-南北問題解決への寄与-

 

第5節 南北問題解決への寄与

 

今日の世界における多くの紛争が貧しさ故に発生していることからみても,現代社会から飢餓と貧困を追放しようとすることは,平和の実現に貢献する途であり,平和に徹することを国是とするわが国として最も力を尽すべき国際協力の分野である。政治的,経済的基礎の脆弱な開発途上国は,外界の変化に殊のほか影響を受け易い地位にあるが,過去数年間動揺を続けた国際通貨問題は,1971年末の多国間調整のもとに一応の小康を得るものと期待されるが,動揺の余波と影響は経済基盤の脆弱な開発途上国には特に厳しいものがあつたと思われる。このように,開発途上国の経済自立の目標に向つての努力が困難に逢着しつつある現在,わが国の役割に対する世界の期待と関心は高まりつつあり,わが国としては従来にもまして経済協力を拡充・強化し,よりよき世界の実現を目指して国際協力を進めるべきであろう。このような協力を行うことはわが国の長期的国益を確保する所以でもある。けだしわが国の発展と繁栄は,調和と秩序ある国際交流を通じて各国とその果実を分かち合うことによつて始めて可能となるものだからである。

わが国はこれまで年々経済協力の拡大につとめ,1970年度にはその総量においては米国に次ぐ地位に達し,GNP 1%の国際的目標の達成も目前に迫るに至つている。今後はこの実績の上に,さらに援助の量的拡大をはかることはもとより,援助の中でも真に援助の名に価するといわれている政府開発援助の量的拡大をはかると共に,無償協力の拡充,借款条件の緩和による政府開発援助自体の条件改善に努めなくてはならない。また,わが国の経済協力の一層の拡大にともない,中近東,アフリカ,中南米の諸国に対する経済協力もこれまで以上に拡充する必要がある。

他方開発途上国との貿易格差を是正することも必要である。わが国は第2回UNCTADにおける合意のもとに,1971年8月1日から開発途上国に対し特恵関税供与を実施したが,今後ともその質的改善に努める他,開発途上国の貿易拡大に資する為の諸措置を積極的に推進して行く方針である。

 

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