-日本政府が関与した重要共同コミュニケおよび政府声明-

 

 (13) DAC上級会議プレス・コミュニケ

 

(1972.1O.18 パリにおいて)

 

1 OECD開発援助委員会(DAC)の本年年次上級会議は,10月16日から18日までパリのOECD本部において開催された。会議には,エドウィン・M・マーチン大使を議長として,委員会の17加盟国の閣僚または政府高官ならびに国際復興開発銀行および国際通貨基金の代表者が出席した。(注)

2 0ECD事務総長は,開会演説において,単に,資金および技術援助を通じてだけではなく,貿易,農業,科学及びその他の分野における斉合性のある政策を通じて開発途上諸国の経済および社会の発展にOECDがすべての関係委員会の調整のとれたアプローチにより機構全体として貢献するとの決意を強調した。事務総長は委員会に対しDACがこの斉合性あるアプローチの促進のため適当な役割を荷うことをもとめるべく理事会に対し示唆を行なうことを提案する旨述べた。

〔開発途上国における状況〕

3 委員会は,近年における多数の開発途上国のGNPおよび輸出の平均成長率は引き続き高いが,1971年における農業生産は,急速な人口の伸びに比べ失望させるものであったこと,ならびに重要な問題が残存しており,開発途上国における大多数の国民の所得水準は依然極めて低位にあり,かつ失業および所得分配の不平等に対する懸念が増大しつつあることに注目した。

〔資金の流れ〕

4 委員会は,加盟国から開発途上国への資金の流れ(政府開発援助,その他政府資金の流れおよび民間資金の流れを含む)の総額の対GNP比の平均が1970年のO.80%から1971年にO.83%へ上昇し,DAC加盟国のうち7カ国が国際的に合意されたGNP1%目標を達成したことに注目した。

5 政府開発援助(ODA)総量の対GNP比は,1971年に0.35%へと若干上昇し,過去3年間の下降傾向を脱した。この水準は,1969年以前の水準以下であり,かつDAC加盟国の過半数が少なくとも原則的に受諾している国連によって勧告されたGNPの0.7%の目標の半分にすぎない。若干の加盟国は,同目標に接近し,また他の若干の加盟国は,今後数年間に同目標を達成する意向である。同時に,民間資金の流れ,とくに輸出信用が引き続き政府開発援助より早い速度で増大したことが注目された。

6 委員会は,資金の流れの総量は今後さらに増加する見通しであるが,DAC加盟国の政府開発援助の総量の対GNP比は,現在の政策のままでは,若干の加盟国が実質的増大を計画しているにもかかわらず,僅かしか増加しない可能性があることに注目した。

7 委員会は,開発途上国に対し,資金の流れ,とくに緩和された条件の政府開発援助(0DA)を一層増加させることが緊急に必要であるとの点で意見の一致をみた。若干の加盟国は,対GNP比で平均水準以下の諸国が特別の努力を払うよう希望を表明した。委員会は,また,加盟国政府が将来の援助政策の決定に際しては,開発途上国が直面している経済および社会面の諸問題の緊急性が増大しつつあることに留意すべきであるとの希望を表明した。委員会は,民間資金の流れは,開発途上国の必要と政策に適合せしめれば,開発に貢献しうることを想起した。

〔援助条件〕

8 政府開発援助の条件は,1971年に全体としては改善しなかったが,DAC加盟国の政府開発援助の総量の90パーセントを供与している11カ国が69年勧告の基準を達成した。

9 委員会は,従来の複雑な内容の1965年および1969年勧告に代るものとして,1973年1月1日以降のコミットメントに適用される新援助条件勧告を採択した(1カ国がその立場を留保)。新勧告は,各加盟国の政府開発援助プログラム全体がグラント・エレメントを少なくとも84%にすべき旨の単一の目標を規定している。しかしながら,新勧告は,国内的構造上の困難をかかえ,1人当り所得が低位の国又は援助計画が比較的最近発足した国については,目標達成のために他の加盟国より多くの時間を必要とすることもあるべきことを認めている。新勧告は,また,グラント・エレメント25%以下の取引他今後政府開発援助として記録されない旨規定している。さらに,重要な要素として新勧告は,各開発途上国の状況を考慮した適正条件について共通の認識に到達することが望ましいとしており,また加盟国は,個々の開発途上国に対し供与する援助条件をハーモナイズするため最善の努力を払うよう求められることとなった。

