-法律問題- |
近年における外交官に対する凶悪犯罪の増加を背景として,第26回国連総会は決議2780(XXVI)により事務総長が各国政府に外交官の保護に関して見解を求めるとともに,国際法委員会が右政府見解に照らして外交官等国際法上特別の保護を受ける権利を有する人に対する犯罪防止の問題を検討し早急に条約草案を作成するよう要請した。
1972年5~7月の第24会期国際法委員会は右要請を受けて,鶴岡委員を議長とする作業部会を設け,同作業部会における作業を中心として外交官等の保護に関する条約草案を作成し国連総会に提出した。
その骨子は,各締約国は一定範囲の保護の対象となる人に対してなされる一定の行為を行為地の内外を問わず国内法上重罪とし管轄権を設定し重罰を以て処し,容疑者が自国内に逃げこんだ場合要求に応じて要求国に引渡しを行なわない限り同人を書類送検する義務を負うというものである。
同草案は第27回国連総会において国際法委員会報告の審議の一環として審議に付された。同草案に対してはアラブ諸国,アフリカ,中南米の一部,中国より厳しい批判がなされたが全体として改善の余地は相当あるが同草案を基礎として最終的な詰めを早急に行なうべしとの意見が強く,条約採択の場として外交会議開催を主張するグループ(西欧,日本)と国連総会の利用を主張するグループ(ソ連,東欧諸国)とが争った結果,後者が制して第28回国連総会において条約採択を目指して国際法委員会草案の実質審議を行なうこととなった。
国連国際商取引法委員会(UNCITRAL)はその最初の作業成果として,第5会期において,時効条約草案を完成し,1972年の第27回国連総会に提出した。
この条約は国際動産売買契約に関して買主・売主間で相互に有する権利(若干の例外を除く)の出訴期間および消滅時効について適用されるものであり,出訴期間は物品の欠陥および契約との不一致から生ずる債権については2年,それ以外は4年となっている。
同草案は第27回国連総会において国際商取引法委員会報告書の審議の一環として審議に付された。
同草案がUNCITRALで採択に至るまでに論争の的になつた主な点は,条約の適用範囲,消滅時効に関する英米法と大陸法との間の概念の相異,時効の期間(3年説と5年説が対立していた)であったが,国連総会においては,ウルグアイが時期尚早であるとして強硬に反対したのが目立つたが,実質的事項にまでたち入った議論は少なく,同草案を基に条約採択を目指すとのラインでおおむねコンセンサスが得られた。
採択時期・方法等については,へーグで採択された国際動産売買統一法(ULIS)のUNCITRALにおける改訂作業の終了をまって併せて審議採択すべしという意見(米,ウルグアイ等)もあったが,多数意見となるに至らず,結局,同草案が極めて法律・技術的性格の強いものであることから,外交会議において採択するのが適当であるとのUNCITRALの勧告を受け入れ1974年に同草案の採択のための外交会議を招集することとなった。