3. 重要共同コミュニケ

(1) 第3回東南アジア開発閣僚会議共同コミュニケ

                       (訳文)

(1968年4月11日シンガポールで採択)

1 第3回東南アジア開発閣僚会議は,1968年4月9日から11日までシンガポールにおいて開催された。

2 会議には,インドネシア共和国,日本国,ラオス王国,マレイシア,フィリピン共和国,シンガポール共和国,タイ王国およびヴィエトナム共和国が参加した。これら諸国の首席代表は,それぞれ,フランス・セダ大蔵大臣,三木武夫外務大臣,インベン・スルヤタイ司法兼計画協力大臣,モハメッド・キール・ジョハリ文部大臣,エドゥアルド・ロムアルデス大蔵大臣,エス・ラジャラトナム外務大臣,ポット・サラシン国家開発大臣およびチュン・タイ・トン経済大臣であった。

3 会議には,また,イム・コン・サインヴェト在シンガポール・カンボディア王国大使館書記官,渡辺武アジア開発銀行総裁およびアーサン・ウ・ディンFAO代表が出席した。さらに,オーストラリア,セイロン,インド,ニュー・ジーランドおよびパキスタンからのオブザーバー代表も列席した。

4 会議の開会にあたりクーマラスワミ・シンガポール共和国大統領代理は,東南アジア諸国がいかなる国も自国のみで経済問題の解決を見いだすことはできないとの真実を悟るのにほぼ20年を要したが,いまや,経済成長は他国との協力によっていっそう迅速にしかもより苦痛をともなわずに達成しうるとの認識が東南アジア諸国の間で強まりつつあることに注意を喚起した。同大統領代理は,地域協力が将来のすう勢であり,これに立ちおくれることはいっそうの貧困と経済的後進性をもたらすのみであることを認めつつ,地域協力および国際協力については必然的な論理が存在するが,かかる論理は,具体的なかつ実際的な措置に置き替えられたときは,容易に認識され,または受諾されない旨を述べた。同大統領代理は,これらの制約のいくつかをとり除くというこの会議の任務の困難さを認めつつ,会議における審議を通じて,関係諸国が平和で,かつ,いっそう繁栄する東南アジアという目標に何歩か近づくようにとの希望を表明した。

5 会議における討議は,終始率直に,かつ,和気あいあいと進められ,東南アジア諸国の直面する数多くの開発問題の解決を相互協力を通じて探究することに対する参加国の強い関心を反映した。

6 会議は,東南アジアにおける経済開発の進展と問題点に関する全般的な評価を行ない,最近の国際経済金融情勢の不調な動きにもかかわらず各国が達成した種々の経済成長率,ならびにインフレーション対策から,農業および工業における成果に至る種々の分野における重要な進歩に注目した。各国代表は,また,国家の平和と安定の維持,人的資源の問題,ならびに一次産品価格の低下および増大する輸入需要から生ずる国際収支上の困難等,この地域の当面する諸問題についても言及した。

7 会議は,各国政府が経済開発のため自らの資源を活用する積極的な手段をとらねばならぬこと,しかしながら,これと並んで,先進国からのいっそうの経済協力,国際機関からのいっそうの援助およびそれらの効率的な使用も,それぞれの計画およびプロジェクトを実施するにあたって,極めて貴重であることに同意した。第2回UNCTADでの討議にかんがみ,かかる協力は,より自由な資本の流れ,工業製品に対する市場の開放および一次産品に関する困難の軽減等の形をとりうるとの感触であった。

さらに,過去の開発の成果を評価し,かつ,分析することが将来の開発の能率化を容易にするために有益であること,および種々の地域協力の努力の間の重複を避けるためにしかるべき注意が払われるべきことが認められた。

8 会議は,昨年マニラで開催された第2回閣僚会議以来,東南アジア諸国間の経済協力の分野においてさらに進展が見られたことを満足の意をもって注目した。会議は,また,連帯と地域協力の強化に資するこの分野での具体的成果のいくつかに注目した。

9 会議は,より緊密な地域協力が,相互の利益となり,また,各国が独力のみでは克服しえない諸問題を解決するために有用であることを一致して確認した。会議は,また,参加各国がそのための努力において各自の役割りを果たす決意であることに注目した。

10 会議は東南アジア漁業開発センターが設立され,1968年初頭に同センターの創立理事会が開催されたことに満足の意をもって注目した。また,域内のすべての国がこれに参加するようにとの希望が表明された。さらに,海洋漁業調査部局および訓練部局に加えて,淡水魚および海水魚の養殖の問題を取り扱う新たな部局を設置すべきことが提案され,東南アジア漁業開発センターの理事会に対し,この提案を検討するよう要請することが合意された。

