池田総理大臣の欧州訪問の際の各国政府との共同コミュニケ

 

日・独共同コミュニケ

池田総理大臣は、ドイツ連邦共和国政府の招待により、宮沢経済企画庁長官以下の随員を伴い一九六二年十一月五日から八日までドイツを訪問した。

ドイツ滞在中、池田総理大臣はリュプケ大統領に謁見し、またアデナウアー首相、エアハルト経済大臣およびシュレーダー外相と会談した。

これらの会談は友好的雰囲気のうちに行なわれ、国際情勢一般ならびに特に両国に関係の深い諸問題について隔意のない意見の交換が行なわれた。

池田総理大臣とアデナウアー首相は、両国が自由と正義に基づく平和の達成を希求する点において理念を一にすることを再確認し、ひとしく自由世界の一員としてかかる目的達成のため緊密に協力することに意見の一致をみた。

両国首相は、ドイツ・ベルリン問題が単に欧州のみならず自由世界全体にとって最も重要な問題の一つであり、本間題を解決することなくして世界の緊張緩和はありえず、その解決は民族自決と人権尊重の基礎の上でなされるべきことについて意見が一致した。また両国は核実験停止協定成立のため、ならびに一般に管理された軍縮のための協定が一日も早く締結されるよう努力が引続き行なわれるべきことについて意見が一致した。

両国首相は、両国の貿易が着実に発展していること、および、右が両国共通の利益であることを満足の意をもって確認し、両国が従来から行なっている貿易関係強化の努力を無差別の原則および両国の通商自由化政策に従って継続すべきことについて意見が一致した。

池田総理大臣は欧州経済共同体の発展に敬意を表するとともに欧州経済共同体が自由かつ開放的な通商政策を行ない、もって自由世界の福祉に寄与せんことを希望した。また、ドイツ連邦共和国政府は引続き欧州経済共同体が通商自由主義的な態度をとるよう努力すること、および同政府は全自由世界の貿易関係の緊密化に至ることあるべきあらゆる努力を歓迎するとの確言を与え、池田総理大臣はこれに満足の意を表した。

さらに両国首相は日本のOECD参加が望ましいことを再確認するとともに、今後この方向に向って日本とOECDとの関係を強化すべきことにつき意見の一致をみた。

両国首相は逐年両国間の友好関係が強化されつつあることに満足の意を表するとともに、今後両国があらゆる分野において一層緊密に協力せんとの両国政府の共通の意思を確認した。

また両国首相は、今回の池田総理大臣の訪問およびこれに先立つ大平外務大臣の訪独が日独の友好の絆を強化し、両国民の相互理解を深める上に多大の貢献をしたことに同慶の意を表明した。

目次へ

日・仏共同コミュニケ

池田総理大臣はフランス共和国政府の招待により、宮沢経済企画庁長官以下の随員を伴い、フランスを公式訪問し、一九六二年十一月八日から十二日まで滞在した。池田総理大臣は滞仏中、ド・ゴール大統領に謁見し、ポンピドー首相およびクーヴ・ドミュルヴィル外相と会談した。極めて友好的な雰囲気のうちに行なわれたこれらの会談は、去る九月パリで大平外務大臣がフランス政府と行なった会談に引続くもので、欧州の諸問題およびアジアの諸問題を含む国際政治の主要課題について隔意ない意見の交換が行なわれた。その際、自由世界の利益を擁護し自由と正義に基づく平和を維持せんとする両国の間に広範な見解の一致を見た。

両国首相は両国間の貿易を拡大する必要があることにつき意見の一致を表明し、この方向に向ってすでに両国においてそれぞれなされた成果を認めるとともに、最近パリおよび東京で行なわれた貿易自由化措置および日仏貿易取決めの一九六三年三月三十一日までの延長に際しとられるべき諸措置が双方の輸出拡大に寄与することを確認した。前記の時期以降の両国間貿易はさらに拡大の方向において検討される。

他方日仏貿易に対しできるだけ早い時期に恒久的な基礎を与えることが極めて望ましいことを確信し、両国政府は、無差別待遇の原則に基づきかつ両国に満足な形において、関税および貿易に関する一般協定に関し両国間に存在する懸案の解決を図るとともに、さらに一九一一年八号十九日の通商航海条約に代わるべき新たな通商条約を締結することを目的とする交渉を開始することについて合意した。

両国首相は、さらに日本とOECD加盟国との間の経済関係の強化が大きな利益をもたらすものであることを認め、好意的な方向において日本の前記機構の諸活動への漸進的参加および将来の日本の加盟問題に言及した。

他方両国の間に文化交流、学術交流および技術交流がますます発展している点について満足の意が表明された。

両国民の相互の認識を深める意味で、これらの交流をさらに強化するためにあらゆる努力がなされることとなろう。両国首相は、友好促進の見地より共通の問題について両国政府首脳および当局者相互で定期的に協議を行なうことは、現在の日仏友好の絆をさらに強化することになることを認めた。