更に緩和された条件の特別目標が国連により定義された後発開発途上国向け援助について受諾されたこれら諸国に対する援助は,贈与形態が望ましく,各援助供与国は,援助の平均グラント・エレメントを後発開途上国各国につき少なくとも86%とするか,あるいはこれら諸国グループにつき少なくとも90%とすべきである。

10 新条件勧告は,新たな政府開発援助に起因する開発途上国の債務支払の困難が増大するのを回避する上での助けとなろう。しかしながら,政府開発援助は,一般的に既に有利な条件で供与されているので,それは多くの開発途上国における債務の過度の累積問題の主要な原因ではない。

輸出信用は,他の短期および中期の取引と共に,資金源の一つとして,その結果,債務累積問題の一つの要因として次第に重要性を増している。従って,加盟国は,0ECDの他の関係委員会と協議しつつ,開発途上国向け輸出信用に対する基本的アプローチならびに輸出信用の援助および開発のための考慮との関係につき,一層の検討を行なうことに合意をみた。委員会は,また,適切な経済および債務管理政策の第一義的責任は,開発途上国自身にあることを強調した。

〔援助のアンタイイング〕

11 援助に基づく調達についての地理的諸制限を撤廃する(アンタイする)ことに関しては委員会は若干のDAC加盟国がすでに一方的に援助の大部分をアンタイしたこと、およびタイされた資金を開発途上諸国における調達のために使用することを認可することおよび事前国際入札の活用を含め,アンタイイングをさらに進めるための措置が若干の国によりとられたことに注目した。アンタイイングのための取極案についてのDAC作業は,主として最近の金融状勢のため中断されているが大多数の加盟国は国際的に合意されるスキームの下における共同および相互的アンタイイングの原則を引き続き支持していることを再確認した。

〔後発開発途上国〕

12 委員会は,DAC及びOECDの他の諸機関によって行なわれた準備作業が国連により「後発開発途上国」として識別された25カ国のための措置に関する重要な決議が本年始め,サンチャゴにおける第3回国連貿易開発会議で採択されるについて貢献したことに注目した。委員会は,同決議の一般的意図を効果的に実行に移す方法につき検討を行なった。若干の加盟国が,これらの諸国に対する2国間援助の改善のために,既に取り,また,これから取ろうとしている措置につき報告を行つた。

13 すべての開発途上諸国における貧困を軽減するため,助力する必要は認識しつつも,委員会は,後発開発途上国が2国間及び多国間資金源から後発開発途上諸国の状況に適合した資金及び技術援助の流れの増大を特に必要としているとの点で意見の一致をみた。委員会は,また,後発開発途上国の特殊な状況を考慮するために,援助供与国が例えば現地通貨融資,カウンター・パートの要件及び経常支出の融資に関する若干の規則及び手続きを緩和することが必要であるとの点で意見の一致をみた。委員会は,若干の池クターを後発開発途上国において特別の優先的配慮に値するものとして識別し,また技術援助の分野における特別の努力の必要性を強調した。後発開発途上国に対する特別条件目標に関しては,前記の通りである。委員会は,UNDPが将来に関する計画において後発開発途上国に配分される資金量を増加させるため,引続き考慮をはらい,また,UNDPが,IBRD及びこれらの諸国において特に経験を有する他の国内及び国際組織とともに,後発開発途上国に対して効果的援助の供与を促進するために指導的役割を果すよう希望を表明した。

〔今後のDACの作業の方向〕

14 委員会は,援助の質及び効率について同等の関心を払う必要があることを強調するとともに,援助量の増大を達成することは,委員会として,引き続き基本的関心事項であることを強調した。

委員会は,また,成長の恩恵のより公正な配分,雇用の創造,人口問題,農村開発,栄養水準の改善及び効果的な教育・保健施設へのより広汎なアクセスを含む開発の社会的な面へのインパクトに対して大きな注意が払われるべきであるとの点で意見の一致をみた。委員会は,また,国内及び国際レベルの双方で,貿易・商品政策,財政・金融政策,リサーチ及び工業・農業政策の分野において,第3世界の開発に貢献しうる場合には,補完的且つ一貫した行動が必要である旨を強調した。

 

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(注)委員会の加盟国は,オーストラリア,オーストリア,ベルギー,カナダ,デンマーク,フランス,ドイツ連邦共和国,イタリア,日本,オランダ,ノールウェー,ポルトガル,スウェーデン,スイス,英国,米国およびEECである。国際復興開発銀行及び国際通貨基金はオブザーバーとして参加した。 戻る