一次産品の価格安定,消費の増加,輸出収益の増大を目的とした国際協調の動きは,国際連合,その専門機関,ガット,UNCTAD等の場においてとりあげられている。最近では,特にUNCTADにおいて開発途上国の立場を重視した動きが活発になつている。
昭和46年度には,後述のとおり,「1971年の国際小麦協定」および「第4次国際すず協定」が,失効した前協定を継承して発足した。しかし新たに成立した商品協定はなく,国際商品協定は依然として小麦,砂糖,コーヒー,すず,オリーブ油の5品目にとどまつている。
独立の商品研究会についても,既存の綿花,ゴム,羊毛,鉛・亜鉛以外に新たに組織されたものはない。
FAOには,硬質繊維,油脂,米穀,バナナ,甘橘類,茶等の研究部会があるが,その活動は従来の生産,消費の実態検討から政策的な分野にまで拡大される傾向にある。これはいずれもこれら産品の生産,貿易に依存するところの多い開発途上国の要望によるものである。
昭和46年度中における一次産品の市況は概して平穏であつたが,国際通貨不安,経済活動の停滞による影響も見られた。主要産品に関する主な国際的な動きは次のとおりである。
1971年2月の国連小麦会議において採択された「1971年の国際小麦協定」は,1971年7月1日に効力を生じた。
この協定には,わが国をはじめ,米国,カナダ,オーストラリア,ソ連,EEC諸国,英国等43ヵ国が加盟している。新協定においては,小麦の価格およびこれに関連する加盟国の権利,義務等のいわゆる経済条項が含まれていない(詳細前年度第15号参照)が,国際小麦理事会は,新協定の規定に基づき,従来より綿密な小麦市況の検討等を実施し,加盟国の協議により小麦の安定供給を期している。
現行「1968年の国際砂糖協定」は第3年度に入り,協定第71条の規定によつて,国際砂糖理事会は協定の中間改正を行なうべきか否かの検討を行なつた。結局のところ,価格帯,各加盟輸出国の輸出割当をはじめその他の規定についても現段階においては修正を行なうべきでないとの結論に達し,1972年以降も現行のとおりで実施されることとなつた。
砂糖の市況は,協定の厳格な施行により次第に回復し,上昇傾向をたどつてきていたが,1971年末には需要に対して供給が不足気味との観測や通貨不安による投機資金の集中等により急激に上昇し,協定の最高価格(ポンドあたり6.50セント)を突破するに至つた。そのため,1972年1月18日には,砂糖協定史上はじめて最高価格による供給保証(加盟輸入国に対し過去2ヵ年の輸入実績の平均までを最高価格で供給する。)が発動され,わが国も関係加盟輸出国とこれに関する交渉を行ない,供給保証の権利を行使した。
なお,加盟輸出国は1971年末に行なわれた国際的な平価調整に伴い,協定価格についてもこれを引上げることを要望したが,わが国,カナダ等の反対により,妥協の結果として前述の供給保証に係る売渡し価格のみについて約7%の引上げを認めることとした。
1970年国連すず会議で採択された「第4次すず協定」は,第3次協定失効の後をうけて1971年7月1日から発効した。加盟国は,前協定とほぼ同じく主要生産国7ヵ国およびわが国を含む消費国20ヵ国である。
ココア協定の作成は,第1回UNCTAD以来の懸案となつているが,1971年には4年振りにココアの市況が悪化したこともあり,その準備作業が精力的に行なわれた。1971年9月および1972年1月には,UNCTAD事務局長の招請により,主要生産国11ヵ国,わが国を含む消費国11ヵ国のココア協定協議が開催された。この協議においては,協定の主要なメカニズムとなる輸出割当,緩衝在庫等について最終的な協定テキストをまとめる努力が続けられたこれらの結果を基にして,UNCTAD事務局長は,1972年3月6日から国連ココア会議を招集し,わが国もこれに参加したが,協定はまだ採択されるに至つていない。
国際ゴム研究会の第22回総会は,1971年9月オタワで開催された。ゴムについては,研究会においてだけでなくUNCTADにおいても,合成品と天然品との代替および競合問題の典型的なケースとしてとりあげられている。
特にオタワの総会においては,先進国において生産され,天然ゴムと酷似した特性を有するイソプレン・ゴムと天然ゴムとの競合が問題として討議されたが,これといった解決策もなく,今後の課題としてUDCTADに持越される形となつている。