-その他の重要外交文書等-

 

6. その他の重要外交文書等

 

(1) 1971年NATO閣僚理事会(於リスボン)最終コミュニケ(要旨)

 

(1971年6月4日)

 

1. NATO閣僚理事会は1971年6月3,4日の両日リスボンで開催された。

2. 大西洋同盟の一貫した政治目的は,緊張を緩和し欧州に正義にかなつた垣久平和秩序を樹立するための効果的な安全保障措置を伴ったイニシアティヴを通じて平和を追求することである。

同盟は,欧州の平和と安定及び全加盟国の安全保障にとり必要不可欠のものである。

3. 閣僚は,欧州と地中海に主として関心を払いつつ,国際情勢を検討した。

4. 閣僚は,加盟諸国がワルシャワ条約機構諸国及びその他の欧州諸国との接触,探究,交渉を強化するために同盟の既定政策の枠内でとつたいくつかのイニシアティヴの進捗状況を評価した。

これら全てのイニシアティヴが目的とするところは,欧州の安全保障に関する基本的諸問題に正当なる解決を見いだし,もつて東西関係の真の改善を達成することにある。閣僚は,達成された結果に満足をもつて注目し,これらの努力の継続が緊張緩和の推進に一層資するようにとの希望を表明した。

同盟諸国は,これらの外交活動にこれまでも緊密に協議を行なつて来たが,今後も緊密に協議を続けるであろう。

5. 閣僚は,米ソの間で,攻撃的および防衛的戦略兵器に制限を付することを目的として交渉が継続されていることを歓迎した。

閣僚は,この問題に関して北大西洋理事会において有益な討議が行なわれたことに注目した。

閣僚は,また5月20日に発表された今後の交渉の枠に関する米ソ間の合意を歓迎し,これが討議を促進し,北大西洋同盟の共通の安全保障上の利益と世界の安定を強化するような具体的成果が早期に達成されることを心から希望した。

6. ベルリン問題の検討に際し,閣僚は,ベルリンをめぐる不安定の諸原因を軽減する必要性を強調した。

過去四半世紀の間,欧州の東西関係を特徴づけた緊張の多くはベルリンをめぐる情勢から発した。

閣僚は,ベルリン会談の成功は,欧州の東西関係の意味深い永続的改善を達成しようとする同盟の努力に対するソ連の参加用意の証左とみなすであろう。

7. 閣僚はそれ故,仏・英・米政府のベルリンに関して合意を達成しようとする努力に対し完全なる支持を与えることを再確認した。閣僚は,本交渉の目的はベルリンの地位を害することなく確固たる約束に基づいて特定の改善を達成することにあるとの3国政府の見解と意見を共にした。この脈絡において,閣僚は,ドイツ連邦共和国と西ベルリン間の人と物の自由な移動,西ベルリン住民の移動機会の改善,3国政府の同意の下に進展してきた西ベルリンとドイツ連邦共和国の関係の尊重について合意を達成することの重要性を強調した。

8. 閣僚は,両独間のモードゥス・ヴィヴェンディを目的とする会談の進展は,ドイツの特殊な情勢を考慮すると,欧州の緊張緩和に対する重要な貢献をなすものであると考えている。

9. 閣僚は,欧州におげる安全保障と協力という本質的な問題に関する多角的接触の樹立の見通しを検討し,再びベルリン交渉の成功の重要性を強調した。

閣僚は,本交渉が最近週間に,より活発な局面に入り,進展をみせたことに満足をもつて注目した。

閣僚は,次回閣僚理事会以前にベルリン交渉が成功裡に終了し,欧州におげる安全保障と協力に関する会議のための多角的協議が始められることを希望する。

この精神において閣僚は,常設理事会に対し国際情発に関する通常の協議の枠内で,多角的会談の開始にあたつて遅滞なく対処できるよう欧州における安全保障と協力に関するあらゆる接触と会談において達成された諸結果を定期的に検討することを続けるよう要請した。

10. このような多角的接触を予想して,常設理事会はありうべき東西交渉の内容と手続に関する討議のための準備を活発に継続し,右に関する報告を閣僚理事会に提出した。

本報告は,そのような本交渉の成功は,閣僚によつてこれまでのコミュニケや宣言の中で引用された国家間の関係を支配する原則の普遍的尊重の上に築かれねばならないであろうと強調した。

経済・技術・科学・文化・環境の分野における東西間の協力の推進のさまざまな見通しが詳細に吟味された。また本報告は,あらゆる分野における国際協力の発展に必要な人,思想,情報のより自由な移動を促進するために合意が望まれる重要な諸要素を詳細に検討した。

