-資源問題-

 

第4節 資 源 問 題

 

1. 国際石油情勢

 

 (1) OPEC諸国の動向

1972年の0PEC石油問題は,同年1月のジュネーヴ協定の締結を手始めに,ペルシア湾岸0PEC諸国の国際石油会社が持つ旧利権への事業参加交渉を中心に推移した。テヘラン・トリポリ協定による一連の原油公示価格引上げにより如実に発揮されたOPECの国際石油会社に対する交渉力の優位性に,急進派諸国による国有化政策等が相まって,1968年の第16回0PEC総会で決議された「事業参加」は1972年には具体化交渉に入ったのである。

72年3月,中東最大の操業会社ARAMCOが20パーセント参加を原則的に受諾して以来,ペルシア湾岸OPEC諸国と国際石油会社間に激しい攻防戦が展開されたが,同年10月,ニュー・ヨークでおおむね0PEC側要求に近い線で基本的合意に到達した。その後,このニュー・ヨーク協定を手直ししたリアード協定(同年12月)をべースに各国別の交渉が持たれ,同年12月から73年初にかけサウディ・アラビア,アブ・ダビ,クウェイト,カタールが順次個別協定締結(クウェイトは1973年3月31日現在未批准)に至り,上記4カ国では73年1月1日から事業参加が実現することとなった。

各国事業参加協定は細部に差異はあるがその概要は次の通りである。

(a) 産油国の参加比率は73年25パーセントでスタートし,1982年には51パーセントに増大する。

(b) 国際石油会社への補償は,資産の償却済簿価にインフレを考慮し上方修正したものを基準とする(上記4カ国の25パーセント参加に対応する補償総額は約88億ドルと推定される)。

(c) 新制度への円滑な移行を保証し,産油国々営石油会社育成・整備の時間的余裕を与えるため,会社側は政府取得原油から相当量を買戻す。

(d) 将来の投資は株主の株式所有比率に応じ按分される。

上記事業参加交渉に参加していたイラクは72年6月,同国最大の操業会社IPCを国有化した。本国有化は1961年来の両者間紛争に根ざすもので,国有化後の補償交渉も難航している。また,1951年アングロ・イラニアン石油会社を国有化したイランは,1954年コンソーシアム(国際石油財団)との間にコンソーシアム協定を締結しているが,サウディ・アラビア等湾岸産油国による事業参加交渉との絡みで自国石油産業コントロール強化を目指し,コンソーシアム協定の全面改訂を会社側に迫っている。

 (2) 米国を中心とする先進諸国の動向

OPECの参加攻勢は国際石油供給体制に大きな変革をもたらすものであり,先進大消費国では今後の石油安定確保に対する不安感が増大しつつある。これに拍車をかけているのが米国の「エネルギー危機」感の昂まりである。米国では近年国内石油・天然ガス生産の頭打ちからエネルギーの海外依存を高めており,今後この傾向が一段と強まりとくに中東石油への集中が予想されている。事態がこのまま推移すれば,米国,EC諸国,日本が中東石油の確保をめぐり過当競争の状況に立ち到ることも考えられる。

このような事態を回避するため,大消費国では北海,ノース・スロープ,アマゾン流域などの新地域での石油開発を積極化するとともに,天然ガス,原子力,合成燃料などの新しいエネルギー源への転換を促進しつつある。また,0ECDでも,石油備蓄の増強,国内消費規制の具体化,緊急時融通体制などの話し合いが続けられている。

 

2.わが国の資源問題

 

 (1) 海外資源開発の進展

わが国は経済発展にとって不可欠の資源を合理的価格で長期安定的に確保する必要があり,従来の主要な資源入手方式であった単純輸入のほか融資買鉱,開発輸入を積極的に推進していく必要性が指摘されてきたが,近時豊富な外貨蓄積を背景とした外貨貸制度の導入もあり,徐々に海外開発体制整備が進み,また大規模プロジェクトも増加している。海外銅開発としては最大級のザイール・ムソシ鉱山は72年10月開所式にこぎつけ,73年から年間銅量換算5万3,000トンの銅鉱石を開発輸入することとなった。現地政府との協力による自主開発は,このほかマレイシア・サバ州のマムート鉱山,ペルーのミチキジャイ鉱山でも具体化しつつある。

エネルギーの分野でも多角的な動きがみられた。政府・民間合わせて31億ドルの借款をインドネシアに供与することにより,合計5,800万キロリットルの低硫黄原油を確保したほか,73年以降アブダビ沖合で操業中のADMA杜にB.P.(British Petro1eum)を通じ30パーセントの資本参加を実現し,またシベリア石油・天然ガス開発問題でも民間べースで進展がみられた。

 (2) 二国間資源委員会の設置

72年9月ヴァンクーヴァーにおいて第1回日加資源委員会が開催された。これは,71年の第6回日加閣僚会議の際,カナダ側より同委員会設立方提案があり,共同コミュニケでその設立が合意されていたものである。同委員会は,近年ますます増大しつつある日加エネルギー・鉱物資源関係の重要性に鑑み日加双方の資源政策の包括的検討を行なうことによりこの分野における相互の理解を深め,日加友好協力関係の一層の進展・増進に資することを目的としており,本会合でも最近の日加資源関係の全般的レヴユーを中心に活発な討議が展開された。

同趣旨の委員会は,72年10月キャンベラで開かれた第1回日豪閣僚委員会でも早い時期に日豪間の資源問題協議を行なうことが合意されている。このようにわが国とカナダ,オーストラリアといった先進資源保有国との間で政府べースの資源委員会が設置されることとなったが,今後,発展途上の資源保有国あるいは先進消費国との間でも同様の場が持たれることに期待が高まりつつある。

 

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