-大洋州地域-

 

第2節 大洋州地域

 

1. 概    観

 

わが国と豪州およびニュー・ジーランドとがお互いに重要な貿易パートナーであることは今や定着した感があるが,最近は政治,文化,スポーツ等その他の分野においても次第に緊密な関係が築き上げられつつある。さらに,両国は,流動する国際情勢の下にあつて,ともにアジア・太平洋地域における先進国として同地域の平和と繁栄の確保につき共通の利益と責任があるという認識をもち,主要な国際問題について緊密に協力するにいたつている。

年間を通じ要人の往来を中心とする人的交流が極めて活発に行なわれたが,これは,2国間および国際社会一般の場におけるこのような緊密な関係を端的に示すものといえよう。

他方,わが国と南太平洋地域との関係は,技術経済協力の面で次第に活発化しつつある。

 

2. 豪州との関係

 

(1) 1971年中,豪州からアンソニー副首相兼貿易産業相,ボーウェン外相,スネツデン蔵相,スウォーツ国土開発相,フォーベス移民相,ウィットラム労働党党首など多数の要人が訪日し,また,わが国からは1971年4月豪州政府の招きをうけて宮沢通産相が同国を公式訪問するなど,両国要人の往来が頻繁に行なわれ,これらの訪問の機会を利して,双方の間に相互に関心のある広範囲の問題について意見交換が行なわれた。また,1971年7月には,キャンベラにおいて第5回日豪事務レベル定期協議が開催され,両国が共通の関心を有するアジアを始めとする国際問題や2国間問題につき率直な協議が行なわれた。

(2) 経 済 関 係

(あ) 1971年(1-12月)の日豪貿易は,同年後半の不安定な国際経済環境に起因するわが国の景気停滞にもかかわらず全体として高水準で推移し,輸出入総額は24億6,996万米ドルで,前年に比し17.8%増加し,これまでの最高を記録した。

この結果わが国にとつて豪州は,貿易相手国としては米国についで第2位の地位を引きつづき確保するに至つた(豪州にとつてわが国は第1位の貿易相手国)。

特に対豪輸出は,7億1,975万米ドルで,前年の5億8,900万米ドルを大きく上回り,22.2%の増加を記録した。この増加率は過去5年間のうち,1970年(23.9%増)に次ぐものであり,わが国の対豪輸出が年々着実な増大傾向にあることを示している。

一方対豪輸入は17億5,026万米ドルで,前年の15億770万米ドルに比し16.1%増加した。ただし食肉,小麦等の食料品の輸入については安定した伸びを示したものの,生産原材料の伸びは鈍化し,とりわけ非鉄金属鉱の輸入は前年に比し72.7%の大幅な減少を記録した。

鉄鉱石については,対前年比22%の増加を示したが,この増加率は1965年以来最低であり,更に石炭についてはわずか7%の伸びにとどまつた。

これは景気後退とこれに引きつづく通貨調整という事情に起因するものであるが,豪州における資源開発が主として日本との長期契約をべースとして推進されている事情もあり,豪州側としては,上記の現状につき深い関心を示している。しかし両国当事者間において,今回の問題は,基本的には,景気変動に基づく一時的な現象であつて,長期的には,日豪両国は資源の需要供給関係において相互に欠くことのできない重要なパートナーであることは充分に認識されており,日豪関係全般の緊密化という大局的観点に立つて,双方の協力によってこの局面を乗り切るべく真剣な努力が続けられている。

(い) このように日豪経済関係は貿易を中心に年々その緊密の度を深めつつあるが,同一の経済圏に属し,貿易産業構造において相互に依存関係にある両国にとり,近年の激動する国際経済環境に対処するためにはその協力関係を一層発展させる必要性があることは云うまでもない。

このような事情もあり,1971年5月にアンソニー副首相兼貿易産業大臣が来日したのを機に,両国間で閣僚レベル合同委員会の設置が合意された(資料参照)。同委員会は,両国の関係閣僚をもつて構成され,貿易経済上の諸問題につき意見交換を行なうことを目的としており,従来,個別の機会をのぞいて,両国閣僚の常設的な討議の場がなかつたこともあつてまことに時宜を得たものと云える。なお,同合同委員会の第1回会合は,1972年中に開催される見込みである。

