-日本政府が関与した重要共同コミュニケおよび政府声明-

 

(9) 佐藤総理大臣・エチェベリーア・メキシコ合衆国大統領共同コミュニケ

 

(1972年3月14日 東京にて)

 

メキシコ合衆国大統領夫妻は,日本政府の公式招待により,1972年3月9日より14日まで日本を訪問した。

大統領には,エミリオ・オー・ラバサ外務大臣,カルロス・トレス・マンソ商工大臣,エウヘニオ・メンデス通信運輸大臣兼国家科学技術審議会議長が随行した。

メキシコ合衆国大統領夫妻は,3月9日天皇・皇后両陛下と会見した。

エチェベリーア大統領と佐藤総理大臣は,国際情勢の主要な局面につき話合うとともに,政治,文化及び経済の分野におけるメキシコと日本との間の関係の現状を検討した。大統領と総理大臣は,両者の会談が,両国間の関係を強化し,教育,科学,文化及び経済の分野における交流の拡大を可能とする友好的かつ政治的基盤を完成する上で,時宜に適し,また有益なものであつたと評価した。

両首脳は,この会談が,日墨両国間関係の歴史において,新時代の幕を開けるものとなろうとの確信を表明した。

大統領と総理大臣は,相互尊敬の精神に則つて,友好的で率直な雰囲気のうちに行なわれた会談において,世界の諸問題に対する両国それぞれの立場をより明確かつ完全に理解するとともに,平和が人類の共存にとり,もつとも貴重なものであることを再確認し,また世界各国の主権と独立を尊重すること及び諸国民間の関係において政治経済上の正義を守ることにより平和の維持に寄与しようとする両国政府の決意を新らたにした。

大統領と総理大臣は,平和を維持し,国際協力を促進するために最も効果的な機関の一つとして諸国民が認めている国際連合に対し,断乎たる支持を与えるものであることを再び強調した。

両国首脳は,核軍縮を始めとする軍縮を世界的規模で推進しようとしている国連の努力を多とすることについて両国の立場が一致していることを確認するとともに,軍縮に関する話合いが国連総会およびジュネーブの軍縮委員会などを通じて進展するよう力を合せて努力する考えである旨述べた。大統領は,現代の基本的条約の一つとして,ラテン・アメリカ非核化のためのトラテロルコ条約の名を挙げてこれを説明した。これに対し,総理大臣は,同条約が完全且つ効果的に適用されるであろうことを祈念すると述べた。

大統領と総理大臣は,大統領の訪日中両国外務大臣の間で行なわれた航空業務に関する協定の署名及び査証免除に関する口上書の交換について,満足の意を表明した。両国首脳は,これらの国際取決めが両国間のより直接的な交通路を開くとともに,日墨両国民間の距離の短縮をはかる上で有する重要性を強調した。

大統領と総理大臣は近年文化,科学及び技術の分野におけるメキシコと日本との関係がますます緊密化しつつあることを喜び,研修生・学生等交流計画の順調な進展に満足の意を表した。大統領は,交流計画及び他の手段による青年の交流の増大を希望する旨表明した。総理大臣は,この構想に対し好意的考慮を払う旨述べた。

両首脳は,文化協定のより効果的適用を確保し,且つフィルム及び広報用資材の交換を含むメキシコ及び日本両国民間の認識,理解及び友情の強化に寄与する文化活動を奨励すべく努力することたつき意見の一致を見た。大統領は,メキシコ及び日本国の関係機関の共同の努力により,メキシコにおいて日本研究計画が速やかに樹立されるよう希望を表明した。

両国首脳は,両国が目的とするところとして,両国間の相互かつ直接の貿易の拡大を指摘した。

大統領は,日本市場へ輸出されるメキシコ産品の多様化が伝統的産品の輸出増進を損うことなく実現するように一層努力する考えである旨述べ,総理大臣は,その努力の実現に協力する考えであると述べた。

大統領は,日本の実施している一般特恵制度がメキシコ産品を大いに利するであろうことを希望すると述べた。

両国首脳は,両国の実業家がメキシコの経済発展に資する諸分野において,同国の法規に従つて共同投資を行なう努力に関し,支持を表明した。これらの分野としては,鉱業,金属工業,漁業を含む輸出向けの産業分野も考慮に入れられる。

大統領および総理大臣は,両国の民間機関の間および企業の役員間の直接の関係が増大し,かつ多様化してきたことについて満足の意を表明した。

総理大臣は,メキシコ政府が,日本の企業の代表者のメキシコヘの入国および滞在を容易にするような方策をとることを希望すると述べ,これに対し,大統領は,関係当局に然るべき考慮を払うよう要請する考えであると答えた。

大統領と総理大臣は,日本がラサロ・アルデナス・ラス・トルーチャス製鉄所建設計画および第4次電力計画への参加につき関心を有することについて満足の意を表明した。

大統領と総理大臣は,メキシコ太平洋岸の港湾改善計画の重要性について話合つた。

総理大臣は,日本政府がメキシコ太平洋岸の港湾,特にマンサニーリヨ港の施設の改善に対し,近くメキシコに派遣される技術調査団の報告を勘案して有利な条件での資金供与に協力する用意があると述べた。

さらに両首脳は,日本政府が電気通信センターの運営を通じてメキシコ政府に与えてきた協力の成果を確認し合うとともに電気通信関係の分野における開発計画に日本が参加する可能性について満足の意を表した。

エチェベリーア大統領および佐藤総理大臣は両者の会談が,両国民の発展に現実的かつ効果的貢献をなし,世界平和に寄与することを心から祈念する旨を述べた。

エチェベリーア大統領夫妻は,日本訪問を了えるに当り,日本国官民より受けた厚遇に謝意を表するとともに日本国の繁栄を哀心から祈念する旨述べた。

 

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