11. 閣僚は,これらの研究に注目し,常設理事会に対し東西間の多角的接触の開始を待ちながらこれらの研究を続けるよう指示した。

12. 閣僚は,常設理事会によつて準備された地中海情勢に関する報告をテイク・ノートした。

現在東地中海で平和の回復のための努力がなされていることを歓迎しつつ,閣僚は当該地域全般の情勢は引き続き重大な懸念を与えていることに注視した。

本報告の結論に照らし,閣僚は,常設理事会に対しこのような情発に関する協議を続け次回閣僚理事会に報告するよう指示した。

13. 1968年のレイキャヴィク宣言と1970年のローマ宣言を発し,1970年のブラッセル・コミュニケの第15,16項に署名した同盟国政府は,ソ連と他の欧州諸国に対し,相互的均衡的兵力削減を討議するよう一貫して呼びかけてきた。

閣僚は,MBFR(相互的均衡的兵力削減)の狙うところは欧州におげる軍事的衝突の減少であるが,これは欧州における安全保障と安定の増大であることを再確認した。

14. このような背景の中で,これらの政府を代表している閣僚は,中欧における軍隊と軍備の削減を考慮する用意があるとのソ連指導部の反応を歓迎した。

これらのソ連の反応は,さらに解明される必要がおるが,他国の反応とともに同盟の最も強い関心をひいている。

15. MBFR交渉のための共通の基盤が存在するかどうかを決定するための努力において閣僚は,ローマ宣言第3項にのべられている考慮にもとづきソ連をはじめとする関係各国政術に対して打診を続行,強化することに合意した。各閣僚は,交渉を,それが実際的なものとなり次第,開始する旨の意思を表明した。閣僚は,このため,できるだけ早い時期に各国の外務次官ないし高官がブラッセルに会合し,予備的接触の結果を検討しMBFRの実際的手続的アプローチにつき協議することに合意した。

16. 閣僚は,ソ連をはじめとする関係各国政府とさらに予備的話合いを行なうことにつき理事会に責任を負うべき1名ないし複数のNATO代表を適当な時期に指名し,最終的にはMBFR交渉の時期,場所,手続,議題を決定する用意があることを宣言した。

17. 軍備管理および軍縮の分野におけるその他の進展につき検討した結果,閣僚は,「海底軍事利用禁止条約」の締結を重要なステップの一つとして注目した。閣僚は生物及び化学兵器の禁止に関する合意達成をめざす軍縮委員会の会合の作業を満足をもつて注目した。閣僚は,あらゆる国の安全保障と両立しうる効果的かつ十分に査察の行なわれる軍備制限及び軍縮措置の重要性を再確認し,常設理事会に対し軍備管理及び軍縮に関するすべての分野における同盟の努力と研究を続行するよう要請した。

18. 閣僚は,事務総長が報告したような「現代社会の挑戦」委員会のあげた大きな成果に満足の意を表した。閣僚は,とりわけ,石油による海水汚濁対策及び道路の安全向上について同盟各国が行なつた大いなる貢献に特に注目した。また,沿岸水域及び内水の汚濁及び災害救助の問題に関して作業が鋭意続行されている事実を歓迎した。閣僚は,さらに委員会が現代のテクノロジーの問題及び環境破壊によ現代社会が直面している危険につき各国政府並びに世論の警戒を促すにあたつてなした貢献を歓迎した。閣僚は,多くの同盟各国政府がそのような問題に対処するため新しい政府機構を備えるに至つたことに注目した。閣僚は,同盟の努力の恩恵が,同盟国に限られることなく同盟外の国及び大きな基盤を有する国際機関に対しても及んでいることに特に注目した。

19. マンリオ・ブロジオ氏は本機構の事務局長を辞任する意を閣僚に伝えていたが,閣僚は同氏が近く辞任することになつたことに遺憾の意を表した。同氏に対する送辞として,閤僚は,同氏がしばしば困難な事態にあたつて見事な手腕を発揮したことに意をとどめ,また防衛と緊張緩和のため任務を果すにあたつて示した忍耐と根気を強調した。

閣瞭は,同氏が過去7年にわたつて同盟と平和に特段の貢献を行なったことに対し,深く謝意を表した。

20. 理事会は,ジョセフ・ルンス・オランダ外相に対し,1971年10月1日より事務局長に就任するよう招請した。同氏はこの招請を受諾する旨理事会に通報した。

21. 次期北大西洋理事会は,1971年12月,ブラッセルにおいて開催されることとなつた。

22. 各閣僚は,伊外相に対し、理事会議長として,本コミュニケを中立国,非同盟国政府をも含め,すべての他の関係各国に外交径路を通じ伝達するよう要請した。

 

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