-経済協力開発機構(OECD)を中心とする国際経済協力-

 

第2節 経済協力開発機構(0ECD)を中心とする国際経済協力

 

1972年は,一言にしていえば,スミソニアンでの通貨調整の跡を受け,新しい国際経済体制の秩序作りの道程において,いわば,「準備の年」に当り,OECDにとっても,今後いかなる貢献をなしうるのかという問題意議を伴った,いわば試練の年であったともいえよう。

その中で,第一に特記される出来事は,昨年5月に開催された第11回0ECD閣僚理事会であり,スミソニアンの合意の跡を受けて開かれた初めての閣僚級会合において,国際協力のあり方について意見交換を行なう格好の機会が提供されたといえる。とくに,通貨と貿易とのリンクについては,これらが相互に関連し合っており,OECDがこのようなリンク的アプローチに際し重要な役割を演ずることが合意されたことは,その後の国際経済の推移からしても極めて注目される点であろう。今一つ注目されるのは,昨年9月,貿易グループの報告書が公表され,また,そのフォローアップとして新執行委員会が開催されたことである。

貿易グルーブの報告書は,レイ前EC委員長を議長とし,政府の指名する有識者(わが方より萩原大使が参加)12人の手になるもので,各国政府の立場をコミットしたものではないが,今後の国際経済の秩序作りや,ガットにおける次期ラウンドに対処する上での各国関係者の貴重な参考資料になるものと考えられる。

さらに,貿易グループの報告書をフォローアップするため,昨年12月には新執行委員会が開催され,各国の首府から次官または次官補クラスの政策立案者が集まり,報告書のフォローアップを兼ね,通貨,貿易,投資面の重要問題について第1回目の意見交換が行なわれた。本年3月の第2回新執行委員会においては

(i)  国際収支情勢

(ii) 国際投資と多国籍企業

(iii) セーフガード条項と構造調整政策

(iv) 開発協力の諸問題について実質的な討議が行なわれた。

いずれにしても,0ECDでは,新執行委員会を軸として,ガットおよびIMFにおける交渉を補助促進していくことが期待されており,今後の動きが注目される。

 

1. 経 済 政 策

 

1972年のOECD諸国の経済をみると,景気回復が急速に進んだものの,国際収支面では不均衡の改善がみられなかった。また72年央からヨーロッパ中心にインフレが再び進行した。すなわち,米国経済の拡大的な財政・金融政策を背景に経済活動が活発化し,OECD主要7カ国の実質GNP伸び率も71年の3.3%から72年には5.8%に上昇した。こうした景気上昇から貿易はかなりの増加をみたが,景気回復のズレから,米国の経常収支の赤字が71年の28億ドルから72年に.は84億ドルに悪化するなど,各国の経常収支は期待された程改善がみられなかった。

この間,わが国は,71年末のスミソニアン合意による通貨調整の効果の顕現化を促進するため,景気振興策によるGNPギャップの縮小を図るなど国際収支調整に努力するよう強く求められた。

また,72年11月の経済政策委員会(EPC)では,国際収支問題のほか,インフレ問題が討議された。この問題はすでに70年頃重要視され,「現代のインフレ問題」という報告書も提出された後一時各国の努力もあって落着いた推移をみていたが,72年夏以降ヨーロッパを中心に再びインフレ圧力が増大してきた。EPCはこの問題を重要視し,インフレ抑制に関する結論を理事会に上程するとともに,インフレ対策の共同行動の可能性を探るため,第4作業部会において具体案の検討を行なわせることとした。

 

2. 貿 易 問 題

 

 (1) 貿易グループの報告書

上述した貿易グループの報告書(「国際貿易・経済関係の政策展望」,通常レイ・リポートと略)は,長期的な視野から国際貿易およびこれに関連する諸問題について分析し,数多くの提言を行なっている。

