-その他の重要外交文章等-

 

 (3) 1972年のNAT0ボン閣僚理事会コミュニケ

   (要旨仮訳)

 

(1972年5月31日 ボンにおいて)

 

1. (省略)

2 閣僚は,同盟の目的は全加盟国の自由と安全を確保するためにあることを再確認した。防衛と緊張緩和は不可分に結ばれており,この点において同盟の連帯は不可欠である。同盟国政府は東欧諸国との関係改善を求め,ドイツの分割を克服して欧州の安全保障を培う公正,かつ,永続的な平和を目標とする。

3 閣僚は東西諸国間の関係が前進したことを認めた。国家の指導者の間の接触が増え,重要な諸協定・取極が締結された。

閣僚は夫々の政府が完全,かつ時宜に適した協議を持ちながらとつた主要なイニシアテイヴがもたらしたこのような発展を歓迎した。こうした協議は今後も継続される。

4 閣僚は米ソ間におけるABMツステムの制限に関する条約及び戦略攻撃兵器の制限に関する中間協定の調印を歓迎した。米ソ両国の戦略兵器の制限に関するこの2つの合意は戦略上の安定に資し,国際的信頼を少なからず強化し,核戦争の危険を減少させるであろうことを確信する。また,米ソ両国が戦略兵器の制限に関する交渉を積極的に継続するとの約束をも歓迎し,この2つの合意が軍備制限の分野における明るい新時代の端緒となることを希望した。

5 閣僚は独ソ,独波両条約が近く発効する運びとなることを満足の意をもつて認め,両条約は,欧州における緊張緩和に対する貢献として,ならびにドイツ連邦共和国がその東方の近隣諸国との間に設定せんと欲している暫定協定の要素として重要であるとの所見を再確認した。

閣僚はドイツ連邦共和国がこの目的を確認し,大西洋同盟への忠誠をその安全保障と自由の基礎として再確認した1972年5月17日の声明を歓迎した。

閣僚はドイツ連邦共和国が欧州における平和に貢献し,その中でドイツ国民が自由な自決権によつてその統一を回復しようとする連邦共和国の政策は不変であること,また,連邦共和国が一方の当事者である現存の諸条約及び諸協定ならびにベルリンと全独に関する四大国の権利と責任は不変であることを認めた。

6 閣僚は,両独間の話合いの進展を歓迎し,ベルリン4カ国協定を補完するドイツ当局問の取極の締結及び両独問交通条約の署名は,ドイツにおける状況の改善のための努力のなかで重要なステップであると考える。

閣僚は,今後の両独間交渉において,ドイツにおける特別の状況を顧慮した,より包括的なアレンジメントに関する合意が達成され得るとの希望を強めている。

7 閣僚は米,英,仏,ソ連がベルリン4カ国協定最終議定書の署名の手筈を整えたことを満足をもつて認めた。かくして,ベルリン協定全体の発効が確保されたことにかんがみ,閣僚はベルリンにとつて緊張から解放された新たな時代が始まることを希望する。

8 このように順調な事態の発展に照らし,閣僚は欧州安全保障協力会議(CSCE)の準備に関する多角的な話合いに入ることに同意した。閣僚は1970年11月24日付フインランド政府の覚書に述べられている条件の下に,ヘルシンキで公館長レベルのし合いを主催するとの同政府の提案を感謝をもつて受諾した。このため閣僚は,他の心を有する諸政府とともに多角的準備会談の開始に必要な取極を行なうことに決定した。

9 閣僚は,多角的準備会談における同盟国政府の目標は,これらの政府の提案が会議において十分に顧慮されることを確実にし,会議が満足し得る成果を生み出すとの期待を保証するに足る共通の基盤が参加国の間に存在することを確認するところにある旨述べた。

10 このようにして準備されたCSCEは,緊張緩和の重要なファクターとなり,参加国全体の安全を維持しつつ,参加国相互間の関係の緊密化と協力に対する障害の除去に資するべきである。

同盟国政府は,真の懸案の真剣な検討と,実際的な成果を生み出す会議を期待する。

11 閣僚は,安全保障上の利益の点から,CSCEにおいて信頼性の強化及び安定性の増大を目途とするある種の軍事的措置を含む適切な措置について検討することが軍事的対立の危険を減少するプロセスに貢献するであろうことを考慮した。

12 閣僚は,CSCEに関する常設理事会の報告をテーク・ノートした。この報告では1971年12月10日のブラッセル・コミュニケ第13項により会議の議題として含まれるかも知れない諸問題及び会議招集に関する手続上の問題点の検討がなされている。閣僚は,常設委員会に対し,会議の準備における内容的及び手続的研究を更に進めるよう指示した。

13 NATO統合防衛計画参加諸国の閣僚は,1968年レイキャヴィック及び1970年ローマで行なつた相互均衡兵力削減提案(MBFR)を想起し,再確認した。

14 これら閣僚は,今後もMBFR及び関連ある措置に関する交渉を目標とする。これら閣僚は,これらの交渉は多角的な基礎に立つて行なわれるべきであり,かつ,適切な打診が先行すべきであると考える。

これら閣僚は,ソヴィエト政府が同盟の1971年10月に行なつた打診的会談への提案に回答しなかつたことを遺憾としている。

従つて,ここにMBFRに関する多角的な打診がCSCEに関する多角的な準備会談より以前,又はこれと並行して可及的すみやかに実施されるよう提案する。

15 これら閣僚は,前回以降なされたMBFRの政治的,軍事的及び技術的分野に題する研究をテーク・ノートした。

これら閣僚は,常設代表に対し交渉の準備のためこの作業を継続することを指示した。

16 これら閣僚は,欧州における現在の軍事的バランスは同盟の一方的防衛努力の弛緩を許さないとの見解を明らかにした。一方的兵力削減は,より大きな安定とデタントを達成しようとする同盟の努力を減退せしめ,また,MBFRの見通しを悪化させるであろう。

17 閣僚は,地中海の情勢に関する常設理事会の報告をテーク・ノートした。閣僚は,同盟諸国の安全を危険にするかも知れないこの地域の不安定要素に関し関心を表明した。

閣僚は,常設理事会に対し情勢の進展を注意深くフォローし,次期会議で報告するよう指示した。

18.19. (略省)

 

目次へ