11 昨年9月クアラルンプールにおいて開催された東南アジア運輸通信官吏会議の重要性が,すべての代表により強調された。会議は,また,同会議のあとを受けた活動として,マレイシア政府による臨時事務局の提供,調整委員会の設置,アジア開発銀行に対する地域運輸調査実施の要請およびフィージビリティー調査のための優先プロジェクトの選定が行なわれたことに注目した。会議は,統合調査が必要であることを再確認するとともに,日・米両国政府からの技術援助の申出に感謝をもって注目した。

会議は,この分野における地域プロジェクトを遠からず実施しうることとなるように,技術的調査研究が早期に完了されるとともに,アジア開発銀行に特別基金が設置されることを強く希望した。

12 会議は,アジア開発銀行の行なう地域運輸調査が地域の工業化および観光の将来性を考慮に入れたものとなるようにとの希望を表明した。

13 会議は,農業開発のための特別基金の管理および運用に関連する諸点に関するアジア開発銀行総裁の説明を感謝をもって受けた。会議は,農業開発のための特別基金が,農業のための緩和された条件での融資の主要な財源であっても,そのための唯一の財源ではないことに注目した。メコン下流域開発のために,特別基金が遅滞なく設置されるようにとの希望が表明された。

また会議は,アジア開発銀行が地域内および地域間貿易促進のために果たす役割を認めた。

14 会議は,さらに,いくつかの先進国が特別基金に対する拠出の意向を表明したことに注目した。この関連で,会議は,アジア開発銀行に対し,拠出の見込まれる諸国との問の交渉を早い機会に開始することを強く希望した。

15 会議は,特別基金の運用にあたっては,健全なプロジェクトのみが考慮されるべきであり,東南アジア諸国にその主たる重点が置かれるべきであり,また,より有意義な結果が得られるためにはかかる援助が最も緩和された条件で供与されるべきであるとの見解を再び表明した。

16 会議は,工業化に関する地域協力を研究するために,この問題についてECAFEの行なった研究を考慮に入れつつ地域調査を組織することおよび世界の商業中心地に東南アジア諸国のための経済振興センターを設置することの実行可能性が検討されるべきことを認めた。

17 会議は,ジョクジャカルタのディーゼル機関車修理センターを参加国の利用に供するとのインドネシア共和国政府の申出および公衆衛生問題の調査を行なうべき旨の示唆に注目した。

18 会議は,閣僚会議の会合と会合の間においても引き続き協議が行なわれるべきことに合意した。

この目的のため,第4回閣僚会議のための合同作業委員会を,次回閣僚会議主催国としてのタイ国政府がバンコックにおいて開催することが考慮された。会議における感触は,この合同作業委員会が,

(イ) 第3回閣僚会議で表明された見解および討議された事項を考慮に入れて,次回閣僚会議のために必要なアレンジメントおよび準備を行なうとともに,

(ロ) 地域協力の有効な促進に関する基礎的な問題についてのスタディー・グループの設置を検討するとのことであった。

19 会議は,第4回閣僚会議1969が年にバンコックで開催されることとなったことを感謝をもって了知した。

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(2) 第4回東南アジア開発閣僚会議共同コミュニケ(仮訳)

(1969年4月5日バンコックにおいて)

1 第4回東南アジア開発閣僚会議は1969年4月3日から5日までバンコックにおいて開催された。

2 会議には,インドネシア共和国,日本国,ラオス王国,マレイシア,フィリピン共和国,シンガポール共和国,タイ王国およびヴィエトナム共和国が参加した。カンボディアもまたオブザーバーとして参加した。これら諸国の首席代表は,それぞれ,フランス・セダ運輸通信大臣,愛知揆一外務大臣,フンパン・サイニヤシット経済担当大臣,モハメッド・キール・ジョハリ文部大臣,エドウアルド・ロムアルデス大蔵大臣,ヨン・ヨク・リン運輸通信大臣,ポット・サラシン副総理兼国家開発大臣およびオー・ゴク・ホー経済大臣であった。カンボディアのセン・ブン・コルン計画省総局長がオブザーバーとして会議に出席した。カンボディアが次回およびそれ以降の会議には正式参加国として代表されるようにとの希望が表明された。

3 会議には,また,アジア開発銀行,東南アジア漁業開発センター,国際連合アジア極東経済委員会,世界食糧農業機構および国際連合開発計画からのオブザーバーも出席した。

4 タイ国国王陛下は,会議の開会式に際し,東南アジア地域における不安定な情勢と,それが世界の平和に対してもつ意味の故に,この地域が全世界的な関心の的として,ますます重要性を増しつつあること,および,現存する政治的,経済的困難を克服する方途として,地域協力に対する期待が益々高まりつつあることを強調する歓迎のメッセージを寄せられた。