目次へ

日・英共同コミュニケ

池田総理大臣は英国政府の招待により宮沢経済企画庁長官を伴い、一九六二年十一月十二日より十五日まで英国を訪問した。池田首相はマクミラン首相、ヒューム外相、モードリング蔵相およびエロール商相と会談した。

これらの会談はもっとも友好的な雰囲気のうちに行なわれ、両国共通の関心を有する国際間の諸問題および日英間の友好関係の増進について率直な意見の交換が行なわれた。

両国首相は、自由陣営の一員であり多くの共通の問題に直面している英国および日本は両国の共通の利益のため、また平和愛好諸国の中で対等な友邦として、一層緊密な協力に邁進すべきであることに意見の一致をみた。また、この目的を達成するため、両国相互の関係に関連ある問題のみならず自由世界の一員としての立場に関係ある諸問題について、より緊密な協議を行なっていくことに合意した。

両国首相はキューバおよびベルリン問題を含む最近の緊張した国際情勢を検討し、自由諸国間における最も強固な団結が一層必要であることに意見が一致した。

両国首相は有効な管理と査察を伴った一般的軍縮協定、特に核兵器実験停止協定が速やかに締結されるべきことに意見の一致をみた。

両国首相はアジアおよびアフリカにおける政治的、経済的諸情勢を討議し、新興諸国をして生活水準の向上を達成しうるよう援助するため協力することに意見の一致をみた。

両国首相は欧州の経済的、政治的統合およびこれへの英国の参加につき意見を交換した。池田首相は欧州経済共同体が開放的な政策をとることを希望する旨述べた。マクミラン首相に池田首相の見解に同意を表するとともに英国が加盟した場合はその実現に努力する旨述べた。

両国首相は世界の開発途上にある諸国の経済発展の援助に関する共同責任を果たすために開発援助委員会等を通じてますます緊密に協調をはかる必要があることに意見の一致をみた。これに関連して、池田首相は、日本と西欧諸国との提携を一層緊密にするため日本が開発援助委員会のみならず経済協力開発機構にも全面的に参加する希望を表明した。これに対してマクミラン首相は極めて好意的に考慮する旨約した。

両国首相は、両国はともに貿易に依存する国であり両国間の貿易拡大が共通の利益であることを認めた。特に両国首相は、本日両首相の臨席のもとに日英通商居住航海条約が署名されたことに満足の意を表し、この条約が発効すれば英国がガット三十五条の日本に対する援用を撤回することを認めた。両国首相はまた、この条約が両国間の貿易拡大のみならず、両国の政治的、経済的関係を含むすべての分野におけるより緊密な関係の端緒となるべき旨の希望を表明した。両国首相は最近貿易および経済使節団が相互に交換されたことを歓迎し、かつ今後この種の接触が定期的に行なわれることを希望した。

金融経済上の問題については、日本と英国とが健全な経済発展をとげるための政策を追求し、かつ必要ある場合には現在の国際支払制度を改善することに類似の利害関係を有することが強調された。両国首相は両国間における金融経済上の問題につき一層緊密に協力することに合意した。

両国首相は近年両国の友好関係が著しく増進されたことに満足の意を表し、今後両国間に新たにして、かつ緊密な友好および提携関係が生まれることを期待した。

目次へ

日本・ベルギー共同コミュニケ

池田総理大臣は、ベルギー王国政府の招待により、宮沢経済企画庁長官以下の随員を伴い一九六二年十一月一五日から一七日までベルギーを訪問した。

池田総理大臣は、ベルギー滞日中、ボードアン国王ならびにアルベール殿下に謁見し、また、ルフェーブル首相およびスパーク外相と会談した。両国首相は、極めて友好的雰囲気のうちに国際情勢一般にわたって意見を交換し、両国の関係が年をおって緊密の度を加えつつあることを満足をもって確認するとともに、等しく自由世界に属する両国が今後この関係を一層促進することに意見の一致をみた。両国首相は、無差別の原則に基づく両国間の貿易の増進、ならびに、日本と西欧諸国との経済関係の緊密化が両国の利益に合致するものであることを確認した。この点に関し、ルフェーブル首相およびスパーク外相は、すでに数カ月前ブラッスール大臣が言明したガット三十五条の援用を撤回するとのベルギー政府の意志を確認した。両国首相は、これに関する交渉をこのたびの大臣間の討議に照らしそれぞれ双方からなされた提案を基礎として直ちに開始すべきことに意見の一致をみた。池田総理大臣は、また、日本のOECDへの正式メンバーとしての加入の希望を表明したのに対し、ルフェーブル首相は、本間題を極めて好意的に検討すべきことを約した。両国首相は、欧州経済共同体の問題およびこれとの関係について話合いを行なった。

池田総理大臣は、欧州経済共同体が開放的なものとなり世界の福祉と繁栄に寄与せんことを希望し、ルフェーブル首相も同感の意を表するとともに右目的達成のため努力する旨を言明した。

