-資源外交-

 

第19節 資源外交

 

1.資源をめぐる国際情勢

 

かつて列強が覇を競い合った時代に,資源を制したのは,強大な軍事力を背景とした資源外交政策であった。第二次大戦後においては,国連の平和維持機能を中心とする体制下で,東西問題,南北問題等とも絡み合いながら,関係各国の経済力を背景とした対外資源政策がこれにとって代った。しかし過去の植民地時代から,世界の資源経済に地歩を築いてきた,いわゆるメジャーズと呼ばれる少数の国際資源資本が,豊富な資金力,技術力に加えて,長年培ってきた経験だと総合力でもって,独占的かつ強固な資源調達供給体制を作りあげた。しかし今やその情勢も一変しつつある。

政治的独立だけでなく,経済的独立を目指す発展途上の資源保有国は,国連の「天然資源恒久主権」決議を大義名分に,国際資源資本に対し激しい攻勢をかけつつある。こうした動きは,0PEC(石油輸出国機構)やCIPEC(銅輸出国政府間協議会)という組織を通じた統一行動をとることもあれば,国際石油,産銅資本の相次ぐ国有化にみられるような,関係資源保有国の個別行動となつて具体化する場合もある。いずれにせよ,かつてのメジャーズによる資源支配体制は,まさに動揺しつつあり,徐々に変貌を遂げるものと思われる。この結果,現在の資源保有国,メジャーズおよび消費国の3極からなる過渡的体制を経て,将来は資源保有国中心の資源管理体制へ移行するものとみられる。

 

2. 国際機関における資源問題

 

 (1) 天然資源委員会の動き

戦後,通貨問題についてはIMF,貿易問題についてはGATTといった国際機関が設立され,関係諸問題の国際的解決がはかられているが,資源問題については,資源生産国,消費国を包含する国際協調体制確立への努力に乏しかったといえよう。そうした中で注目されるのは,1970年に国連経済社会理事会の下部機関として創設された「天然資源委員会」の動向である。

同委員会はニュー・ヨーク,ナイロビに続き,73年2月にはニュー・デリーで第3回会議を開催した。この委員会が取扱う分野は多岐にわたるが,どちらかといえば,発展途上国側からの天然資源恒久主権,資源開発と工業化のための援助要請といった,先進国突上げの議論が多く,先進国が守勢に回るUNCTAD的性格が強い。しかしながら最近の討議事項には,「国連天然資源開発回転基金」のような,具体的行動につながるものや,資源需給の長期予測などの調査研究活動,という注目される動きも芽ばえており,今後,資源問題協議機関として唯一の同委員会の活動に期待が寄せられている。

国連には,このほかUNDP(国連開発計画),エカフェその他の地域経済委員会など,発展途上国資源開発問題を取扱う機関が存在し,今後その有機的活動が望まれる。

 (2) 資源別の国際機関

次に個別資源別の国際機関としては次の諸機関が機能している。第一に,需給のバランスをはかることを主目的に生産,消費国双方をメンバーとする機関としては国際すず理事会,国際鉛・亜鉛研究会,UNCTADタングステン委員会などがある。第二に同目的を生産国間で達成せんとする機構として前述のOPECやCIPECのほか,最近では硫黄,ウラン鉱石などの資源分野で先進生産国を含む生産国間会議が持たれている。

 (3) 0ECDの活動

他方,先進資源消費国が一同に会しているOECDのエネルギー分野における活動振りが注目される。72年5月のOECD閣僚理事会では,先進国間のエネルギー問題を長期的,総合的に検討することが合意され,今後,エネルギー委員会,石油委員会のみならず,NEA,環境委員会,科学技術政策委員会などが協力しつつ,総合的検討を行なうことになった。また石油委員会では,加盟諸国の石油備蓄の増強,石油消費規制,緊急時の融通体制確立といった政策分野への関与が深まっている。

 

3. 資源外交の新局面

 

国際資源問題は,資源の貿易・投資といった国際経済面を中心に,南北問題,東西問題,あるいはアラブ・イスラエル抗争などの国際政治・外交問題や,海洋資源開発分野でみられるような国際法的側面などが複雑に絡みあっている。このほか,最近では国連人間環境会議でも取り上げられた資源開発・利用にともなう環境破壊の問題,あるいは技術革新と未利用資源の活用などとも密接な係わりを持っており,今後,このような国際資源問題全般を,互いの利害対立を乗り越えて,関係諸国がどのような形で解決をはかっていくかが全世界的な課題となってこよう。

 

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