報告書は,全体が3部に分かれており,第1部では,国際経済関係の過去,現在および将来の展望を行なっており,第2部では主要な活動分野として,(i)通貨,(ii)工業,(iii)農業,(iv)サービス,(v)セーフガード,(vi)地域統合,(vii)開発途上国,(viii)東西貿易,(ix)機構問題を9章に分けて論じている。第3部は,一般的な結論が載せられており,付属末尾には,エバリー米代表の報告書全体に対する批判的コメントが載せられている。

通貨と貿易とのリンクや,既存特恵の問題等突っ込み不足の箇所もあるが,報告書は,上述した通り国際貿易の凡そ全ゆる問題についての展望を与えており,とくに,貿易面からみた通貨問題の分析や,貿易自由化,産業調整とセーフガードとのリンクの提言等示唆するところがきわめて大きいと考えられる。

 (2) 貿易委員会の活動

昨年9月までは,貿易グループがほぼ毎月1回開催されたため,貿易委員会としては,第35回目の会合が3月に開かれたにとどまり,そこでは専ら,貿易グルーブの活動とも関連し,今後の貿易委員会の作業を如何にして強化していくかという点についての意見交換が行なわれた。

本年1月中旬開催された第36回貿易委員会では,上記閣僚理事会や,レイ・リポートのフォローアップのための新執行委の役割とも関連し,今後の貿易委の作業計画について検討が行なわれ,非公式会合で自由な意見交換を行なった後,正式会合では,貿易委として,(i)LDC,(ii)貿易を歪める各種国内政策の調整(広い意味でのNTB),(iii)輸出信用,(iv)政府調達の作業を一層促進するとのコンセンサスが得られた。

貿易委員会の作業部会としては,輸出信用,信用保証作業部会(ECG),特恵グループのほか,貿易委WPで,貿易委の準備のほか,政府調達,一次産品を含むUNCTAD対策について随時協議が行なわれている。

(イ) 輸出信用信用保証作業部会

本部会は1964年に設置され,輸出信用の分野に秩序ある競争状態を確保するための検討を行なってきたが,この成果として,昨年4月の理事会で,輸出信用に関する,「情報交換制度」および「事前協議制度」を昨年7月より実施することが採択された。

わが国は「情報交換制度」に参加したが,この制度によって交換される情報は,(i)契約額,(ii)引渡時または前の支払額,(iii)信用の全期間およびその理由,(iv)分割払回数,各々の分割払額および各々の分割払期間および(V)ローカルコストの扱いについてである。

(ロ) OECD特恵グループ

本件会合は,1973年1月および3月の2回開催され,一般特恵の実施状況,特恵スキームの改善,UNCTAD特恵特別委員会準備,特に新国際ラウンドとの関係,後発開発途上国に対する特別措置,拡大ECと特恵等の問題につき意見の調整を行なった。

(ハ) 貿易委WP

政府調達については内外無差別を含むガイドライン策定作業が行なわれており,上記貿易委の指示もあり,本年内を目途に草案を作成することとなっている。またUNCTAD対策についても,このフォラムを利用して一次産品をはじめとするLDCとの貿易問題についてBグループの意見調整・協議が随時行なわれた。

 

3. 貿 易 外 取 引

 

 (1) 技術導入の自由化

技術導入は,1972年7月1日,自由化措置が実施され,電子計算機に関するもののみが非自由化のままとなったが,これも74年7月より自由化される。

 (2) 証 券 投 資

対内証券投資は,投機的資金の流入を防ぐ趣旨から,72年10月20日規制措置を実施,純増をストップした。他方,対外証券投資については,非上場証券の購入(5月),外国投資信託証券の国内販売(11月)の自由化が実施された。

 (3) 対内直接投資

67年の基本方針(新設企業中心,50%原則)に沿った自由化は71年8月の第4次自由化で一応終了したが,72年10月20日,対外経済政策の一環として「資本自由化を積極的に推進する」ことが閣議で決定され,73年1月18日,外資審議会に今後の進め方につき諮問がなされた。現在調査小委員会(佃委員長)が答申の具体案を検討中である。

 

4 環 境 問 題

 

