第6章 情報文化活動の大要

わが国の外交を強力に推進するためには,国民の十分な理解と支持を得ることが必要であることは論をまたないところである,わが国の安全保障問題,アジアを中心とした国際政治におけるわが国の役割,日米関係のあり方等が,国民一般の大きな関心を集めて来ている今日,外務省としては国民に対し,国内的報道および広報活動の強化拡充を計りつつ,国際情勢の動きとそれを背景とするわが外交の歩みについて充分な説明を行なうよう努めている。

他方,わが国のめざましい経済発展と,国際的地位の向上に伴い諸外国はわが国の一般的国情に対する関心を深めるとともにわが外交の動きを注視し,大きな期待を示すようになってきている。このような関心と期待に応えて,わが国の政治,経済,社会等各般の現状を正しく紹介し,また,わが外交の基本方針や重要外交問題に対する立場や考え方を充分に説明,伝達することによって知識の不足や不正確な報道,等に基づく誤解を是正し,諸外国のわが国に対する理解を深め,さらには,対日世論のいっそうの好転を図ることは,わが外交推進上極めて重要である。このため外務省は海外広報活動のよりいっそうの拡充と対外報道活動の強化を図っている。

次に,国際的通信及び交通の急速な拡大に伴って政治経済の面だけでなく,教育,科学,芸術,スポーツ等広い文化の活動分野での国際的交流も拡大している。この一般的な趨勢に伴いわが国と諸外国との広い文化の分野での交流もいっそう幅広くかつ奥行きの深いものとなってきている。

対外文化活動では民間が自主的に企画し,実施するものは,わが国と諸外国との文化交流において大きな比重をしめており,政府はこれに対し出来るかぎりの協力を行ない,その効果が十分に発揮されるよう努めている。他方,重要な文化交流事業のうち民間事業としては実現しがたいものは,政府が直接に(例えば東南アジア諸国への日本研究講座の寄贈等)または補助金の支出による民間の事業としてその育成発展に努めている。わが国の対外文化交流は上記のような国際的関係を反映して,そのいずれの分野においても極めて活発に展開されている。

報道活動の概況

情報文化局は,外務省と内外報道機関との接点であり,国内的には,主として外務省に常駐している霞クラブ(主要新聞11社,共同,時事両通信社,NHK,沖縄タイムズおよび琉球新報社が加盟)と外務省放送記者会(NTV,TBS,フジ,NET,12チャンネル各テレビ局はじめ19社が加盟)の2つの記者クラブを通じ,また対外的には,わが国では,在日外国報道協会(Foreign Press in Japan 略称FPIJ,米国,英国,ソ連,フランス,ドイツ,韓国,中華民国等19ヵ国の報道機関102社が加盟)を通じ,外国では在外公館と現地報道機関の接触を通じて,常時主要国際問題やわが国の重要外交問題について,内外の報道機関に対し発表や解説を行なっている。

このため,大臣はじめ事務次官,情報文化局長による定例記者会見,記者懇談のいずれかを毎日実施するとともに,重要案件については随時クラブ側からの要望にもとづいて主管の局部課長等によるブリーフィング(解説)を行なわせており,さらに情報文化局発表,記事資料,参考資料等文書による各種発表を随時外務省常駐の両記者クラブおよび在日外国報道協会加盟各社に配布している。(このうちとくに重要なものは資料篇に収録した)

また,わが国の報道関係者の海外取材に際しては,本省と在外公館の両方で,各種の便宜を供与し(1968年度供与件数178)諸外国の事情の対内報道の充実に側面的に協力している。他方,外国報道関係者のわが国における取材活動には言語をはじめ日常生活上の制約があるので,情報文化局長は週1回,在日外国報道協会に加盟している外国人記者のために英語による記者会見を実施しているほか,取材上の便宜供与を図ることも考えつつ,外国報道関係者としての身分証明書を発給し,(1969年3月31日現在の発給数229)また,各種の取材あっせんも行なっている。

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