-国際的相互理解の増進-

 

第6節 国際的相互理解の増進

 

平和憲法によつて国際紛争解決の手段としての戦争を放棄し・平和国家・文化国家として国際社会の中で積極的役割を演ずることを最高の国是としているわが国にとつて,永続する平和の前提たる諸国民間の相互理解・友好的感情を醸成することは,いわばわが国外交の基本ともいうべきものである。

他方,発展途上国においては,最近,経済開発の重要性もさることながら,経済開発促進の基盤として,社会や文化の面における均衡のとれた発展と向上が必要であるとの認識が高まり,この面での協力要請がとみにさかんとなつている。

明治以降百年の歴史を振返り,特に戦後20余年の努力の跡をかえりみるとき,諸外国の援助と協力によつて今日国際的に自立しうる状態になつたわが国が,各国との間に一層の相互理解の増進に努め・社会・文化の各面における諸外国との交流に格段の努力を尽すべきことは言うまでもない。

特に重要なのは文化交流の促進である。文化を通じ諸国民が心と心のつながりをもつことは国際関係においてややもすれば生じ易い誤解や偏見を是正し,不信や疑惑をとりのぞく上にはかりしれない意味をもつものだからである。

特に独特の文化的伝統を持ち,言語の障壁等のため,諸外国との意志疎通が殊のほか困難なわが国の場合,このことは一層必要であり,かつ今日,わが国民が世界各地において縦横の活躍を行なうに至つた現状に照らして一層切実である。

わが国の文化交流はつとにその早急な拡大が要請されていたにもかかわらず,これまでそのための実施体制は,組織化が遅れていた分野の一つであり,その機構,人員,資金等の強化が強く望まれていた。

政府としては,このような要請にこたえ,国際文化交流を抜本的に強化すべく,昭和47年度の政府原案において50億円の出資を計上するなどして,特殊法人「国際交流基金」を設立することとし,「国際交流基金法案」を第68回国会に提出した。

この「国際交流基金」は,わが国に対する諸外国の理解を深めるとともに,広く国際理解と友好親善を促進することを目的とし,特に,文化人,学者等人物交流に重点を置くものであつて,本基金の設立は,わが国の文化交流事業の将来の発展の基礎を作るものと期待される。

国際交流基金の事業の他にも諸外国との間に相互理解を進めるためわが国が行なうべき事業は多々ある。

わが国における外国研究を一層促進することと並んで,外国人に対するわが国研究を奨励するよう留学生・研究生の受け入れをはかるとともに,各国の各分野で実質的働き手となつている将来有為の中堅指導者を招へいし,わが国の実情を知らしめる等の措置の充実強化をはかることが必要である。政府としては今後ともこれら分野における施策を積極的に進めてゆく所存である。

 

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