海外広報活動の概況

1. 概   況

高度の文化と伝統を保持しつつ,近代工業国家として繁栄し,また自由主義諸国の主要な一員として民主主義の擁護と発展途上国援助に努めるわが国の実情と外交政策をひろく,かつ,正しく諸外国の官民に周知せしめるため,本省および在外公館は常時緊密な連絡のもとに積極的に海外広報活動にあたっている。

世界136ヵ所に置かれている在外公館には,最低1名(兼任を含む)の広報担当官を配置し,さらに主要公館には広報文化センターを順次設置し,講演・資料・映画・写真その他あらゆる可能な手段を活用して,わが国の実情と外交政策の紹介に努めている。特に諸外国の報道機関とは常時緊密な連絡を保ちつつ,積極的にこれを活用している。

なお,諸外国官民の対日認識を深めるため,その前提として,諸外国の新聞・雑誌等における対日論調を重視し,常にその動向の把握に努め,その結果を海外広報活動の立案および実施の際の参考としている。

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2. 広報資料の作成と配布

海外広報用として外務省が発行し,各方面に配布している資料は多種多量にのぼり,1968年度の作成配布総数はのべ約360万部であった。

このうち,最も基本的なものは,わが国の現状に関する基本的な事実を総合的に説明した小冊子「今日の日本」である。この小冊子は,カラー写真さし絵24頁,白黒写真さし絵22頁を含む90頁余りのもので,内容・写真ともに海外において多大の好評を博している。この資料は1968年度末現在38ヵ国語版が作成されている。

この「今日の日本」は,高校生以上を対象としたものであるが,このほかに中学生および小学生程度をそれぞれ対象とした日本紹介小冊子が各国語版で作成されている。

また,従来より,わが国の外交・政治・経済等については,レファレンス・シリーズという比較的詳細かつ専門的な記述による20頁程度の小冊子を刊行しており,1965年度においては「日本の外交政策」,「北方領土問題」,「外資問題」等を作成した。1968年度末現在英・仏語で13種類を作成しているが,最近のわが国の政治的・経済的地位の向上にかんがみ,今後ともこれを重点的に拡充していく予定である。

また,各種の照会に迅速に回答できるよう,わが国の憲法・地理・歴史・教育等35の項目をそれぞれ簡単に説明したファクト・シーツを主要数ヶ国語にて作成しているが,この改訂・拡充にも常時努力している。

このほか,日本の産業・文化・生活・観光地等を紹介する各種ポスター,大小地図,産業地図,1969年用カレンダー「風景」,および,大阪万国博覧会を1970年に控えて,卓上カレンダー「大阪」を英・仏・西の3ヵ国語でそれぞれ作成した。色彩印刷の美しいこれら広報刊行物は,多大の好評を博し,わが国国情の紹介にとどまらず,わが国の高度の印刷技術の紹介にも役立っている。

定期刊行物としては,わが国の外交・政治・経済その他各般の実情と政策を紹介する英文インフォメーション・ブレティンを毎月2回本省で発行しており,各在外公館は,これを基礎にそれぞれの地域の事情に応じて再編集の上,これを現地語で発行・配布している。現在かかるインフォメーション・ブレティンは24ヵ国語で発行されており,毎号合計約70万部に及んでいる。またグラフ誌「ジャパン」を年4回,英・仏・西・中国語および露語にて刊行している。

なお,明治百年に因んで,わが国の近代化の過程を総合的に紹介した写真入り小冊子「JAPAN IN TRANSITI0N」を英・仏・西語にて合計10余万部を作成し,配布したところ,海外において多大の好評を得たので,各国要人に贈呈するための豪華版をも作成した。

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3. 広報用映画,スライドおよび写真の作成配布

(1) 広報用映画

映画は直接視聴覚に訴える極めて効果的な広報手段であるので,諸外国の官民がわが国の社会・経済・文化その他各般の実情を理解するのに役立つよう,よい広報映画(カラー16ミリおよび35ミリ)を毎年4種程度作成する努力をしている。外務省作成広報映画には英・仏語をはじめとして約10ヵ国語版があり,全在外公館に配布の上,在外公館主催の映画会,一般貸出し,テレビ上映,広報車による巡回上映などを実施して非常な好評を博している。

1968年度には,「花と日本人」,「日本のことば」,「魚と日本人」および「日本の道路と橋」の4種を作成した。さらに諸官庁・団体・会社等が作成した映画の中で海外広報上有効と認められる広報映画10数種を購入し,在外公館に配布した。

(2) 巡回広報車

アジア・アフリカ・中南米地域,特に電気のないような辺地において,映画による広報活動を積極的に行なうため,1960年以降,発電装置を備え,映写機,スクリーン,テープ・レコーダー,レコード・プレーヤー,拡声器等を搭載した巡回広報車を配置し,広報上大きな効果を挙げている。1968年度には,在セイロン,フィリピン,ネパール,モロッコおよびパラグァイの5公館にこれを配布した。本広報映画車を保有する公館は,現在25公館にのぼる。

