原子力の平和利用に関する国際協力

 

1 日米原子力協定に基づく核物質売却協定の署名

政府は、一九五八年六月に締結された日米原子力協定に基づき、米国政府と研究用量特殊核物質売却協定を結ぶ交渉を行ない、その結果、一九六二年十一月二十九日、ワシントンで同協定に署名が行なわれた。この協定は、日本原子力研究所に設置される軽水臨界実験装置および沸騰水型動力試験用原子炉のフィッション・チェンバーに使用する濃縮ウラン一九本分の購入条件について定めたもので、わが国はウラン二三五総計約五・六二グラムを米国原子力委員会から購入できることとなった。

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2 ユーラトム(欧州原子力共同体)との関係

ユーラトム(フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグで構成)は、一九五八年発足以来五年を経て六カ国の共同研究体制の樹立、域内原子力発電援助方式の策定などの基本的政策の整備を完了し、一九六三年から四億二、五〇〇万ドルの予算規模をもつ第二次五カ年研究開発計画に入っている。この間、技術交流、資源確保および市場拡大の布石として、英国、米国、カナダ、ブラジルおよびアルゼンティンとの間に原子力の平和利用の協力に関する協定を締結しているが、一九六一年秋には、同共同体の総裁および二委員の訪日を機として、わが国とも協定締結の意向がある旨を明らかにしている。わが国からは一九六二年夏、石川、駒形両原子力委員がユーラトム本部を訪問し、日本政府常駐代表下田大使を交え、今後の協力方針について懇談を行なった。

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3 国際原子力機関の動き

わが国は、IAEA(国際原子力機関)の創設以来、極東地域での原子力開発の先進国として理事国に選ばれ、機関の事業に協力してきた。

一九六二年九月ウィーンで開かれた第六総会には、駐オーストリア内田大使以下の代表団が出席し、わが国の最近の原子力の開発状況を説明し、特に東海村原子力研究所における国産第一号炉が同年九月十二日臨界に達したことを披露し、わが国の国際協力の方針を明らかにした。

この総会では、「水理学におけるラジオアイソトープの利用に関するシンポジウム」を東京で開催することが決定された。この会議はIAEAが極東で開く最初のもので、一九六三年三月五日から九日まで東京で開かれ、地表水、地下水などの水資源の研究開発にラジオアイソトープを使うに当っての諸問題を討議し、IAEA加盟国、国際語機関からの水理学者、放射能化学者など三五名の外国代表のほか、わが国の科学者九五名も参加した。また、IAEA事務局職員一三名が会議運営のため来日した。

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4 アジア・太平洋原子力会議の開催

日本政府は、「原子力平和利用推進のためのアジア・太平洋諸国会議」を一九六三年三月十一日から十三日まで東京で開催した。この会議には、わが国をはじめ、アフガニスタン、オーストラリア、セイロン、中国、インドネシア、イラン、韓国、ニュージーランド、パキスタン、フィリピン、タイおよびヴィエトナムの各国、国連およびエカフェ、IAEA、ILO(国際労働機関)、FAO(国連食糧農業機関)と、WHO(世界保健機関)からの代表および、米国、英国、カナダ、フランス、西ドイツおよびイタリアからのオブザーヴァー四五名が参加した。

会議は、近藤科学技術庁長官により開会され、参加国政府を代表し、ウスマニ・パキスタン代表(IAEA理事会議長)、エクランドIAEA事務局長がそれぞれ挨拶し、議長に兼重日本代表を、副議長にウスマニ氏を選出して討議を進めた。

議題は、(1)参加各国においての原子力平和利用のための研究開発の現状および問題点、(2)共通の行政的技術的問題、(3)国際協力による問題点の解決方法で、共通の問題点として、熟練した人員、資材、器材および設備の不足ならびに情報の不足が挙げられ、原子力平和利用促進のための地域的協力強化の必要性が認識され、またIAEAがアジア・太平洋地域諸国の要請にこたえ地域活動を促進すべきこと、このため地域事務所設置の可能性を検討することが要望された。

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