(う) 豪州の鉱物資源に対する依存度が高いことから,わが国はとりわけ豪州の資源開発に対する投資を中心として,近年資本面においても協力の度を深めつつある。即ち,1971年3月までの1年間の対豪投資は1億1,900万米ドルで,前年度の2,700万米ドルに比し飛躍的に増加した。

なお,わが国からは,この協力関係の一層の促進をはかるため,1971年2月に森永東証理事長を団長とする投融資調査団に続き,同3月には田実三菱銀行会長を団長とする経済調査団(外務省派遣)が訪豪し,豪州政府首脳および産業,金融界の主要な経済人と率直な意見交換を行なつた。

(え) このように緊密な日豪両国の経済関係にあつても,産業構造の相違に基づく双方の基本的な通商政策その他の分野において,いくつかの問題点が指摘されている。しかしながら,これらの問題点については,両国がアジア・太平洋地域の平和と繁栄に対して有する重要な役割を念頭におき,両国間の長期的な友好関係の増進という大局的見地から解決をはかるべきことが必要とされよう。

(お) なお,1972年2月東京において,日豪漁業協定に基づくパプア・ニューギニアにおける漁業開発に関する協議が行なわれた。

 

3. ニュー・ジーランドとの関係

 

(1) 日本とニュー・ジーランドとの関係は,近年,政治,経済,文化等あらゆる面でますます緊密化しつつあり,人的交流も活発化している。1971年においては,同国からはアレン建設相,シェルトン商工相およびゴードン運輸相等が来日し,また,わが国からも宮沢通産相などが同国を訪問した。

また,同年7月には,ウエリントンにおいて,両国外務省代表間で定例の事務レベル協議が開催され,両国が共通の関心を有するアジア情勢,地域協力問題などにつき率直な意見交換が行なわれた。なお,同国との関係の緊密化に伴い,同年10月から,在オークランド領事館を総領事館に昇格せしめた。

(2) 経 済 関 係

近年,わが国とニュー・ジーランドとの経済関係は着実な推移を示している。1971年のわが国の対ニュー・ジーランド貿易は,前年において21%増とかなりの増加を示したことも反映し,2億9千万米ドル(前年2億7千万米ドル)と,その増加幅は7.2%に止まつた。うち輸出は1億3千万米ドル(前年1億1千万米ドル)で,対前年比14%の増加を示したが,輸入は2.6%増の1億6千万米ドルに止まり,これまでのわが方の大幅入超傾向にあつた関係は一応是正されつつあるが,今後とも拡大均衡して行くことが期待される。わが国はすでに同国にとつて第3位の輸出相手国であり,また,第4位の輸入相手国であるが,両国のこのような関係は今後更に拡大し続けるものとみられる。

同国は,伝統的に英国とのつながりが強く,英国のEEC加入を予想し,近年,輸出産品,輸出市場の多様化,多角化に努力してきているが,依然その貿易の4割近くを英国に依存しており,特にバター,チーズ,ラムなどについてはその大部分を同国に輸出している。したがつて,英国のEEC加入はニュー・ジーランドにとって死活問題であるとして,その取扱いが注目されていたが,いわゆるルクセンブルグ協定により,バター,チーズについては期間が限定されてはいるが,その輸出は一応確保された形となつた。しかし乍ら,英国からの市場転換は不可避的なものであり,今後酪農品を中心に,わが国に対する輸出期待はますます増大するものと思われる。

なお,これまで同国近海には本邦まぐろ漁船などが出漁しているところ,両国官民の協力により協定の運営につき円満に推移してきているが,今後とも本邦漁船による同国との間の漁業協定の遵守が望まれる。

 

4. 南太平洋地域との関係

 

わが国は,1971年7月西サモアとトンガの両国に「経済技術協力調査団」を派遣した。

また,1971年9月3日わが国と西サモアとの間に「日本青年海外協力隊派遣のための取決め」が成立した。

なお,1971年8月13日南太平洋地域諸国初の在日公館である「在日ナウル共和国領事館」が東京に開設され,初代領事としてセオドール・コンラッド・モーゼス領事が着任した。

 

大洋州地域要人来往訪者一覧

 

(1) 来  訪  者

 

(2) 往  訪  者

 

 

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