両国首相は、両国間の文化交流を通じて両国民が相互の理解を深めることの重要性を確認し、今後ともかかる交流を増進すべきことに意見の一致をみた。

両国首相は、さきのアルベール殿下の訪日および今回の池田総理大臣のベルギー訪問が両国間の友好関係の増進上に有益な寄与をなしたことに満足の意を表明した。

目次へ

日本・イタリア共同コミュニケ

池田総理大臣は、イタリア政府の招待により本月十七日より十九日までローマを公式に訪問した。池田総理大臣は、滞在中、共和国大統領に謁見した。池田総理大臣とファンファーニ首相との会談にはイタリア側からピッチヨー二副首相兼外務大臣、ラ・マルファ予算大臣およびルソ外務次官、日本側から宮沢国務大臣その他の随員が出席した。

この会談において、最近の国際情勢にてらし、一般政治情勢ならびに両国が自由と平和の確保のために行なっている活動について十分な検討が行なわれた。右会談は、両国間の友好関係の外に両国が正義と自由および進歩に基づく国際秩序の平和的強化のための努力を特に国連の場において増大する意図を有すること、また、有効な管理と査察を伴う全般的軍縮ならびに核実験停止の協定への速やかな到達を促進することについて再確認し、かつ強調した。国際間の経済協力において日本とOECDとの関係を増大することの有益なことが考慮され、また、将来日本がOECDに完全に参加することの可能性が好意的に検討された。イタリア政府は、将来日本の加入要請があればこれを支持する用意がある。池田総理大臣は、ヨーロッパの経済的および政治的統合に対し深い関心を示し、日本はかかる統合の目的とするところを認識し、評価しており、欧州経済共同体が第三国に対し開放的かつ自由な協力の原則に基づいて協同するよう希望を表明し、これに対し、イタリア側が右が欧州経済共同体の目的および方針に合致するものであることを指摘した。両国間の通商関係が発展しつつあることにつき満足の意が表明され、また、無差別の原則による自由化促進政策を通ずる通商増大の可能性が検討された。この目的のため近く訪日するイタリア経済使節団と近くローマで行なわれる日伊混合委員会の重要性が確認された。右会談において両国間における文化交流の重要性が確認され、とりわけ、日本アカデミアの建設は、その重要な一段階を画するものであり、今後ともこの文化交流を一層緊密化することにつき意見の一致をみた。池田総理大臣は、ファンファーニ首相に対し日本を訪問するよう公式に招待し、ファンファーニ首相は右招請を快諾し謝意を表した。池田総理大臣の訪問および滞在中に行なわれた会談により日伊両国間に存する友好関係が確認され、また、両国政府は、今後両国民の発展のためひいては全世界の自由かつ平和な進歩に寄与するため、あらゆる面における両国関係を緊密化することを約した。

目次へ

日本・オランダ共同コミュニケ

池田総理大臣は、オランダ政府の招待により宮沢経済企画庁長官以下の随員を伴い一九六二年十一月二十一日オランダを訪問した。一行は二十三日まで滞在する。

池田総理大臣は、オランダ滞在中、ユリアナ女王陛下に謁見し、またデ・クワイ首相およびデ・パウス経済相と会談した。両国首相は、一般国際情勢特に欧州経済共同体の問題およびこれと日本との関係について友好な雰囲気のうちに隔意なき意見の交換を行なった。

両国首相は、等しく自由世界に属する両国が、伝統的に友好関係を一層増進し、共同の理念を実現するため、緊密に協力すべきことに意見の一致をみた。

両国首相は、有効な管理と査察を伴った一般的軍縮協定、特に核兵器実験停止協定が速やかに締結ざれるべきことに意見の一致をみた。

両国首相は、無差別の原則に基づく両国間の貿易の増進ならびに日本と西欧諸国との経済関係の緊密化が両国の利益に合致することにつき意見の一致をみた。ガット三十五条の問題に関し、両国首相は同条撤回を目的とする交渉を、両国首相間の討議に照らし、かつ、双方から出された提案を基礎として、直ちに開始すべきことに意見の一致をみた。また、池田総理大臣から、日本のOECD加入の希望を表明したのに対し、デ・クワイ首相は、極めて好意的に協力することを約した。さらに池田総理大臣は、欧州経済共同体が開放的かつ自由なものとなり、自由世界の福祉と繁栄に寄与せんことを希望し、デ・クワイ首相も同感の意を表するとともに、この目的を達成するため努力すべき旨言明した。

両国首相は、両国間の文化交流が両国民の相互理解のために、今後ともかかる交流を強化するため、一層の努力をはらうべきことにつき意見の一致をみた。

両国首相は、近く予定ざれているベアトリックス内親王殿下の訪日および今回の池田総理大臣のオランダ訪問により、両国の相互理解と親善関係が深められることを満足をもって確認した。

目次へ