国連および専門機関が,世界の平和維持のために効果的な機能を果たし,また経済的,社会的,文化的分野において世界の調和ある発展を実現するためにその役割を十分果たすことは,世界の平和を求め,世界と繁栄を分ち合うことを国是とするわが国にとつて,もとより念願するところである。このような見地からすれば,1971年秋の国連総会において,中華人民共和国の国連参加が実現したことは,国連がその普遍性の理想に一歩近づいたことを意味するものといえよう。今後中華人民共和国が,特にその安保理常任理事国としての責任を十分に自覚して,国連強化のために貢献することが期待される。
わが国はかねてより,国連が成立以来4半世紀を経て,ややもすれば世界政治の現実から乖離しがちであり,特に国際的危機に即して有効に対処する能力を欠く面があることを懸念し,これを改善するため,国連の機能強化のための憲章の改訂も含めて国連のあり方を再検討すべき旨を訴え,種々具体的提案を行なつてきた。今後国連の中において,これら諸提案を真剣に討議しようとする気運が盛り上り,また各国が,国連強化に向かつて一層の努力を傾けることが希望される。
国連に期待される種々の役割のうち重要なものの一つとして,軍縮の達成がある。今日の世界の平和は,基本的には核大国の力のバランスを基礎として保たれているが,このようにして保たれている平和とは,言わば恐怖に支えられた戦争なき状態というにすぎず,真の恒久的平和には程遠い状況である。わが国は1969年以来ジュネーヴの軍縮委員会に参加しているが,平和国家として生きることを国是とし,平和の達成を理想とするわが国としては,同委員会や国連の各種の場を通じ,今後ともあらゆる機会をとらえて軍縮促進のために努力するとともに,特に核兵器国に対し核軍縮の誠実な履行を強く要請してゆく所存である。
国連およびその専門機関に課せられた役割で最近著しく重要性を増しつつあるのは,科学技術の発展に伴い生じた各種の問題を調整することである。特に原子力の平和利用,宇宙と海底の平和利用,人間の環境保全のための国際協力等の問題は,今や,新しい外交の重要な分野の一つとして脚光を浴びつつある。なかんずく環境問題は最近数カ国にまたがる広域汚染の発生,全地球的規模の環境汚染現象等により国際協力を最も必要としており,このような問題について世界各国の共同歩調を確保することは,国連ないしその専門機関の果たすべき役割として最もふさわしいものであろう。わが国はその自然条件や,経済発展の現状等に照らして,このような問題について深い関心を持つものであり,この分野における国連ないしその専門機関の活動にあらゆる協力を惜しまないものである。