貿易・支払取極

1 中国との清算勘定残高の清算

わが国と中華民国との間の貿易および支払は、一九六一年十月一日からは現金決済方式に移行したが(「わが外交の近況」第六号二六一ぺージ参照)、同年九月三十日に終わった旧日華間清算勘定の最終残高一、二三八万二、一五八ドル四セント(中国側の入超分)については、一九六二年三月二十九日中国政府が現金の支払を行なったので、ここに同勘定の清算は完了した。

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2 カンボディアとの貿易取極の単純延長

一九六〇年二月十日に締結された日本とカンボディアとの間の貿易取極(同年二月十五日発効、有効期間一カ年)は、その後毎年交換公文により一カ年ずつ単純延長され、わが国産品は、本取極に基づき、引続きカンボディア側の最低税率(一般税率の三分の一)の適用をうけてきた。しかし、一九六三年二月十四日にその有効期間が満了することとなったので、カンボディア政府と折衝したところ、取極の効力をさらに一カ年間延長することに合意が成立し、一九六三年一月十四日プノンペンで、駐カンボディア芳賀大使とサンバット・カンボディア外務長官との間でその旨の書簡の交換が行なわれた。

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3 ビルマとの貿易取極の延長

一九五三年十二月八日に締結された日本とビルマとの貿易取極は、四年間の有効期間満了後、毎年交換公文により一年ずつ延長され、一九六二年四月二十日に行なわれた公文の交換で、同取極は同年一月一日にさかのぼって、さらに一年間延長されていた。一九六三年においても、同取極の効力を同年十二月末まで延長することにビルマ政府と合意をみ、従来の例に従い、六三年度ビルマ米の売買取極の署名が行なわれてから、同年二月二十日ラングーンでその旨の公文の交換が行なわれた。

4 英国との貿易取極の締結

英国との貿易取極は、一九六二年九月末で満了することとなっていたが、日英通商居住航海条約が締結されても発効までにはしばらく期間があるので、条約発効までの期間をつなぐことを主たる目的とした新貿易取極の交渉が、条約交渉と並行してロンドンで行なわれていた。その後、一九六二年十一月十四日通商居住航海条約の署名と同時に、この取極に関する合意議事録の署名も行なわれた。

新貿易取極が従来の取極と異なる主な点は、つぎのとおりである。

(1) 日本側輸出面

英国は新らたにクロック、非トランジスター・ラジオ、絶縁電線・ケーブルなど数品目を自由化し、さらにトランジスター・ラジオ、同テレビ、金属洋食器、陶磁器、ミシン、光学機械など、とくにわが国が輸出に関心をもっている品目の対日輸入枠を大幅に拡大した。

(2) 日本側輸入面

わが方は、毛糸、毛メリヤス、人造繊維物、敷物類などの繊維品、安全カミソリの刃、工作機械類の一部を自由化し、さらに、毛織物、自動車、ウィスキーなど英国が関心ある品目の全地域向け(グローバル)輸入枠を拡大した。

(3) 有効期間

この取極は、一九六三年九月末まで効力を有するが、日英通商居住航海条約の発効後は、条約と抵触する部分は、条約が優先することとなる。

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5 ノールウェーとの貿易取極の締結

従来わが国とノールウェーとの間には貿易に関する取極がなく、ノールウェーでは、わが国産品はすベて個別ライセンス制のもとにおかれ、差別待遇を受けていた。よって、このような事態を改善するため、政府は、一九六一年秋ノールウェー側に対し貿易取極締結の交渉開始を申入れた。その結果、一九六二年九月十七日からオスローで交渉が行なわれ、同年十月一日から一九六三年九月三十日までの一年間の両国間貿易に関する取極について妥結をみたので、同年十月三十日両国代表の間で合意裏項に関する公文の交換が行なわれた。

この取極の締結によって、ノールウェーの対日輸入制限品目数は大幅に縮少されて五二品目となり(このほかに自動的にライセンスが与えられるが、要監視品目となっているものが六三品目ある。)、これらの品目を除くわが国産品は、ノールウェーのOECD(経済協力開発機構)諸国に対する自由化の措置と同様の待遇を受けることとなっている。

