(1971年9月14日)
1. 第6回日加閣僚委員会は,1971年9月13日及び14日カナダのトロント市において開催された。
2. カナダ側代表はミッチェル・シャープ外務大臣,エドガー・J・ベンソン大蔵大臣,ジャンルック・ペパン通商産業大臣,J・J・グリーン・エネルギー鉱山・資源大臣,ホレス・A・オルソン農業大臣,ロン・バスフォード消費者法人大臣及びハーバート・O・モラン駐日カナダ大使であつた。
日本側代表は福田赳夫外務大臣,水田三喜男大蔵大臣,赤城宗徳農林大臣,田中角栄通商産業大臣,木村俊夫国務大臣兼経済企画庁長官及び近藤晋一駐カナダ日本国大使であつた。
3. 両国閣僚は,特にアジア及び太平洋地域の情勢に重点をおきつつ一般国際情勢について検討した。
両国閣僚はまた,それぞれの中国政策について討議し,今後とも協議を続けることに合意した。
両国閣僚は,アジアの平和と繁栄が,世界の平和と繁栄に重要な影響を及ぼすことを認識し,アジアの発展途上国がその福祉増進のため,独自に及び相互に協力して行なう努力は先進諸国によつて補完されることが必要であることに意見の一致をみた。この点に関連し,両国閣僚は,日加両政府間において一層緊密な協議を保つことに合意した。
4. 両国閣僚は,両国の経済情勢につき討議した。
最近米国が発表した新経済政策のいくつかの側面について広範国にわたつて話合いが行なわれ,特に米国によるドルの兌換停止及び輸入課徴金の賦課が両国経済のみならず世界経済に及ぼす影響に重点が置かれた。委員会は米国経済の安定と成長は世界の安定と経済成長にとつて不可欠なものであることに意見の一致をみた。委員会は米国の輸入課徴金は多角的な貿易体制を危くするものであること,及び日加両国の貿易に悪影響を及ぼすものであることに留意した。委員会は,米国の輸入課徴金の早期撤廃の必要性を強調した。また米国で提案されているDISC(米国国際販売会社)制度及び外国供給者を差別する投資税控除制度は攪乱的な影響を及ぼす可能性があることにつき,強い懸念を表明した。
5. 委員会は国際通貨情勢の検討を行なつた。日本側閣僚は日本政府が最近変動相場制を採用したことを説明した。カナダ側閣僚は,カナダは既に変動相場制を採用しておりカナダ・ドルの価値はかなり上昇していることを指摘した。委員会は安定し,かつ機能し得る通貨情勢は世界貿易の継続的な拡大の必要条件であるため両国は今後とも緊密に協議を行ない,また多角的な枠内において当面の諸困難を克服するための国際的努力に十分協力すべきであることに意見の一致をみた。
6. 委員会は,両国ともケネディ・ラウンドの関税譲許を予定より繰り上げて実施したことに満足をもつて留意した。委員会は多角的な世界貿易制度を強化することの重要性を強調した。委員会は,なるべく早い現実的な期日に,貿易自由化の新ラウンドヘ移行することを目標とすべきであること,及びこのためガット及びOECDにおいて主要貿易国が協力すべきであることを強調した。この関連においてケネディ・ラウンドによつて得られた勢いを維持することが現在特に重要であることに意見の一致をみた。
7. 両国閣僚はそれぞれの開発援助計画の拡大につき討議を行なつた。委員会は両国とも援助計画の質量両面の改善につきそれぞれ独自の前進を行なつていることに留意した。両国はそれぞれの援助計画に関し協力すべきことに意見の一致がみられた。
8. 日加貿易は引続き拡大し,1970年には往復13億8,000万カナダ・ドルに達した。すべての指標はこの貿易が今後とも拡大し続けることを示している。カナダ側閣僚はカナダの伝統的な食料品及び原材料の輸出を引続きのばしつつも対日輸出の一層の多様化,特に加工品及び製造品の輸出拡大を図るための機会が必要であることを強調した。日本側閣僚は段階的な輸入自由化の結果,現在60品目の残存輸入制限は今月末までに40品目に削減される旨,更に1972年の前半におけるいくつかの品目の自由化が積極的に検討されている旨指摘した。カナダ側閣僚は,かかる進展を歓迎した。カナダ側閣僚は更にカナダの輸出に影響する残余の輸入制限及びその他の障壁について日本が自由化努力を続けるよう希望した。委員会は両国間の例年の話合いにおいて一部の日本製品の対加輸出規制問題が最近妥結したことに満足の意を表した。カナダ側閣僚は,日本が日本製品の対加輸出のオーダリー・マーケッティング及び他の市場からの市場転換の回避につき今後とも協力することの重要性を指摘した。日本側閣僚は,輸出規制はいかなる場合においても暫定的措置であるべきであり,可能な限り速やかに撤廃されるべきである旨指摘した。委員会はアンチダンピング手続は国際アンチダンピング・コードに従つて実施されるべきであることに合意した。
9. 本年6月藤野忠次郎氏を団長とする日本の経済使節団がカナダを訪問した。ハイレベルのカナダ実業人使節団が明年早い機会に日本を訪問する予定である。
10. 両国閣僚は農業の分野における共通の関心事項,特に菜種及びその他のカナダが関心を有する品目を含む農産物の貿易を一層拡大することの可能性につき検討した。またより長期的な供給を図るための措置の可能性についての検討が行なわれた。両国閣僚は農業の分野における両国間の技術協力の増大を歓迎し,農産物の虫害,病害及び衛生に関する法規を担当する日加両国政府の係官が相互の法規に係る諸問題につき話合うため随時会合することが望ましいことに意見の一致をみた。
11. 委員会は外資政策に関する情報の交換が有益であることに合意した。委員会は太平洋を越えて,両国の間で行なわれている資本交流の増大を歓迎し,カナダ側閣僚は,日本の対内投資自由化の最近の進捗に留意した。カナダ側閣僚は,外国からの対加投資に関する政策の再検討が現在行なわれている旨述べた。
12. 日本側閣僚は,両国間の科学技術協力を促進する方策につき討議するために今秋訪日するカナダの使節団を歓迎する旨述べた。委員会は環境問題につき情報を交換し,来るストックホルム会議の準備のために接触を保つことに意見の一致をみた。
13. 委員会は,資源及びエネルギーの分野における事態の進展を継続的に検討するため,両国政府の幹部職員からなる小委員会を設置することに合意した。委員会は,J・J・グリーン,エネルギー鉱山・資源大臣を団長として1970年12月に訪日し,銅,石炭,鉄,ウラニウム及びその他の鉱物商品の貿易に関する問題及び国際市場向けにカナダにおいて加工度を更に高めることの可能性につき話合いを行なつた鉱業使節団が明らかにしたとおり,両国経済関係において資源及びエネルギー問題の重要性が増大していることに留意した。
14. 委員会は,日加両国民の接触が種々の分野で増大していること,及び1967年と1970年の万国博の成功によつてこの傾向に一層拍車がかけられたことを歓迎した。ピエール・エリオット・トルドー首相が1970年の万国博の機会に日本を訪問したことは,近年における日加関係の緊密さを象徴するものであつた。
15. 両国閣僚は,第6回日加閣僚委員会が両国相互に関心のある多くの問題について意見交換を行なう上で有益であつたこと,及びそれによつて日加両国間の理解と友好とが一層深められたことに意見の一致をみた。
16. 委員会は,次回委員会を日本で開催したいとの日本政府の招請を受諾した。