1970年7月に設立された環境委員会は,先進工業国の環境問題について,Qua1ity of Life改善の観点から,多角的かつ総合的な検討を行なっている。

本委員会のもとには大気管理,水管理,化学品,都市環境に関する4つの常設のセクターグループが活動しており,とくに大気管理グループは72年9月に,東京で特別会合を行なった。

また固定施設での燃料燃焼による大気汚染,自動車の排気ガスと騒音,および紙パルプ産業による汚染の3つのテーマに関してはそれぞれ個別の作業が進められてきたが,ほぼ報告書もまとまり,何らかの環境政策上の勧告を行なうとの方向で最終段階のつめが行なわれている。

なお73年からは,産業(含農業)廃棄物問題とエネルギー問題の作業に着手することとなっている。

また経済専門家小委員会においては,公害防止費用負担の態様,環境諸基準の国際的調和,国境を越える汚染等の経済や貿易に及ぼす影響等環境問題の経済的側面について,検討を進めている。

72年5月には,本小委員会の作業をもとに,「環境問題の国際経済面に関するガイディング・プリンシプル」が理事会勧告として成立した。このガイディング・プリンシプルは,主として公害防止費用は汚染者が負担すべきであり,これに対する政府補助は原則として禁止するという「汚染者負担の原則」(PPP)と,「環境諾基準の国際的調和の原則」の2項目から成っており,これらの具体的実施については,多角的な検討が進められつつある。

また1971年5月には,人体や環境に悪影響を与える物質に対する規制が,他国の経済・貿易に悪影響を及ぼすと考えられる場合には,加盟国間で通報・協議を行なうという「化学品規制通報協議制度」が発足しており,今までにBHC,DDT,PCB等の規制に関し活発な通報が行なわれてきている。PCBについては協議も行なわれ,これをもとに,わが国や米国の積極的賛成もあって,「PCBの原則的使用禁止」が73年2月,理事会で決定された。

なお73年2月の環境委員会は,1973年の議長に,太田正已外務省官房審議官を選出しており,本委員会の運営に今後とも,わが国の果たす役割が大きくなりつつある。

 

5.科学技術および教育

 

 (1)科学技術政策委員会

0ECD加盟各国が達成した急速な経済成長は,科学技術の進歩に依るところ大であり,科学技術の振興は,経済の発展を目標としている0ECDの場で重要な課題の一つとして取り上げられている。

OECDの科学技術に関する活動の方向づけは,1971年の科学大臣会議において,人間生活の量的豊かさのみならず,その質的な向上に資すべきであるとされ,これに基づいて,1972年に,従来の科学政策委員会が廃止され,科学技術政策委員会が設立された。

この新委員会では,従来の情報政策および電算機利用に関する作業に加えて,生活の質の改善に貢献するため,新たに,(i)社会部門および産業部門の技術革新,(ii)技術管理(テクノロジー・アセスメント),(iii)社会科学,(iv)政策科学,(v)国際研究協力の諸作業に着手した。わが国の活動は,電算機利用セミナーへの積極的参加,技術管理等における貢献を通じて高く評価されており,今後もこの分野での活躍が期待されている。

 (2) 原 子 力 機 関

従来,わが国は準加盟国として原子力機関(NEA)の活動に参加して来たが,72年4月20日正式に加盟を行ない六機関の全ての活動に参加することとなった。六機関は,原子力の平和利用のため,情報交換,共同研究,技術者の交流等を通じ活発な活動を行なっており,最近では,放射性廃棄物の海洋投棄に関する実験,食品保存のための適切な放射線照射の方法と量についての研究,高速炉開発等を行なっている。