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6 ベネルックス経済同盟との貿易に関する書簡交換

一九六〇年に締結されたわが国とベネルックス経済同盟(オランダ、ベルギーおよびルクセンブルグの三国)との間の通商協定第二議定書第六項に規定する過渡的輸入制限の第一年度については、協定締結と同時に、わが国産品二八品目を右制限品目とすることおよび輸入割当てについて両国間で合意されていた。

つぎに、協定第二年度にあたる一九六二年度の輸入制限についての協議は、一九六二年五月二十二日から同年八月三十一日までへーグで行なわれ、九月十七日宮崎駐オランダ大使とベネルックス代表オールスコット・オランダ経済省二国間貿易局長により、書簡の交換が行なわれた。

この結果、ベネルックスは、綿製および人造繊維製手袋類、麻製二次製品、コロゾ製ボタンを自由化し、割当てを約八三〇万ドル(前年比一〇〇万ドルの増加)とした。他方、鉄鋼製ボルト・ナット類が新らたに制限品目とされたので、結局、一九六二年のベネルックスの対日差別品目は二七(ブラッセル関税分類表四桁分類では三八)となった。

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7 スウェーデンとの貿易取極の延長

一九五九年五月十六日に署名きれたわが国とスウェーデンとの貿易に関する議定書は、一九六二年三月三十一日に失効することとなっていた(「わが外交の近況」第六号二五六ページ参照)。ところが、前記議定書第五項に基づき、一九六二年三月七日から四月十四日までの間東京で開催された日本・スウェーデン混合委員会で、一九六二年四月一日以降の両国間貿易の運用に関する問題が討議された結果、同議定書を一九六三年三月三十一日までの一二カ月間延長して適用することに意見の一致をみた。よって、一九六二年四月三十日東京において、関外務省経済局長とリリエヘーク駐日スウェーデン臨時代理大使との間でその旨の公文の交換が行なわれた。この取極延長により、一九六三年三月三十一日まで、スウェーデンは、日本からの輸入について引続き原則として自由かつ無差別な政策を維持し、わが国は、スウェーデンからの輸入に対し、従来どおり公平かつ無差別な待遇を与えることとなった。

一九六三年四月以降の両国間の貿易については、同年三月末までに両国間貿易の運用に関する話合いを行なう予定であったが、両国政府の都合によりこれを開始することが不可能となったため、とりあえず現行取極をさらに四月一日から七月三十日までの三カ月間だけ延長することに、両国政府間で意見の一致をみた。よって、一九六三年三月二十八日ストックホルムで、その旨の書簡の交換が行なわれた。

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8 ギリシャとの貿易取極の延長交渉

日本とギリシャとの間の貿易取極は、一九六一年二月アテネで締結され(「わが外交の近況」第六号二五五ページ参照)、有効期間は一九六〇年十月一日から一九六一年九月三十日までの一カ年であったが、その後、一九六二年九月三十日まで延長されていた。これをさらに延長する交渉が一九六二年三月から行なわれた結果、一九六二年十月一日から一九六四年九月三十日まで延長されることとなった。

同取極により、ギリシャ側は、わが国にOECD(経済協力開発機構)諸国に対する自由化待遇を同様に与え、わが国は、ギリシャに対し自動承認制、自動割当制、全地域向け(グローバル)枠などの制約による待遇を無差別に与えることが確認されている。

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9 オーストリアとの貿易交渉

日本とオーストリアとの間の貿易の正常化に関する藤山外務大臣とボック通商復興大臣との間の了解に基づき(「「わが外交の近況」第六号二七九頁参照)、オーストリアのガット第三十五条の対日援用撤回の促進および両国間の貿易関係の改善を目的とする交渉は、一九六二年六月四日から七月十七日までウイーンで行なわれた。その結果、同年九月十九日ウィーンで、貿易に関する公文の交換およびわが国からオーストリア向け綿製品の輸出に関する取極の署名が行なわれたが、それぞれの内容はつぎのとおりである。

(1) (イ)オーストリアは、新たに約五〇万米ドルの対日割当てを設け、署名時において同国がガット関係にある国の産品に対して与えている自由化の利益を、原則としてわが国に与える。