5 会議は,タイ国総理大臣閣下によって開会された。総理大臣は,各国代表を歓迎し,会議の成功を希望するにあたり,この地域の平和,繁栄および安定を維持促進し,東南アジアの連帯を強化し,かつこの地域のいっそう調整のとれた経済開発を促進するため,近隣の自由を愛好する諸国民がいっそう緊密に協力することの重要性を強調した。

6 会議を通じ,討議は和気あいあいと,かつ建設的に進められた。会議の参加者は,東南アジアにおける経済情勢を検討し,この地域の諸国の当面する経済開発上の主要な問題のいくつかを指摘し,かつ相互協力により実際的な解決を図るための方法を探究しつつ,有益な協議を行なった。

7 会議は,東南アジアの経済開発の進展と問題点に関する全般的な評価を行ない,この地域の将来がいっそう明るくなるであろうとの明確な徴候があること,とりわけ,国際的な金融・経済情勢の不調にもかかわらず,農業,工業,運輸および通信の分野において,重要な進歩が見られたことに注目した。

会議は,経済成長に対する種々の障害-なかんずく,域内の人口増加と失業増大,技術的熟練の不足,その他好調な国際収支の維持,インフレーションの抑制特に一次産品価格の安定による交易条件の改善,貿易拡大の促進等にあたっての困難-を含む問題点に注目した。

8 会議は,日本が東南アジアにおける経済社会開発のための協力をいっそう促進するために特別の努力を行なっていること,特に近い将来におけるヴィエトナムの紛争終結の可能性にかんがみ,日本がヴィエトナムおよび戦争の影響を受けた周辺の国々の復興と開発を助けるため,できるだけ広範な国際的基盤に立つ協力を実現するための方策を真剣に検討しつつあることに感謝をもって注目した。

9 会議は,東南アジア漁業開発センター理事会議長の報告を了知し,過去一年間のセンターの進捗を歓迎した。

会議は,水産養殖についての新たな部局の設立に関する諸問題点を検討するために作業部会を設置するとの理事会の決定を支持し,かつ,日本政府が理事会の作業を援助するため調査団派遣に同意したことに対し謝意を表明した。淡水および汽水漁業のための調査・訓練センターは,現存のセンターとは独立に技術的レベルで,フィリピンに設置すべきであるとの見解も表明された。

会議は理事会に対し,フィリピン代表団の提案およびインドネシア代表団の意見をも検討の対象とするよう要請した。

会議はタイ,シンガポールおよび日本政府が行なった実質的な寄与ならびにフィリピンの申出を,他のセンター参加国により示された積極的関心とともに感謝をもって注目した。

さらに,他の東南アジア諸国もセンターに参加することが強く希望された。

10 会議は,アジア開発銀行特別基金に対する拠出,特に,主として東南アジアに使用されることを意図している日本国の農業特別基金への拠出に関する同銀行総裁の発言に感謝をもって注目した。会議は,また,地域運輸調査に関するプロジェクトの実施に感謝をもって注目した。

11 会議は,先進諸国一般から同銀行の特別基金に対し,有意義な拠出がさらに行なわれることを強く希望した。これらの特別基金は,東南アジアの発展途上国の中でも特に開発の遅れた諸国の開発努力を有効に貢献するような緩和された条件で運用されるようにとの希望が表明された。

12 会議は,メコン河下流域およびメコンデルタの開発の重要性を強調した。この関連で,国際的な資金源が多数国間の基金の基として十分に利用されることが要望された。

13 会議は,マレイシア政府の発意に基づき,東南アジア諸国が運輸通信の分野において調整された開発計画を達成するために行なった努力に満足の意をもって注目した。さらに会議は,クアラルンプール,マニラ,バンコク,およびジャカルタにおいて開催された東南アジア運輸通信管理会議の一連の会合以来なされた進展ならびにアジア開発銀行によって着手された地域運輸調査にとりわけ注目した。

14 会議は,貿易,観光および外国からの投資の促進を目的とする経済開発促進センター設置の提案に関してみられた進展に注目し,これらの目的の実現をはかるための現実的な相互協力の方法にいっそうの考慮を払うため,東京において参加国代表の間で協議を行なうことに合意した。

15 会議は,さらに,公衆衛生問題および殺虫剤の悪影響からの人体保護に関する調査提案に関連して述べられた見解および示唆に注目した。会議は,更に,このプロジェクトが東南アジア全地域を対象とすべきであり,また,この他医学的な教育,訓練を含む医学の分野での協力および経験の交換をも行なう可能性を有するこに注目した。

会議は,第五回閣僚会議に提出されるべきプロジェクト協定案を準備するため,作業グループを設置することに同意した。会議は,作業グループの第一回会合を主催するとのインドネシア政府の申出に感謝をもって注目した。

