貿易・経済関係の使節団および要人の交流

1 政府派遣貿易・経済使節団の海外訪問

(1) 中米・カリブ海諸国訪問貿易使節団の派遣

政府は、メキシコ、グァテマラ、エル・サルヴァドル、ニカラグァ、パナマ、ドミニカおよびハイティの七カ国に一九六二年三月三日から四週間にわたり、三菱商事専務取締役寺尾一郎氏を団長とする八名からなる中米・カリブ海諸国訪問貿易使節団を派遣した。この使節団は、これらの諸国において、(イ)わが国との貿易増進の障害となっている対日差別待遇改善の要請、(ロ)輸出増大のための具体的方策の検討とわが国産品の宜伝、(ハ)経済開発計画の情報しゆう集と中米共同市場に対するわが国企業進出の可能性の検討などを使命として、各国の政府および民間首脳と懇談し、たがいに理解を深めた。また、同使節団の訪問により、グァテマラは対日差別待遇を撤回することとなったほか、エル・サルヴァドルおよびメキシコとは通商協定締結の緒を作るなど、大きな成果をあげた(「わが外交の近況」第六号三一一ぺージ参照)。

(2) 韓国訪問経済視察団の派遣

日韓両国の経済関係は、近年ますます活発になっているが、わが政府としても韓国経済事情をできるだけ正確に把握する必要があるので、政府は、外務省中山経済局次長ほか三名の外務省係官を、一九六二年四月二十五日から約一週間にわたり現地に派遣し、韓国の一般経済事情を視察させた。

(3) 米国およびカナダ訪問貿易使節団の派遣

政府は、米国およびカナダに一九六二年九月十五日から約三五日間にわたり、東海銀行鈴木亨市氏を団長とする一一名からなる貿易使節団を派遣した。この使節団は、米国およびカナダの各都市を歴訪し、対米加貿易の拡大をはかるため、(イ)わが国の貿易自由化にともなう日米、日加の貿易問題、(ロ)新市場開拓のための対策、(ハ)輸出商品の多様化を推進するための方途などについて、米加両国の政府および民間人と懇談し、たがいに理解を深めて帰国した。

(4) イタリア訪問経済使節団の派遣

イタリヤは西欧諸国中特にいちじるしい対日輸入差別を実施しているが、これを民間経済人の相互理解を深めることによって打開することを目的として、政府は、一九六二年二月イタリアの経済使節団を招待した(「わが外交の近況」第六号三一一ぺージ参照)。これに対し、イタリア政府もわが国の使節団の訪問を招待したので、政府は、土井経済団体連合会副会長を団長とし有力な民間実業家からなる一九名の経済使節団を組織し、同年十月十一日から二十六日までイタリアに派遣した。

同使節団は、北イタリアの工業施設および南イタリアの産業開発ぶりを見学し、また、同国の政府関係者および民間経済人などと有意義な意見の交換を行なった。

(5) EEC(欧州経済共同体)訪問経済使節団の派遣

政府は、最近の世界経済においてますます重要性を増しているEECの加盟国(ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、ベルギーおよびルクセンブルグ)の経済界首脳ならびにEEC委員会との接触を目的として、一九六二年十月二十二日から約三週間にわたり、経済団体連合会会長石坂泰三氏(東芝会長)を団長とする一〇名の経済使節団を派遣した。同使節団は、わが国がEECへ始めて公式に派遣する使節団として、各地において官民経済関係者との懇談を通じて、たがいに理解を深め、大きな成果をあげた。

(6) アフリカ諸国訪問貿易使節団の派遣

政府は、従来わが国にはほとんど知られていなかった市場である旧フランス領、旧ベルギー領などのアフリカ諸国との貿易拡大のため、一九六二年十二月から一九六三年一月までの四六日間にわたり、日綿実業会長岡島美行氏を団長とする八名からなるアフリカ諸国貿易使節団をマダガスカル、コンゴー(ブラザヴィル)、コンゴー(レオポルドヴィル)、カメルーン、トーゴー、ダホメ、オート・ヴォルタ、ニジェール、象牙海岸、リベリア、ギニアおよびセネガルの諸国に派遣した。同使節団は、これらの諸国において、わが国との貿易促進の障害となっている対日差別待遇の撤廃の要請、各国の輸入制度および市場の実態と動向の把握、一次産品の買付可能性の調査などを使命として、各国政府および民間首脳と懇談し、相互の理解を深めた。

