-資金協力- |
資金協力のうち政府開発援助に含まれるものとしては,二国間無償資金協力,二国間政府借款,および国際機関に対する出資,拠出等がある。
以下,それぞれの項目について1972年の実績を述べる。
(1) 二国間無償資金協力
1972年のわが国政府開発援助の増加要因であった二国間無償資金協力は1億3,500万ドル(416億円)であり,前年度に比し38.2%(ドルベース前年伸率,以下同様)の大幅増加となっている。
その内訳としては,フィリピンに対する賠償3,462万ドル(約107億円)および,ビルマ,韓国(清算勘定相殺分を含む),シンガポールに対する戦後処理に関連した経済協力協定に基づくもの約6,002万ドル(約185億円),インドネシア,バングラデシュ,カンボディア,ラオス,フィリピン,アフガニスタンなどに対するKR食糧援助(肥料などの援助も含む)に約1,291万ドル(約40億円)のほか,一般の無償援助としてインドシナ諸国およびタイにまたがるメコン河下流域開発基金,カンボディアの為替支持金,プレクトノット・ダム計画,ヴィエトナムのダニム・ダム修復,ラオスの為替安定基金,ナムグム・ダム修復等に対して約1,007万ドル(約31億円)および,経済開発特別援助費(2国間の無償プロジェクト援助)よりの無償援助として韓国の金烏工業高校プロジェクト,ヴィエトナムの孤児職業訓練所,およびチョーライ病院改築プロジェクト,ラオスのワッタイ空港建設,タイのAIT校舎建設,タイ―ラオス通信施設建設等のプロジェクトに対し約663万ドル(約20億円)の支出が行なわれた。
経済開発特別援助費による援助は・昭和44年度に約153万ドル(5億5,000万円)の予算をもって始められたものであるが,以後順調に拡充を続け,昭和48年度予算では約1,927万ドル(59.4億円)と急激な増加を示している。また対象地域もスリ・ランカ,バングラデシュ,アフガニスタン等東南アジア地域以外に拡がっている。
その他にバングラデシュ,フィリピン,ニカラグア等への緊急援助に約1,029万ドル(約32億円)および中南米移住地への援助約5万ドル(約7.9万ドル)の支出がある。
(2) 二国間政府借款
1972年の政府借款実績(支出納額べース)は政府開発援助の約2/3にあたる約3億717万ドル(946億円)であり,前年実績3億670万ドル(1,076億円)に比して,円貨基準では13.7%の減少となっている。政府借款は海外経済協力基金(2億2,772万ドル(701億円))および日本輸出入銀行(6,152万ドル(189億円))によるもの(再融資,債務繰延べ等を含む)を合わせて2億8,924万ドル(890億円)であり,そのほか国産米の延払い輸出等によるものが1,793万ドル(55億円)であった。前年実績では政府借款が1億9,460万ドル(683億円),米の延払いは1億1,200万ドル(393億円)であり,後者の減少が目立っている。借款の受入国は,前年と比べ,トルコ,ペルーの2カ国がふえて21カ国(うちアジア地域15カ国)となっている。他方,1972年中に貸付契約を締結した約束べースの二国間政府借款額(整理信用,米の延払を含む)は,前年の5億6,730万ドル(1,747億円)より21%増の6億8,572万ドル(2,112億円)であり,そのうち海外経済協力の基金によるもの3億5,570万ドル(1,096億円),日本輸出入銀行によるものは2億5,759万ドル(793億円)であった。
(3) 国際機関に対する贈与,出資および借款
1972年の実績は1億3,328万ドル(410億円)で前年の7,870万ドル(276億円)に比し,49%の大幅な増加をみた。その内訳は国連開発計画(UNDP)等国連機関およびアジア生産性機構等の国際機関に対する1,653万ドル(51億円)の贈与,第二世銀(IDA)に対する1億0,420万ドル(321億円)の出資,アジア開発銀行(ADB)の技術援助基金に対する3,900万ドル(120億円)の拠出があるほか,米州開銀(IDB)に対しても11052万ドル(32億円)の借款が供与されている。
「その他政府資金協力」は政府開発援助以外の政府資金による援助でわが国においては,延払い輸出や直接投資に対する日本輸出入銀行,海外経済協力基金からの,融資部分および日本銀行等政府機関による国際機関への貸付・債券取得等が含まれる。
1972年の実績(支出納額べース)は約8億5,640万ドル(2,638億円)であり,前年実績の6億5,110万ドル(2,284億円)に比して31.6%の増加であつた。これは直接投資額が2億5,949万円と前年比90.4%増であり,さらに日銀による世銀(IBRD)等への貸付および債券購入が約3億2,538万ドルと前年より約1億ドルふえたが,その反面,輸出信用等の回収が増加し,支出納額で前年より4.1%減少した結果である。
他方,民間資金協力は純然たる民間資金による経済協力で,形態としてはその他政府資金協力とほぼ同じで,輸出信用,直接投資,国際機関に対する融資等のほか,民間非営利団体による贈与も計上される。
わが国の民間資金協力は,年々着実な伸びを示してきたが,1972年においては,約12億5,790万ドル(3,874億円)と1971年の9億7,870万ドル(3,434億円)に比べ28.5%のおだやかな伸びになっている(1970年から71年への伸びは45.8%)。これは,直接投資のうち市中銀行による対外貸付が約5億5,000万ドルと前年比約4割増となり,さらにアジア開銀,世銀の起債に対する応募,米州開銀(IDB)に対する貸付等の国際機関への協力が約2億1,743万ドルに達した反面,昨年順調であった中近東・東南アジアを中心とした延払輸出が国際通貨不安等の問題もあって回収額も多く,支出純額1億9,055万ドル(前年比61.5%減)と大幅に減少したことによるものである。