16 会議は,タイ国によりなされた「1970年代の東南アジア経済の分析」と題する提案を考慮し,この調査を行なう専門家チームを指導するため,参加国代表からなる諮問委員会を設立することに合意した。会議は,第五回閣僚会議における検討のため報告を提出することができるように,このプロジェクトの実施の過程においてはタイ政府が会議を代表して行動するよう求めた。調査を行なうにあたっては,この問題に関する現存の資料を活用すべきことが強く希望された。アジア開発銀行の適切な援助がこの目的のために提供されるよう希望された。さらに,東南アジア諸国のみならず日本もまたこのプロジェクトに対し,実質的な貢献を行なうことが希望された。

17 会議は,閣僚会議の会合と会合の間においても引続き協議を行なうことが望ましい旨再確認した。この目的のため,従来の会議で表明された見解および討議された事項を考慮に入れて,第5回閣僚会議のための必要なアレンジメントおよび準備を行なうため,第5回閣僚会議のための合同作業委員会を,次回閣僚会議主催国としてのインドネシア共和国政府が,ジャカルタにおいて開催することに同意した。

18 会議は,第5回閣僚会議を1970年中にインドネシアで開催したいとのインドネシア共和国政府の招請に注目し,感謝をもってこれを受諾した。

19 会議は,当地に参集した各国代表団に暖かい歓迎と能率的な便宜を与えたタイ国政府および国民に対し,深い感謝を表明した。

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(3) 第3回ASPAC閣僚会議共同声明(訳文)

(1968年8月1日キャンベラにおいて)

1 オーストラリア政府の招待により,第3回アジア・太平洋閣僚会議は,オーストラリア,中華民国,日本,大韓民国,マレイシア,ニュー・ジーランド,フィリピン,タイおよびヴィエトナム共和国の参加の下に,1968年7月30日から8月1日までオーストラリアのキャンベラにおいて開催された。ラオス王国のオブザーバーは会議のすべての会合に出席した。

2 オーストラリア首相J・G・ゴートン閣下は,開会演説において,全代表を歓迎するとともにASPACがアジア・太平洋地域の多くの主要国を含むことに留意しつつ,ASPACが発足以来二年を経過するのみであるにかかわらず,政治的,経済的,文化的および社会的分野において参加国間に現実的な協力および理解の関係を作りあげるという基本的な目標の達成に向かって有意義な進歩をとげたことを強調した。

3 閣僚は3日間にわたり,世界および地域内の広範囲な諸問題を討議した。

4 閣僚は,その意見交換において,核兵器の不拡散,核実験および軍縮問題,この地域との関係における大国の政策およびこの地域に影響を与える大国間の関係,政治的安定および経済的発展の基礎としての安全の必要性,世界経済情勢およびそれが参加国の経済発展に及ぼす影響,ならびにこの地域自体の政治的および経済的諸問題のごとき事項を検討した。閣僚はまた中国大陸における情勢から生ずる諸問題は閣僚が特に関心を持った問題であり,事態は不確定であり注意深く観察すべきことに同意した。

5 閣僚は1月21日事件を含む大韓民国に対する武装分子の浸透の増加につき懸念を表明し,大韓民国政府および国民が国家的独立を維持し国民経済の急速な発展を継続するために払いつつある努力を満足をもって認めた。

6 閣僚は,昨年の閣僚会議以降ヴィエトナム共和国において戦時にもかかわらず,民主主義的制度が発展したことならびに同国が自らをよりよく守るために軍事,農村開発および政治の分野でいっそうの努力を払っていることに満足をもって注目した。閣僚は,自らを守るための,またその主権,独立,領土保全および自らの問題を決定する権利を保持するための,ヴィエトナム共和国の政府および国民の真剣な努力に対する同情と支持を再確認した。

7 閣僚は,現在米国と北ヴィエトナムの代表間でパリにおいて開催されている会談に留意し,同会談がヴィエトナム共和国が当然主要な役割を演ずると思われる公正にして名誉あるかつ永続的な平和のための交渉への道を開くものとなるようにとの強い希望を表明した。

8 閣僚は,戦争が終了し,平和と自由が確保される日を予想し,その際にヴィエトナム共和国および戦争によって影響を受けたその他の国の復興と開発を助けるため,広汎な国際的基盤に立つ共通の努力が必要であることを認めた。

9 閣僚は,一般的かつ完全な軍縮に向かってなされた進歩を検討し,特に本年の国際連合総会における核兵器不拡散条約案に関する合意に留意した。閣僚は,核兵器の拡散防止のための有効な措置が一つの重要な前進となることに意見の一致をみた。閣僚は,もしすべての核保有国が核実験禁止条約に参加せず,また核兵器不拡散条約の当事国とならなければ生ずるであろうところの特別の問題を検討した。

10 平和維持の諸問題に関する意見交換において,閣僚は国連憲章の目的と原則に対する支持を再確認した。閣僚は,国連憲章第52条に想定されているがごとき平和と安全のための地域取決めの価値を認識し,またこの種の取決めが現に存在することを認めた。