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2 民間経済使節団の海外訪問

(1) 民間経済視察団の英国訪問

足立日本商工会議所会頭を団長とし、民間業界代表二八名で構成された経済使節団は、一九六二年十月二十一日から十一月二日にかけて英国を訪問した。この使節団は、同年四月来日した英国民間貿易使節団(別項二六六ぺージ参照)の招請に基づき、日本商工会議所および経済団体連合会が共同で派遣したものである。同使節団は、滞英中ヒューム外相およびエロル商相と会見したほか、英国民間業界の代表者と話し合いを行ない多大の成果を収めて帰国した。

なお、日英両国関係者は、民間経済人の交流を一層促進するため、このような使節団の交換を今後も定期的に行なう意向である。

(2) 民間経済視察団の韓国訪問

日韓経済協会は、一九六二年九月に植村甲子郎同協会会長を団長とする経済視察団を派遣した。また同年十二月には安藤豊祿小野田セメント社長を団長とする経済視察団が韓国を訪問するなど、日韓経済人の往来が活発に行なわれた。

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3 海外からの貿易・経済使節団の来日

(1) アフガニスタン貿易使節団の来日

アフガニスタンのオマル商業省外国貿易局長を団長とする貿易使節団の一行四名は、一九六二年四月八日来日し、一週間滞在した。その間、政府および関係業界の代表とアフガニスタン産品の対日輸出増大問題について懇談したほか、大阪国際見本市、トランジスター・ラジオ工場などを視察した。

(2) 英国民間貿易使節団の来日

ロンドンおよびバーミンガム両商工会議所の代表一八名からなる英国民間貿易使節団(団長キルマーノック・ロンドン商工会議所会頭)は、一九六二年四月十一日から五月一日にかけてわが国を訪問した。同使節団は、戦後英国から迎えた最初の大規模な貿易使節団で産業、貿易、金融など各界の代表を綱羅した強力なものであった。一行は、滞日中、外務、大蔵、通産各大臣など政府首脳と懇談したほか、日本商工会議所、経済団体連合会など民間経済団体の代表と数回にわたって会談し、日英両国共通の経済上の諸問題について意見を交換し、また各地視察を通じて日本の実情認識に努めた。

同使節団は、帰国後"Opportunity in Japan"と題する報告書を発表し、日本市場の重要性を強調した。

(3) ベルギー経済使節団の来日

ベルギーは、近年輸出市場、投資市場としてのアジア諸国に注目しているが、一九六二年五月王弟アルベール殿下を団長とし官民合同の二七名からなる経済使節団を同地域に派遣した。わが国には五月四日から十九日まで滞在したが、これにはブラッスール貿易大臣も特に参加した。同使節団一行は、滞日中、政府および民間の経済関係者と懇談した。なお、その際の双方政府関係者の間の話合いでは、ベネルックス経済同盟加盟三国のガット第三十五条の対日援用撤回の問題がとり上げられた。その結果、ベルギー側はわが国の立場に深い理解を示すようになり、これら三国の援用撤回を促進するのに役立った。

(4) 南アフリカ国有鉄通使節団の来日

南アフリカ共和国国鉄総支配人ヒューゴー氏を団長とし、副支配人および各部門の技師長六名からなる南アフリカ鉄道使節団は、日本国有鉄道の招待により、一九六二年五月七日来日し、約一カ月間滞在した。従来、わが国は優秀な車輛技術を持ちながら、国際入札では優位を占めても、技術や信用になじみが深い西欧諸国などに惨敗を喫したことが多かった。そこで、その対策として、有力市場の鉄道の最高責任者などを招待して、わが国の鉄道車輛工業、関連工業の現況ならびに日本国鉄の近代化された諸施設、車輛の運転状況などを紹介し、もって鉄道車両の輸出振興をはかろうとしているので、この招待もその目的にそったものである。

同使節団は、滞日中、日本国有鉄道の運営状況、技術的事項、修理工場、港湾および関連企業の視察を行なった。

(5) オーストリア産業代表団の来日

日墺貿易交渉(別項一八五ページ参照)開始に先だち、オーストリア経済界の大御所マイヤーグントホフ氏ほか各界の有力者七名からなる産業代表団は、外務省ならびに経済団体連合会および経済同友会の招待により、一九六二年五月十六日来日し、同月二十六日まで滞在した(「わが外交の近況」第六号二八○ぺージ参照)。

