-法 律 問 題-

 

第7節 法 律 問 題

 

国際司法裁判所の役割再検討

 

1970年4月25日,ロジャーズ米国国務長官は,米国国際法学会の年次総会において,「法の支配と国際紛争の解決」と題する演説を行ない,その中で,国際司法裁判所の機能を強化することを提案した。

このロジャーズ演説の背景には近年国際司法裁判所に付託される係争事件や勧告的意見の要請が目立つて減つてきたという事実がある。国際司法裁判所は,1945年国連の主要な司法機関として創設され,国家が付託する係争事件について裁判し,また国際機関の要請に応じて法的問題について勧告的意見を与えることを任務としているが,その活動は,国連憲章の起草者の意図したところにはるかに及ばない状態である。

このロジャーズ演説を契機として,同じ年の第25回国連総会において,国際司法裁判所の機能再検討の問題が,総会の議題の1つとしてとりあげられるところとなつたが,国連内部の意見は,機能再検討に賛成するグループと,その必要を全く認めないグループに分かれ結論がでなかつた。再検討に賛成するグループ(主として日米英カナダ等の西側グループ)は,裁判所は現在の国際社会において果たすべき役割を充分果たしておらず,現行のシステムを改善する必要があり,そのため,アドホック委員会を設立して改善策を検討すべきであると主張した。

これに対し,仏,ソ連等は,裁判所の機能の検討は必然的に裁判所規程従つて国連憲章(規程は憲章の不可分の一体とされる)の改訂につながるものであるとして,改善策検討のためのアドホック委員会の設立に強く反対した。

この意見の対立の結果,妥協として,まず加盟国の見解を徴したうえで,更に1971年の第26回国連総会であらためて問題を検討することに決定した。

この決定に従い,この問題は第26回国連総会で再びとりあげられた。上記の加盟国の意見は,事務総長の質問書に対する回答という形で寄せられた。裁判所の機能の再検討の是非については,再び前回期の意見の対立が再現し,日米等が再提出したアドホック委員会設立の提案は,再び敗れ,問題はもう一度,第27回国連総会でとりあげられることが決定された。

 

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