11 閣僚は,ASPAC諸国が農業および工業開発ならびに貿易拡大の面において引続き実質的な進歩をとげたことによろこびを表明した。閣僚は,しかし,これらの進歩が,多くの一次産品の価格低下,大多数の経済的先進国の貿易の伸び率の鈍化および国際準備通貨に対する圧迫という背景の下になされたものであることに注目した。閣僚は,これらの不利な諸要因が持続せず,また開発途上国に機会を与えこれら諸国の経済的および社会的進歩を助けるため国際的に採られている諸措置が維持されるようにとの希望を表明した。

12 閣僚は,ASPACが排他的なグループではなく,正式な結論に到達することに関心を有するというよりは,むしろ率直な意見交換を通じて相互理解の増進を計る外向的な組織であるという既に示された意見を再び表明した。

ASPACは,いかなる国家ないし国家グループに対しても敵対する組織として意図されたものではなく,その活動は,域内の諸国間における協議の促進と協力の強化に向けられるべきものである。閣僚は,概ね同様の目的を追求するいくつかの機関が域内に存在することを歓迎した。これらの機関の参加国がある程度重複している事実は,相互の密接かつ調和ある協力をもたらすのに役立つであろう。この点に関連して,閣僚はASPAC常任委員会がASEANの創設を正式に歓迎したことに留意した。

13 閣僚は,域内諸国間の連帯のきずなの強化と経済社会および文化の分野における相互協力の増進のためにASPACが既に行なった貢献を認め,これら諸国間に存在する協議と協力のための貴重かつ有効な体制をいっそう強化する必要性を支持し,また第1回および第2回会議のコミュニケに照らして,次の原則および目的を支持しようとするASPAC諸国の決意を確認した。

(1) 国家主権,政治的独立および領土保全の相互尊重

(2) 万人のための平等,自由および正義の達成

(3) 平和の追求および平和的手段による紛争の解決ならびに法の支配の尊重

(4) 平和,秩序および進歩が確保された地域社会の実現

(5) 共通の運命と地域的連帯性の意識に基づくアジア・太平洋諸国民の自立性の強調

(6) アジア・太平洋諸国の繁栄する社会の発展を促進するための経済,社会および文化の分野における密接な協力の増進

(7) 他の諸国ならびに現存の国際的および地域的機関との共働の強化

14 閣僚は,常任委員会報告書に留意するとともに,同報告書に記録されたこの機構の進歩についての満足の意と,常任委員会の議長および委員に対する感謝の意を表明した。

15 閣僚は,国際機関におけるASPAC参加国間の協議がさらに拡大されるべきであるとのバンコックにおける決定を想起しつつ,常任委員会が過去1年間20以上の国際会議においてASPAC諸国代表間の非公式協議の開催を準備したことに注目した。閣僚は,これ等の協議を通じて各国のASPACへの参加とこれ等国際会議への出席の価値が高められたことを認めた。閣僚は,国際機関における協議の慣行が育つにつれ,その協議が一段と価値を増すであろうことを認めた。従って閣僚は,1968~69年においてもかかる協議を継続し,かつ適当な場合には拡大することを決定した。

16 閣僚は,常任委員会より提出されたソウルに設置予定のASPAC文化社会センター協定案を正式に承認し,同協定が今次会議の終了と同時に署名のために開放されることに同意した。閣僚は,センターの設立費および管理費が大韓民国政府によって支弁され,また同センターの事業費が参加国政府によって分担されることに留意した。

閣僚は,また,協議会の参加国およびオブザーバーではない政府も同センターに加盟する資格を有することに留意した。

17 閣僚は,今回正式に開所したASPAC専門家登録機関が機能を開始したことによろこびを表明した。閣僚は,同機関の所長が参加諸国を歴訪したことおよび参加国政府と同機関の間に確立されつつある実務上の協力関係に基づき,同機関が近くこの地域の発展に真に貝献し得るであろうことに注目した。

18 閣僚は,アジア・太平洋地域のための食糧肥料技術センターの設置を提案した中華民国政府の発意を称賛し,かかるセンターがこの地域の切実な必要に沿うのに役立ち得べきことを認めた。閣僚は,常任委員会が,同じ分野の他の国際機関の作業との重複の回避に妥当な考慮を払いつつ,至急かかるセンターの規模,運営方法,財政および管理機構につき慎重に考慮するよう指示した。閣僚は,常任委員会の作業を補佐するための専門家会議の開催を招請した中華民国に対する感謝の意を記録に留めた。閣僚は,センター設立に関する詳細な提案が第4回閣僚会議に提出されるよう要請した。

19 閣僚は,経済調整センター設立に関するタイ国政府の提案を謝意をもって受理した。閣僚は,常任委員会に対し,この提案をこの地域に現存する諸機関の作業に妥当な考慮を払いつつ検討するよう要請した。