これは、オーストリアとの貿易交渉に備えてオーストリア業界に対しわが国業界との接触およびわが国産業の実状についての認識を深めさせることを目的として、招待したものである。

同視察団は、滞日中、東京および大阪で日本側業界との間に両国業界会談を行なったほか、日本の実情を認識するという所期の目的に対し大きな成果をあげた。

(6) エル・サルヴァドルのコーヒー使節団の来日

エル・サルヴァドル・コーヒー会社社長マヌエル・アンヘル・アリス氏を団長とするエル・サルヴァドルのコーヒー使節団一行四名は、一九六二年五月二十四日、同国と日本との友好親善関係増進とコーヒー市場調査を目的として来日し、同六月二日まで滞在した。同使節団は、滞日中、日本政府当局と会談したほか、商工会議所幹部やコーヒー業者と懇談した。

(7) スーダン貿易使節団の来日

スーダンのマンスール・マフグーブ商工供給次官を団長とする貿易使節団の一行六名は、一九六二年五月二十六日、来日し、六月三日まで滞在した。同使節団は、滞日中、わが国政府当局および貿易、綿業関係者と懇談し、日本とスーダンとの間の貿易問題、特に綿花の対日輸出問題について意見の交換を行なった。

(8) ルーマニア経済使節団の来日

ルーマニアのビルテデアヌ副首相を団長とし、国家計画委員会議長、外国貿易相を含む政治および公団関係者など一四名からなる経済使節団は、一九六二年九月三日来日し、約十日間滞在した。同使節団は、ルーマニア政府が、日本とルーマニアとの間の貿易拡大の可能性を検討することを目的として派遣したものである。一行は、滞日中、日本政府および民間業界関係者との会談を行なった。

なお最近の両国間貿易の伸長ぶりは、かなりいちじるしいものがあり、一九六二年の貿易額は、東欧諸国中首位を占めるに至っている。

(9) イタリア産業使節団の来日

イタリア政府は、市場調査を主な目的として、ダニエーレ・トラニ上院議員を団長として民間の各種産業界代表を主体とする五七名からなる産業使節団を一九六二年十二月三日から同十六日までわが国に派遣した。一行は、滞日中、わが国の官民要人と懇談するとともに、産業部門別に関係業界と商談を行なった。

(10) アルジェリア経済使節団の来日

アルジェリアのラルシ・ケリファ工業エネルギー大臣を団長とする経済使節団は、一九六三年一月十九日来日した。同使節団は、滞日中、池田総理大臣をはじめ、外務、大蔵、通産、建設の各大臣および政界、経済界、金融界の要人と会談した。

同使節団の離日に当り、大平外務大臣およびケリファ工業エネルギー大臣は、無差別の原則に従って両国間の貿易を拡大することを希望する旨の共同コミュニケを発表した。

(11) エル・サルヴァドル経済使節団の来日

エル・サルヴァドル商工会議所会頭リカルド・サグレラ氏を団長とするエル・サルヴァドル経済使節団一行九六名は、一九六三年二月二十六日に来日し、同年三月二十三日まで滞在した。一行は、この間大平外務、福田通産両大臣および東東京都知事に表敬したほか、経済団体連合会、日本商工会議所、JETRO(日本貿易振興会)、日本貿易会などの経済界主脳部と親しく懇談した。

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4 海外からの貿易・経済関係要人の来日

(1) ハミルトン米国AID(国際協力庁)長官の来日

米国のハミルトンAID長官は、アジア地域での米国の援助政策の実情を視察する旅行の途次、一九六二年一月六日に来日し、同九日まで滞在した。同長官は、外務、大蔵、通産の各大臣および経済企画庁長官ならびに外務省経済局長などと会談した。その際、日本側からAID資金により域外調達を行なうに当っては、資金を効率的に使用されるよう要望した。

(2) アンポン・タイ官房長官の来日

タイの官房長官で経済次官を兼任しているアンポン陸軍中将は、外務省の招客として一九六二年四月二日に夫人を同伴して来日し、同月十日まで滞在した。同長官は、滞日中、わが国政府および民間の要人と両国間貿易の促進について懇談した。

