-国連の行政財政問題-

 

第6節 国連の行政財政問題

 

1. 国連の政治,経済,社会などあらゆる分野の活動の基盤をなすのが,国連の行政,人事といった管理運営面そしてその裏付けを成す財政であるが,今日これらについて思い切つた対策を打出すことの必要性が唱えられている。

2. なかんずく,財政については,国連は過去のスエズ国連緊急軍およびコンゴー国連軍の二つの平和維持活動についてソ連圏諸国およびフランスが原則的立場からその経費分担に応ずることを拒否し,またその他多数の国が自己の分担額の支払いを怠たつたことから生じた財政問題を現在に至るまで引ついでいること,あるいは,通常予算についても多くの加盟国の分担金支払いが滞納しているといつた要因が重なり,今日国連は63百万ドルないし80百万ドルの赤字を有するといわれ,かかる財政状況の悪化から国連は日常の活動にも支障をきたすに至つている。1971年の第26回国連総会では,事務総長は国連は真に破産寸前の状態にあると述べて各国の協力を要請した。

このような国連の財政危機については,1971年を通じて,ノールウェーのハンブロー前総会議長が事務総長の要請を受けて,抜本的な解決を図るべく,各国の自発的拠出を得て債務を解消することなどを骨子とする解決案を示唆しつつ,米,ソ,仏,英の四大国をはじめ各国に対し打診工作を行なつてきたが,見るべき進展はなかつた。第26回総会では米,ソ,仏,英,中国の五大国をはじめわが国を含む15ヵ国から成る財政特別委員会が設立されるにとどまつたが,今後,この委員会において,来る第27回総会で解決を図ることを目途に検討が行なわれることになつている。

3. また,国連の職員の給与制度の改善も国連にとつて一つの課題である。すなわち,現在の給与制度は1956年に作られたものでこの間,種々の問題,不合理な点などが生じてきている。このため,1970年の第25回総会で設立された給与制度検討特別委員会が1971年来,本制度の全般的な再検討を行なつており,わが国からも委員を送り,積極的な貢献を行なつてきている。なお,本委員会は来る第27回総会に勧告を行なう予定である。

4. このほか,今日,国連職員の事務能率の低下,職員数の増加,これらに伴なう経費の増大といつたことが問題とされているが,ワルトハイム新事務総長は財政危機をはじめかかる管理運営面の問題の解決,改善,合理化に意欲的に取組む姿勢を示しており,その成果が期待されている。

5. 一方,国連の管理運営面でのわが国にとつての従来からの一つの大きな課題は,国連事務局における邦人職員の数は漸増しつつあるとはいえ,主として国連分担金に基づき算出される職員数の「望ましい範囲」の下限にも達していないという現状(現在55名)および右のような数の問題にもまして,邦人の高級職員が皆無であつたという事態の是正であつて,従来各レベルにおいてこの問題の解決に努力してきた。最近,わが方の努力はようやく実りつつあり,1972年3月27日,ワルトハイム事務総長は,当省の赤谷源一大臣官房審議官を6月1日より広報担当事務次長に任命する旨発表した。事務次長補クラス以上の高級ポストに日本人が任命されるのは今回がはじめてで極めて喜こばしく,これを契機に今後ともわが国内各方面の協力をも得て,わが外交上の布石として,また人的な国際協力の観点からも現状の改善に努力していくことが要請されている。

 

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