20 閣僚は,常任委員会が,ASPACの活動し得る分野を厳密に見究めるため,ASPAC地域において活動している諸種の経済および準経済機関および団体,その目的,企画,計画ならびに活動を検討する非常設の研究グループを常任委員会の下に設置するというフィリピン外務大臣の提案,ならびに常任委員会が貿易を拡大しかつ促進する方法についての研究を手配するという韓国政府の提案を含め,現在および今後の諸提案を評価しかつ整理する方法につき検討すべきことに同意した。この点に関連して,次の如き1967年7月5日から7日までバンコックにおいて開催された第2回閣僚会議の共同コミュニケ第9項に注意が喚起された。

「閣僚は他の国際機関において行なわれている貿易自由化支払いに関する取決め,経済計画の調整および経済的下部構造の強化のごとき地域的経済統合および協力の諸分野における作業に注目した。

閣僚はこれらのうちいかなる部門が,ASPACの諸活動に関連するかを確認する意向の下に常任委員会をして継続的に上記作業を検討せしめることは有益であろうということに同意した」

21 閣僚は,引続き年1回会合することに同意した。他の参加国によって支持を受けた議長の求めに応じ,日本国外務大臣は,同国政府が第4回閣僚会議を1969年日本において開催する用意がある旨を表明した。日本による受諾の結果および確立された慣行にしたがい,ASPAC常任委員会は,今後12ヵ月間東京において日本国外務大臣の司会のもとに会合し,また日本国政府は,第4回閣僚会議までの間および同会議中において,取次ぎにあたると共に実際上の事務局を提供する。

22 閣僚は,キャンベラにおける常任委員会および閣僚会議の開催に寄せられたオーストラリア政府および国民の暖かいかつ寛大なもてなしに対し深い感謝の意を表明した

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(4) 第2回日韓定期閣僚会議共同コミュニケ

(1968年8月29日ソウルにおいて)

1 第2回日韓定期閣僚会議は,1968年8月27日から29日まで3日間,ソウルにおいて開催された。

2 会議には,日本側からは,三木武夫外務大臣,水田三喜男大蔵大臣,西村直己農林大臣,椎名悦三郎通商産業大臣,中曾根康弘運輸大臣及び宮沢喜一経済企画庁長官が金山政英駐韓大使とともに出席し,亀徳正之国税庁長官,森本修水産庁長官,荒玉義人特許庁長官も出席した。

3 韓国側からは,朴忠勲副総理兼経済企画院長官,崔圭夏外務部長官,黄鍾律財務部長官,李啓純農林部長官,金正濂商工部長官及び姜瑞竜交通部長官が厳敏永駐日大使とともに出席し,李洛善国税庁長及び金在植水産庁長も出席した。

4 会議は,議題として次の事項を採択し討議した。

(1) 両国関係一般及び国際情勢の検討

(2) 両国の経済情勢

(3) 経済協力問題

(4) 貿易問題

(5) 農林水産問題

(6) 交通運輸問題

5 両国の閣僚は,終始率直かつ友好的なふんい気のうちに議事を進めた。

両国の閣僚は,まず全体会議において,両国関係を全般的に討議し,両国経済情勢についてそれぞれ説明を行なったのち,両国関係及び国際情勢,経済協力,貿易,農林水産,交通運輸の各問題別の個別会議を開催し,最後に再び全体会議を開催して総括を行なった。

6 両国の閣僚は,国際情勢一般特にアジア・太平洋情勢に関して広く意見を交換した。

(1) 両国の閣僚は,韓国の安全と繁栄が日本のそれに重大な影響があることを認め,さらにアジアにおける平和と繁栄が両国共通の目標であることを確認し,その目標の実現のために,両国が引続き協調し努力することに意見の一致をみた。

(2) 韓国側は,1月21日の事態及び武力による最近の済州島浸透企図事件を含め,大韓民国に対する北からの脅威が増大している最近の事態を説明した。日本側はこれに対し,関心を表明しつつ,大韓民国政府と国民が,かかる事態に対処し,その安全の確保と急速な経済発展のために傾注している努力に対して敬意を表した。

(3) 両国の閣僚は,ヴィエトナム問題に関するパリ会談に注目し,ヴィエトナム共和国国民が,外部からの圧力なしに自らの将来を決定しうる自由と権利が保障されるような名誉ある平和を達成しうるよう強い希望を表明した。

(4) 両国の閣僚は,両国が引続き国際連合等諸国際機構を通じ協力することが有益であることを再確認し,とくに韓国統一のための国際連合の諸般の努力に対し引続き協力することに合意した。