なお,わが国の正式加盟に伴ない,従来の欧州原子力機関は原子力機関と名称を変更するとともに,目下その機構改革を検討している。

 (3) 教育委員会および教育研究革新センター

教育委員会および教育研究革新センター(CERI)は,教育の質的向上を図るための国際協力を推進することを目的としており,具体的には教育資源の効率的活用および社会・経済の目標との整合性という二つの観点に立って活動を行なっている。教育委員会は,各国の教育政策審査をはじめ,教育指標の開発,教育財政の研究,教師の果す役割の研究,ポスト・セカンダリー教育の問題等に重点を置いている。他方,CERIは,教育革新問題を扱う研究機関であり,教育と社会との関係,教育・学習課程の改革,教育革新のためのシステム強化等をテーマとした活動(就学前教育,リカレント・エデュケーション,カリキュラム開発等に重点)を行なって来た。わが国はCERI分担金の最大の拠出国であるのみならず,CERI執行委員会のメンバーにも再選され,その活躍を期待されている。

 

6.工業,エネルギー,農業,労働等の問題

 

 (1) 工 業 委 員 会

1972年のOECD工業委員会の最大の課題は,従来余りにも多岐に亘っていた本委員会の部門別,問題別討議事項を整理総合したことと,長期的観点から本委員会として,どのような問題をとり上げるべきかについて検討が行なわれた点にある。この結果,本委員会としては,(i)産業政策,(ii)地域開発政策,(iii)国際企業,(iv)産業非効用(公害問題)を問題別に検討するほか,(v)業種別討議,(vi)サービス産業および(vii)産業統計収集に大別した問題を扱うこととなった。従って,1972年まで,主として実態調査を中心として検討を行なってきた経営教育,中小商業(サービス産業へ吸収)の両問題,ならびに住宅,鉄道車輛,NC工作機械の各業種別の作業部会は,所期の目的を果したものとして,これが作業を完了することとなった。また,上記(V)の業種別問題についても,政府間の協力を必要とする明確な問題であって,かつ,ケース・スタディーが本委員会の幅広い政策問題の検討に寄与しうる分野に限定し,具体的な付託事項と期限を付して検討せしめることとなった。このため,鉄鋼,紙パルプ,繊維,航空機,アルミの各部門別問題も速みやかに,遅くとも1973年末までに作業を完了し,その活動の継続については,改めて決定することとなった。

なお,本委員会と他の委員会との合同作業都会としては,企業内部環境(労社委),紙パルプ公害および自動車排気ガス(ともに環境委)がある。

 (2) エネルギー委員会および石油委員会

エネルギー問題について,0ECDは72年5月の閣僚理事会の結果,長期エネルギー政策を策定すべきことを決定した。これは,エネルギーの開発,利用,保全の問題を今後20年間の長期的視野に立って環境保全的考慮を含め多角的に検討し,長期的エネルギー資源問題について総合的な勧告案を策定しようというものである。そのほか,エネルギー問題に関し,0ECDは従来から行なってきた各種エネルギーの長期需給予測,緊急事態に際してのエネルギーの最有効利用,各種エネルギー間の相互補完ないし代替の可能性などについて検討した。また,石油委員会で研究ならびに検討を行なってきた新石油報告書(New Oil Report)の公表を決定した。

 (3) 制限的商慣行専門家委員会

制限的商慣行専門家委員会は,多国籍企業,合併,企業の市場支配等,企業活動の巨大化,国際化に関連する問題や,販売拒否,パテント,排他的代理店契約等公正取引上の諸問題,輸出カルテル等国際貿易上の問題の検討を行なっている。

とくに,制限的商慣行に関する現行の「通報制度」を一歩進め,国際的な「調停手続」に発展させようとの努力や,多国籍企業作業部会におけるCode of good behaviourの検討等の進歩は注目される。

 (4) 農業委員会および水産委員会

1972年における農業面での活動は,多角的かつ総合的なアプローチのなかで政策問題に重点が置かれ,農業政策の国際的調整問題が幅広く取りあげられた。

1968年以来中断されていた農業大臣会議も農業問題を巡る情勢から漸やく開催の気運が盛り上りを見せ,現下の農業問題を主要テーマとして1973年4月に開催することに決定した。

農業委(各作業部会を含む)においては,農業構造改善措置,土地利用の研究および供給管理事情の検討が進められたが,就中加盟国の経済的側面および農業と環境の関連における農業政策の調整(構造改善,価格政策,貿易政策)を検討するための,国別農業政策レヴューを1973年初頭より実施することになった。