(ロ)わが国は、署名時における自由化および全地域向け割当ての利益をオーストリアに与える。

(2) 一九六二年二月ジュネーヴの綿製品の国際貿易に関する長期取極が締結されたので、従来オーストリアがほとんど輸入を認めていなかった綿製二次製品を含め、主要綿製品に関し、輸入枠を増大する。

なお、上記貿易に関する合意および一九六二年十月オーストリアが行なった自由化の拡大により、オーストリアの対日差別品目数は、取極前の約七〇〇品目から、一九六三年一月一日現在約三〇〇品目(ブラッセル関税分類表四桁分類による)に縮少された。

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10 フランスとの貿易取極締結交渉

(フランスとのガット第三十五条の対日援用の撤回交渉の項二一八ぺージを参照)

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11 スペインとの貿易取極締結交渉

一九六二年三月に日本とスペインとの間の貿易取極が締結され、これによりスペインは対OECD(経済協力開発機構)諸国向け自由化および全地域向け割当制度の待遇をわが国に対しても同様に与え、わが国は自動承認制、自動割当制による待遇をスペインに与えることになった結果、両国間の貿易はいちじるしく伸長した。ところが、同年十月末、スペインは、従来スペインの大幅な出超に終止した両国間貿易が取極第一年度において早くも日本側の大幅出超に変ったこと、およびスペインにおいて若干の日本産品による市場攪乱が起きていることを理由として、新貿易取極の締結をわが国に申し入れてきた。よって、同年十一月末から約一カ月間東京において交渉が行なわれたが、結局まとまらず、当初の取極はそのまま一九六三年三月末まで二カ月間延長された。その間、一九六三年二月中頃からマドリッドにおいて交渉を再開したが、右取極の有効期限である三月末になっても双方の合意を見ず、結局、右貿易取極は一九六三年三月末をもって失効した。しかし、交渉は、引続きマドリッドで行なわれており、円満解決のための努力が払われている。

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12 イランとの貿易取極締結交渉

一九六〇年十月十一日締結されたイランとの貿易取極は、一九六一年十月十日に失効したが、イラン側は、当時同取極の改訂交渉が行なわれていたにもかかわらず、対日輸入制限を復活した(「わが外交の近況」第六号二八六ページ参照)。

その後も引き続き新貿易取極の締結交渉が行なわれたが、一九六二年七月のイランの政変のため交渉は一時中断され、またその後再開された交渉もわが方のイラン産品買付額をめぐって難航を続け、結局、同年年内には妥結にいたらなかった。

一九六三年一月六日、イラン側は従来の対日輸入規制を撤廃し、これに代えて新たに日本からの輸入品(工業用原材料および日本製ブラントの補修部品を除く。)に対し、一率に五パーセントの特別税を賦課し、この特別税をイラン産品の輸出促進のために使用するという措置をとった。

わが国としては、このような差別待遇を撤廃させ、両国間の正常な貿易関係を確立するため、一日も早く新取極を締結する必要があるので、イラン産品の買付増大を図ることとし、二月初め、関係業界の一層の協力により新しい買付計画案を作成してこれをイラン側に提示し、引続き交渉を行なっている。

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13 ガーナとの貿易協定の締結

一九五九年十月ガーナ政府は、貿易および経済協力協定が締結されれば、ガット第三十五条の対日援用を撤回する意向を表明し、この協定に関するガーナ案を提示してきた。しかし、その後の貿易交渉では、双方の主張にひらきがあり容易に調整されなかったので、一九六二年二月ガーナのヌクルマ大統領は池田首相に親書を寄せて、ガット第三十五条の対日援用を無条件に撤回する旨を通報し、貿易協定締結の促進を要望してきた。そして、同年三月ガット第三十五条の対日援用を撤回した。

その後、ガーナ政府は、この親書に基づき貿易協定の新しい案を提示してきたので、東京とアクラで交渉が行われた。その結果、ようやく交渉は妥結し、一九六三年三月十一日アクラで、両国代表の間に貿易協定の署名が行なわれた。

本貿易協定は、ガットの権利義務に従い両国間貿易に最恵国待遇々与える旨の確認および両国の輸出関心品目の貿易拡大の努力を、主な内容としている。その他、商品見本輸入、一時輸入、通過運送、見本市などについて、両国法令の範囲内でとるべき措置を規定している。