(5) 両国の閣僚は,アジア・太平洋理事会の着実な成長に満足を表明し,この機構を通ずる地域的協力体制の維持強化のため,両国が引続き協力することに合意した。

7 両国の閣僚は,両国間の条約及び諸協定の実施状況並びに第1回定期閣僚会議の共同コミュニケの内容の施行状況を中心に両国関係一般を検討した結果,両国が長期的な観点から互恵の原則と信義に立脚した善隣協調関係をいっそう発展させるため,両国間の諸般の事項に関し,隔意なき協議と効率的施行のため両国政府が引続き努力することに合意した。

8 両国閣僚は,在日韓国人が日本国の社会秩序の下で安定した生活を営むことを希求し,在日韓国人の法的地位,教育及び生活の向上に関する問題について,これら韓国人の福祉をいっそう増進するため,必要に応じ両国の関係閣僚間の会合を含め,関係当局間の会談を可及的速やかに開催することに合意した。

9 韓国側は,これら在日韓国人の経済活動につき,信用組合の設立及びその銀行への昇格について日本側の好意的配慮を要望し,日本側は,信用組合の設立問題は都道府県知事の認可事項であるが,政府としては好意的に考慮している旨述べた。また,韓国側は,在日韓国人の持帰り金の枠,家族送金等について日本政府の特別な配慮を要望し,日本側は,枠をこえた持帰り金については実情に即し好意的に処理する旨約した。

10 韓国側は,在日韓国人の「北送」に強力に反対する立場を再び明らかにした。これに対し,日本側は,1967年11月12日を以って,いわゆる「カルカッタ協定」は終了し,効力を失っていることを確認した。

11 在樺太韓国人の帰還問題に関し,韓国側は,第2次大戦後20余年を経た現在まで帰還しえないでいるこれら韓国人が早急に樺太から出境しうるよう日本側の協力を要請した。これに対し,日本側は,これら韓国人が早急に樺太から出境しうるようできる限りの協力を行なう旨を表明した。

12 両国の閣僚は,科学技術関係を含む両国間の文化交流の状況につき検討し,今後とも民間の交流を促進し,勧奨することに同意した。

13 両国の閣僚は,日韓間の経済協力と貿易が引続き拡大していることは事実であるが,他方,両国貿易の不均衡もまた大きいことに鑑み,このような貿易の不均衡状態を改善するためには,相互に環境を整備する必要を認め,互恵と地域協力の原則に基づき,貿易の拡大と均衡を図ることが両国の利益に合致することを認め,両国はこのため,できる限りの方策を講ずることに合意した。

(1) 日韓両国は貿易不均衡の改善を図ることを共同の努力目標とし,その具体的方策については,今後概ね5年間の中期的観点から次回貿易合同委員会において討議することに合意した。

(2) 日本側は,委託加工貿易に関し,委託加工により日本に再輸入される物品で国内産業に打撃を与えるおそれのないものについては,原材料に相当する部分につき実際上関税を免除することができる制度を創設する意図である旨述べ,韓国側が要請した品目については今後約3ヵ月間に産業の実態調査を行なった上,可能なものにつき,逐次品目を追加することを約した。

(3) 両国閣僚は,両国が相互の立場を十分に理解し,長期的には工業所有権相互保護が必要であることを認め,まず商標権に関する取決めを締結する原則につき合意した。

(4) 日本映画輸入に関するかねてからの日本側の要望に対し,韓国側は,まず文化映画輸入の具体的実施のため好意的配慮を行なう旨述べた。

(5) 韓国側は,対馬地区での「密貿易」が韓国経済秩序と両国間の一般貿易に悪影響をおよぼす旨述べ,このような「密貿易」防止のための日本側の協力を求めた。これに対し,日本側は,これを検討し可能な措置をとる旨述べた。

14 農林水産問題に関し,両国の閣僚は,

(1) 農産種子の交換その他の技術交流の問題について検討することを目的とする実務者によって構成される農林水産技術協力委員会を設けるという原則について合意した。

(2) 貿易の不均衡是正については,韓国側は,第一次産品である農林水産物の輸入障壁を除去して自由取引きを主張したのに対し,これらの問題については,両国の経済事情に十分な考慮を払い,可能な範囲において解決して行くことが望ましいことに合意した。

(3) 韓国の農林水産物の輸出拡大の要請を考慮して,かつ日本の国内産品の需給事情を考慮して,一次産品の貿易拡大のために相互に適当と認める品目の開発について技術,資材の面で協力を行なうことに合意した。

(4) また,漁業問題については,日韓両国は,第1回日韓定期閣僚会議において相互協力することに合意した韓国沿岸増殖事業開発に関して,その後,両国専門家による適地調査の実施,生産品の交易に関する実務者会議および浅海干潟地綜合開発計画検討のための実務者会議開催等順調な進展があったことを確認し,以上の進展に基づき,今後本事業実施のため,水産増殖技術者の相互交流等を行なうことに合意した。

