-その他の重要外交文章等-

 

 (6) 1972年のNAT0ブラッセル閣僚理事会コミュニケ

  (要旨仮訳)

 

(1972年12月8日 ブラッセルにおいて)

1 (省略)

2 5月の閣僚理事会以降の事態を検討し,閣僚は東西関係の新らたな進展に満足の意をもつて注目し,かかる進展は,大半が同盟諸国のイニシアティヴによるものであることを認めた。

閣僚は,明年にはさらに意義深い進展があり得るとの見解を表明し,かかる目的のために努力を重ねる用意があることを明らかにした。

閣僚は全ての国民の間に,集団的,個別的に,より緊密かつ調和のとれた関係をもたらす決意を宣言した。

閣僚は人,思想及び情報のより自由な交流に格別の重要性をおくものである。

3 閣僚は,現在までに達成された目的は同盟の力と結束なくしては実現され得なかつたことを確信し,特にワルソー体制軍事力が継続的に強化されていることもあり,同盟の防衛力を維持する決意を表明した。

健全かつ強力な同盟は安定を推進し,欧州の公正かつ恒久的平和の目的を達成するために不可欠の条件である。

4 閣僚は,5月以降の独に関する重要な進展を討議し,独連邦共和国(FRG)と独民主共和国(GDR)間の基本関係条約の11月8日調印を歓迎し,本条約は12月21日に調印の後,FRGの国会承認に回付することを考慮中とのFRG外相の声明を歓迎した。

閣僚は,本条約の批准後ならびに国内的条件の整備した後,両独は国連の権限機関による同時審査のために国連加盟申請を行なうであろう旨のFRG外相の声明に留意した。閣僚は,11月9目の四大国宣言に留意した。本宣言において,四大国はFRG及びGDRの国連加盟申請がなされる際にこれを支持するが,かかる国連加盟は四大国の権利と責任及び4カ国の協定,決定,慣行を決して阻害するものではないことを確認するとの合意を記録している。

仏・英・米と独との関係に関しては,閣僚は,本宣言が三大国とFRG間の関係協定及び1954年10月23日に改訂,1952年5月26日付付属協定・書類に如何なる形でも影響することはないことに注目した。

5 かかる進展に基づき各国政府はGDRと2国間関係樹立のための交渉に入ることを希望するであろう(注,英文:might wisht oenter 仏文:examineront lapossibilite d'engager)。

この点に関し,閣僚は,独に関する問題について,FRGのNAT0加盟以来維持して来た同盟諸国の団結を再確認した。大西洋同盟加盟国は,独民族は自由なる民族自決により,独の統一を回復する平和な状態を欧州に確立するためのFRGの政策を引き続き支持する旨表明した。

従つて,独民族は,今日は2つの国に居住している事実,独に関し自由に締結された平和的解決策はないままである事実,及びかかる解決が達成されるまで,ベルリン及び独全体に関する4大国の上記権利と責任は継続する事実によつて特徴づけられる独の特殊事情を北大西洋同盟は今後も全面的に考慮に入れ続けるであろう。

6 閣僚は,各国政府がヘルシンキにて開始されたばかりの多角的準備会談において

必要な同意を得るために建設的に作業することを確認した。

閣僚は,同会談における同盟国政府の目的は,CSCE本会議において同盟各国の提案が十分な討議の対象となることを確保し,CSCE本会議が満足すべき結果をもたらすようなリーズナブルな期待を有し得るだけの十分な相互理解が参加国間に存在することを想起した。閣僚は,CSCE本会議が建設的・特定の結果を生むに必要な取極及び指針につき,多角的準備会談において合意さるべきことを考慮した。

閣僚は,かかる結果は人為的なタイム・リミットをつけることなく,詳細かつ真摯な交渉の過程を通じてのみ得られるものであることに注目した。

7 閣僚は,軍事対決の危険を減ずる過程に寄与するために信頼を強化し安定を増大させることを目的とした,軍事的措置を含む適当な措置を通じ,かつ参加国間の関係を規制する原則の如き問題に関する交渉を通じて,全欧州の安全を増大させること,あらゆる分野における協力を進展すること,欧州の全国民問のより緊密,よりオープンかつより自由な関係をもたらすこと,情報と思想のより幅の広い移転を活発化することが加盟各国の目的であることを確認した。

8 NATOの統合防衛計画参加国閣僚は,ベルギー,加,FRG,ルクセンブルグ,オランダ,英,米,デンマーク,ギリシャ,イタリア,ノールウェー及びトルコ政府がチェコ,GDR,ハンガリー,ポーランド及びソ連政府に対して中欧におけるMBFR間題につき1973年1月31日開始の打診会談への参加招請を行なつたことを承認した。

これら閣僚は,本提案が過去の同盟国のイニシアティブに合致するものであることを想起し,提案された時期にかかる会談を開始する用意がある旨の東側のある種のインディケーションに注目した。閣僚はかかる会談がこの問題についての交渉を1973年秋に開始することを可能ならしめるよう望むとの希望を表明した。閣僚は,かかる日程はMBFR及びCSCEに関する会談が同じ一般的時期に行なわれることを示すことに注目した。

9 閣僚は,形式的かつ特定的なリンクを設けることは適当でないことを考慮しつつ,それぞれ別々の交渉の各段階における進展がお互いに好ましい効果を与えることを再確認した。かかる交渉は当事国間に存在する関係の一般的性格よりかけ離れたものであつてはならない。

10 閣僚は,関係NATO諸国のMBFR打診会談行動基準に関する報告,ならびに交渉準備用作業報告に留意した。常設理事会は,かかる会談における同盟国の目的・政策及び戦略に関する全問題につき協議を続けるものとする。

11 1970年5月のローマ閣僚理事会宣言を想起し,閣僚は,中欧におけるMBFRはどちら側が軍事的に不利な結果となつてもならないし,欧州全体の安定と安全を増進するものであるべきとの立場を確認した。かかる立場は,同盟の安全保障は不可分であり,中欧の兵力削減は他の地域の安全を減ずるものであつてはならないとの信念に基づくものである。

12 閣僚は,米・ソ間の第2SALT交渉が成功するよう希望を表明し,軍縮・兵器管理の全分野で新たな努力が重ねらるべきことを考慮した。

13 閣僚は,かかる全問題につき,今日まで行なわれて来,かつその価値が認められた緊密かつ定期的な協議を今後も続けることに同意した。

14 閣僚は,常設理が用意した地中海情勢に関する新報告に留意した。本地域における増大する不安定さは,加盟国の安全保障を損なうおそれがあり,関心の的となつている。閣僚は,事態の進展に常時注意を払い,次回閣僚理に報告書を提出するよう常設理に命じた。

15 閣僚は,特に海水油濁,災害救助,安全自動車,健康管理,汚水処理,都市交通の如き分野,更に低公害自動車エンジン開発に関する6カ国了解メモランダムの最近の調印につき,CCMSの達成した成果に注目した。

16 閣僚は,各国軍備局長会議報告及び本報告中の国防大臣見解に留意した。国防相と同様,閣僚は兵器開発・生産におけるデュプリケーションと資源の浪費を減ずるための努力を歓迎した。

閣僚は,常設理に対し,本件につき取るべき行動に関する必要な取極を作成する様命ずるとともに,更に有効に協力するために軍備局長が示唆を行なうよう要請した。

 

 

目次へ