この協定の締結により、両国間の貿易は、一層安定した基礎の上におかれることとなり、両国間の貿易の拡大が期待されている。

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14 カメルーンとの貿易取極の締結

一九六二年九月十九日、カメルーン連邦共和国からヌゾ・エカンガキ外務副大臣を団長とする一行五名からなる親善使節団が来日し、同月二十五日まで滞在した。その際、同使節団は、わが国との間の貿易取極の締結を提議したので、わが方で準備した原案を基礎として交渉を行なった結果、同月二十五日取極の署名が行なわれた。

この取極は、両国の法令の範囲内において、関税および輸入許可について無差別の原則に従って相互にできる限り好意的な待遇を与え、また、入国滞在、旅行、居住および諸種の活動について無差別の原則に従い相互に便宜を与えることを規定している。有効期限は一カ年で、廃棄通告のない限り更新できることとなっている。

また、取極署名と同時に発表された共同コミュニケでは、カメルーンがガットに加入する場合、両国はガットの一般的な枠内で協力することについて了解が成立したことが述べられている。

この取極の締結によって、今後両国間の貿易は一層発展するものと期待される。

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15 ニジェールとの貿易取極の締結

一九六二年十月二十八日、ニジェール共和国のヤクーバ・ジボ農業経済大臣一行三名の親善使節団が来日し、十一月六日まで滞在した。同使節団の滞日中、両国間の貿易取極について交渉した結果、合意に達したので、十一月五日取極の署名が行なわれた。

その要旨はほとんどカメルーンとの貿易取極と同様であり、両国の法令の範囲内で、関税および輸出入許可について、無差別の原則に従いできる限り好意的な待遇を相互に与え、また、一方の国の領域における他方の国民の諸種の活動について、無差別の原則に従い相互に便宜を与えることを主として規定している。有効期限は一カ年で、廃棄通告のない限り更新されることとなっている。また、取極署名と同時に発表された共同コミュニケにおいて、カメルーンの場合と同様、ニジェールがガットに加入する場合、両国はガットの一般的な枠内で協力することについて了解が成立したことが述べられている。この取極によって、今後両国間の直接貿易の発展が期待される。

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16 ダホメとの貿易取極の締結

一九六二年十一月十七日、ダホメ共和国のエミール・デルラン・ザンスー外務大臣が来日し、同月二十三日まで滞在した。同外相の滞日中、両国間の貿易取極について交渉した結果、合意に達したので、同月二十二日これに署名が行なわれた。この取極の有効期限は一カ年で、廃棄通告のない限り更新されることとなっている。その内容は、カメルーンおよびニジェールとの貿易取極とほとんど同様である。また、取極署名と同時に発表された共同コミュニケにおいては、カメルーンおよびニジェールの場合と同様の了解が成立したことが述べられている。この取極によって、両国間の直接貿易が発展するものと期待される。

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17 ソ連との貿易・支払取極の締結

一九六二年二月二十三日東京で、日本とソ連との間の貿易議定書が署名された。この議定書は、一九六〇年三月二日に締結されたいわゆる三カ年(一九六〇~六二年)貿易支払協定の最終年度の輸出入品目および金額・数量を修正し調整したものである。

また、右三カ年協定は、一九六二年末をもって失効するので、同年十一月十二日から一九六三年一月二十八日までモスクワにおいて交渉が行なわれた結果、新しい三カ年貿易支払協定(一九六二~六五年)について合意に達した。よって、二月五日ソ連からパトリチェフ外国貿易大臣の来日をまち、同大臣と大平外務大臣により協定の署名が行なわれた。

新協定付属の品目表によれば、一九六三年のわが国の輸入および輸出は、それぞれ一億一、五〇〇万ドルおよび一億三、六〇〇万ドル(いずれもFOB現金受払い額)と見積られている。

従来と異なり注目される点は、右協定成立と同時にソ連の極東地方と日本との間のいわゆる「沿岸貿易」として、消費物資の交換についてはじめて合意が成立したことである。

なお主要輸入品目は、従来と同様、木材、石油、石炭、カリ塩、鉱石類が相当部分を占め、輸出では、船舶、機械、化学人造繊維、ゴムベルトなどが中心となっている。

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