15 韓国における早害対策事業に関し,韓国側は,農業用地下水開発に関する第3年度無償経済協力実施計画の修正について日本が行なった協力に対し感謝の意を表明するとともに,恒久的な早害対策を講ずるために日本側に水源開発に要する技術用役ならびに資金の支援(請求権資金の繰上げ使用を含む)を要請したのに対し,日本側は,直ちに技術調査団を派遣し現地調査に積極的に協力することに同意し,具体的計画が作成された場合には,その恒久的対策事業に要する資金は明年度以降の無償供与その他の経済協力資金の中でこれを最優先的に供与する旨約した。

16 韓国に対する商業信用供与について,両国の閣僚は,すでに輸出承認が行なわれた仁川火力発電設備2,587万8千ドル,および近く輸出承認が行なわれる予定の嶺東火力発電設備1,500万ドルを含めた1968年(暦年)の般プラント分供与枠と1969年(暦年)の漁業協力・船舶輸出分の供与枠とを併せて9,000万ドルとすることで意見の一致を見た。

なお,この使用限度額には,その内容と条件に関する両国間の合意が得られれば,沿岸増養殖事業並びに零細漁業用資材も含めることができる旨了解された。

17 両国の閣僚は,対韓投資については,両国の法令の範囲内において民間で話し合いのまとまった案件について前向きに処理することに合意した。

さらに,日本側は,対韓投資について日本人と居住者たる在日韓国人との間に取扱い上なんらの差別なり区別を設ける考えは全くない旨付言した。

18 韓国側が要請したプロトタイプ技術訓練センターの設置に対しては,韓国側が具体的な計画を提出する旨述べた。

日本側は,さきに日本側の協力により大邱に設置された技術訓練センターが所期の成果を挙げたことを確認の上で本件に関する所要の調査を行ない,これが実現のため協力する旨述べた。

19 (1) 両国の閣僚は,二重課税防止協定を早期に締結することが両国間の経済協力の促進のための環境整備の重要な一環であることに留意し,貿易の不均衡等を含む両国間の経済関係を考慮に入れた妥当合理的な課税原則に立脚して,できるだけ早い時日内に協定を締結するよう努力するということに意見の一致をみた。

(2) 二重課税防止協定に関して,両国の閣僚は,次のとおり合意した。

(イ) 事業所得の課税に関しては,恒久的施設がある限り,相手国取引から発生するあらゆる所得を課税対象とする。

 ただし,課税所得の計算方法においては,両国間の経済関係を勘案した総括主義により近い基準により相互間で配分するよう両国の実務者間で協議決定する。

(ロ) 船舶,航空機の国際運輸所得に対しては,二重課税防止協定で相互に免税するよう規定する。

 また,これに関しては,両国で協定発効前に暫定的に相互免税に関する覚書を交換する。

(3) 請求権資金取引に対しては,二重課税防止協定付属文書等で営業税を賦課しない方向で検討する。

(4) 日本側が在韓日本商社などに対する課税に関し,韓国政府が韓国内での事業活動に相応した課税を行なうことを要望したのに対し,韓国側は,関係国内法の規定に従い妥当な課税を行なうことを約束した。

これに関連して韓国側は,在日韓国人に対する日本政府の課税につき日本側の好意的措置を要望したところ,これに対し日本側は今後とも公正な課税が行なわれるよう十分配慮することを約束した。

20 日本側は,日韓両国の海運協調の促進が両国海運の発展にとり不可欠の条件である旨強調し,そのため1968年10月を目途に第3次政府間海運会談をソウルで開催し,海運協定逐条案審議のためのワーキング・グループの設置,その構成,スケジュール等を決定すること及び現在民間で進められている海運協調交渉を側面より助成し,その早期妥結を図ることを提案した。

これに対し,韓国側は日韓海運協調が両国海運の共存共栄に必要であることを確認しつつ,本年10月に海運会談を開催し,海運協定案の逐条審議のためワーキング・グループの設置等を論議することに同意し,船舶輸出のための民間信用供与3000万ドルと韓国海運の体質向上のための5000万ドルの追加借款に対して日本側の積極的配慮を要望するとともに,民間海運協調を側面より支援することを確認した。

これに対し,日本側は,船舶輸出のための民間信用供与5000万ドルの増枠については,3000万ドルの船舶輸出のための民間信用供与が消化された時点においてあらためて検討する問題であると述べた。

21 両国の閣僚は,今回の会議が,両国の相互理解を深め,相互の協力をいっそう促進する上に極めて有益であったことに意見の一致をみた。

22 第3回日韓定期閣僚会議は,来年,日韓両国政府が合意する時期に東京で開催されることに合意をみた。

23 日本側閣僚は,このたびの第2回日韓定期閣僚会議に際しての韓国政府と国民から示された歓待に対して謝意を表明した。

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