水産委の1972年の活動は主として各国水産業の実情分析および保護措置の検討を進めたほか,特定有用漁種資源に関する漁獲努力の資源量に対する過剰化傾向の問題および漁業の生態学面からの検討が進められた。

 (5) 労働力社会問題委員会

1972年の労社委の活動は,1964年の経済成長を促進する手段としての積極的雇用政策の勧告を基盤として展開された加盟国の国別労働力政策の検討が,それなりの成果を挙げた事実は高く評価されたものの,人間の福祉を重視する現代的要請に充分応じ得ない事実に鑑み,労使関係および社会問題の分野に活動の重点が移された。

すなわち国民の生活および福祉の実状,変化,施策の二ーズ等を示す社会指標の検討,生産,雇用,および労働者の生活の質的側面の調和を如何にして達成するかの問題,労働者のジョッブ・サティスフクションについての検討の進め方および企業における労使協力のあり方等,労働者のQua1ity of 1ifeの改善問題により積極的に取り組んできた。

 (6) 消費者政策委員会

1972年の消費者政策委の活動は,従来ともすれば生産者行政に重点が置かれ,なおざりにされて来た消費者保護政策の必要性が近年とみに高まって来たことにより,2年の試験的期間を設けて,主として,商品テストおよび表示について検討を進めて来たが,各国とも右の成果を高く評価し,さらに5年の期間延長を要望し理事会において正式決定をみたことにより,活動の重点を消費物資の表示および安全問題に置いて掘り下げた検討を進めて来た。

 

7. 海運・造船問題

 

 (1) 海運委員会

1972年12月の国連総会において,発展途上国の輸出貿易の発展と国際収支の改善を目的として,トレードシェアの規定,国際仲裁方式等を内容とした定期船同盟コードの条約化が強行採決されたが,海運先進国であるOECD加盟国の課題は,いかに海運自由の立場を擁護し得るかということである。OECD海運委員会は,このための特別グループを設置して,加盟国間の意見調整を行なっているが,加盟国間においてもその海運政策に大きな隔りがあるところ,その調整の場としての0ECDの活用が期待されている。この他に(i)海運政策問題,(ii)加盟国の海運政策,(iii)コンテナ輸送問題,(iv)便宜置籍船問題等を取上げた。

 (2) 造 船 部 会

造船部会は,「造船業の正常な競争条件を歪曲する全ての要因の累進的削減」を図ることを目的としており日本を含め,英国,ドイツ,スウェーデン,フランス,イタリア,スペイン等主要造船国13カ国が参加している。1969年には「船舶の輸出信用に関する了解」(現行の条件は,頭金20%以上,返済期間8年以下,金利7.5%以上)が,また,72年10月には「造船業における正常な競争条件に対する障害の漸進的除去のための一般取極がそれぞれOECD理事会で採択された。

この一般取極は,(i)政府の助成をうけた輸出信用,(ii)直接建造補助,(iii)関税またはその他の輸入障壁,(iv)差別的税政策,(v)差別的な公的規則または国内慣行,(vi)国内造船業に対する投資および再編成のための特定の援助を対象としており,(i)については,市中金利に近いところまで政府助成を削減し,(ii)からま(vi)での措置については,3年以内に全廃することとしている。

第18回造船部会は,昨年11月東京において開催されたが,その席上,欧州各国より,わが国が,世界船舶建造量の約半分を建造しており,さらに,三光汽船が欧州船主との間に,タンカーの大量用船契約を締結しているため,益々欧州造船業のシェアが低下していくとして,わが国の設備投資に対して,強い懸念が表明された。また,造船業の不況が需要と供給のアンバランスに起因するとの欧州側主張に基づき,需要供給調査を行なうサブ・グループが設立された。わが国としては,欧州において造船業の不況が失業問題等に発展していることにも鑑み,今後とも必要以上に欧州を刺激しないよう考慮してゆく必要があると思われる。

 

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