 地域別
南イングランド 38 22 14 38 17 17
中部イングランドおよび
ウェールズ 36 15 18 38 14 18
北部イングランド 36 17 16 37 20 13
スコットランド 38 18 17 34 11 17
(i) 上記の属性別内訳を見ると,性別では男性,職業別では非筋肉労働者の方が,また年令別では若年層ほど対日信頼感が高いことが認められるが,地域差はほとんどない。
(ii) 前回との対比で対日信頼感増減の変化をみると,今回「日本は英国の友邦である」とした者は前回より平均6%増加したが,増加率の多いのは,北部イングランド(10%増),21~49才の青壮年層(8%増)であり,またこのうち「日本は信頼できる友邦である」とした者の増加率(平均3%)の多いのは,21~29才年令層(8%増)および16~20才年令層(6%増),スコットランド住民(6%増)となつている。
一方,「日本は英国の友邦でない」とする考は,前回とほとんど変つていない(平均1%増)が,属性別でみると,50~64才および65才以上の高令層(それぞれ7%・5%増),南イングランド地方(6%増)で増加率が高く,逆に,16~20才および30~49才年令層および非筋肉労働者ではいずれも3%ずつ減少している。更にこのうち「日本は英国に対し敵対的である」と答えた者(平均2%増)では,65才以上の層,中部イングランド・ウェールズ地方で5%増加したのに対し,北部イングランドおよびスコットランドではそれぞれ5%および3%ずつ減少している。
つまり,若年層の信頼感が益々向上するとともに従来否定的反応を見せていた北部イングランドおよびスコットランド両地方の対日信頼感が最近かなり改善されたと認められる。
3. 対日信頼および不信の理由
(設問) (前問に対する肯定・否定の回答に対し)何故そう考えるか。
(回答) (肯定の理由)
今回(%) 前回(%) 前々回(%)
日本は現在英国に対し友好的である。 8 8 8
日本は最早や侵略的,好戦的でなく,
平和と良好な関係を望んでいる。 9 9 9
日英両国は同様な国際的立場にあり,国際
場裡において,同様の役割を果し得る。 3 6 6
日本人は正直であり,ビジネス取引におい
て信頼できる。 3 2 3
他の好意的回答 5 5 3
(特に理由を挙げず)信頼できる。
(否定的理由) 5 7 6
日本人は信頼できない。 1l 16 13
戦争中の敵国であり,戦後も変つていない。 18 16 14
日本は英国より安い商品で英国の貿易を奪
おうとしている。 16 16 18
東洋人は信頼できない。 4 6 5
他の否定的理由 3 8 8
(特に理由を挙げず)信頼できない。 33 18 19
全体的に見て肯定的,否定的理由とも前々回および前回と比較して大きな変化はない。
好意的回答についてみると「日英両国は国際的に同様の役割を果す」との理由づけをした者が6%から3%に減少しており,詳細にみると,前々回同様,男性および29才以下の若年層に日本に対する好意的評価が比較的多く,他はほぼ平均している。
-方,否定的回答の理由として「日本は英国の旧敵国であり,その後も変つていない」をあげている者が18%と増えている。反面,「日本人は信頼できない」との答は11%で前回(16%)より大幅の減少を示し,また,「日本は英国の貿易を奪おうとしている」との答は16%で前回と全く同じである。
なお,前問で「日本は英国に敵対的である」と答えた者のうち,半数は「旧敵国」を理由とし,約1/4ずつが「日本人は信頼できない」「英国の貿易を奪おうとしている」を挙げており,属性別で見ると,65才以上の老年層および筋肉労働者では半数以上が「旧敵国」を対日不信の理由としている。
4. アジアにおける日本の役割
(設問A) アジア情勢の新しい進展に照らして,日本は次第に重要な役割を演ずると思うか。
今 回 前 回
(回答) 思う 47% 51%
思わない 17% 14%
分からない 36% 35%
(設問B) 現実に日本がアジアで次第に重要な役割を演ずるとしたら,これを望ましいと思うか,否か。
今 回 前 回
(回答) 望ましいと思う 36% 32%
望ましいと思わない 30% 25%
分からない 35% 42%
(1) 前回の設問(A)は「1970年代に日本はアジアにおいてより重要な役割を演ずると思うか」であつたが,今回調査では,「1970年代に」を「アジア情勢の新しい進展に照して」として質問を試みた。
これを肯定した者は前回(51%)より4%減少して47%となり,否定した者は3%増加して17%となり,「分からない」との答は前回とほぼ同様(1%増の36%)であつた。詳細にみると,男性30~64才の青壮年層,非筋肉労働者およびスコットランド地方では,過半数が肯定的回答をしており,「日本は英国の信頼し得る友邦である」と答えた者の64%が本問に肯定的回答を与えているが,前回(70%)よりは減少した。また16~20才の若年層においては前回の48%から今回は31%と減少している。
否定的回答をしたグループで前回より5%以上増加しているのは,女性16~20才および30~49才年令層,および北部イングランド住民である。