(3) ブーン・タイ工業大臣の来日

タイ工業大臣ブーン・チャルーンチャイ氏は、外務省の招客として夫人、令嬢および随員七名をともなって、一九六二年四月十日に来日し、同二十五日まで滞在した。同大臣は、滞日中、池田総理大臣および小坂外務、佐藤通産各大臣をはじめ、わが国政府および民間の要人と会見し、今後の両国間貿易および経済技術協力の推進について懇談した。

(4) リーゼ欧州三共同体裁判所裁判官の来日

欧州経済共同体、欧州石炭鉄鋼共同体および欧州原子力共同体を管轄する裁判所の裁判官オットー・リーゼ教授は、外務省の招待により一九六二年四月九日から五月五日までわが国を訪問した。同教授は、滞日中、各地で欧州三共同体裁判所に関する講演を行なったが、これは、わが国とこれら欧州共同体の関係が広い基礎の上で緊密化される上に大きく貢献した。

(5) 尹仲容中華民国外貿会主任委員の来日

中華民国行政院外貨貿易審議委員会主任委員(閣僚級)尹仲容氏は、外務省の招客として、一九六二年五月二十三日夫人を同伴して来日し、同月三十日まで滞在した。同主任委員は、滞日中、池田総理大臣および小坂外務、水田大蔵、佐藤通産の各大臣などの政府要人ならびに経済団体連合会、大阪商工会議所など民間団体関係者と両国貿易の促進、対華借款供与の問題などについて懇談した。

(6) カハマ・タンガニイカ商工大臣の来日

タンガニイカのカハマ商工大臣は、ハルエンゲ商工次官およびローランズ顧問をともない、外務省の招客として一九六二年七月二十六日に来日し、同年八月三日まで滞在した。

同大臣は、滞日中大平外務大臣、福田通商産業大臣と会談したほか、両国間の貿易の促進と安定をはかる問題および企業提携などについて、政府当局ならびに関係業界と意見の交換を行ない、また、各種産業施設の視察を行なった。

(7) ロワイエ・ガット事務局特別顧問の来日

ガット(関税と貿易に関する一般協定)事務局の前事務局次長で現在事務局特別顧問であるジャン・ロワィエ氏は、一九六二年十一月十日来日し、同二十一日まで滞在した。同顧間は、関税一括引下げ、輸入制限問題、EEC(欧州経済共同体)とガットの関係、後進国問題、輸出補助金など最近のガットをめぐる諸問題について、外務省および関係各省の担当官と意見の交換を行なった。また、同氏は、前記の諸問題特に関税一括引下げ問題について、東京および関西で関係業界代表者に対し講演を行なった。

(8) シドキ・アラブ連合共和国工業大臣の来日

アラブ連合共和国のアジズ・シドキエ業大臣ら一行五名は、米国訪問の帰途一九六二年十二月十二日来日し、同十六日まで滞在した。同大臣の一行は、滞日中、同国の工業開発を対象とするわが国の経済協力問題について、外務、通産の両大臣と懇談した。

(9) ジャン・ドニオEEC(欧州経済共同体)総局長の来日

EECへの非加盟国の加入交渉を担当しているジャン・ドニオEEC総局長は、外務省の招待により、一九六三年三月六日に来日し、同十九日まで滞在した。

ドニオ総局長は滞日中、経済関係各省の幹部と会見したほか、経済団体連合会、経済同友会、日本経済調査協議会、大阪商工会議所など各団体代表と懇談した。また、テレビ番組への出演および前記各民間団体での講演などにより、英国のEEC加盟交渉問題にも触れて、EECの啓発につとめた。

同総局長の今回の訪日は、会談、交渉などを目的とするものではなかったが、わが国関係者との懇談および産業施設の視察により、同総局長がわが国の実情を認識するのに役立ち、また、わが国がEECの理解を深めることよって、双方の間の緊密な関係を樹立するのに大きく貢献した。

(10) ルーズベルト米国商務次官の来日

米国の商務次官フランクリン・D・ルーズベルト氏は、東京の米国貿易センターの開所式に出席するため、一九六三年三月二十九日に来日し、四月四日まで滞在した。同次官は滞日中、外務、通産両大臣ほか政府関係者と日米貿易問題一般について懇談した。

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