欧州共同市場の結成とガットおよびわが国との関係

欧州石炭鉄鋼共同体を構成するベルギー、西ドイツ、フランス、イタリー、ルクセンブルグ、オランダの六カ国は一九五五年六月シシリー島のメッシナでの外相会議以来、欧州共同市場およびユーラトム(欧州原子力共同体)設立のために交渉を続けて来たが、本年三月二十五日にローマで両条約を調印するにいたつた。わが国としても共同市場の設立が欧州経済を発展強化せしめ、ひいては世界貿易の自由化に貢献することを希望するものであるが、一方この計画が地域的な経済ブロックの設立ということで終つてしまうのではないかというおそれもあるので、政府は三月末に六カ国に対して覚書を送り、域内の貿易自由化は域外諸国の犠牲によつて行われるべきでないこと、海外領土との特恵の拡大はガットに違反すること、フランスおよびベネルックス三国はこの際わが国に対するガットや三十五条援用を撤回してほしいこと等、ガットとの関係において共同市場に対するわが方の見解を明らかにした。

さらに四月二十四日から二十七日まで開かれたガット会期間委員会において、わが方は共同市場条約とガットとの関係を調整するため速かにガット特別総会を召集すべきことを主張したが、条約審議のための準備がまだ十分でないとする国も多く、結局共同市場条約の規定および実施に関して各国から質問を提出し、これに対する回答を六カ国側からえた上で、総会で条約の審議を行うこととなつた。

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