(2) 前問(A)においてアジアにおける日本の役割の増大を肯定した47%のうち,これを「望ましい」と答えた者は前回より4%増加して36%となつたが,「望ましくない」と答えた者も5%増加して30%になつた。詳細にみると,男性,21~29才青年層では「望ましい」との回答が増加し(それぞれ45%および42%),また65才以上の老年層およびスコットランド住民では「望ましくない」とする者が10%程度増加した(それぞれ39%および32%)。「日本は英国の信頼できる友邦である」と答えた者の76%がこれを「望ましい」としている。
5. アジアにおける日本の役割を肯定する理由と否定する理由
(設問) (前問に対する肯定,否定の回答につき)何故そのように考えるか。
(回答) (肯定の理由) 今回(%) 前回(%)
日本は経済的に強力でありアジアのためになる。 16 12
日本は政治的に強力であり,アジアにおける安定勢 5 5
力である。
日本は民主国家であり,西欧の友邦である。 4 6
日本は平和維持に積極的である。 3 5
その他の好意的理由。 10 6
(特に理由を挙げず)望ましいと思う。 O 6
(否定の理由)
日本は経済的に進出している。 6 5
日本は余りにも変化し易く,不安定であつて,どちら
にでも動く。 7 7
日本は民主国家でない。 1 1
日本は平和に真に関心をもつていない。 4 4
他の否定的理由。 7 6
(特に理由を挙げず)望ましいと思わない。 7 6
(1) わが国のアジアにおける役割増大を「望ましい」とする理由は,前回同様主としてわが国の経済力に集中しており,前回(12%)よりも更に4%増の16%となつた
男性,16~20才若年層,および日本に対する信頼を積極的に表明したグループでは,経済力を重視する傾向が増えている(いずれも前回より8%増)。また,「望ましい」理由として,「民主国家であり西欧の友邦」および「平和努力」を挙げた者が若干減少し,「その他の好意的理由」がほぼその分だけ増加した。
(2) 一方,わが国のアジアにおける役割増大を「望ましいと思わない」者の理由づけは「経済的進出」および「不安定性」を挙げる者が依然として最も多く,また,50才以上の高令層にこの観念が強いことも前回と変わらない。
6. 日本の政治制度に対する認識
(設問) 日本の政体は,英国や米国と同様,自由選挙による民主制か,あるいは共産制か,もしくは何らかの形の独裁制か。
(回答) 昭和48年 45年 44年 42年
(73年)(%) (70年)(%) (69年)(%) (67年)(%)
民 主 制 31 35 34 31
共 産 制 13 11 9 9
独 裁 制 18 18 16 17
分からない 39 37 41 43
(1) 民主制とする者が4%減少して31%となり,共産制とする者が2%増加して13%となり,更に「分らない」が若干ながら増加しており,わが国政治制度に対する認識は全体として前回よりも一層後退した。
認識の低い層は,女性,20才以下および50才以上の年令層,筋肉労働者および中部イングランド・ウエールズ住民でありこれらの分布は前回までとほとんど変つていない。「日本は信頼し得る友邦である」とする者の50%が民主制と答えており,これは平均(31%)を大きく上回つてはいるものの,前回の63%からは後退した(前々回は58%)。またこのグループでは共産制とする者が前回の3%から11%へと増加し,独裁制とする者は15%から9%へと減少したが,「分からない」者が19%から30%へと増加している。
この他後退を示したグループは,民主制については,16~20才年令層(31%→23%),50~64才年令層(36%→27%),南イングランド(38%→30%)であり,共産制については29才以下の若年層および65才以上の老令層がいずれも5%増,南イングランド地方が6%増を示した。
(2) 調査の際,回答者に対し,一々その理由を質問していないので,何故今回の調査において共産制と答えた者が増加したのか,その理由を明確に把握することは困難であるが,この点についてギャラップ社はテレビ等で報道された学園紛争およびデモが一般市民にこのような印象を与えたのではないかとし,またPRコンサルタントは,近年アジアに関する報道では中国を含む共産主義国が取上げられる機会が多かつたため,日本までも含めてアジア諸国の多くは共産制と考える者が増えたのではないかとしている。
7. 日本製品に対する一般的評価
(設問) 一般的にいつて,日本からの輸入品の品質をどう思うか。
(回答) 昭和48年 45年 44年 43年
(73年)(%) (70年)(%) (69年)(%) (68年)(%)
優秀である 12 5 6 4
良 い 32 31 29 26
悪くはない 27 33 33 32
悪 い 21 20 21 23
分らない 8 11 12 15
これまでの調査結果と比較すると,ここ数年間に日本製品に対する評価は非常に良くなつている。即ち前回までの調査では「優秀」と答えた者が5%前後にすぎなかつたのに対し,今回はじめて10%を越した(12%)ばかりでなく,「優秀」と「良い」を合わせると44%になる(68年30%・69年35%・70年36%)。但し「悪い」とする者が,68年以降常に20%前後ある。
