(1972年6月16日 ソウルにおいて)
1 第7回アジア・太平洋閣僚会議は,大韓民国政府の招待により,オーストラリア中華民国,日本,大韓民国,マレイシア,ニュー・ジーランド,フィリピン共和国,タイ王国及びヴィエトナム共和国参加の下に,1972年6月14日から16日まで大韓民国ソウルにおいて開催された。カンボディア及びラオス王国の代表がオブザーヴァーとして,またインドネシア共和国の代表が会議主催国政府の賓客として,会議の全ての会合に出席したことは各閣僚から暖かく歓迎された。
2 大韓民国大統領朴正煕閣下は,各国の代表及びその他の会議参加者を歓迎した。
朴大統領は,アジア・太平洋地域の諸国は,諸国間の意見の違いを対話と討議により融和し,対決を調和のとれた協調に転ずる必要が従前にも増してあると述べた。
朴大統領は,アスパックは他国に対抗する政治的,軍事的組織ではなく,地域の平和と進歩のために機能しており,域内各国の共通の利益を生ずるように,経済,技術,社会,文化分野における現実的な協力の新たな可能性を切り拓く必要があると述べた。
3 閣僚は,地域に影響する諸問題について率直に意見を交換した。ニクソン大統領の訪中,訪ソを含めて,平和のために米国が最近とった種々の施策に特に留意して,閣僚は,対決の危険を減少させる緊張緩和は,アジア・太平洋諸国にとっても利益のあるものであることを認めた。
4 閣僚は,アスパックがこの新たな情勢の下で果すべき重要な役割があることに合意した。アスパックは,アジア・太平洋の諸国が集り,問題を地域全体として討議する場を提供し,また,これら諸国が,全てに利益を斉らす経済,社会,文化プロジェクトについて,この基盤にもとづいて協力する機会を供与している。地域協力機構のうち,アスパックは特に,有効な国際協力に必須な協議の習慣を育成し,地域の安定と発展に重要な貢献をした。
5 閣僚は,インドシナ情勢全般殊にヴィエトナム情勢に深い懸念を表明した。閣僚は,戦闘が出来る限り早い時期に終結することを希望し,ヴィエトナム共和国がその独立と領土保全を維持するために払っている努力に対して同情を再確認した。閣僚は,平和の回復はアスパック地域における調和のとれた協力と開発に新たな機会を与えるものであることに合意し,紛争当事者に対して紛争を終結させる為により有意義な交渉に入るように要請した。
6 閣僚は,離散家族の相互訪問および再会のための赤十字会談開催のイニシアテイヴを含む朝鮮半島における緊張緩和への大韓民国の努力とイニシアテイヴを歓迎した。閣僚は,これらの努力が成功し,最終的には朝鮮の平和再統一が斉らされることを希望した。閣僚は,大韓民国の国民が全国を通じて勤勉,自助および協力の精神をもって行なわれている新村造り運動に積極的な役割を果していることに留意した。
閣僚は,大韓民国が大韓民国大統領の感動的な指導の下に進歩発展しつつあることを賞讃した。
7 閣僚はアセアン加盟国間における東南アジアの平和と安定維持のための努力を歓迎し,東南アジアを域外国のいかなる形式の干渉からも自由な,平和,自由,中立地域として,認識かつ尊重されるようつとめているこれら諸国の努力に注意深く留意した。閣僚は,この趣旨のクアラ・ルンプール宣言は,地域のための新たな平和構造創造への動きであることに合意した。
8 閣僚は,地域内におけるアスパックと他の同様の傾向を有する機関との密接なる関係が必要なることを強調し,アスパックとアセアンは,2つの地域機構の種々のプロジェクトの間で緊密なる協力と調整を含む経済,社会,文化および他の機能的分野において協力の全ゆる可能性を検討し始めることを希望する旨表明した。
9 アンコール・ワット寺院は人類にとり貴重な文化的宝庫であることを認め,閣僚は,戦禍から保護する目的をもって国際管理の下にアンコール・ワット寺院地域を非武装・中立化するとのガンボディア政府の提案を同情をもって支持した。
10 閣僚はアスパックが加盟国と国民の間の相互理解の促進に重要な貢献をしたことに満足をもって留意した。
地域協力に多くの国々がより積極的に参加する必要を認め,閣僚は,次の原則と目的をもつアスパックをさらに強化する決意を再確認した。
