世界経済が今日の発展を達成し,またその中にあつてわが国が現在の繁栄を実現し得たのは,自由無差別の原則に基づく国際貿易体制に負うところ大であるといえよう。
しかるに戦後の国際経済秩序が今や大きな転機にさしかかつており,新たな秩序と安定が,国際的連帯感のもとで徐々に形成されつつあることは前述のとおりである。
世界経済が一層の拡大をとげるためには,わが国は更に貿易と資本の自由化を推進することは勿論,その経済規模にふさわしい責任を果すべく,国際経済の安定のため自らの経済の対外的均衡の維持につとめ,更に世界貿易の安定した拡大と国際経済秩序の形成のために,積極的に貢献しなければならない。
このような認識に立脚し,わが国は71年6月総合的対外経済政策を発表し,輸入の自由化の推進,関税引下げ,非関税障壁の整理,資本の自由化促進等の措置を決定した。(残存輸入制限品目は1972年4月1日現在33にまで減少している。)
これらの努力に加え,わが国は自由貿易体制を維持強化するため,ケネディラウンドに次ぐ国際ラウンドを早期に開始することが必要であるとの観点より,昨年の第27回ガット総会にて国際ラウンドに積極的な態度で臨み,更に72年2月米国との間に多角的包括的な交渉を1973年よりガットの枠内にて開始する旨の共同声明を行なつた。それを受けて1973年より多角的交渉を行なうことにつきEECをはじめガットの多くの国が支持しており,新しい貿易体制確立の気運がもり上つてきている。また,わが国はOECDの場における今後の国際経済体制についての検討についてもこれを積極的に支持しているが,今後の自由貿易の推進のためには,関税のみならず非関税障壁,農産品の問題,更には多国籍企業や環境問題等広い分野にわたる事項についての国際的調整が必要になると思われる。このような問題からみても,わが国には広い総合的な視界に立つた対外経済政策の展開が求められているといえよう。