日本製品の優秀さを特に評価しているグループは(数字は「優秀」と「良い」の合計),男性(53%),30~49才年令層(51%)非筋肉労働者(55%)および「日本は信頼できる友邦である」とする者(68%)であり,これに反し女性(26%),65才以上老令層(29%),筋肉労働者(26%)およびスコットランド住民(28%)は「悪い」と答え,また65才以上老令層の20%が「分からない」と答えている。
8. 日本に対する期待
(設問) 今後の日本に何を期待するか。
(回答)
世界の平和維持のためのより積極的な貢献 54%
拡大ECとの協調 18%
日英間の貿易および投資促進のための積極政策 22%
発展途上国援助増大 26%
防衛力強化 4%
その他の回答 2%
分からない 19%
本設問は今回はじめて加えられたもので,各項目を記載したカードを示して選ばせるという方法をとり,カードの順はその都度変えた。複数のカードの選択を許したので合計は100%を越している。
最も注目されるのは,今後の日本に期待することとして「世界平和への積極的貢献」を挙げた者が全体の過半数(54%)を占めていることであろう。詳細にみると,50~64才の年令層(58%),非筋肉労働者(57%)およびスコットランド住民(58%)等の期待度が最も高い比率を示している。
これに次いで「発展途上国援助増大」(26%),「日英間貿易・投資増大」(22%),「拡大ECとの協調」(18%)等がいずれも20%前後の期待感を集めているのに対し,「国防力強化」は4%を示したのみである。
また,これらの順位が性別,年令別,職業別および地域別等すべての分類を通じてほぼ全く同じ順位になつている。
カードを選び出す頻度の高いのは(平均126%),男性(145%),非筋肉労働者(146%),スコットランド住民(147%)であるが,最も高いのは当然のことながら「日本は信頼できる友邦である」とするグループ(152%)であり,これらのグループの対日期待度が高いことを示している。
9. 日本に関する情報源
(設問) 日本についての知識,印象は何によつて得たか。
(回答) 昭和48年 昭和45年 昭和42年
(73年)(%) (70年)(%) (67年)(%)
個人的経験(在日経験,日本人
との接触) 7 9 5
在日経験ある親戚,友人 6 5 6
学校および大学教師 11 5 9
新聞,雑誌 58 55 61
その他の本 13 11 15
ラ ジ オ 11 12
テレビ(B B C) 42 38 } 48
テレビ(I T V) 32 27
映 画 10 8 11
その他の方法 12 16 9
分からない 9 13 9
本設問は前回と全く同じであり,また1967年(第1回)にもほぼ同様(回答の項でラジオ,テレビを一括)の質問を行なつた。
単独の項目でみると「新聞・雑誌」を情報源とする者が最も多く(58%),これは前回(昭和45年)(55%)および第1回(昭和42年)(61%)と同傾向である。しかし,ラジオ,テレビを合計すると85%になり,新聞・雑誌とその他の本を合計した71%を上回つている。
その他のソースを挙げた数字には前回と余り変りはないが,「学校・大学教師」(11%)が前回(5%)の倍以上になつた(16~20才年令層では25%から38%に増加)。これは第1回(昭和42年)の9%をも上回り,今回のラジオ(11%)と同比率に達しており,学校・大学で日本を学ぶ機会が多くなつた結果であろう。
また情報源の列挙数の平均は,前回の1.86から今回は2.02に増加した。この中ではスコットランド住民(2.5)が最も多く(テレビ,ラジオでは平均より11~12%多く,新聞・雑誌・その他の本・映画では平均より7~8%多くなつている),「日本は信頼できる友邦である」とした者(2・3),および非筋肉労働者(2.2)がこれに次いでいる。
10. 貿易間題等が日英関係に与える影響
(設問) 貿易問題等の目薬間の時折りの問題は全般的な両国関係にどのような影響を及ぼすと考えるか。
(回答)
非常に重大 9%
かなり重大 26%
さして重大でない 21%
全然重大でない 8%
分からない 35%
本設問も今回はじめて加えられたものであるが,これに対する英国民の反応はほぼ3分される。即ち,重大視している者35%,重大視しない者29%,「分からない」者35%である。また全体の約1/4が「かなり重大」と見,約1/5が「さして重大でない」とし,危機感をもつ者および楽観論者がそれぞれ9%および8%を示している。
詳細にみると,危機感をもつているグループは男性,30~64才年令層および非筋肉労働者,中部イングランド以北全般であり,また「日本は信頼できる友邦」と答えた者では「さして重大でない」と楽観的にみる者が最も多く33%を占めている。
女性の45%,16~20才の若年層の50%および65才以上の老年層は「分からない」と答えており,これらが対日無関心層を形成していることを物語つている。