第5章 邦人の海外渡航・移住の現状と在外邦人の保護
邦人の海外渡航は,逐年増加しており,1968年の旅券発行数は331,217冊に達し,1967年よりも66,773冊,25.3%の増加を示している。
1953年以降1968年まで16年間の旅券発行状況(一般,公用別内訳を含む)および前年比増加率は,次表のとおりである。
1968年における一般旅券の渡航目的による発行数及び1967年との対比は,次のとおりであって,観光目的が第1位で全発行数の49%,経済活動目的が第2位で37%であり,観光目的が全体に占める割合がいっそう増加している。
(イ) 長期渡航を目的とする者に対する旅券
農業技術移住者,商社等の勤務者,留学生,永住者等渡航先に6ヵ月以上滞在する渡航者に対する旅券の発給は,1968年には31,404冊に及び一般旅券発行数の約9.7%を占めている。これを渡航した地域別にみれば次のとおりである。
地域別渡航先 (長期)
アジア地域 | 5,586 |
南太平洋地域 | 694 |
北米地域 | 12,919 |
中南米地域 | 3,278 |
欧州地域 | 6,032 |
中近東アフリカ地域 | 2,895 |
計 | 31,404 |
また上記のうち主な渡航先国をあげれば次のとおりである。
米国 | 11,786 |
スペイン | 2,207 |
ブラジル | 1,851 |
南アフリカ | 1,386 |
カナダ | 1,133 |
その他ドイツ,中国,香港の順である。
(ロ) 観光を目的とする者に対する旅券
一般観光地域別 (のべ数)
北米地域 | 40,196 |
中南米地域 | 10,820 |
欧州地域 | 213,102 |
中近東,アフリカ地域 | 16,892 |
アジア地域 | 296,038 |
南太平洋地域 | 4,335 |
計 | 581,383 |
一般観光年齢別(のべ数)
19才以下 | 5,021 | 3.13% |
20~29才 | 43,854 | 27.85 |
30~39才 | 37,843 | 24.03 |
40~49才 | 29,656 | 18.83 |
50~59才 | 22,809 | 14.48 |
60~69才 | 14,831 | 9.42 |
70~79才 | 3,243 | 2.06 |
80才以上 | 169 | 0.10 |
157,426 | 100% |
一般 観光性別
男 | 114,117 | 72.5% |
女 | 43,309 | 27.5 |
計 | 157,426 | 100% |
一般 観光職業別
議員 | 278 | 0.17% |
公務員 | 1,429 | 0.90 |
公共企業体 | 377 | 0.23 |
会社員 | 78,923 | 50.13 |
農漁従事者 | 2,815 | 1.78 |
技術関係者 | 497 | 0.31 |
船舶航空機乗務員 | 243 | 0.15 |
団体役員 | 2,781 | 1.76 |
労組役員 | 25 | 0.01 |
教育関係者 | 3,163 | 2.00 |
医療関係者 | 3,167 | 2.01 |
芸術関係者 | 954 | 0.60 |
法律家 | 187 | 0.11 |
報道関係者 | 127 | 0.08 |
著述家 | 158 | 0.10 |
宗教家 | 624 | 0.39 |
スポーツ関係者 | 32 | 0.02 |
学生 | 14,015 | 8.90 |
無職 | 24,930 | 15.83 |
その他 | 22,701 | 14.42 |
計 | 157,426 | 100% |
旅券発行数は逐年増加しているが,国民所得が増加し,わが国の保有外貨が前年来高水準に推移し,今後もこの傾向が長期的に維持される等の諸要因を考えれば,1975年ないしその1,2年後には,旅券発行数が100万をこえることも予想される。
また他方1969年4月からは観光渡航の外貨持ち出しわくも従来の500米ドルから700米ドルに引上げられ,業務渡航は1日の滞在費35ドルの割で2,000ドルまで認められていたのが,滞在日数と関係なく1人1回2,000ドルまで認められることとなった。
この為替規制の緩和は,国際機関(IMFやOECD等)からの要望もあってわが国の外貨準備の増大に見合って実施されたもので,邦人の海外渡航はさらに自由に余裕のあるものとなり,渡航熱を高めるのではないかと予想される。
かかる渡航者の飛躍的増加にもかかわらず,その事務を扱う都道府県の職員および外務省職員の増加は,国の行政機構簡素化の方針からみて困難である。このため,外務本省および各都道府県における事務の機械化を積極的に行なうこととした。1968年度においては,取扱件数の多い東京,大阪,神奈川等数府県を選び,外務本省とこれら都道府県との間で旅券発給に関する必要情報の電送を行ない,これによりこれら都道府県に旅券の作成事務の一部を委託する方法を検討中である。これにより郵送事務の相当部分が省略できるととに,地方に居住する申請者は,従来よりも短い日数で旅券の発給を受けられる効果が期待される。
さらに,渡航の大量化,自由化時代に適応するよう,数次往復用旅券の効力の延長とその発給対象の拡大を中心とした現行旅券制度の改正も鋭意検討中である。
わが国は別項のとおり26ヵ国と相互的査証免除取決めを結び,3ヵ月ないし6ヵ月の短期間観光保養一時的商談等生業職業にわたらない目的のためにわが国に入国しようとする外国人に対しては,査証を免除することとしているが,これら査証免除取決めの対象者および法務大臣から再入国許可を得て再入国しようとする者のほかは,外国人は原則として,わが国の出先公館である大(公)使館,総領事館あるいは領事館において,有効な旅行文書に,わが国に入国するための査証を受けていなければ,わが国に入国することはできないことになっている。
1968年中(1月~12月)に,わが在外公館において発給した査証の種類別件数および比率は,次のとおりである。
また,過去10年の地域別統計は別表のとおりであるが,その合計をみれば明らかなように査証の発給件数は年をおって増加してきている。これは,わが国と諸外国との友好関係が緊密化するに従い,人的交流が盛んになりつつあることを示すものといえよう。
さらに,1968年中の査証発給件数を地域別にみると,北米地域が最も多く,全体の半分に近い46.4%にあたる120,082件であり,次いで,アジア地域の39.0%の100,932件となっており,これら両地域の合計は,全体の85%を占めている。
(1)に述べたように外国人が観光,視察,商用その他の目的のため,短期間わが国に滞在しようとする場合に査証を必要としないことを,相互に約した国の数は,1968年2月にサン・マリノを加え,合計26ヵ国となった。
これらの国は,取決めの締結の順に示すと次のとおりである。
ドイツ,フランス,チュニジア,イタリア,オランダ,ギリシャ,ベルギー,デンマーク,スウェーデン,ノールウェー,ルクセンブルグ,スイス,ドミニカ,トルコ,オーストリア,フィンランド,パキスタン,アルゼンティン,コロンビア,連合王国,カナダ,スペイン,アイルランド,アイスランド,ユーゴースラヴイア,サン・マリノ。