-主な発表,記事資料-

 

5. 主な発表,記事資料

 

(1) 毛製品及び人造繊維製品に関する日米政府間取極の署名に関する官房長官談話

 

(昭和47年1月4日)

 

本日,ワシントンにおいて牛場駐米大使とケネディ大使との間において,対米繊維輸出規制に関する政府問取極が署名された。

客年10月15日,田中通商産業大臣とケネディ大使との間において,日米繊維問題に関する基本的了解に達し,これを盛つた了解覚書のイニシアルが行なわれたが,その後両国政府間において,これを政府間取極の形にするための交渉を重ねてきた結果,このたび案文につき合意をみるに至つたので本日,署名の運びとなつた次第である。

繊維聞題は過去約3年に亘る日米経済関係の大きな懸案であつたが,今回の政府間取極の署名によりこれが解決をみたことは,日米友好親善関係の増進にとつて大きな意義があるものと確信する。

政府は,また,本問題の解決を通じて,自由貿易の一層の発展が図られることを期待するものであり,今後とも国際経済情勢の推移を見極めつつ,自由と調和を基調とする貿易体制を強化するため,国際的な場において,積極的な役割を果たし,世界経済の安定と拡大に貢献してまいりたいと考える。

なお,政府としては,本件解決に関連して,この対米繊維輸出規制に伴う経済環境の変化に対処し,繊維産業の構造改善を推進すること等のため,過剰設備の買上げ処理等所要の対策を講ずることとした。

国民各位のご理解と今後の措置の円滑な遂行のためのご協力をお願いする次第である。

 

(2) バングラデシュ承認にあたつての福田外務大臣談話

(昭和47年2月10日)

 

1. 政府は本日の閣議でバングラデシュ人民共和国を承認することを決定し,本大臣よりこの旨を直ちに先方のモハマッド・アブダス・サマド・アザド外務大臣に通報するとともに,同国との間にすみやかに外交関係の樹立を希望する旨を伝えた。

同時に佐藤総理よりバングラデシュの生誕を祝福し,バングラデシュが発展と繁栄の基礎作りに成功することを祈念する旨の親電をムジブル・ラーマン首相宛発出した。

2. バングラデシュについては,ムジブル・ラーマン首相に率いられる新政府が同国の民衆から圧倒的支持を受け,かつ有効な統治を確立するに至つたと認められ,諸外国も2月8日現在,英,ソ連,豪等を含む29カ国がこれを承認したことが確認されている。

7,500万の人口を有する同国の平和と安定はアジアの一国として我国も強く希望するところであり,この実現のためには現実を直視し同国を国際社会の名誉ある一員として迎え入れることが必要と考える。

3. 現在のところパキスタンはバングラデシュの独立を承認していないが,我国としては今回バングラデシュを承認しても,パキスタンとは従来からの友好親善関係を引続き維持し発展せしめる方針に変更はない。佐藤総理もブット大統領に対しバングラデシュ承認につき親電をもつて通報するとともにこの方針を伝えた。また我国としてはパキスタンとバングラデシュとの間にすみやかに友好親善関係が樹立されることを希望している。

 

(3) 軍縮委員会に対する福田外務大臣のメッセージ

 

(昭和47年2月29日)

 

本年度の軍縮委員会の初会合と際し,私は日本国政府及び国民を代表して,本委員会のすべての代表各的に対し,次のメッセージをお伝えしたいと思います。

今日の世界情勢を顧みるに,戦後の国際秩序は今や大きな転換期にさしかかつており,国際関係の基調は,かつての東西対立の時代から対話の時代へ向つての展開を示しております。かかる趨勢の中にあって,このたび行なわれたニクソン米国大統領の北京訪問にも如実に示されている如く,諸国民,諸国家の間で,緊張緩和の方向へ向かつて,これまでにない大きな努力が払われております。こうした国際緊張緩和への高まりこそ,諸国民の永年の悲願である軍縮の達成,平和の確立を約束する原動力となり得るものであることは疑う余地がありません。

わが国は,従来より世界の平和と安全にとって軍縮問題の解決が重要であることを強調し,とりわけ核戦争の脅威を払拭し,国際緊張を緩和するための核軍縮の重要性を訴えて来ましたが,私は,軍縮交渉をとりまく国際緊張が現在のように好転しているこの時期にこそ,軍縮委員会は軍縮,特に核軍縮の分野で一層具体的な成果をあげるための格別の努力を払うべきものと考えます。わが政府は,そのためにいかなる協力をも惜しむものでないことをここに明らかにいたします。特にわが国としては,核軍縮への第一歩として,当面の最大の課題である包括的核実験禁止の実明に向かつて,本日開会される軍縮委員会が具体的成果をあげることを強く希望して止みません。

本年は,軍縮委員会の開催とほぼ時を同じうして,2つの重要な国際会議が開催されます。4月にサンチャゴで開催される予定の国連貿易開発会議は,人類の経済的福祉の一層の向上をめざした世界的な会議であり,また6月にストックホルムで開催される予定の国連人間環境会議は,人類の生存のために不可欠な自然環境を保全しようとする諸国民の努力の表われでありますが,こうした諸国民の願望を達成するためには,他力において貴重な資源の浪費を招く軍備拡大競争の速やかな停止と,人間環境の破壊を招く倶れのある核実験の全面的禁止の達成が重要であると考えます。この意味からも,今後の軍縮委員会の活動に,わが国民のみならず,世界の諸国民の寄せる期待は大きいものがあるといわざるを得ません。私は,このように重要な時期に開催される軍縮委員会が,その期待に応えて,軍縮の分野において一層実質的な成果を収めることを強く希望してやみません。

 

(4) 尖閣諸島の領有権問題について

 

(昭和47年3月8日)

 

尖閣諸島は,明治18年以降政府が沖縄県当局を通ずる等の方法により再三にわたり現地調査を行ない,単にこれが無人島であるのみならず,清国の支配が及んでいる痕跡がないことを慎重確認の上,明治28年1月14日に現地に標杭を建設する旨の閣議決定を行なつて正式にわが国の領土に編入することとしたものである。

同諸島は爾来歴史的に一貫してわが国の領土たる南西諸島の一部を構成しており,明治28年5月発効の下関条約第2条に基づきわが国が清国より割譲を受けた台湾及び澎湖諸島には合まれていない。

従って,サン・フランシスコ平和条約においても,尖閣諸島は,同条約第2条に基づきわが国が放棄した領土のうちには含まれず,第3条に基づき南西諸島の一部としてアメリカ合衆国の施政下に置かれ,昨年6月17日署名の琉球諸島及び大東諸島に関する日本国とアメリカ合衆国との間の協定(沖縄返還協定)によりわが国に施政権が返還されることとなつている地域の中に含まれている。以上の事実は,わが国の領土としての尖閣諸島の地位を何よりも明済に示すものである。

なお,中国が尖閣諸島を台湾の一部と考えていなかつたことは,サン・フランシスコ平和条約第3条に基づき米国の施政下に置かれた地域に同諸島が含まれている事実に対し従来何等異議を唱えなかつたことからも明らかであり,中華民国政府の場合も中華人民共和国政府の場合も1970年後半東シナ海大陸棚の石油開発の動きが表面化するに及びはじめて尖閣諸島の領有権を問題とするに至つたものである。

また,従来中華民国政府及び中華人民共和国政府がいわゆる歴史的,地理的ないし地質的根拠等として挙げている諸点はいずれも尖閣諸島に対する中国の領有権の主張を裏付けるに足る国際法上有効な論拠とはいえない。

 

目次へ