○国際連合軍縮小委員会に四月九日提出した日本政府の見解

日本政府は、去る三月十八日付の国連事務総長あて岸内閣総理大臣兼外務大臣の書簡(国連文書一九五七年三月二十五日付DC/一〇九)に明らかなとおり、核爆発実験を禁止する協定が関係国間に速かに成立することを強く要望するものである。

日本政府は、右の立場より、現在無秩序にかつ屡々無警告に核爆発実験が行われつつある状況を解消し、実際的かつ有効的な措置により核爆発実験が禁止されることを目途として、左記を示唆する。

A 国連科学委員会又は新たに設置せらるべき核爆発実験管理委員会(以下「委員会」という)が、まず、すべての核爆発実験が探知可能であるか否かを検討し、探知可能との結論に到達したときは、国連総会又は安全保障理事会の勧告により、すべての核爆発実験は禁止せられるものとし、他方「委員会」が現在の探知機構及び方法をもつてしては、探知不可能との結論に到達したときは、速かに国際的探知機構を設置し、探知方法を改善、強化して、もつて探知を可能ならしめるものとする。

B すべての国連加盟国は、国際的探知機構が完成し、探知方法が進歩して、探知が可能となるまでの期間においては、実験を最少限度にとどめるため事前にすべての実験を国際連合に登録するものとする。

登録制度の細目は付属のとおりとする。

C(1) 国連事務総長は、核爆発実験が登録せられたときは、直ちに全ての国連加盟国及び「委員会」に通知するものとする。

(2) 「委員会」は直ちに、当該実験の人体及びその環境その他に及ぼす影響を検討するものとする。

(3) 「委員会」は、その検討の結果を国連事務総長に報告するとともに、当該実験が、当該国領域外の人体及びその環境その他に甚しい影響を及ぼし、そのため実験を中止することを適当と認めるときは、その旨を総会又は安全保障理事会に報告するものとする。

(4) 関係国は、総会又は安全保障理事会が「委員会」の右報告に基き、当該実験の中止を勧告するときは、その勧告に従うものとする。

日本政府は、右に示唆した制度及びその運用に関する国際的合意の形式は、軍縮委員会の勧告に基く国連総会の決議によることが適当であると考え、かつ、「委員会」を新たに設置する場合は国連の枠内に設置せられるものとし、構成国は国連科学委員会の構成国と同様とすることが適当であると考える。

付 属

登録制度並びにその運用の細目

(1) 登録の時期

核爆発実験を行わんとする国は、予定する核爆発実験の時より五カ月前までに、その実験を国連に登録するものとする。

(2) 登録の対象

国連に登録すべき核爆発実験は、その規模、種類を問わず、全ての実験にわたるものとする。但し、総会又は安全保障理事会が、「委員会」の勧告に基き、人体及びその環境その他に影響なしと認めるが如き実験は除外し得ることとする。

(3) 登録の際通告すべき事項(データ)

核爆発実験の登録に当り、各国は、当該実験についての出来得る限り詳細な関連事項(データ)を提出すべきものとするも、最少限度次の事項を提出すべきものとする。

(a) 実験実施の場所、年月日、時間及び期間

(b) 核爆発の種類(fission か fusion かあるいは fissionfusion か等)及びエネルギー量

(c) 爆発の地上、水中又は空中の別、及び空中の場合はその高度

(d) 気象学、海洋学的条件

(e) 発出すべき放射性落下物(フォールアウト)の分量

(f) ・・・・(その他の関連事項で、合意により特に例示さるべきもの)

目次へ