(A) アスパックはアジア・太平洋地域における平和と発展を希求する地域協力機構である。
(B) アスパックは他の国に対して向けられた政治的また軍事的取り決めではない。
(C) アスパックは経済・技術・社会・文化およびその他の分野における地域協力を促進する努力を行なう。
(D) アスパックは排他的機構ではなく,その目的に建設的な貢献をする用意がある域内の非加盟国に開放されている。
11 経済発展は域内の平和達成に重要な要因であることを認め,閣僚は,常任委員会が経済協力センターと協同して第7回閣僚会議で行なわれた関係提案を考慮しつつ,本分野におけるなお一層の協力の可能性を検討することに合意した。この点,常任委員会の小委員会が適宜組織されるべきであるとされた。
12 閣僚は,食糧加工地域センターに関するフィリピン提案に留意した。センターは加盟国間において技術と経験を交換することにより,域内における加工食品の発展に寄与することを目的とするものである。
閣僚は,現在のアスパック・プロジェクトの事業に充分留意して,手続的観点から本提案を更に検討し,その結果を次回閣僚会議に報告するよう常任委員会に要請した。閣僚は,食糧加工地域センター案の技術面およびその他の点を検討するために第7回閣僚会議後2月以内に専門家会議を主催するとのフィリピン政府の招請を受諾した。
13 閣僚は,青少年交流は加盟国間における相互理解の促進に大いに寄与することを認めた。
文化社会センターの機能に鑑み,閣僚は,青少年交流計画が文化社会センターによって適当な優先度をもって準備,実施されることに同意した。閣僚はまた,人物交流が漸次拡大されてゆき,やがては全ゆる職業の人物を対象とするようになり,地域内諸国民間に地域精神を醸成し,そして,変化ある中に調和を求めることにより平和に貢献するようにとの希望を表明した。
14 閣僚は常任委員会の報告を満足の念をもって受理した。
閣僚は,常任委員会の貢献に感謝の念を表明し,常任委員会の作業が達成した進歩に満足の意を表明した。閣僚は,地域に影響する諸問題についての意見交換は将来の常任委員会の主要な活動の一つとして継続されるべきであるとの常任委員会の報告を支持した。
15 閣僚は,国際会議においてアスパック加盟国間で行なわれている非公式協議の慣行が,加盟国にこれら会議において討議される各種問題に関して,相互に協議する機会を提供したことに同意した。
これらの協議は可能な場合はいつも加盟国間において共通の問題に関し,調整と協力に大いに貢献した。閣僚は,この慣行を将来も継続することに決定した。
16 閣僚は科学技術サービス登録機関,文化社会センター,食糧肥料技術センター,経済協力センター,アジア・太平洋海洋協力計画に関する報告を感謝の念をもって受理した。
種々のプロジェクトが今や,満足にその機能を果しつつあり,アスパックの目的を達成する上で重要な役割を果しつつあることに留意し,閣僚は,アスパックの共同プロジェクトの事業に積極的支持を与えることに合意した。
閣僚は,科学技術サービス登録機関が今や,キャンベラにあるその新しい建物の中に設立され,1971年12月6日に正式に開所されたことを満足の念をもって留意した。
17 閣僚は,東京において1971年11月24日から26日まで開催されたアジア・太平洋海洋協力計画専門家会議の有益な結果に満足の意を表明した。
会議においては,域内各国の造船,船舶修理および関連産業の分野における参加国間の協力の方法と手段に関して,広範な討議が行なわれた。
18 閣僚は,1973年バンコックにおいて,協議会の第八回閣僚会議を開催するとのタイ王国政府の申出を感謝の念をもって受諾した。確立された慣例に従い,常任委員会は来たる12月間バンコックにおいてタイ王国外務大臣の司会の下に会合し,また,タイ王国政府は第八回閣僚会議までの間および同会議申において取次ぎにあたるとともに,実際上の事務局を提供する。
19 閣僚は,会議のための行き届いた便宜と,代表に寄せられたあたたかい歓迎,ならびに事務局により提供された貴重な援助に対し,大韓民国政府および国民に心から感謝の意を表明した。