(3) スライド

カラー・スライドの利用は,映画に次ぐ視聴覚手段として多大の効果があるので,在外公館保有のスライドの充実とその利用に努めている。在外公館では,日本事情紹介講演会その他の催しにあたってスライドを利用し,また貸出しを行なっている。

(4) 写   真

1968年度においては,2,500種,約52,000枚を作成し,全在外公館に配布した。これらの写真は,各国主要新聞,百科辞典,教育用図書および雑誌等にひんぱんに掲載利用されており,また各在外公館の写真展に展示され大きな効果を挙げている。

(5) 外国テレビ用スクリーン・トピックス

外務省は,毎月1回,比較的カレントなトピックスをあつかう「ジャパン・スクリーン・トピックス」(白黒15分)を企画・作成し,70在外公館に配布している。これらの映画は配布先公館の所在する各国テレビ局の番組に組み入れて,毎月定期的に放映されており,日本の現状紹介に大きな役割を果している。

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4. 報道関係者の招待および便宜供与

わが国の実情を認識せしめるために,海外の有力報道関係者を本邦に招待し,あるいは来日報道関係者に本邦の各分野にわたる視察・会見などの便宜を供与することは,これら報道関係者が新聞・雑誌・テレビ・ラジオ等を通じて,わが国の実情を彼らの見た目で紹介するので,極めて効果的な手段である。

(1) 報道関係者招待

外務省は,世界各国より年間30~40名程度の有力報道関係者をそれぞれ約2週間招待し,わが国の政治・外交・経済・社会事情を視察・研究せしめている。

1968年度は,韓国,チェッコスロヴァキア,ハンガリー等より34名を招待したが,これら招待記者は,帰国後,各種の日本紹介記事を執筆し,また日本紹介講演を行なった。

(2) 報道関係者に対する便宜供与

わが国の政治的・経済的地位の向上に伴い,来日する報道関係者が増えており,この中には国際的に著名な一流記者も相当含まれている。情報文化局は,これらの報道関係者に対し,可能な限りブリーフィング・会見・見学のあっせんを行ない啓発に努めている。ちなみに1968年度外務省が便宜を供与した外国報道関係者数は,約200名に達する。

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5. 外国教科書,百科辞典等の日本関係記述の是正

諸外国で発行され,使用されている教科書ならびに百科辞典等の中には,いまだに日本に関する誤った記述があり,これを是正することは次代の諸国民の正しい対日理解を育くむ意味で極めて重要である。

外務省は,このために設立された財団法人・国際教育情報センターと緊密な連絡を保ちつつ,誤った日本関係記述の指摘,関係資料・写真の提供等により誤った記述の是正に努めている。

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6. 広報文化センター

各在外公館においては,わが国の実情および外交政策の紹介を図るため講演の実施,広報資料の配布,映画の上映,日本事情に関する照会処理等あらゆる手段を活用していること前述のとおりであるが,とくに重要な国には順次広報文化センターを設けて,広報活動の拡充強化を図っている。

ニュー・ヨーク,ロンドン,バンコック,ジャカルタ,ブエノス・アイレス,ジュネーブ,ニュー・デリー,カイロ,シドニー,ラゴス,ウイーン,マニラ,ブラジル,メキシコ,香港の既設15公館に加えて,1968年度には,ウェリントンおよびサン・フランシスコの二公館に新設された。

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7. 対日論調

海外における対日世論の動向を迅速かつ的確に把握するため,在外公館においては,常に注意深く対日論調,日本関係記事等を検討分析するほか,関係記事を本省に送付し,本省においては,さらに総合的に分析の上,その結果を海外広報活動の立案および実施に組み入れている。

外務省は,かかる対日世論傾向把握の一助とするため,従来より世界的に権威のあるギャラップ世論調査研究所に依頼して,米国および英国において毎年1回,対日世論傾向調査を実施している。

1968年は,米国では2月より3月にかけ米国成年市民1,504名を対象に,英国においては3月,16才以上の英国市民2,000名を対象として実施した。これらの調査結果のうち主要な点は次のとおりである。

質問(1) 「日本を信頼し得る友邦と考えるか」

   [答]        米国   英国

    信頼し得る。    40%   17%

    信頼し得ない。   34%   54%

    わからない。    26%   29%

質問(2) 「日本はアジアにおける安定勢力であると思うか」

   [答]        米国   英国

    安定勢力である。  45%   33%

    安定勢力でない。  19%   28%

    わからない。    36%   40%

質問(3) 「日本からの輸入商品をどう思うか」

   [答]        米国   英国

    優秀である。    6%    4%

    良い。       33%   26%

    普通である。    38%   32%

    よくない。     17%   23%

    わからない。    6%   15%

なお1968年度には,フランスでも同様の調査を実施したが,その結果はまだ集計されていない。

また,1968年には,明治百年にちなんで海外の有力紙がこぞって日本の近代化への途と現在の国際的地位に関する論調を掲げたので,これを「外国新聞人の見た明治百年-日本への提言-」としてとりまとめ,国内関係者の参考に供した。

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