-資金協力の概況-

 

第2節 資金協力の概況

 

1. 政府開発援助

 

政府開発援助とは,政府またはその実施機関により,開発途上国の経済の開発または福祉の促進を目的として,緩和された条件で供与される援助で,二国間贈与,技術協力を含む政府貸付け,国際機関に対する出資・拠出等がこれに含まれる。1971年のわが国の政府開発援助は,約5億1,070万ドルに達し,1970年の約4億5,800万ドルに比し11.5%増加した。

(1) この政府開発援助の約2/3にあたる3億670万ドルは,政府貸付で占められ,1971年においてはインドネシア,韓国,インド,パキスタン等のアジア諸国に加えイラン,トルコ,ペルー等のアジア以外の諸国にも供与の約束ないしは意図表明が行なわれた。

(2) 二国間贈与としては,フィリピンに対する賠償および韓国,ビルマ,マレイシア,シンガポールに対する戦後処理に関連した無償経済協力約6,650万ドル,インドネシア,インド,フィリピン,ヴィエトナム等に対するKR食糧援助約1,680万ドルのほか,外国為替操作基金(ラオス),プレク・トノット・ダム計画(カンボディア)に対する拠出およびチョーライ病院建設(ヴィエトナム),ワッタイ空港拡張工事(ラオス)等のための経済開発特別援助費による無償協力が行なわれ,更にインドに対する東パ避難民救済及びカンボディアに対する難民救済等の緊急援助が行なわれた。なお技術協力費としては,2,770万ドルが支出された。

右のうち,経済開発特別援助費による無償協力は昭和44年度にヴィエトナムの難民住宅建設,ラオスのワッタイ空港拡張,ラオス・タイ間マイクロ・ウエーブ通信網建設の三プロジェクトを対象として約150万ドル(5億4,600万円)の予算をもつて始められたものであるが,以後順調に拡充を続け,昭和47年度予算では事業規模が約1,081万ドル(33億3,O00万円)に増え,また,対象地域もインドシナ以外のアジア諸国にひろがつている。

(3) 国際機関に対する出資および拠出等については,世銀(IBRD)に対する2,504万ドルの出資,アジア開発銀行(ADB)特別基金に対する3,200万ドルの拠出,国連開発計画(UNDP)に対する拠出約576万ドル,国連人口活動基金に対する拠出150万ドルのほかその他の国連諸機関および東南アジア漁業開発センター等に対する拠出が行なわれた。

 

2. その他政府資金援助

 

その他政府資金援助は,政府開発援助以外の政府資金による援助でわが国においては,延払い輸出や直接投資に対する日本輸出入銀行,海外経済協力基金からの融資部分および政府機関による国際機関の貸付・債権取得等が含まれる。

1971年の実績は約6億5,110万ドルであり,1970年の約6億9,400万ドルよりも若干滅少した。これは主として日銀による世銀(IBRD)への貸付及び債券購入が約2億6,000万ドルあつた反面,輸出信用の回収が例年になく多額にのぼつたためである。

 

3. 民間資金援助

 

これは純然たる民間資金による援助で,形態別には延払い輸出,直接投資,証券投資および国際機関に対する融資等があり,1970年からは,さらに民間非営利団体による贈与が援助として計上されることになつた。

わが国の民間資金援助は、わが国の好調な輸出を反映して従来着実に伸びてきたが,1971年においても,その額は約9億8,000万ドルに達し,1970年の約6億7,000万ドルに比べ45.8%と著しい増加を示した。これは,直接投資が若干減少した反面アジア地域特に東南アジアを中心に延払い輸出が順調に増加したのに加え,アジア開銀,世銀の起債に対する応募,米州開銀(IDB)に対する貸付等の国際機関への協力が約1億2,500万ドルに達し,また証券投資が約1億3,400万ドルに上つたことによるものである。

 

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