第3章 わが国の経済協力の現状

わが国の経済協力は大別して政府ベースによるものと民間ベースによるものとがあり,前者には,資金協力および技術協力が含まれ,また後者には民間輸出信用(延払い輸出)および民間投資等が含まれている。政府はさらに,経済協力政策一般について先進各国と協調を図るため,OECD開発援助委員会に参加し,また政府ベースの資金供与,技術供与の面でも,いくつかの国際機関に参加して,国際協調,地域協調を進めてきた。

以下にわが国の経済協力について略述するが,二国間の経済協力関係の詳細については,第2部第1章「わが国と各国との諸問題」を参照願いたく,また経済協力に関する国際協調のうち,アジアの地域協力のための諸機構については第2部第1章4頁以下を,国際連合を通ずる経済協力については第2部第4章153頁以下をそれぞれ参照願いたい。

資金協力の概況

(1) 援助の動向

1968年のわが国の政府ベース資金協力は,約3億6,000万ドルにとどまり前年の約3億9,000万ドルに比較して若干の減少を示した。

しかし,内容的な面での拡充,多様化は順調に進展した。すなわち政府ベース借款の対象国は韓国,中華民国,インドネシア等のアジア諸国をはじめとする計13ヵ国に拡大した。また政府ベース借款の供与のほかアジア開発銀行への出資,同行特別基金への拠出,メコン河開発の諸プロジェクトのための拠出,国際穀物協定に関連する食糧援助等,内容的にも近年とみに多様化しつつある。

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(2) 援助条件の緩和

わが国の援助条件は従来国際的にみて最もきびしい部類に属しているため,OECDの開発援助委員会(DAC)の場においても,また個々の援助供与交渉においても,援助条件の緩和が強く要請されていた。この要請に応えて1968年5月には海外経済協力基金法が一部改正され,同基金より低開発国の国際収支支持を目的とする商品援助を長期低利の貸付けにより行なうことが可能となり,同年7月にはこれに基づきインドネシアに対し,金利3%期間20年という,わが国としては最も緩和された条件で商品援助が供与された。また,同基金からは同年7月インドネシア,1969年2月フィリピンおよびビルマ,同3月カンボディアに対し緩和された条件によりプロジェクト援助が供与された。更に輸出入銀行ベースの政府借款(対インド,対パキスタン,対セイロン借款)についても条件が若干緩和された。これらの努力の結果,近年政府ベース借款の平均条件は着実に緩和されつつあるが,他の先進国の水準には未だおよばない。低開発国の債務負担を軽減するためにも,またこの問題をめぐってわが国が国際場裡で孤立することを避けるためにも,条件緩和のためにいっそうの努力を払うことが必要とされている。

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(3) 援助対象

資金協力の地域的配分をみると,アジア特に東南アジアおよび極東の比率が近年ますますたかまりつつある。

わが国は,1966年4月東京において第1回東南アジア開発閣僚会議が開催されたのを機に,東南アジア諸国に対する政府借款の供与を開始し,これまでにインドネシア,タイ,マレイシアに対する借款供与が実施されたが,更に1969年2月フィリピンおよびビルマ,同3月にカンボディアに対する借款供与が約束された。

援助対象としては,インド,インドネシア等の開発途上国において国際収支事情がとみに悪化しつつあることを反映し,債務救済とか商品援助等国際収支の支持のための援助が相当大きな比率を占めているが,その他のアジア諸国に対しては,主として基幹産業や運輸,通信,港湾等経済基盤の拡充のためのプロジェクト援助が供与されており,受入国の経済開発のために大きな貢献をしている。

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